「もう仕事しなくていいよ」と言われたら・・・?ケインズの大予言「仕事不足社会」!

2022年6月27日(月)

  レーブだ。

 

 参議院選挙が始まったが、今一つ盛り上がりに欠けるようだ。物価は上昇の気配にあるが、完全失業率は2.5%(4月)であり、雇用情勢は安定しているからだろうか。当初、心配された新型コロナウイルス感染症による雇用への影響も最小限だった。しかし、今後、仕事が減っていったら我々はどうなるのだろうか。このような思考実験が必要だったのではないだろうか。

 テクノロジーが進むと労働時間は短縮する。生産性の高い国ほど国民の労働時間は短いものだ。1930年、ケインズは、「100年後、1日に3時間働けば十分に生きていける社会がやってくる」と予言した。日本の労働時間でみると、1990年は2031時間だったが、2020年には1598時間と短縮されている(小黒一正「2050日本再生への25のTODOリスト」+α講談社新書)。

 ケインズの予言ほどに極端に短縮されていない理由の1つは「パイ変容効果」だ。経済情勢の変化によって職を失った労働者が別の作業に従事するようになることだ。製造業からサービス業への転換がイメージしやすい。

 しかし、21世紀の「パイ変容効果」は人間が対象でなくなる。理由はAIの進化だ。従来の機械は人間の動作をまねることが前提だった。その不十分な点を人間が補っていた。つまり、「機械+人間」のコラボが機能していたのだ。しかし、AIの進化は世界を一変させた。AIは全てのパターンの中から最適解を超高速に導き出す。それは決して「知能」とは言えないが、人間が従っている法則とは全く違う別次元の法則に従う。その結果、「機械+人間」より「機械」だけのほうが信頼のおける存在となり、「人間」はお払い箱となる。世界チャンピオンを破った「アルファ碁」を開発したディープマインド社は、50種類以上の眼疾患をエラー率5.5%で診断するプログラムを作った。このプログラムを眼科専門医8人の見立てと比較したところ、診断精度の高い医師2人と同じ結果を出し、残る6人を上回る正確さを発揮した。この6人は診断業務から外され、別の業務に就くかもしれない。しかし、その先には別のAIが待っている。こうして、人はどんどん追いやられる。タスクは細分化され、分析され、定型化していく。定型タスクはAIに奪われ、非定型タスクを担う労働者は、一部の高賃金者とその他の低賃金者に二極化していく。その中間にいる者こそ、「もう仕事しなくていいよ」なのだ。(ダニエル・サスキンド「WORLD WITHOUT WORK」みすず書房

 

 2020年はこうした未来に向けた思考実験ができるはずだった。新型コロナの感染拡大はテレワーク導入のブースターとなった。テレワークを進めるためには、仕事の内容に加えて、テレワークを受け入れられるだけの周りの理解や体制が必要となる。そのため、大企業ではテレワークにより労働時間を確保できたが、小規模企業は労働を中断せざるを得なかった。適応力に差が出た。また、新入社員にはテレワークばかりだと成長実感が得られないという問題も生じた。彼らのワークエンゲージメントをどう高めていったらいいか、試行錯誤した会社もあったことだろう。ピンチはチャンスなのだ。(玄田有史ら「仕事から見た『2020年』」慶應義塾大学出版会)

 

  危機は思いのほか短かった。まん延防止重点措置が繰り返される中、テレワークを一部取り入れつつ、従来どおりのオフィス出勤とのハイブリッドが進んだ。このハイブリッドの働き方でさえ、グローバルには65%が生産性向上を感じている一方、日本単独では39%と低い傾向にある。ジョブ型とメンバーシップ型の違いの現れと言えよう。(EY Japan ピープル・アドバイザリー・サービス「HRDXの教科書」日本能率協会マネジメントセンター

 裏を返せば、日本の働き方は、一人ひとりをみると非定型タスクの割合が高く、AIに浸食されにくい「堅牢」なスタイルと言える。しかし、それは生産性の点で、日本が世界から置いてけぼりを食うことを意味する。テクノロジーがもたらす失業は21世紀の間に深刻さを増し、世界は一足先にその洗礼を受ける。1日3時間の労働で済んでしまうのだ。世界は仕事に依存しない社会の創出に向けて切り替えていくかもしれない

 例えば余暇政策だ。観光地やテーマパーク、リゾートだけでなく、日常の暮らしの中で、コミュニティの人たちと手軽に余暇を楽しむ方法を見出すかもしれない。教育も、仕事能力の育成に留まらず、多面的な意義が見出され、その役割や手法が変わるかもしれない。ベーシックインカムなど、AIが稼ぐ収益を再分配するしくみが整えられ、文字通り、遊んで暮らせるようになるのかもしれない。そんな世界を指をくわえて見ていることにならないよう、働き方改革」の芽を真剣かつ丁寧に育てていくことが大事だ

 

「建築」から予想する未来の生活

2022年6月20日(金)

 トランだ。

 

 ウクライナは依然、ひどい状況だ。終結の見通しは立たないが、仮にこの紛争が終わったとして、国土が復興するまでどのくらいの年月を要するのだろうか。ついそんなことを想像してしまう。

 そして、もし、日本が外国から攻め込まれるような事態になったらどうか。もっとひどいことになるぜ。なぜなら、日本人の危機意識は西洋と比べて弱い。これは、「建築」を見れば分かる。「建築」は歴史を語り、そこで生活する人間の考えを教えてくれれる。「建築」の視点を持つことで、物事の本質に迫れるぜ

 

 新型コロナ感染症の対応では西欧の諸都市で厳しいロックダウンが敷かれた。「City」という言葉はラテン語の「キビタス」から派生しているが、その意味は、「壁の内側に人が密集している場所」だ。都市ってのは「壁」で守られている。中国では「國」や「邑」がこれに当たる。そして、都市では住民に厳密なルールが課せられる。そうしないと、たちどころに敵に攻め込まれて滅ぼされるからだ。したがって、西欧では「公」という概念が確立しやすい。

 ボードゲームの名作「カルカソンヌ」は実在した中世フランスの城塞都市だ。フランク王国カール大帝が5年にわたって攻撃したが、結局、落とすことができなかった。住民の団結力、そして、マネジメントがすごかったんだ。都市封鎖をするには、秩序維持のための様々な配慮が必要になってくる。物流も確保しなくちゃならない。精神的不安にも対処しなくてはならない。こんな風に、西欧ではロックダウンという非常時モードへの切替えが当たり前のようにできる

カルカソンヌ本村凌二監修「建築でつかむ世界史図鑑」二見書房)

 一方で、日本人は変わることを自然に受け止める精神文化を持つ。これには、四季の変化をはじめとする自然環境が影響している。普段はあんまり感じていないかもしれないが、日本の自然環境は意外に厳しいんだぜ。地震や台風はしょっちゅうあるし、加えて、住める場所の地盤はゆるい。河川は急こう配だから雨が降れば一気に川から海へ流れてしまう。豪雪地帯も多い。こういう塩梅だから、危機が起こってから考えればいいやという思考回路が形成される。そして、周りは海だ。大陸との距離のおかげで心配する「敵」は外にいない。むしろ、内にあるぜ。住める場所は小さく分散している平野の、極めて小さな集落になっちまう。顔見知り仲間での緊張を高めないことが大事だ。

 新型コロナ感染症対応では、検疫対策を厳しくし、国内ではゆるやかな「自粛」が採用された。これで十分なんだぜ。だから、日本では「共」という概念が成立しやすい。長屋で住むか、そうでなければ一軒家で大家族で住むかだ。(大石久和「国土が日本人の謎を解く」産経セレクト)

 アメリカはまた一味違う。象徴はホワイトハウスだ。建築様式はパッラ―ディオ様式と呼ばれるもので、古代ギリシャ・ローマの神殿建築がベースだ。古代ギリシャ・ローマと言えば、人間や市民社会を中心とする価値観を持つ。つまり、アメリカは個人の「権利」を重んじるってことを「建物」が高らかに宣伝しているわけだ。(祝田秀全「建築から世界史を読む方法」KAWADE夢新書)

 

 じゃあ、これからの建築はどのような方向に進むのだろうか。鍵は「SDGs」だ。エコで、かつ、気候変動に備えた建築が志向されるだろう東京オリンピックパラリンピック隈研吾が設計した新国立競技場が分かりやすい例だぜ。競技場では木の庇(ひさし)が使用されている。木材の使用はぬくもりを感じるとともに、地球温暖化の抑止効果もある。樹木は一定程度まで成長すると二酸化炭素吸収が極端に低下してしまう。だから、その段階で伐採して有効活用しつつ、新たに植樹していくことがエコサイクルを生み出すことにつながるんだ。

 また、日本の住宅の平均寿命は25年だ。これは、高度経済成長期に根付いたスクラップアンドビルドに由来している。一方で米国は45年、英国は75年といずれも長い。サステナブル」という観点から、これからは長寿住宅が志向されるようになるだろう。

(スタジオワーク「眠れなくなるほど面白い建築の話」日本文芸社

 日本は高齢化が進み、人口が減少傾向にある。さしもの東京都も減少し始めた。だから、いつまでもスクラップアンドビルドって訳にはいかないぜ。となると、防犯や防災に不安がある一軒家でもなく、移動が不便で停電に弱い高層マンションでもなく、これらの中間に当たる低層マンション風の建築が増えていくに違いない。そして、そこが新しい「ムラ」になる。日本人は何だかんだいって寂しがり屋だから、周囲に人がいるってことが大事だ。こうした基本単位を元にした生活が想定される。感染症も基本単位で対応するのだろう。その時どんなスタイルの建築様式になっているか、今から楽しみだぜ。

 

「再生」のヒントは、中国経済戦略にあり!

2022年6月13日(月)

 コノミです。

 

 ロシアのウクライナ侵攻の陰で、中国が息を潜めています。この戦争が終わったら、世界のパワーバランスが変わるでしょう。今やアメリカを追い越さんばかりに成長している中国の経済力が一層存在感を放ち、国際政治への影響力も増すでしょう。反対に日本の国力は削がれていくでしょう。でも、「中国脅威論」だけ唱えていてもダメです。これまで欧米諸国や日本の後塵を拝しながら必死に経済成長を遂げてきた中国の姿勢を尊重しなくてはなりません。今は、日本が中国に学ぶべき時ではないでしょうか。

 

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 中国の近代史を簡単に振り返ると、毛沢東の行き過ぎたイデオロギー路線を鄧小平が修正し、市場経済が導入されていきました。まさに現実路線です。そして、胡錦涛時代にWTO加盟を果たし、「世界の工場」として躍り出ます。

 次いで習近平国家主席は、「虎もハエも」区別せず摘発するとして、腐敗の排除を行いました。腐敗は成長の足を引っ張るからです。その上で、経済対策に着手しました。一つは「サプライサイド改革」です。これは、政府の介入を大幅に増やすというものです。具体的には、工場や炭鉱を閉鎖したり、同一産業内の企業を統合・閉鎖したりして過剰生産に歯止めをかけたのです。また、債務危機のリスク最小化に努めました。最大の債務を抱えている部門にターゲットを絞って経済を膨張させ、借金を返しやすくしました。国内各地の銀行については、中央銀行である人民銀行が評価を行い、ランク別に事業活動に制限をかけました。インフラ整備については、官民でタッグを組ませ、初期費用を建設業者に負担させることで、地方政府の借金を止めました。

 これらは、強権的な体制であるがゆえに達成できたのかもしれませんが、世界の歴史を熱心に研究し、日本については成功もミスも学んできた中国政府の努力の賜物なのです。(トーマス・オーリック「CHINA:中国の経済の謎」ダイヤモンド社

 

 2030年代には中国経済の世界制覇が実現し、アメリカ経済が凋落すると予測されています。特に、中国が科学技術と世界のサプライ・チェーンの確保に力を入れている点は注目すべきです。

 中国の第14次5か年計画(2021~2025)では、次世代人工知能量子コンピュータ集積回路などを「フロンティア領域」に位置付けました。研究面では、分野によっては日本は中国に抜かれています。中国の自然科学論文数は世界一位、国際特許出願件数も世界一位です。また、政府系の中国科学院をはじめとする各省庁の研究機関を中心に、民間企業を抱き込んだ形で科学技術振興の体制を整えています。思えば、アメリカでも民間企業のイノベーション国防総省などが下支えしています。民間とタッグを組む国家の存在は研究面において極めて重要なのです。

 サプライ・チェーンを丸ごと国産化する政策も野心的と言えるでしょう。製造業の大切さを痛感したのです。半導体争奪戦ではアメリカから冷や水を浴びせられました。このため、急成長を果たし、世界市場の約25%を確保するに至りました。そして、中国は世界最大の輸出額を誇り、輸出先も広く分散しています。2022年からは、海外メーカーが中国で自動車製造を単独でできるよう規制を撤廃しました。他の分野でも同じことをするでしょう。「世界の工場」のポジションを譲るつもりはないのです。(高橋五郎「中国が世界を牛耳る100の分野」光文社新書

 

 そんな中国にも大きな懸念点があります。一つは借金が膨らんだことです。中央政府、地方政府、政策銀行を合わせ、2016年の中国の公的債務はGDP比で130%となっています。問題はその増額のスピードが世界に類を見ないことです。金融危機の可能性はついて回ります。仮に危機が勃発すれば、いかに中国政府と言えど簡単には止められないでしょう。

 社会保障負担の増大も課題です。中国の所得は新興国レベルです。中国共産党による統治の正統性は、「生活が良くなっている」という国民の感覚でもっています。貧富の格差が放置され国民の生活が向上しないとなると内部崩壊するおそれがあります。(津上俊哉「米中対立の先に待つもの」日本経済新聞出版)

 

 日本はこうした中国の失敗の可能性にも目を向けつつ、中国のこれまでの取組を学ばなくてはなりません。一つは対日投資を拡大させることです。法人税を下げるなど思い切った優遇措置により、国内に製造拠点を増設しなくてはなりません。サプライ・チェーンの確保にもつながります。もう一つは科学技術への投資の拡大です。日本に競争力があり、存在感を示すことができる分野に集中投下を行った後、いずれ他の分野にも応用できるよう広げるという中長期戦略が必要です。医療機器、ゲノム編集、次世代半導体などが挙げられます。今度は日本が虎視眈々と基礎体力をつけておく番なのです。

 

群雄割拠の医療DX、なるか?全国統一!

2022年6月6日(月)

 ハルです。

 

 医療DX(デジタルトランスフォーメーション)が熱いです。新型コロナウイルス感染症はオンライン診療を拡張しました。政府の「経済財背う運営と改革の基本方針2022」(骨太の方針)にも記載される見込みです。将来を見越して、アナログからデジタルにシステムを切り替えた医療機関も増えたのではないでしょうか。

 これから間違いなく医療DXが進みます。しかし、旧態然とした医療機関も多い中、サービスを売り込みたい業者は百花繚乱状態です。医療DXの統一が必要です。(野末睦ら「病院DX」秀和システム

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関西テレビ放送『ドクターホワイト』

 医療DXには、患者を支えるものと医師など医療機関を支えるものがあります。後者は医療技術に関わるものと環境整備に関わるものに分けられます。

 患者を支えるものの代表は、患者が自分の健康状態や治療結果を把握するサービス、医師やデバイスを活用した健康相談などによって、日々の健康増進や受療行動に役立ててもらうサービスです。株式会社Xenomaはセンサー衣服(スマートアパレル)を開発しています。着るだけで健康状態や歩行状態をチェックします。寝ている間の心拍・呼吸をモニタリングしてエアコンの自動調整も行います。MRT株式会社の「Door. into健康医療相談」は新型コロナの自宅療養者の支援やワクチン接種後の体調変化の相談を行います。(加藤浩晃ら「Digital Health Trend 2022」MCメディカ出版

 医師など医療機関を支えるものの代表は、医師の診療支援サービス、医師間の情報連携や病院の環境整備などによって、治療の質を高めながら効率的・効果的に行うことができるサービスです。株式会社プレシジョンはAI問診票を開発し、医師のカルテ作成時間の短縮に貢献しています。株式会社T-ICUは、集中治療の専門医が少ない中、救急患者の検査結果を、離れたところにいる専門医に相談できる「遠隔ICU」サービスを提供しています。株式会社アルムの「Join」は、医師間の情報連携やコンサルテーションのプラットフォームを設置しています。ブラジルでは、同サービスにある医療画像等の共有によって脳卒中の改善に効果があると立証されています(高尾洋之「デジタル医療」日経BP)。Dr.JOY株式会社では医師がビーコン発信機を携帯し、院内のどこでどう働いているかを自動で把握することによって、医師の働き方改革につなげています。

 

 例を挙げるときりがありませんが、医療のあらゆる場面や工程において、患者や医療機関を支える仕組みがDXによって実現しつつあります。しかし、課題もあります。

 一つは、DXに対する医療機関側の理解です。電子カルテ一つとってもみても、2017年時点の普及率は、病院、診療所ともに50%に達していません。余計なコストと捉えられているのです。また、日々の診療が忙しすぎて、医療従事者がデジタル技術の変化についていけてない点も挙げられます。さらに、医療機関の持つ情報は、患者の個人情報の固まりです。システムエラーやハッキングなどによる情報漏洩のリスクを恐れ、DXに消極的になってしまうのかもしれません。

 しかし、患者の満足度を上げるにはDXが不可欠です。医療も他のサービスと同じようにできる限り効率的に行われるべきでしょうし、健康に対する関心が高まる中、医療機関で何が行われているのか、自分の状態はどの辺りにあるのか、患者にとってもっと「見える化」して欲しいという気持ちもあるでしょう。また、こうしたニーズに応えていくためには、限られたリソースの中で、AIなどシステムでできることはシステムに対応してもらい、医療従事者はもっと治療行為に専念できるよう、「攻め」の環境づくりが求められます。また、新型コロナのような感染症だけでなく、地震などの自然災害発生時にも非接触でコミュニケーションはできるようレジリエンスを高めておくことも重要です。院内の新たな人材として、医療IT専任担当者(医療情報技師)の設置を推進してみてはどうでしょう。

 

 また、患者側で複数の医療機関にかかる場合、情報が統一されている必要があります。地域や医療機関、サービスごとにシステムが異なっていては、それだけで余計なコストです。サービス内容は多様でも、互換性が担保されるよう、基幹部分について「統一」することが必要です。そのためには、氏名、生年月日といった基本情報を、マイナンバーを基に国がクラウド上で管理し、患者本人の同意の下、そこから紐づけした形で様々なサービスをその都度提供できるようにしておくのです。あくまでも患者個人を中心に捉え、これを取り巻くネットワークを効率的に使える仕組みを構築することで、無駄なコストを省くことができ、さらなるDXの進化を促すことが期待できるのです。

 

実は身近な銀行システム・リスク。やっておきたいこと

2022年5月30日(月)

 フィナよ~。

 

 マイナンバーカードの普及がいまいちね。このため、厚生労働省が現行の保険証を無くす方向性を示したわ。反対意見もあって先行きは不透明だけれど、いずれにしても注意したいのはシステム・リスクね。1月には「総合行政ネットワーク」(LGWAN)の障害で、コンビニで住民票など証明書を交付するサービスが利用できなくなったし、2月にはJALの搭乗手続きシステムの障害で、国内線予約などができなくなった。いずれも影響は最小限だったみたいだけど、これが、決済システムを抱える金融サービスだと影響は甚大ね。こうした事態はいつでも起こり得る、と覚悟しておかなくちゃだめよね。

 

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 金融機関の決済リスクには、経営悪化に伴う信用リスクや連鎖的に支払いができなくなるシステミック・リスクや、オペレーショナルリスクとして、事務ミスやシステム障害、犯罪や災害・テロなどがあるわ。(宿輪純一「決済インフラ入門」東洋経済

 システム障害として有名なのが、みずほ銀行のケースねみずほ銀行はこれまでも、経営統合時や東日本大震災義援金振込依頼殺到の際、大規模なシステム障害を起こしてきたわ。このため、1999年の経営統合から20年後、思い切ってシステムを統合・新開発したの。そんな中、2021年2月から2022年2月まで大小合わせて合計11回ものシステム障害を起こしたの。

 小さいものだと、法人向けインターネットバンキングサービスにつながりにくくなったことがあったけど、より厳しかったのは、ATMが通帳やキャッシュカードを取り込んでしまって客が手も足も出せなかったり、外国為替システムで送金遅延が発生したり、全店舗で営業店端末が使用不能になったりと、みんなの生活や経済活動に支障が生じたことね。

 原因は、複雑に構成されているシステムや不十分な事前テストが挙げられるけど、問題はその後ね。トラブルが発生しても危機管理部門に情報が共有されなかったなど対応のまずさよ。そして、より本質的には、積極的に課題を指摘して責任問題となるリスクをとるよりも、自らの持ち場の仕事だけを無難にこなす方が組織として合理的になっていたことよ

 日本の金融機関では2020年の1年間だけで約1500件ものシステム障害が発生している。ある程度の障害はどこでも発生し得るものなの。重要なのは、障害のインパクトを極小化するダメージコントロールに気を配り、顧客に障害の影響が出ないよう努力を重ね、同じ過ちを繰り返さないこと。そうじゃないと信頼失墜よ。米国の大手テクノロジー企業は、「失敗からの学び」を大事にしてるわ。そして、アイデアをできる限り早く形にして顧客に試してもらい、必要ならすぐに修正するというクセをつけることよ。(日経コンピュータ「ポストモーテム」日経BP

 

 もう一つ考えなくてはならないのは犯罪やテロへの防御策ね。サイバー攻撃が年々増加しているわ。さらに、情報漏洩も気をつけなくちゃね。2020年上半期だけでも、世界では360億件のデータ盗難被害が報告されているわ。日本では2020年に個人情報が漏洩した上場企業とその子会社のうち、漏洩数が最も多かったのがソフトバンクグループで2位が楽天よ。2020年12月にはPayPayが不正アクセスを受けて、加盟店の情報約2000万件が流出した可能性があるわ。スマホ決済インフラがどんどん進んでいるけれど、念には念を入れたセキュリティ検証が必要よ。

 国レベルの対応も要注意よ。今、デジタル庁が取り組んでいる政府共通プラットフォームはアマゾン・ウェブ・サービス(AWS)が請け負うらしいけれど、安全保障に関わる政府システムを他国の民間企業に任せるケースは世界でも珍しいわ。アマゾンはCIA、NSAなど米国の諜報機関との関係が深いらしいわ。中国の国家情報法などもあるし、DXを進める日本が米中政府やGAFA、BATHに包囲されていることを自覚すべきね。あと、自然災害も視野に入れて、万が一のためのBCP(事業継続計画)も大事ね。(堤未果「デジタル・ファシズムNHK出版新書)

 

 最後に私たちの心構えね。システム障害はあって欲しくないけれど、「明日は我が身かも」と思うことよ。便利なシステムを使う以上、最低限の投資は必要よ。具体的には、ウイルス対策をとっておくこと、データのバックアップをとっておくことね。また、現金もある程度は手元に置くこと。そして、冷静になること。障害は人災によるものが多いのは確かだけれど、完全に防ぐことは難しいわ。たとえ自分が不利益を被ったとしても、窓口で感情的にクレームをするのではなく、起きた事実を丁寧に伝えることが問題解決に役立つわ。そのためには、ある程度システム・リテラシーを学んでおくことね。システムの利便性を高めるため、全員が努力していくことが大切よ。

 

孤独なあなたに・・・「新ソーシャルイノベーション」

2022年5月23日(月)

 ソシエッタです。

 

 5月11日、ダチョウ倶楽部上島竜兵さんが亡くなられました。ショックでした。家族もいて仲間もいて・・・でも、哀しいものを引きずっていたのでしょうか。

 新型コロナウイルス感染症は日常生活に「距離」を求めました。マスク着用のせいで表情が読み取りにくくなり、コミュニケーションが難しくなりました。普段はほどよい距離感でも、落ち込むようなことがあった時、途端に「孤独」になってしまいます。「環境」と呼ばれる悪徳商法の餌食にもなることでしょう。

 今、「ソーシャルイノベーション」が必要です。「ソーシャルイノベーション」とは、NPOなど様々な関係者が共通の課題について驚くような解決策を見出すことです。

 

 日本社会は、経済成長を追求するあまり、人々の「共感の心」を置き去りにしてきました。同じ国の中に「人口が過密な地域」と「人口が過疎な地域」を作ることで利益が生まれますが、過密地域では人は「使い捨て」にされます。そして、過疎地域から過密地域への人口移動により、社会ネットワークが失われます。みんな自分が何者なのか、どのような人生設計を思い描けばいいのか分からなくなっています。頼りになるのは競争で決まる「ランキング」です。こうして、人々は絶えず他人との優劣を意識するようになり、次第に「孤独」になっていくのです。

 でも、これからは通用しません。人口が減少していきます。一人ひとりを大事にしていくことを考えなくてはなりません。「競争の心」ではなく「共感の心」を養うのです。(内田樹/岩田健太郎「リスクを生きる」朝日新書

 

 「ソーシャルイノベーション」の出番です。課題に対し各々が孤立して立ち向かっても解決には至りません。人と人とのつながりの中で、異なる能力、異なる考え方を出し合って解決方法をシェアしていくのです。具体的には、市民、NPO、企業、大学、行政などが一緒になり、仕組みやサービス、商品をつくっていきます

 例えば、アパレルメーカーのアーバンリサーチ(UR)は、京都工芸繊維大学大学院の研究を基に、廃棄繊維をリサイクルする技術を用い、就労支援を行うNPO法人の協力を得て障害者に作業をしてもらいながら、多目的バッグを商品化しました。また、妊産婦が安心して利用できる滋賀県の「ゆりかごタクシー」は、育児に悩むママのサークル活動から始まり、行政、医師会、看護協会の助産師、消防、警察、タクシー協会を巻き込んで実現しました。(佐々木利廣ら「日本のコレクティブ・インパクト」中央経済社

 

 もちろん、参加者の脱落もあることでしょう。時間が無い、目的が合わない等の理由が挙げられます。そこで提案したいのが、デジタル技術を活用しての「新ソーシャルイノベーション」です。現状を逆手にとるのです。デジタルであれば、より多様なネットワークを作りやすいですし、時間的な融通も利きます。地域も飛び越えます。それにデジタルの世界では、誰もが自分の視点で貢献できます。未成年だって参加できます。自分に合った居場所も見つかります。まさに、誰一人取り残さない社会を実現しやすくなるのです。情報もオープンにできます。参加者の「知」をぶつけ合うことで、より便利なサービスを作り上げることができます。(オードリー・タン「まだ誰も見たことのない『未来』の話をしよう」)

 課題もあります。ネットワークが大きくなると、緊張や摩擦、対立も生まれやすくなります。このため、ネットワークの中で、多様な人たちをまとめていくリーダーシップをとれる人材が必要となります。活動を継続していくための資金の確保も重要です。

 人材については青年海外協力隊員など国際協力を担ってきた人材の活用が挙げられます。今の日本は仕組みが整い過ぎていて、大胆に問題解決に挑む余地が少なくなっています。一つの価値観に縛られず、体ごとぶつかっていける「グローカルな人材」がうってつけです。資金面については信用金庫が期待されます。銀行のように株主に気兼ねすることもなく、多様なステイクホルダーとの関係を包含しながら、みんなの幸福の最大化を目指します。(野中郁次郎「共感が未来をつくる」千倉書房)

 企業と連携して市場のパワーを活かすことも重要です。マクドナルドのビッグマックは、地域のフランチャイズ拠点が発明したものです。会社全体の共通項を持ちながらも地域に適応していく人材の育成に長けています。また、大手企業であれば政府や金融機関からの資金拠出に顔が効くことでしょう。(「これからの『社会の変え方』を、探しにいこう。」SSIR Japan)

 このように「新ソーシャルイノベーション」による活動を通じて、他者との関係性の中で、自分が何者かを理解することができます。その瞬間、「孤独」ではなくなります。等身大の自分で生きていくことができるのです。

 

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地球温暖化を乗り越える2つの「科学」

2022年5月16日(月)

 エンヴィです。

 

 「脱マスク」論が熱を帯びてきました。新型コロナウイルスの感染防止は大事ですが、熱中症にも気をつけなくてはならないからです。

 かたや、地球温暖化防止はビッグ・チャレンジです。日本は、二酸化炭素などの温室効果ガスを、2030年に2013年と比べて46%減とする高い目標を掲げ、グリーン政策を推し進めています。温室効果ガス排出量(2018)でいうと日本は、中国、米国、EUなどに次いで、第6位(2.7%)となっています。大きな責任があるのです。でも、排出量削減には莫大なコストが伴います。実現できるのでしょうか?

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 再生可能エネルギーへの期待は大きいですが、投資や補助金に毎年約110兆円が必要とされています。環境先進国ドイツも苦しんでいます。FIT(固定価格買取制度)によって、再生可能エネルギーが総発電量の4割に至りました。でも、産業競争力を維持しようと負担を家庭用電気料金に求めたところ、6人に1人が家計の10%以上をエネルギー支出が占める「エネルギー貧困」の状態に陥ったのです。ドイツは日本より寒いので大変です。

 日本については、再生可能エネルギーを進めていく上で地理的制約があります太陽光発電に適した平地面積が少ないのです。このため、森林を伐採して山の斜面にもメガソーラーを設置してきました。でも、「景観を損ねる」「土石流災害の原因になる」と別の問題が生じています。陸上風力や地熱発電はどうかというと、適地は国立公園内に多く存在し、厳しい開発規制が敷かれています。国立公園は環境省が所管しています。温暖化防止に使うべきか自然環境を守るべきか、悩ましいことでしょう。洋上風力については、日本は海に囲まれていて期待大ですが、偏西風が吹くヨーロッパほどうまくいきません。夏は風が弱まるので年間設備利用率が35%程度に留まるのです。(望月衣塑子ら「日本のタブー3.0」宝島社新書)

 温暖化対策の投資はどうでしょう。産業構造を変革して経済成長につなげるという発想の転換が求められています。でも、日本が海外投資を呼び込むには、中国を上回る魅力が必要です。中国は太陽光発電導入量も風力発電導入量も世界最大を誇るほか、電気自動車のリチウムイオンや風力発電のモーターに必要なレアアースの多くを生産するなど戦略鉱物を抑えています。日本での投資効果は限定的なものになるでしょう。(有馬純「亡国の環境原理主義」エネルギーフォーラム)

 

 あちこちで苦戦を強いられていますが、そもそも地球温暖化を乗り越える方法はあるのでしょうか?ヒントは2つの「科学」にあります。

 まず、地球温暖化についてですが、実は、人間の活動による影響は大きくありません化石燃料や核物質から得られるエネルギーが暖房や移動、発電に使われた後はほとんどが、最終的に地球の自然熱放射と共に宇宙に放出されますが、気候システムを流れるエネルギーのうち人間の影響は1%に過ぎません。

 では、二酸化炭素濃度はどうでしょう?過去150年間の上昇は人間の活動が原因と言っていいでしょう。でも、長い地球史の視点からみると、二酸化炭素濃度は低レベルにあります。むしろ、二酸化炭素濃度が今の5~10倍だった時代、今とは違う動植物が大いに繁栄していました。課題は、現代の生命体が低レベルの二酸化炭素に適応して進化したため、この100年間の急増が多大な影響を及ぼす可能性があるということです。そして、過剰な二酸化炭素が大気から消え去るには何百年もかかるので、温室効果ガス排出を抑制していくという方向性は間違っていないのです。

 その他、地球温暖化により気候が変動し、ハリケーンや降水量が増加しているという報道がなされたりします。でも、ハリケーン活動に何らかの変化が起きている証拠や世界規模で降水量が増加しているという証拠はありません。しばしば海面水位の上昇も採り上げられますが、過去50万年の間、水位が上がったり下がったりと同じパターンが繰り返されているだけです。

 地球温暖化」と聞いて慌てるのではなく、冷静に分析することが大切です。その武器となるのが「科学」です。こうしてみると、温室効果ガス排出量の高い目標でさえ一つの目安と位置付け、コストや経済政策とのバランスにもう少し目を向けることができます。(スティーブン E.クーニン「気候変動の真実」日経BP)

 地球温暖化を乗り越えるもう一つの「科学」は、科学技術です。日本のグリーン成長戦略に盛り込まれたグリーンイノベーション基金は、10年間で2兆円と限られています。日本の強みは地熱と洋上風力です。自然環境とのバランスを図りながら地理的制約を突破する技術開発に対し、集中的に投資していくことが求められます。かねてよりエネルギー資源の確保に苦しんできた日本の戦略力が試されています