現代サバイバル術のヒントは「動物行動学」にあり!

2023年1月23日(月)

 エンヴィです。

 

 大河ドラマ『どうする家康』は第3話まで進みました。徳川家康を漢字一文字で表現すると、「忍」や「耐」といったところでしょうか。戦場では才能のきらめきを見せることはなかった家康ですが、とにかく我慢に我慢を重ねて、最後に天下をモノにします。(本郷和人徳川家康という人」河出新書

NHK『どうする家康』

 この「耐える」という行動は、ヒトにとって生存・繁殖がうまくいくよう進化する中で培われた能力です。辛さや苦しみを感じることはストレスでしかなく、生きていく上で不要に思えます。でも、そうではありません。辛さや苦しみを感じることは周囲への警戒や注意を促します。そして、これらを乗り越えること、つまり「耐えること」は生存・繁殖のチャンスをもたらすのです。

 ナタージャックヒキガエルというカエルのメスは、最も大きな鳴き声を出すオスに惹きつけられます。体の小さいオスは不利です。どうするでしょう?答えは、求愛中のオスの近くで静かに待つことです。そして、惹きつけられてやって来たメスをさっと横取りするのです。

 

 いきなり、動物の例を出しました。動物の行動は、僕たちがよりよく生きていくためのヒントを与えてくれます。参考になるのが「動物行動学」です。この分野の創設に大きく貢献し、1973年のノーベル生理学・医学賞を受賞した研究の一つが、有名なミツバチの「8の字」ダンスです。ミツバチが良い蜜を出す花の位置を仲間に知らせるため、独特のダンスをすることを発見したのです。

 ミツバチの社会性はびっくりするほどユニークです。セイヨウミツバチは集団が大きくなると新女王たちを巣に残して、旧女王たちが新しい巣を目指して移動します。その時、偵察バチは候補地を見つけると、仲間のところに戻ってきてダンスで「お知らせ」します。他の偵察バチたちも別の候補地を見つけて「お知らせ」します。さて、どうするでしょう?多数決で決めるんです。仲間のハチたちが候補地を見に行き、戻ってきて同じダンスを踊るのです。その数が多いほうが新しい巣になるのです。(女王の)帝国主義じゃなく、民主主義なんですね~。

 動物の記憶力、管理能力にも驚かされます。ハイイロホシガラスという鳥は、冬に備えて、食料となる種子を集めて貯蔵します。それも1か所ではなく、3000か所に3~4個ずつ、合計3万個以上もの種子を隠すのです。他の動物に発見されて盗まれるリスクを減らすのです。預貯金を複数の銀行に預けてそれぞれに異なるパスワードで管理するみたいなものですが、ケタが違います。さらに凄いことに、ハイイロホシガラスは最長10か月も隠した場所を覚えています。

 教育行動をとる動物もいます。ミーアキャットはサソリの扱い方を子どもに教えます。最初は死んだサソリを子どもに与え、子どもが少し大きくなると、毒針を取り除いた生きたサソリを与え、最後に毒針のある生きたサソリを与えます。ステップアップ学習です。(トリストラム・D・ワイアット「基礎からわかる動物行動学」NEWTON PRESS)

 

 動物の行動はヒトの行動にも応用できそうですが、気をつけなくちゃいけないのは、僕たちが動物の心を理解しようとする時、ヒト目線で考えてしまいがちなことです。あくまでも、動物はそれぞれの種に固有の、生存・繁殖がうまくいくような「認知世界」を持っているに過ぎないのです。学ぶにしても、この点は注意が必要です。

 そして、僕たちヒトも、独自の「認知世界」の下で進化してきました。でも、やってしまいがちなのが、現代の感覚で人の行動を理解しようとすることです。僕たちの本質は狩猟採集時代のままです。自然の中で100人程度の集団で狩猟採集を行う生活に適応しているかどうかという観点で捉えるくらいがちょうどいいのです。例えば、ヒトは色の中で、緑色に最も反応します。これは、緑色が示す植物は、食べ物や水の存在場所、隠れる場所として、また、草食動物がいる可能性が高い場所として、ヒトにとって重要な意味を持つからです。(小林朋道「苦しいとき脳に効く動物行動学」菊池書館)

 

 現代社会は一気に形成されたものです。人を見る視点を現代から狩猟採集時代にずらすべきです。当時はそれこそ獲物となる動物たちの行動をよく観察してきたことでしょう。その中から、サバイバル術を学んだはずです。改めて動物の行動に注目しましょう。そのためには、生物多様性が重要な意味を帯びてきます

 生物多様性保全すべき理由に、ヒトにとっての使用価値や模倣技術が挙げられます。これらに加え、ここまで生き残ってきた動物たちであるという現実に思いを致すことが大事です。そして、学ぶ対象はたくさん存在するべきです。今、動物の多様性が脅かされています。共生を目指さなくてはなりません。『どうする僕たち』なのです。

 

食中毒に当たりたくなければ、これだけは押さえておいて!

2023年1月16日(月)

 フーディンだよ。

 

 今年もよろしく~。ところで、みんなおせち料理は食べた?鏡開きのおもちはぜんざいにしてたりする?よ~く考えてみたら、これらは保存の効く食べ物として伝えられてきたものだよね。

 今はダイエットや健康といった観点から、糖分や塩分を控え目にした食品が増えてきてる。一方で、砂糖や塩のおかげで抑えられてきた雑菌が繁殖しないか心配になるよ。みんなで食中毒の基本知識を押さえておくことが大事なんだな~。

 

 

 食中毒は大まかにいって、①細菌などの微生物によるもの、②自然毒によるもの、③化学物質によるものの3種類があるんだ。

 ①の微生物の代表は、カンピロバクターだよ。原因不明なことが多いけど、判明した事例だと鶏肉に関連する食品が大半で、微生物由来の食中毒の中では最も多く発生しているんだ。主な症状は腹痛、下痢、発熱。お肉やレバーを生で食べたりしないで、75℃で1分以上の加熱で死滅させようね。

 ついでに気を付けておきたいのがウェルシュ菌。面白いことに「芽胞」という形態変化を起こして身を守るんだ。芽胞になると、熱や紫外線、消毒剤にも耐えれるようになるから厄介だよ。「カレーの作り置きを食べたら食中毒になった」って話を聞いたら、その場合はウェルシュ菌が犯人だろうね。加熱調理後、だんだん温度が下がってきて50℃くらいになると、カレーに入っている牛肉なんかに潜んでいたウェルシュ菌が増殖を開始するんだ。まさに、ステルス。室内で放置せず、2時間以内に冷蔵庫に入れて急冷することが大切なんだよ。

 冬はノロウイルスの出番だね。もともとは牡蠣(カキ)関連の食品が原因だったけれど、今ではお弁当やお寿司などフィールドを広げてる。嘔吐や下痢を引き起こすよ。それこそ新型コロナのように「エアロゾル」になって拡散するから、高齢者施設や学校などで集団感染を引き起こす。乾燥状態でも2週間は生存するから、手すりやドアノブにしがみついているかも。手洗い・掃除を徹底しようね。あと有名どころとして、サルモネラ、腸管性大腸菌アニサキスがある。お肉やお魚などを生食する場合は警戒が必要なんだな~。

 

 ②の自然毒の代表格はフグキノコ。発生場所は圧倒的に家庭が多いよ。釣ったり山で採集したりして、自宅で食べて起きるんだな~。キノコは日本に4000~5000種類もあるけど、食べられるのはたったの100種類なんだよ。だから、野生のキノコはまず食べられないものと考えておいていいよ。他にも巻貝、ジャガイモの芽に注意しようね。

 ③の化学物質では、ヒスタミンによるアレルギー様の食中毒が最も多い。最近でも福祉施設や学校給食で集団発生してるんだ。原因はサバなどの青魚だよ。食べた後、数分から30分くらいで口や耳が赤くなって、頭痛、じんましんが起きる。こうしたものは流通過程や販売店でちゃんと温度管理をしてもらわないとね。

(伊藤武ら「イラストで楽しく学ぶ!食中毒の知識」講談社

 

 こうしてみると、食中毒を予防するには、正しい知識を持つこと、野生のものを食べないこと、その上で手洗い・うがいをこまめにする、生食はできる限り避ける、食品の温度管理に気を配るといった基本行動の徹底が大事なんだな~。

 当然、飲食店はもっと厳しく対応しなくちゃだめだよ。なんだかんだいって食中毒の発生場所は飲食店が最も多いんだ。2021年6月から、全ての食品関連事業者はHACCP(ハサップ)を導入することが義務づけられたよ。HACCPとは、食品の製造工程に関する衛生管理の手法であって、工程を細かく分けて、それぞれにおいて細菌やウイルスが混入しないか、増殖しないか、ハザード(危害)を想定して管理するんだ。

 

 特に、新型コロナウイルス感染症のおかげで営業時短や休業を余儀なくされた飲食店では、食中毒についても意識を高く持っておくことが大事だよ。仕入れから保管、調理、盛り付け、宅配に至るまで気は抜けない。清掃・洗濯、手洗いはもちろん、これらを従業員に徹底させるんだね。といっても限界があるから、設備など構造面で工夫するのがおすすめなんだな~。例えば、シンクは大きくして手首まで十分に洗えるようにしておく、回転式の蛇口はやめてレバー式にする、飛んでくる昆虫は白熱灯や蛍光灯が出す光を好むから、昆虫が好まないLEDに変更する、換気には吸排気の両方を備えたシステムを採用するなどだよ。(河岸宏和「図解飲食店の衛生管理」日本実業出版社

 

 観光や外食が復活しつつある。宅配もすっかり定着してきたところ。マスク着用や消毒など衛生管理に対するみんなの意識が高まった今こそ、食中毒を防ぐための基礎知識も備えておくといいんだな~。すると、お店を選ぶ時にも役立つし、選ばれるお店側も真剣になってくれるよ。安心して楽しく食事ができる環境を作っていこうね。

 

危機突破に効いてくる「多様性」の学び!

2023年1月9日(月)

 エディカです。

 

 「HUNTER✕HUNTER」っていう漫画のこと、ご存知かしら?少年ジャンプに掲載されている大人気漫画よ。一言で言うと、異なる背景と能力を持った仲間たちによる冒険譚ね。主人公のゴンは野生的センス、同い年のキルアは暗殺一家の子、クラピカは一族の復讐を胸に秘め、レオリオは医師を志している。彼らが一つになって力を合わせることで、「ハンター試験」などの課題をクリアしていくところが醍醐味なのよね。

 

冨樫義博「HUNTER✕HUNTER」集英社

 もし彼らが、リーダーの声が強いチームだったらどうなってたかしら?危機突破にはもってこいの気もするわね。実際、過去のヒマラヤ登山隊にこうしたチームがあったみたい。果たしてその結果は・・・1996年に起きた「エベレスト大量遭難事件」。8人もの死者を出す大惨事になったわ。

 事件の原因には複合的なものがあったにせよ、チーム内でどういうわけか、「悪天候になりそう」とか「満タンの酸素ボンベがまだ残っている」といった重要な情報が共有されなかったの。そして、こうした雰囲気を作り出したのが、「山ではリーダーに対する反論を一切認めない」とする権威の勾配なの。

 

 登山は不確実性の高い「VUCA」な環境で行う活動よ。複雑な問題に対処する場合、支配的な環境はかえって逆効果よ。「集合知」や「集団心」って言葉があるように、みんなでフラットに臆することなく意見が言える環境が必要ね。これからますます難しくなっていく世の中で生き残るためにも・・・。日頃から「多様性」を受け容れる能力を養うことが必要よ。これからの学校教育のキーワードね。(マシュー・サイド「多様性の科学」Discover)

 

 今、ウクライナ危機がいろんなことを教えてくれている。その一つが「教育の大切さ」ね。これには2つの側面があるわ。

 一つは、非常時にこそ教育を遂行することが大事ってこと。紛争地帯には不発弾や地雷が転がっている。子どもたちが不用意に触らないよう学ばせなくちゃならない。社会が壊れて若者がドラッグや犯罪に走らないよう保護する役割もあるわ。そして、何と言っても日常性の回復は大きいわ。友達とふれ合い、先生とつながることでケアされるし、生活のリズムが心の安定を生むわ。

 

 もう一つは・・・ズバリ「平和教育」。平和の重要性を伝えることね。国連の「SDGs」の基本的な考え方は、次世代に対する責任よ。暴力を行使すると必ず禍根が残り、ずっと後の世代まで引きずるわ。ちなみに日本のように戦争の悲惨さを伝える教育は世界ではあまり行われていないみたい。

 気を付けなくちゃいけないのは、教育は平和の実現に貢献できる一方で、正反対に向かわせる可能性もあるってこと。旧ソ連の崩壊後、構成国でそれぞれ国民教育が行われたけれど、民主主義と一緒に新自由主義的な考え方も導入された結果、大きな経済格差が生まれたの。すると、人々は国土や民族に心の安定を求めることとなり、他者に対する排外的な態度につながっていったの。

 

 大事なのは、「〇〇人はこうだ」と短絡的に解するのではなく、集団にも様々な人がいて、一人をとってみても複数の背景を持っていると理解すること・・・アマルティア・センが言う「マルチ・アインデンティティ」を意識することよ。

 こうした教育は大変重要だけれど、実施するとなると容易じゃないわね。学校の先生だって必ずしも「多様性」に馴染んできたわけじゃないし・・・。教室の中での営みだけに終わらせるんじゃなくて、それこそ「多様」な学びの環境をつくることが必要ね

日本教育学会 国際交流委員会編「『戦争』と『教育』」教育開発研究所)

 

 考えてみれば、学校で身に付けるスキルはどれも「脳」を使うものばかり。逆説的だけど、脳を使い過ぎると理性的に考える力が失われるの。必要なのは「脳の外」の力を借りること・・・体の感覚や動き、物理的な空間、周囲の人々の知性なんかを、頭の中で行う処理に利用することよ。しかも、テクノロジーのせいで、生徒たちは個別的かつ非同期的で細分化された経験を強いられているわ。これでは「多様性」は実感できやしない。(アニー・マーフィー・ポール「脳の外で考える」ダイヤモンド社

 

 例えば、外部講師、それもバックグランドが異なる複数人の講師に授業をお願いしてはどう?こんな視点もあるんだという気づきが生まれるわ。オンラインでもいいわ。だけど大事なのは、同時に学ばせることよ。集団で一緒に思考するほど人は賢くなるの。学ぶ側も組み合わせを試してはどう。学校間で協定を結んで、互いの生徒を一部交換して授業を受けさせるの。海外の学校やインターナショナルスクールが参加してくれたら素敵ね。実現させるのは簡単じゃないでしょうけど、平和教育+「多様性」ある教育を世界に先駆けてやってみて!

 

20代を迎え撃つ60代。「仕事争奪戦」の勝者はどっち!?

2023年1月2日(月)

 レーブだ。

 

 2023年になった。今年もよろしく。

 来年度から社会人になる20代の若者は心に期するものがあるだろう。初詣はどんな願いを込めただろうか。一方で定年を迎える60代の諸先輩は不安が先立つか。人生は長くなった。「定年」の概念もぼやけ出した。これからの「働き方」は否応なく変わる。そして、仕事の争奪戦が激しさを増す

 

 

 日本は人口が減るから職探しに困らないだろうと安穏としていたら甘い考えと言っておこう。人口減少は消費市場も「縮む」ことを意味する。モノを作りさえすれば売れるという世界ではなくなる。高齢化社会だとなおさらだ。高齢者は大抵のモノは持っているからだ。では作って輸出すればいいのではないか、という反論もあろう。果たして新興国を相手にどこまで張り合えるだろうか。結局は、より「高い付加価値」が必要となる

 サービス業も飽和状態となる。繰り返すが、人生は長くなった。年金だけでは不安だ。定年を超えても働かなければならない。人手が欲しいのは介護労働など、機械やAIでは対応しきれない分野だ。しかし、こうした分野ほど人気が無い。人気がある分野や楽に稼げる仕事に募集が殺到する。そこではひたすら「高い個の能力」が求められる。その時、60代は20代と同じ土俵に立てるのだろうか?

 

 「割り切る」という考え方はある。高齢になると家計の支出額は大きく減少する。最も心配される医療費も65歳から74歳で月1.7万円程度だ。収入はというと、定年後は300万円以下が大半となる。心もとない気もするが、年金に加え、月10万円ほどの労働収入があれば家計は成り立つ。時給1000円で月100時間働く計算だ。60代の家計が有する資産は1500万円ある。小遣い程度に稼ぐことができればいいのだ

 ご丁寧なことに国は高齢者雇用安定法により、65歳から70歳までの就業機会を確保するよう企業に求めている。介護のほか、接客、販売、保安、清掃など現場仕事は十分ある。しかも、誰かのためになる仕事、住み慣れた地域でもできる仕事だ。変なプライドさえ無ければ「生きがい」にもなる。

(坂本貴志「ほんとうの定年後」講談社現代新書

 

 心配なのはむしろ20代かもしれない。今の20代後半は「働きがい」を感じていない。未来が見えづらいからだ。加えてジョブ型雇用が進む。シニア社員は居座り続けられるが、20代はスキルを身に付けなければ太刀打ちできない。

 モノは考えようだ。いっそのこと職場を複数同時に持つ「マルチキャリア」、あるいは、次から次へと職場を乗り換えることを前提としたスキルの修得を目指してはどうか。変化の激しい世界では「一本足打法」のキャリアで生き残るのは厳しい。複数の職場経験を強みにするのだ。自分の多様性にも気付くことができる。しなやかな心を持つことができ、メンタルヘルスにもいい。ただし、自律的な学びの時間は欲しい。

 米国ではフリーランス業務を行った労働者は労働人口の3分の1以上にも達する。Z世代(18~22歳)だと半分だ。働き方の「当たり前」が変わりつつあるのだ。(越川慎司「29歳の教科書」プレジデント社)

 

 20代も60代も「働きがい」を感じられることが大切だ。そのためには、一人ひとりが能力を自ら高めることが必要であり、それを可能とする環境を整備しなくてはならない。この課題に取り組む「魅力あふれる職場」を持つ企業が未来の勝者となる

 「職場空間」を考えよう。イタリアの物理学者マルケッティによると、人類が交通機関の利用に費やしてもいいと感じる時間は1日60分までだ。これを踏まえ、いくつかの形態のオフィスを用意しよう。通常のオフィスのほか、シェアードオフィスサテライトオフィス、在宅などだ。この中から個人が自由に選べるようにするといい。

 通常のオフィスのメリットも無視できない。偶然の出会いがもたらす未知の情報や他のコミュニティとの接触がある。在宅勤務だと地域コミュニティとの関係性を持つことができる。人生をより豊かにしてくれるはずだ。

 「健康」も考えよう。人にしかできない仕事は脳を使う。脳をフル回転させるためには十分な休息が必要だ。睡眠時間の確保を徹底すべきだ。年間52週働くのではなく、自分の生活のリズムに合うプロジェクトを選んで参加できるようにしてもいい。余暇はストレスを解消し、脳をリフレッシュしてくれる。

(リンダ・グラットン「リデザイン・ワーク 新しい働き方」東洋経済

 

 新しい「働き方」の輪郭は少しずつその姿を現し始めている。だが、いかんせんモデルケースはまだ少ない。政府、企業、組合が一丸となって多くのケースを作ることが必要だ。そして、個人の側もそれに応えられるよう努力を続けることが大事だ。気は抜けないが、「働きがい」そして「生きがい」を間違いなく感じることができるだろう。

 

「見えない戦争」が生活を壊す!サイバー戦を止める術とは?

2022年12月26日(月)

 トランだ。

 

 ロシアのウクライナ侵攻はいつになったら終わるのだろう。アメリカはパトリオットミサイル供与に踏み切った。こうした正規戦も怖いが、サイバー戦は「見えない戦争」だけに脅威だ。いつの間にか攻撃を食らっているってこともあり得るぜ。心理的にきつい話だ。

 ロシアは史上初めて、正規戦にサイバー攻撃を組み合わせた「ハイブリッド戦争」をウクライナに仕掛けた。ウクライナの政府機関や金融機関、援助団体のシステムが狙われ、食料や医薬品の供給網も攻撃された。使用されたのは、大量のデータを送りサーバーに負荷を与える「DDоS攻撃」や、システム上の情報を消去するウイルスだ。(NEWSWEEK 2022.9.27)

 

 一方のウクライナもロシアに負けないサイバー防衛能力を発揮した。それどころか、ロシアへの積極的な攻撃まで行っている。もちろん、そこにアメリカの支援もある。

 こいつは恐ろしいぜ。なぜかっていうと、サイバー戦では敵味方の区別がつきにくくなるからだ。日本は戦場から離れているから大丈夫ってことはない。事実、ウクライナ侵攻以降、日本国内のウェブサイトに対するDDoS攻撃は最大25倍も増加した。俺たちの生活が脅かされるってことだ。産業基盤、金融、交通ネットワーク、原子力発電所や電気、水道、医療機関に関連するデジタルインフラが狙われるぜ。

 しかも、サイバー戦は無限にエスカレートする。核攻撃は恐ろしいが、やられたらやり返すという「相互確証破壊」があるからみんな躊躇する。しかし、サイバー戦はこうはいかない。直接人体を攻撃しないならとことんやってみようぜってわけだ。一刻も早くサイバー戦を止める手立てを考えなくちゃならないぜ。

 

 

 サイバー戦の超大国アメリカだ。コンピュータやインターネットを生んだ国でもある。アメリカでは2018年、サイバー軍の地位が格上げされた。また、政府が持つハッキング能力は、熟練の情報セキュリティ専門家をびっくりさせるほどハイレベルだ。イランの核開発プログラムにだってダメージを与えたんだぜ。

 ロシアもハッキング能力のレベルアップに膨大な資源を投入している。ただ、未だにサイバー犯罪者やパートタイム的な招集に依存しているところが危ういぜ。『ファンシーベア』っていう名前だけは可愛らしいグループがあるが、トランプ氏が勝利した米大統領選挙に干渉するなど数々のハッキング事件を引き起こしている。また、ロシアは国家主権に基づくインターネット統制を重視しているアメリカのように自由にしようっていう立場はとらないぜ。

 この点は中国も同じだ。むしろ、より国家的な統制を求めていると言ってもいいだろう。当初、中国軍は、経済的利益に狙いを定めたサイバー諜報活動を行っていた。とりわけ、米国企業をハッキングした『オーロラ攻撃』が有名だ。その後、中国はeコマースの世界を牽引してきた。すると今度は、中国の国内経済がサイバー攻撃を受けやすくなることになった。だから、サイバースペースにおける国際的なルールづくりを提唱している。要注意なのは、国内統制を堂々と実行している点だ。チベット人ウイグル人など少数民族の実態を把握する作戦を展開している。新型コロナのパンデミックでは、「社会信用システム」を使っている。感染を防ぐため適切な行動をとらない市民は点数が下げられ、今後の生活に支障をきたすってわけだ。

 

 以上が大国の現状だが、最大の問題は、サイバー戦を止める手立てを見出すのは極めて難しいってことだ。この点は情報セキュリティの失敗の歴史が教えてくれる。

 理由は2つ。まず、システムはあまりにも複雑化していて、そこから「脆弱性」を無くすことが極めて難しくなっていることだ。これまでもシステムが強化され、その度にハッカーが攻撃するという「いたちごっこ」が繰り返されてきた。今後もこの状況は続くだろう。もう一つは「合理性」の問題だ。ユーザーからすると、常日頃からセキュリティなんて気にかけていられない。誰かが守ってくれてるんだろうと安穏としている。デジタル企業も開発するシステムのセキュリティは万全と信じていて新機能の追加に余念が無い。こうした「心理」にハッカーがつけ入る隙が生まれる。

 

 ヤバいぜ。プライバシーとセキュリティのバランスが壊れる。国家統制が現実味を帯びてくるぜ。一刻も早く国際的な解決を目指すべきだ。国際連合に、専門家と実務者からなる中立的な「対サイバー戦」組織を設置すべきだ。ハッキングなどのサイバー攻撃を監視し、攻撃側に停止を勧告すると同時に、攻撃を受ける側には防衛支援を行う。必要なら経済制裁という「抑止力」に結び付けよう。要は、世界の眼で「見る」ことが大事ってことだ。「見えない戦争」を白日の下にさらすことが、人類全体を守ることにつながるぜ。

 

笑う富裕層と搾取される労働・消費者。格差解消の方法はあるのか?

2022年12月19日(月)

 コノミです。

 

 今年もいろんなことがありました。一番衝撃を受けたのは安倍元首相の銃撃事件でした。直接の動機は統一教会との関係です。このため、その後の参議院選挙で大勝したはずの自民党の動揺が収まりません。でも、本当に目を向けるべきは、根底にある格差の問題です。経済的困窮は「救済」を求めるからです。このままだと、同様の惨劇が起きかねません。

 

 「新富裕層」が増えていますアベノミクスの恩恵を受けた人もいます。株式や暗号資産への投資に成功した人がそうです。彼らにとって、税金のかからないドバイへの移住が人気のようです。軽いですね。

 波に乗れた人はいいですが、乗れなかった人はどうなるでしょう。その人たちの不満は他人に向かいます。欧米では移民や外国籍企業がターゲットです。こうしたやるせない雰囲気が、トランプ大統領やイギリスのブレグジットを生み出しました。統一教会が隠れ蓑になっていますが、安倍元首相の事件もその一環です。

 

 世界にはダボスマン」と呼ばれる億万長者がいます。世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)に出席するために、毎年、スイスのダボスに集まる人たちです。名付け親は政治学者のサミュエル・ハンティントンです。彼らの影響力は政治の世界にも強く及び、先進経済諸国のほとんどで圧倒的な力を持ちます。ダボス会議には選ばれた政治指導者も参加します。トランプ大統領習近平国家主席も、そして安倍元首相もダボスでスピーチを行いました。

 彼らの仕事のジャンルは、金融、投資ファンド、不動産、IT、自動車、製薬と多岐にわたっています。共通している点は、ロビー活動により多額の納税義務を免れていることです。個人資産はタックスヘイブン租税回避地)に貯め込んでいます。その一方で、圧倒的多数の労働者を酷使し、圧倒的多数の消費者の支持を得ています。成功者は羨望の的なのです。でも、消費者は労働者でもあります。どちらの側でも搾取されているのです

 

 分かりやすい例がアマゾンのジェフ・ベゾス氏です。アマゾンの提供するオンラインショッピングの恩恵を受けている人は多いでしょう。でも、裏方は大変です。本国アメリカの倉庫内では低賃金の労働者が働いています。需要はどんどん増えています。新型コロナウイルス感染症はオンラインを加速させました。しかし、作業現場ではマスクも消毒液も供給されず、感染が拡大しました。また、パンデミックにつけ込んで、食材や粉ミルクなど生活必需品の販売価格を吊り上げたと非難されました。ベゾス氏の純資産は2000億ドルを突破しています。

 「ダボスマン」は、新型コロナウイルス感染症というピンチにも見事に「対処」しました。アメリカで成立した「CARES法」は救援パッケージです。内容は失業手当や給付金、学費の負債を抱える従業員を支援した企業に対する税控除などで総計6000億ドル以上になります。ところが、パッケージのコアな部分は大企業向け支援です。その額は5000億ドルにのぼります。(ピーター・S・グッドマン「ダボスマン」ハーパーコリンズ・ジャパン)

 

 

 こうしたことは日本では起こらないのでしょうか。世界と比べると日本の経済格差は小さいです。でも、やっぱり経済界の声は大きいです。新型コロナウイルス感染症では、「命か経済か」という議論が繰り返されてきました。今や後者が優勢です。でも、日本の富裕層が税金をしっかり納めてくれれば政府の財政負担は変わってきます。平時からの医療体制も充実するでしょう。緊縮財政をやめて国内投資を進めることもできるのです。未来に希望が持てるのです。(田村秀男「日本経済は再生できるか」ワニブックスPLUS新書)

 そして、怖いのは、放っておくと格差は拡大するということです。歴史を振り返ると、技術革新のスタートダッシュに成功した国は、その後も有利な世界を築いていきます。自分たちに有利なルールを作るからです。「ダボスマン」を見ていると納得できる話です。(オデッド・ガロー「格差の起源」NHK出版)

 

 格差を解消する方策はあるのでしょうか?手っ取り早いのは税制改革です。累進性を強化し、所得の再分配を確実に行うことです。バイデン大統領が進めようとしている法人税率の世界標準設定によって、タックスヘイブンを無くすという先回りも必要です。こうして財源を手にしたら、ベーシックインカムを検討しましょう。

 富裕層からの搾取を防ぐことも重要です。イギリスにあるプレストン市では、市の公共機関が地元企業との取引を増やすようにしています。消費活動が市内に留まるようにしているのです。日本では東京など大都市に人が吸い寄せられ、過剰な労働力を提供しています。これでは一人当たりの生産性は上がりっこありません。地域で産業を回すことで、自身の価値を見出すことにつながるのです。

 

「運動脳」じゃなく、「運動したくなる脳」をください!

2022年12月12日(月)

 ハルです。

 

 サッカーのワールドカップが盛り上がっています。次の月曜には優勝国が決まります。寝不足続きの方も多いのではないでしょうか。

 サッカーに限らず、トップアスリートのプレーを観ていると、「頭いい!」と思う時があります。彼らが勉強に専念していたら、すごい成績を上げるはずです。

 

 

 運動すると脳の働きが良くなります。「運動脳」です。脳には1000億もの細胞があり、お互いのつながりの総数は100兆にのぼります。このネットワークがフルに機能すれば、相当な威力を発揮するはずです。そして、運動がこのネットワークを強化するのです。

 具体的には「認知機能」と「記憶」に大きく関わります。運動すると、脳の前頭葉の血流が増加します。血液は脳に栄養を運びます。このため、「認知能力」がアップします。集中力も増します。脳には海馬という「記憶」をつかさどる部位があります。大きなストレスにさらされると海馬の細胞が死に、物忘れがひどくなります。でも運動すると、ストレスがかかっても海馬を殺す物質が減ります。持久系の運動をすると海馬自体が大きくなります。「記憶」がよくなるのです。

 さらに、有酸素運動でBNDF(脳由来神経栄養因子)という物質の分泌が増えます。BNDFは脳細胞を守り、細胞間のつながりを強化します。脳は25歳あたりから毎年約0.5%ずつ縮むのですが、運動が脳の老化スピードを遅らせてくれるのです。(アンデシュ・ハンセン「運動脳」サンマーク出版

 

 いいことづくめの運動ですが、残念なことに人間は運動するようには進化してきませんでした。むしろ、「ぐうたら」でいられるように進化してきたのです。

 入手できるエネルギーも利用できるエネルギーも限られています。そして、健康を犠牲にしてでも優先されるのは「繁殖」への利用です。人間の繁殖スピードはチンパンジーの2倍にもなります。ただし、エネルギーを入手しなければ、そもそも生き延びることはできません。だから、狩猟採集の時代に「走る」機能が進化しました。二足歩行も多数の特殊な汗腺も、頭部を安定させる項靭帯も、時間をかけてでも獲物をとことん追い詰めるために発達した機能なのです。

 今や、座っている時間が長い人が増えてきました。体を動かさないでいると、年を取るにつれてミスマッチがもたらされます。肥満、糖尿病、心血管疾患、アルツハイマー病、がん、免疫力低下・・・いずれも進化と現代環境とのミスマッチが原因です。

 仕事で座る時間が長い人の死亡率が高いというエビデンスまでは得られていませんが、不健康なライフスタイルは、先に挙げた疾患にかかる割合を倍増させます。たとえ長生きできたとしても不健康な状態が長く続くのです。

(ダニエル・E・リーバーマン「運動の神話」早川書房

 運動はこれらの問題を解決します。効果的な運動は「高強度インターバルトレーニング(HIIT)」です。1日たったの4分✕週2回のトレーニングです。初心者は「その場かけ足」でも結構です。(田畑泉「世界標準の科学的トレーニング」ブルーバックス

 筋肉をつけると、筋肉から放出される物質(マイオカイン)が炎症を抑えてくれます。これも生活習慣病の予防を助けてくれます。ちなみに、最も体力のある集団の死亡率は、最も体力のない集団の4分の1です。運動習慣があると、新型コロナウイルスに感染しても入院集中治療を受けるリスクが半減します。

 

 

 ここまで書くと、「運動しなきゃ」と思うでしょう。でも、運動しなくて済むのならそうしたいはずです。エネルギーの無駄な消費ですし、それが苦しいことであればなおさらです。小学校で毎日マラソンをさせられた経験がトラウマになっている人も多いことでしょう。解決するには、「楽しい」と思える運動を探すしかありません。あるいは、自ら強制して運動せざるを得ない環境づくりを進めるしかありません。 

 例えば、ゲームマーケットのように、レーニングの見本市を開いてはどうでしょう。そこでは、魅力的なトレーニングのアイデアを結集させます。展示されたトレーニングに実参加すれば、参加者の電子マネーが加算されるなどインセンティブをつけるといいです。興味をひくトレーニンググッズを見つけたら、購入して自主トレに使ってもいいでしょう。

 逆にペナルティも欲しいです。スマホに万歩計のアプリをダウンロードしないとギガが使えないという設定した上で、目標とする歩数に達しなかったらスマホのギガを減らすこととしてはどうでしょう。もう頑張るしかないですよね。駅ではエスカレーターじゃなく階段を選ぶようになるでしょう。もちろん、障害のある方のペナルティは免除しなくてはなりません。

 日頃のクセをつけることで、身体活動を当たり前にするのです。「運動したくなる脳」の完成です。みんなで元気に長生きしましょう。