「美人は得」って本当なんだ...でいいの!?

2024年4月15日(月)

 ソシエッタです。

 

 美人っていいですよね~。周りからちやほやされてうらやましいです。人の「モテ度」は性格や頭の良さではなく、外見的な魅力とのみ関係するらしいです。というわけで、「めでたし」でしょうか?ちやほやされていると性格が歪んでそうです。本当に「美人は得」なんでしょうか?

NHK大河ドラマ「光る君へ」

 結論から言うと、「美人は得」ですイエール大学のファインゴールドが145本の論文を集めて分析したところ、外見的魅力の高い人は低い人に比べて、孤独感や不安がより少なく、人気があり、社会的スキルがあるとのことでした。

 さらに、成果に対する評価にも差が出ます。学生に小論文を書かせ、その学生の顔写真を添付して評価する実験を行ったところ、「できの良い論文」では差はありませんでしたが、「できの悪い論文」の場合は、魅力の高い学生のほうが良い評価が得られました。女性ピアニストに関する研究でも、魅力の低いピアニストの場合、演奏に対する評価が悪くなることが示されました。理不尽な話ですがこれが現実です。

 

 ところで、美人やハンサムの基準って何でしょうか。ダーウィンの従兄であり、「優生学思想」を唱えたフランシス・ゴルトンによると、人間の顔は平均化するほど美人やハンサムになっていくそうです。その後の研究でデジタル合成写真を用いて実証も行われています。それともう一つ、写真を重ね合わせて平均化すると、実はお肌もすべすべになっていきます。これも魅力の要素です。お化粧でお肌のすべすべ感を獲得するのにはワケがあるのです。

 さらに上をいく「美人コンテスト」の平均顔は、目の左右幅が大きい、瞳孔が大きい、あごの長さが短い、ほおの幅が狭いといったいわゆる「幼型化」だそうです。(越智啓太「美人の正体」実務教育出版)

 

 でも、どうしてこのような理不尽さが存在するのでしょうか。理由の一つに、人間がコミュニケーションを行う社会的動物であることが考えられます。「メラビアンの法則」によれば、コミュニケーションに及ぼす影響の内訳は、言語情報が7%、音声情報が38%、表情などの視覚情報が55%とされています。この時、「顔」の均整がとれていること、つまり、より平均的であるということは、相手に信頼感を与えます。そして、そのような子孫を持ちたいという願望につながります。脳による「顔魅力」の判断は一瞬で行われます。(中野珠実「顔に取り憑かれた脳」講談社現代新書

 身もふたもない話が続きました。「人生、顔じゃないよ」と締めくくりたいのですが、期待に応えるのは難しそうです。せめて言えるのは、ダーウィンが唱えた「自然選択」によって世の中にたくさんの「顔」が存在するという事実です。あなたの顔は立派に生き残ってきたのです。どんな顔であっても、「笑顔」でいたいですね。

 

毒水PFASが次々と見つかる!・・・「知らぬが仏」でいいのか?

2024年4月8日(月)

 エンヴィです。

 

 テフロン加工ってありますよね。フライパンが料理で焦げ付かないようにするコーティングです。かつて、このテフロンを作る際に廃棄された化学物質が地下水に混入し、全米で問題になりました。その化学物質とはPFOAというPFAS(有機フッ素化合物)の一種です。今、日本各地でPFASが検出され、問題になっています。要注意です。

 

 

 PFASは4730種類を超える有機フッ素化合物の総称です。中でもPFOAなどは早くから使われ、問題となっています。これらは長期にわたって残留することから「永遠の化学物質」と言われています。

 PFASは便利なので、いろんな場面で使われています。撥水作用や撥油作用を持つ衣料品、防水スプレー、ハンバーガーやフライドポテトの耐油性食品包装紙、化粧くずれ防止用の化粧品など、実に多様です。石油火災用の泡消火剤にも含まれています。東京多摩地区のPFAS汚染は、米軍横田基地から漏れた泡消火剤が地下水に染み込んで起こったと考えられています。(原田浩二「これでわかるPFAS汚染」合同出版)

 

 PFASの毒性が最初に明らかになったのはデュポン社のケースです。ウェストバージニア州の農場主の粘り強い訴えに耳を傾けた弁護士の、実に14年にわたる闘いによってです。州が設置した科学者委員会は、PFOAと「関連性が高い」疾患として、コレステロール値、腎臓がん、精巣がん、甲状腺疾患、潰瘍性大腸炎、妊娠高血圧症を挙げました。(ロバート・ビロット「毒の水」花伝社)

 その後、国際的にも規制化が進められ、PFOAは2019年に廃絶することが決定しています。日本では2023年に入って、相模原市静岡市浜松市各務原市岡山県吉備中央町、熊本市の水道水や浄水場、地下水から高濃度のPFASが検出されています。2020年には、厚生労働省が水道水に対し、環境省が河川や地下水に対し、暫定目標値を設定しました。都内の21自治体で目標値を超える数値が検出されています。

 対策として、活性炭を使った浄化槽の設置、住民に対する血液検査、汚染源特定のための土壌調査、日本のフッ素樹脂メーカーの情報の確認などが考えられますが、いずれも容易ではありません。あまりにも影響が大きいためです。

 

 米国のケースは、水俣病を思い起こさせます。水俣病はビニールの原料製造を作る際に生じたメチル水銀が原因でした。どちらも、企業経営や地域経済が優先され、分かりづらい人体への影響は無視され続けました

 便利な生活の陰では誰かが犠牲になるリスクがあります。「悪いのは企業」と済ますのではなく、自分事として捉える姿勢が大事です。そうでないと過ちは繰り返され、結局、自分たちに跳ね返ってきます。これからもPFASは各地で検出されるでしょう。まずは、関心を持ってみることです。

 

やりましょう、「小麦の支配」からの脱出!

2024年4月1日(月)

 フーディンだよ。

 

 紅麴が大変なことになってるね。健康食品だけじゃなくお菓子や味噌、お酒といろんなものに含まれていたんだ。知らなかったよ。

 身近にあると言えば思いつくのは「小麦」かな。パン、ラーメン、パスタ、ケーキ、ドーナツ・・・。これだけ囲まれてると「小麦の奴隷」になった気がするんだな~。

 問題は、日本で食べられている小麦の自給率がわずか13%ってこと。圧倒的に輸入モノなんだな~。これって危なくない?新型コロナではパンケーキミックスが店頭から消えたことがあったよ。そろそろ本気で「小麦依存」をやめない?

 

 

 小麦は戦略的物資なんだな~。世界で確認されている39万種の植物のうち5000~7000種類を人類は食してきた。このうち、たった3種類の作物に世界人口の半分が頼っている。中でも小麦は最強で、40億人近い人々の主食になっている。生産はと言うと、世界120か国で栽培されているけれど、中国、インド、ロシアで全生産量の42%を占めているんだ。アメリカを足すと約半分になるよ。

 そして、生産量の25%が国際市場に流れている。これはトウモロコシ、大豆といった他のメジャーな食料よりも多いんだ。その上、輸出に回せるほど余裕のある国は少なく、8か国で輸入の8割を占めていて、ロシアとウクライナだけで3分の1を占める。だから、両国が戦争をするってことは全人類にとって危機なんだ。

 ロシア革命の指導者レーニンは「小麦は貨幣の中の貨幣」と言っている。ロシアには窒素化合物に不可欠な天然ガス資源があるほか、地球温暖化によって生産量を増やせるという期待があるんだな~。(セバスティアン・アビス「小麦の地政学原書房

 

 現実は国というより企業が実権を握っていて、需要・供給に大きな影響を与えているんだ。特に穀物市場は大企業による寡占状態なんだな~。加えて、小麦の難しさは、生産量が収穫ぎりぎりにならないと分からないこと。この不安定さが投機を呼び込んでマネーゲームになる。ちょっとしたきっかけで大きく値動きして供給が滞るんだな~。戦争や天災、誰かの発言でもいいんだ。ロシア・ウクライナ戦争はまさにこれを地で行ったね。(平賀緑「食べ物から学ぶ現代社会」岩波ジュニア新書)

 

 対抗策は2つ。①国内の生産量を増やすか、②国内の消費量を減らすこと。①については、みんなが許してくれるのであれば、日本の高温多湿な気候に合うよう遺伝子組み換えを行うことだね。②については、コメを再評価して米粉で代用すること。ふっくらする品種が開発されればゲームチェンジャーになるんじゃない。

 古代ローマでは小麦は重要な意味を持っていた。ローマ人は麦穂の女神ケーレスを崇め、為政者は「パンとサーカス」で住民を支配した。果たしておいらたちはいつまで「小麦の支配」に甘んじてられるかな。

 

「学校いじめ」を無くすための、根っこからのチェンジ!

2024年3月25日(月)

 エディカです。

 

 本年度もいよいよ今週までね。来年度の学校はどんな顔を見せるのかしら。

 2013年6月21日に「いじめ防止対策推進法」が成立して10年経ったわ。この間、「学校いじめ」が減ったかというと逆なの。2022年度の「いじめ重大事態」は923件と5年前の倍に増えている。認知度アップのおかげかもしれないけど・・・喜べないわ。

 法律の建付けも問題ね。新しく加わった「重大事態」という章によって全体が「事件対処型」の発想に陥っている・・・これでは問題の表層しか見えないわ。(今津孝次郎「『学校いじめ』のメカニズムと危機管理」黎明書房

 

 問題の根本に目を向けるべきね。それは、資本主義が求める「競争主義」が学校を包み込んで、そこにいる子どもたちの人間性を損なわせていること。その結果、子どもたちのストレスのはけ口が「学校いじめ」に向かっていることよ。

 こんなことを言うと、「競争を否定するのか」「外国に追い越される」「ゆとり教育で学力が低下した」と山ほど批難を浴びそう・・・。でも、日本人は基礎学力はあっても、一人当たりの名目GDPは32位(2022年。IMF)と結果を出せていない。子どもたちの精神的健康(2020年)に至っては38か国中37位と散々よ。(2020年。ユニセフレポートカード16)

 それに、いじめの本質は影響力の悪用・乱用・・・子どもだけでなく大人たちが抱えるパワハラ、虐待、DV等の防止にもつながっているの

 

 解決策は、教育方針を根っこから変えることね。日本の学校教育は「個」よりも「全体」の底上げを重視した。おかげで義務教育のレベルでは教育の質を保てたわ。でもこれからの社会は「個」を大事にしながら「多様性」を活かすことになるの。そうであれば、「一人ひとりが違う」という認識で理解し合うこと・・・そのための「対話による学び」が必要よ。

 もちろん、簡単じゃないわ。子どもたちはSNSに慣れ切っているし、対話の中で自分の意見が否定され傷つく覚悟も必要。学校側の十分なフォローが必要よ。(川上敬二郎「なぜかいじめに巻き込まれる子どもたち」ポプラ新書)

 さらに欲しいのは、「最低限これだけあればなんとかなる」という引き算的発想に基づく教育姿勢よ。これからの時代に唯一解は無い。福澤諭吉は「道理を極めて対処する能力を発育することなら(学校で)できる。」と言ったわ。学校では詰め込み教育は止めて、「考える力」を養わせるの。(おおたとしまさ「学校に染まるな!」ちくまプリマ―新書)

 最後に、教育行政にも、学校の先生にも「ゆとり」を持たせること。こうした雰囲気づくりが児童・生徒に伝わって「いじめ」も減るわ。でも、全部学校任せじゃなく、大人たち誰もが日常生活の中で意識的に取り組んでいくべきことよ。

 

 

ChatGPTの脅威に立ち向かっていく「労働思想」

2024年3月18日(月)

 レーブだ。

 

 仕事は楽しいか、それとも辛いか。日本人が仕事への情熱を失いつつある。仕事への熱意や職場への愛着を示す社員の割合は2022年で5%しかない。世界平均の23%から大きく水を開けられている。賃金の高い「最初から正社員」ほど「できれば仕事はしたくない」という有様だ。毎日の通勤も修行としか思えない。

 その意味ではChatGPTなど生成AIの参入は歓迎してよいだろう。国内の利用状況は芳しくないが、人が行ってきたかなりの部分が代替される。日本では人が仕事をしなくなるのだろうか、それは幸せなことなのか、冷静に思考してみよう。

 

 

 ヒュームは、個々人の労働の不十分さを共同で解決する可能性に、社会構築の根拠を見出した。では、生成AIが主体となって仕事をこなす場合、「社会」は必要なくなるのだろうか。生成AIが価値を提供できる職種は広い。顧客対応やマーケティングシステム開発、研究等がある。アメリカでは2023年1~8月に、AIを理由として約4000人が削減された。これは労働者全体の1%に相当する。こうした動きは、銀行や製薬、医療や教育、法律部門といった専門分野にも広がるだろう。まさに、「代わりはいくらでもいる」世界となる。「社会」の分断は必至だ。(野口悠紀雄「生成AI革命」日本経済新聞出版)

 人はAIで自動化できない仕事に追いやられる。その一つが「感情労働」だ。典型は旅客機の客室乗務員だ。常に満面の笑みが求められる。その他、他人のケアなど、いわゆる「女性化された労働」の多くが当てはまる。しかし、こうした労働こそ最も辛い部類だ人間性そのものを破壊するおそれがあるからだ。(中山元「労働の思想史」平凡社

 

 だからだろうか。社会から距離を置き、自ら主体的に関わろうとしないという「一億総モラトリアム社会」が到来している。仕事に対しては指示待ちとなり、30代窓際族が量産されている。(河合薫「働かないニッポン」日経プレミアシリーズ)

 根本の原因は、世の中が「すぐ使える」人材を重視し過ぎるするようになったからだ。カントは、人類が根源的な素質を発揮して社会体制を構築するのが最終的な目的であると説いた。そのためには辛い労働であっても自らを訓練する必要があるが、このすき間に生成AIが入り込み、「すぐ使える」ツールとして君臨する。仕事による自己実現も自己研鑽も不要となる。日々の営みと仕事との区別もあいまいになり、仕事の価値も行き場を失う。

 

 解決策として、ベーシックインカムの導入を強く提唱したい。働こうが働くまいが、人間としての尊厳を守れるものだからだ。つまり、「働かない」という選択肢を堂々と選べるようにすべきだ。古代アテネでは、仕事は自由人から軽蔑され、嫌われていた。過去の「労働思想」も捨てたものではない。再考してはどうだろうか。

 

さっさとやろう、地震に強い住まいづくり!

2024年3月11日(月)

 トランだ。

 

 東日本大震災から13年経った。最近増えている千葉県の地震はその影響かもしれない。世界で起きるマグニチュード6.0以上の地震の2割は日本で発生している。改めて思うぜ。日本は地震大国だって。

 1月1日に発生した能登半島地震では過去の震災と同様に避難所対応が採られた。とは言え「個」の時代でもある。感染症リスクもある。これからの災害対応は「在宅避難」も「あり」だろう。となると、住まいづくりが重要になるぜ。

 

 

 まずは立地だ。専門会社が無料提供している地盤マップで揺れやすさや、液状化現象、土砂災害の発生リスクを確認しておこう。「地盤品質判定士」のようなプロに相談するのも手だ。ちなみに水害リスクについては、不動産取引時に宅地建物取引業者ハザードマップを提示して説明する義務がある。ぜひ、地震リスクも示してもらいたい。

 次に「住まい」だ。耐震性は震度6強~7でも耐えられるレベルにしておきたい。能登半島地震では1981年の新耐震基準を満たしているにも関わらず多数の家屋が倒壊した。耐震等級は最高の「3」を確保すべきだ。耐震診断を積極的に行い、必要なら耐震補強工事をやるべきだ。費用は、家の構造変更がなければ150万円が目安だぜ。(小口悦央「絶対後悔しない!豪雨・地震に強い住まい選び」河出書房新社

 

 生活インフラの確保も重要だ。特に水と電気だ。水を1週間分備蓄するとなると最低でも1人当たり9リットル必要となる。ペットボトルでもいいがスペースがあるなら思い切って貯水タンクを設置してはどうか。お湯にできるタンクなら最高だ。

 電気は創エネ設備と蓄電システムの両方があれば鬼に金棒だ。創エネには太陽光発電システムと都市ガスを使うエネファームがある。さらに、「創蓄連携システム」には、インターネットを通じて気象警報の情報を取得すると自動で蓄電池を満タンにしてくれるものがある。地震以外の災害にも活用できるぜ。(Housing Tribune MOOK「天変地異と向き合う」創樹社)

 高気密・高断熱性能を高めて室温をキープできるようにしておくのもおススメだ。暖房エネルギーの節約につながる。戸建ての場合はシロアリ対策が必要だ。ヤツらは1階の柱と床下の土台部分の継ぎ目を集中的に侵食し、せっかく確保した耐震性を狂わせてしまう。こまめに防蟻処理をやっておこう。

 

 これらの取組みは思い立ったらすぐにやるべきだ。先送りしていると日常生活に忙殺され、いつの間にか忘れてしまう。それに、リフォームをすると減災だけでなく「快適な住まいづくり」も意識することになる。例えば、部屋の一角を耐震シェルターにするとともに、普段はテレワーク用のスペースとして使えばいい。被害を少しでも減らせる住まいづくりに向けて、即実行だぜ!

 

国の成長と衰退の秘密を『大分岐』から解く

2024年3月4日(月)

 コノミです。

 

 自民党の裏金問題は尾を引きそうです。これも国の衰退の表れなのでしょうか。お隣の中国では経済減速がみられます。習政権は焦っているでしょう。18世紀以降、それまで同レベルの生産水準を保っていたにも関わらず欧州に水を開けられたという『大分岐』の再来を恐れるからです。

 

 『大分岐』は2000年に米国の歴史学者ポメランツが唱えました。要因を民族の勤勉さの違いに求める人がいます。でも、誤りです。貧しい国の人々は富める国の人々より働いています。日本人もかつてアメリカ人宣教師から、「多くが怠け者で時間の経過に無頓着」と評価されていました。その国が置かれた経済環境で変わるものなのです。

 天然資源に恵まれているなど「地理的制約」に求める人もいます。これも誤りです。資源が豊富だから発展するとは限りません。むしろ、こうした地域は搾取の対象となり、その後の発展が妨げられています。ウクライナはまさにそうです。紛争の真っただ中にあります。(ハジュン・チャン「経済学レシピ」東洋経済

 

 では、国の経済成長・衰退の秘密は何なのでしょうか。「大分岐」論が教えてくれる鍵は4つです。一つは「法の支配」により、財産権や経済的自由が十分保証されていることです。民主主義であるかどうかは重要ではありません。

 二つ目は「国家権力の制御」が行われていることです。国の黎明期には専制的な中央集権システムも必要でしょう。でも、規模が大きくなるにつれて、財政運営を円滑に行う必要があります。後進国だったイギリスがスペインに勝ったのは財政力のおかげであり、それをもたらしたのは、議会が力を持ったことによるのです。

 三つ目は「文化・教育」です。西欧では国境や宗教の違いを越えて知識人のネットワークが生まれました。知識人が亡命も辞さない覚悟で知的文化を広げていくことで、イノベーションを生む土壌が培われていったのです。

(マーク・コヤマら「『経済成長』の起源」草思社

 最後の鍵は「人口制御」です。清王朝が欧州の後塵を拝することとなった最大の原因は、当時の人口増加という問題に向き合わず、農本主義的戦略を維持し、財政改革を進めなかったことです。(パトリック・カール・オブライエン「『大分岐論争』とは何か」ミネルヴァ書房

 

 こうしてみると、中国経済の復活の見通しは暗いです。焦る中国共産党によって、「国家権力の制限」がより排除されていくからです。

 日本はどうでしょう?最後の鍵にヒントが隠されています。すなわち、人口減少という問題に正面から向き合い、踏み込んだ構造改革を行えるかどうかにかかっています。そうやって、財政力をキープし、諸外国に後れをとらない道を進まなくてはなりません。かなり厳しいと思います。ですが、そうしないと日本に待っているのは「衰退への分岐路」です。