クリーンミートとくれば、次はクリーンエッグでしょ!

2021年4月26日(月)

 フーディンだよ。

 

 昨日から4都府県で緊急事態宣言期間が始まったんだな~。外食を避けて自炊が増えると思うけど、食卓に欠かせないのが卵。いろんな料理に使えるし、メインとしてもスクラブルエッグやオムレツと大活躍。スイーツとなると牛乳と並んで主役級だもんね~。

 水を差して悪いけど、そこには大きな「犠牲」があるんだな~。ここからの話は、知らずにいることもできるよ。でも、ヴィーガン料理が増えてきた、大豆ミートも出回るようになった・・・そろそろ、卵についても考えるべき時にきてるんじゃないかな~。

 

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 日本人の1人当たり卵消費量は世界でトップクラスなんだ。その6割は食卓用で、残る4割は外食業務用や加工用。卵としてだけでなく、マヨネーズ、製菓・製パンや医薬品など幅広く使われているんだな~。そういえば、昔は風邪を引いたら「卵酒」がいいってあったよね~。

 こんな風に用途が広い上、栄養面でも優れているんだ。人間が体内で合成することができない必須アミノ酸を9種類も摂れるということで、タンパク質の品質評価指標である「プロテイン・スコア」はなんと100点満点。すごいね!

 さらに、びっくりなのが価格。今年に入ってちょっと値上がり気味だけど、この30年以上ほとんど変わらず「価格の優等生」と言われているよ。エサ代や人件費が上がっているにもかかわらずにだよ。(高木伸一「たまご大事典」工学社

 

【主要国の国民一人当たり鶏卵消費量(2017)】(出典;国際鶏卵協議会)

メキシコ363個 日本333 中国307 アメリカ276 オーストラリア244 カナダ242

ドイツ230 イタリア215 

 

 いいとこづくめって感じだけど、ここからが問題なんだな~。

 まず、「ケージ飼い」。羽を広げることもできないくらい狭い檻の中に鶏を入れて、効率よくエサやりと採卵ができる仕掛けとなっているんだ。鶏にとってはストレスが大きくて、たまったもんじゃないだろうね~。

 「人間じゃあるまいし、ストレスなんてないよ」と言う人がいるかもね。鶏じゃないけど、牛の場合、名前を付けられたほうが名前の無い牛よりも、3.5%多く牛乳が採れるんだって。これってイグノーベル賞を受賞した立派な研究成果だよ。動物にも「感情」があるんだな~。(五十嵐杏南「ヘンな科学」総合法令出版) 

 もともと鶏は年に10~20個しか卵を生まなかったんだけど、品種改良によってほぼ毎日産むようにさせられたんだ。そして、卵の量と質を守るため、産卵期間は1年半だけとされ、その後は処分されちゃう。短い一生だよ。オスはもっと悲惨でヒヨコの段階で処分される。肉は肥料やペットフードになるんだって。(週刊現代 2021年2月13日発行) 

 あと、鳥インフルエンザなど感染症の脅威も忘れちゃいけないよ。たとえケージ飼いから放し飼いにしたとしても、水鳥から感染しちゃうんだよね。2020年は全国で過去最多の340万羽が殺処分されたらしいよ。ちょうど新型コロナウイルスが流行ったように、おいらたちと家畜とで生活環境が近くにあるのも課題だね。彼らを宿主とする感染症がヒトーヒト感染へと発展するリスクをできるだけ避けておきたいよね。

 

 工夫したいとこだね~。そこで、「代替卵」はどう?

 今、アメリカでは「ジャストエッグ」という商品が売られているよ。原料は緑豆で、形状は液状やシート状。これで調理すると見た目は卵を使ったものとそっくり。マーケットに占める割合は今は小さいけれど、栄養面で卵に劣らないレベルにあるのであれば、将来的には飛躍すると思うよ。我が国としても推進したらどう?

 同時に、養鶏場を経営する人たちへの配慮も必要なんだな~。さっき「価格の優等生」って言ったけどそこはカラクリがあって、「鶏卵価格差補填事業」という国の補助金が入っているんだな~。これは文字どおり、取引価格が下がった場合に基準価格との差を補填するものなんだ。こうやって税金が既に使われているんなら、養鶏場の規模縮小や経営転換を対象とした補助金を出してもいいんじゃない。もちろん、一気に進めるのではなく、代替卵の浸透状況を見ながら徐々に調整していったらいいんだな~。

 

 いろいろ言ったけど、最後はみんなの覚悟が大切だよ。おいらたちの食生活は大きな「犠牲」の上に成り立っているんだ。そして、昔と違って今は「食べるに困る」という状況じゃないよね。

 しかも、日本には採卵鶏が1億4000万羽もいる。人口より多いんだ。だから、廃棄されている卵もきっと多いと思うよ。フード・セキュリティの面からも問題だね。卵に頼りすぎない食生活を送る覚悟を持つこと、そして、代替卵がスーパーに並んだら値段がちょっと高くても積極的に使っていくという姿勢が必要なんだな~。

 その場合のメリットって?ん~、殻を割る手間が省けていいんじゃない!?

 

渋沢翁も賛同?よく学び、よく学んで「人」づくり!

2021年4月19日(月)

 エディカです。

 

 新型コロナウイルス感染症が国内に入って2回目の新学期ね。気持ちが落ち着かない学生さんも多いと思うけれど、こういう時にこそ自分自身を見失わないで。むしろ、チャンスと捉えるべき。困難に遭いながら人としての「幅」を広げていくことでぐんと成長できるものよ。「若い時の苦労は買ってでもせよ」ね。 

 

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 現代は「正しい答え」がはっきりしない世界。でも、これまでの日本の教育は「忖度」の技能であって、過去に経験のない事態への対処能力じゃない。だから、模範解答が存在しない課題は先送りしてしまいがち。今回の新型コロナウイルス感染症対策だって後で振り返ると「こうすればよかった」って思うことになるのかも。(上岡直見「新型コロナ禍の交通」緑風出版

 だからこそ頼れるのは自分・・・その「幅」よ。問題解決能力が高い人は多様な領域を自分のものにしているわ。それこそ関係なさそうな知識や概念を用いて「正しい答え」を導き出すの。

 かのナポレオンは戦争中の食料確保のため食品保存研究について懸賞を出したの。科学者たちが失敗を続ける中、成功したのはニコラ・アペールというパリの美食家兼菓子職人。アペールは、菓子、ワイン、ビールの製造からレストランのシェフまでそれこそ何でもこなしていたの。そして、こうした経験を元に、シャンパンボトルに食品を入れて、栓をして沸騰した湯の中に入れておくというシンプルな方法で食品保存に成功したの。今でいう「瓶詰め」ね。もっともこの技術は敵であるイギリス軍にも渡ってナポレオンは負けることになるのだけれど・・・。

(デイビッド・エプスタイン「RANGE」日経BP

 

 こうした思考習慣はすぐに身に付けられるものではないわ。様々な分野で経験を積むことによって培われるの。まず学校でしっかり基礎教育を学んだ上で、大学活動や社会の中で困難に立ち向かっていくことが大事よ。

 よく、「学校の勉強は社会で役に立たない」って言われるけれど、とんでもない誤解ね。確かに学校で教わるのは、先生も教えやすい「正しい答え」のある問題ばかりだから、そういう経験を積み重ねていると、世の中の問題には全て「正しい答え」があると錯覚してしまうわね。だからと言って、学校の勉強を否定する必要はないわ。学校の勉強は社会で生きていくための基礎・・・「答え」のない問題を考えるのにも役立つものよ。大事なのは、基礎をベースにして、自ら「学ぶ」ことよ。

 

 ここで役立つのが「教養」ね。「教養」はこれまで人間が考えてきたことの全て。だから、学校ではとうてい身に付けられないボリュームよ。実社会で生きていく中で、自らが取捨選択しながら獲得していかなくてはならないの。 

 これまで、「教養」は社会のリーダーに必要な知識とされてきたわ。でも、今の世の中は複雑で不確実さが増している・・・さらに、人口も減っていく。そうなると、一人ひとりが賢くならなければ太刀打ちできないわ。そして、「教養」は人と人との関係の中で相乗効果を生み出し、社会全体が賢くなっていく。「フリン効果」といって、世代が下るにつれてIQが高くなる現象が見られるけど、これもみんなが、「教養」を身に付けて賢くなったおかげかしら。

橋爪大三郎「人間にとって教養とはなにか」SB新書)

 

 大事なのは焦らないこと。最初に言ったけどスムーズな人生が良いわけではないの。大学で早めに専門を絞り込んだ人は卒業直後は収入が高いけれども、ゆっくり専門を決めた人は、より自分のスキルや性質に合った仕事を見つけられるから、やがて遅れを取り戻すの。研究分野でも、別々の知識を結び付けた研究は発表時は見向きされなくても長期的に大ヒットになる可能性が高いわ。

 「教養」を身に付けるためには読書や体験が有効よ。そして、要注意はスマホ。あらゆる知識やツールが詰まった便利な装置ではあるけれども、いつの間にか私たちの脳が操られてしまうわ。スマホに巧妙に組み込まれた仕掛けは、私たちの脳の報酬系を刺激することが証明されているの。おかげで、無意識なんだけれども常にその存在が気になっているし、いざとなれば検索して調べればいいってことで記憶力も低下する・・・必然的に脳の力が落ちるわね。(アンデシュ・ハンセン「スマホ脳」新潮新書

 

 スマホを脇に置いて、本を読んだり、様々な体験をしてみて。何でもいいわ・・・いくつかの分野にまたがることがポイントよ。そして、実社会では、寄り道・回り道、試行錯誤、実験があっていいという考え方に立つこと。つまり、「よく(学校で)学び、よく(社会で)学べ」ね!こうした姿勢を誰もが当たり前とできる環境が大切よ。

 「実践に結びつけるための学びは一時やれば済むというものではない。生涯学んではじめて満足できるレベルとなる」(渋沢栄一「現代語訳 論語と算盤」ちくま新書

 

ロボット(RPA)と歩む!未来のワークプレイス

2021年4月12日(月)

 レーブだ。

 

 職場のRPA(Robotic Process Automation)化が進んでいる。RPAとはソフトウェアによる自動化(ロボット)だ。

  「RPA国内利用動向調査2020」(株式会社MM総研)によれば、大手企業では51%が、中堅・中小企業でも25%が導入済みだ。人口減少に伴う現場の人手不足を補いつつ「働き方改革」を進めなければならないという事情がある。また、日本は諸外国と比べて労働者1人当たりの生産性が低い。テクノロジーでカバーしなければならないという切実な理由もある。(田牧大祐ら「中小企業経営者のためのRPA入門」幻冬舎

 

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『ロボ・コーディ』

 ところで、AI(Artificial Intelligence)との違いって何?という疑問もあろう。AIは「判断を自動化する」ものだ。といっても現状では確率的に「確からしい」方向性を示してくれるに過ぎない。人間には到底及ばない。RPAとの関係でいえば、特化した用途向けのAIとの融合が期待されている。  

 RPAが請け負う業務は多岐に及ぶ。例えば以下のようなものだ。

書類のチェック・・・精算報告の確認

データ入力・・・役所への各種申請様式への入力

ロジスティックスの管理・・・在庫管理

顧客対応・・・AIチャットボットを利用した問い合わせへの対応

秘書業務・・・海外出張の航空券手配

情報収集・・・取引先企業の所定の情報をウェブから収集

(安部慶喜「RPAの真髄」日経BP社)

 

 単調な繰り返しや時間がかかるもの、「誰がやっても結果は同じじゃない?」と思える仕事はストレスが大きい。RPAを活用し、従業員をメンタル面で支えることができれば、離職防止につながる。何より、従業員に時間的な余裕や精神的なゆとりが生まれ、より高度な業務に専念できる。このタスクシフトは大きい。 

 気を付けなくてはならないのは、現状維持で良しとする企業にとって、RPAの導入が人減らしや新規採用停止のツールになってしまうことだ。安易に人件費の最小化を目指す発想では付加価値は生まれない。従業員の管理もその一環と捉えられる。新型コロナウイルス感染症の拡大を防ぐため、テレワークによる在宅勤務を推奨している企業も多いだろう。これに伴い、従業員を監視できるサービスが各社から提供されている。

 NECはパソコンの操作ログから勤怠管理できるサービスを、キャノンITソリューションズはカメラで在籍時間を集計できるサービスを提供している。米マイクロソフトは、メールやチャットのやりとりから「生産性スコア」を数値化できるようにした(さすがにこれは批判を受け、今は個人が特定されないよう変更されている。)。(日本経済新聞2021.2.2) 

 

 人を減らしてコスト削減を図る職場は、当面、効果を上げることができたとしても、いずれ企業価値が問われる場面において、間違いなく淘汰の対象となろう。生き残るのは、人の能力を最大限に活かして「生産性」を高めようとする職場、人的資本を重視する職場である。

 「生産性」を高める方法としては、斬新なビジネス考案や広い視野に立った戦略の立案が想定される。現代はサービスの多様化や高度化、そして変化への素早いキャッチアップが求められる。こうした対応はRPAにはできない。できることをRPAに任せ、「人」の強みを活かしたい。

 さらに、長期的なメリットもある。RPAに触れることによって従業員の意識も変わってくる。デジタルへの苦手意識が無くなるばかりか、デジタル的発想が身につき、むしろデジタルを活用していこうという意識が芽生え、革新的発想を持つようになる

 以下のビジネスモデル例は、デジタル技術を活用した新機軸を生み出す参考となるはずだ。(根来龍之ら「この一冊で全ぶわかるビジネスモデル」SB Creative)

 

「サービス化」・・・自社製品の製造・販売のみならず、何らかの付加価値を提供する。シスメックスは病院の検査装置を、外部施設の検査結果とリアルタイムで比較することによって精度管理している。自社の強みを深化させているのだ。

「オープンビジネス」・・・研究開発を他の企業と行い、価値を生み出す。セコムはソニーと「aibo」を用いたホームセキュリティを開発している。外部とネットワークを構築し、相乗効果を生んでいる。

「パーソナライゼーション」・・・顧客ごとに価値のある製品や情報を提供する。資生堂は、顧客の肌コンディションを解析し、美容液の最適な成分を調合している。 

 

 現代はシステムの「移行期」にある(ウォーラーステイン「入門・世界システム分析」藤原書店)。こうした中、労働者は低賃金に甘んじるのか、それとも人間としての能力を遺憾なく発揮するようになるのか、経営者たちは、RPAと共に歩む未来の職場に思いを馳せつつ、ビジョンを持つことが大事である

 

「地政学」が教えてくれる日本が組むべき意外な国

2021年4月5日(月)

 トランだ。

 

 米中の雲行きが怪しくなってきた。バイデン政権は一層強硬な姿勢を打ち出している。他の先進国でも中国に好ましくない見方をしている人が増加中だ(NEWSWEEK 2021.4.6)。

 新疆ウイグル自治区の人権弾圧に反発し新疆産品を使わないという欧米企業に対し、今度は中国で欧米ブランドの不買運動が広がっている。米軍司令官は中国による台湾進攻の可能性を証言した。

 さあ、日本はどうすべきか?

 

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 今こそ、地政学を駆使して考える時だ。地政学は、地理的条件が国際関係へ及ぼす影響を理解する学問だ。

 日本は「シーパワー(海洋国家)」。「シーパワー」はアメリカの海軍将校だったアルフレッド・マハンが提唱した考え方だが、このような国は連携をとりながら、「ランドパワー大陸国家)」の膨張を防ぐのが安全保障上のセオリーだ。 

 「隣国同士は対立する」という原則論も重要な考え方だ。ドイツの地政学ハウスホーファーによれば、人口が増えると民族や国家は領土を必然的に拡大していく。

 

 以上を踏まえつつ、日本が生き残っていく上で、現在、最も注意すべきなのは中国だランドパワーであるばかりか、「一帯一路」構想により南シナ海からインド洋を経て地中海に至る「海のシルクロード」の確保を目指している。だから、尖閣諸島や南沙(スプラトリー)諸島の領有権をめぐり関係国との「いさかい」が絶えないぜ。

 中国の課題は、世界第2位のGDPを誇りながら、一方で個人消費割合は低下していることだ。国内市場だけでは不安だ。貿易黒字に頼らざるを得ないし、資源やエネルギーの輸入も必要だ。シーレーンの確保は彼らにとってみれば「死活問題」なのさ。

(松本利秋「地政学が予測する日本の未来」SB新書) 

 

 対する日本のスタンスは明確だな。

 一つ目は日米同盟の維持だ。言うまでもなく戦力の確保は基本となる。

 二つ目は経済連携だ。ちょっとでも高いレベルの貿易を行う2国だと戦争に突入する可能性を17分の1に小さくできる。戦争を避けたいなら経済と貿易のネットワークを発展させることだ。(マシュー・O・ジャクソン「ヒューマン・ネットワーク」早川書房

 しかし、これで「安心」とはいかないぜ。地政学の大御所マッキンダーは、テクノロジーの発達により内陸国家が持っていた弱点が克服されると説いた。要は、シーパワーがいつまでも優位に立てやしないってことだ。事実、中国は海軍力を増強しつつある。

 

 ここに至って必要な戦略は「近攻遠交」だ。

 「近攻」は当面の戦略だ。対中包囲網を十重二十重にしつつ、そこから生まれる世界の枠組みにうまく入り込んで日本のプレゼンスを大きくすることだ

 2020年10月、日米豪印の4か国外相会議「クアッド」が開催された。安全保障が話されたが、中身は中国包囲網以外の何物でもない。また、情報連携に関して、英、米、加、豪、ニュージーランドの5か国の諜報機関からなる「ファイブ・アイズ」による机上演習に日本も招待された。インテリジェンスに弱い我が国にとっては有難い話だ。 

 とりわけイギリスとの連携は魅力的だ。EU離脱後のイギリスの基本戦略は「グローバル・ブリテン」。欧州市場に変わる投資先として日本を中心とするTPPへの参加を表明している。「第2次日英同盟」も夢じゃないぜ。

 

 より重要なのが「遠交」だ。仮に中国が勢力を弱めると、ロシアなど新たな脅威が生まれるおそれがある。対中国という意味ではロシアと組むべきだという話もあるが、簡単じゃないだろうな。地球温暖化で年中航行可能となる「北極海航路」が出現しようものなら、彼らは国際経済の舞台に一気に躍り出てくるだろう。北方領土を手放すなんてあり得ないぜ。

 では、これらの憂慮に備えて組むべき相手はどこか?

 

 ずばりドイツだ!

 経済大国であり、価値観が近い。ドイツも日本と同様、その家族システムは「直系家族」で権威主義的だ。また、両国は敗戦国だが、奇跡的な経済復活を果たしたという共通点を持つ。国際経済戦略では足並みを揃えやすいはずだ。(鹿島茂エマニュエル・トッドで読み解く世界史の深層」ベスト新書)

 オランダのジャーナリスト、スパイクマンは「リムランド(ユーラシア大陸の「縁」)を支配するものがユーラシアを制し、ユーラシアを支配するものが世界の運命を制する」と言った。日本からみて大陸の対極に位置するドイツは最適だ。中国やロシアに睨みを利かせられる(茂木誠「マンガでわかる地政学池田書店)。

 もちろん課題はある。双方の好感度はそれほどでもない。経済的結びつきを強めていくことが必要だし、文化交流ももっとやるべきだ。

 

 昨日の友が今日の敵というのは歴史では「あるある」だ。地政学を身に付け、バランス感覚を研ぎ澄ませながら「盤上」を読み切り、したたかに次の手を打っていくことが重要だぜ。

 

「ディスタンス」ではなく、「ネットワーク」構築こそ大事!

2021年3月29日(月)

 コノミです。

 

 3月20日東京オリンピックパラリンピックで海外からの観客を受け入れないことが決まりました。残念ですが、新型コロナウイルス感染症による感染リスクを抑えるためには、「他人」との直接的な距離「ディスタンス」をとらなくてはならないからです。

 人は長い歴史の中で、閉鎖的な面を持ちつつも「他人」とつながることで発展してきました。平時は個人主義、災害が多ければ集団主義的になると指摘されています。

 しかし、グローバルな感染症という危機的状況の中では、「他人」と距離をとる「自分」を保ち続けなければなりません。人としての本質が揺さぶられています。「ネットワーク」理論により、目に見えない脅威を乗り越えなくてはなりません。

 

 「他人」や「外部」とつながるネットワークがもたらす経済的効果は明らかです。

 つながる人ほど給料が高い傾向にあります。従業員1人当たりの売上高は、県外企業との取引を増やすと増えます。マクロレベルで見ても同様です。1人当たりのGDP成長率は、貿易を自由化すると平均1~1.5ポイント増加します。逆に閉鎖的だと成長が鈍ります。ラテンアメリカでは1960年代から80年代にかけて保護主義的な政策をとったため、経済を停滞させることとなりました。

(戸堂康之「なぜ『よそ者』とつながることが最強なのか」プレジデント社)

 

 「ネットワーク」を薦める理由は、互いの強みを活かし合い、補い合うという分業の効果があるからです。個々のプレーヤーが持つ経験値や知識、能力によって新しい「知恵」が生まれます。自分では気付かないことも、客観的視点からのフィードバックが気付かせてくれます。

 もちろん、「ネットワーク」にはリスクもあります。感染症リスクやリーマン・ショックのような金融リスクは、予測不可能なシステミック・リスクをも引き起こします。現代はネットワーク自体が複雑であること、情報伝達や移動のスピードが上がったため、リスクの伝搬スピードが一段と早くなったことから、その影響は甚大です。

 だからといって「守り」の対応を続けることは問題です。「ネットワーク」から離れ、閉鎖的状態を続けてしまうと、成長力が失われます。そして、ますます今得られている利益について、「守り」を強化するという負のスパイラルに陥ることとなります。

 

 ただでさえ、日本は経済基盤や社会保障が充実していて、それこそ一人でも幸せな生活を送れます。もちろん、絶えまない刺激から自分を守る手段として、一定の距離をとりながら他人と接する態度をとらざるを得ないのも仕方ないです。

 さらに、インターネットやソーシャルメディアは、人を結び付ける一方で分断も生んでいます。加えて、2040年には国内の独身世帯が47%になると見込まれるほど少子高齢化が進んでいて、一人でいることの準備が求められています。

 こうしたことを背景に、「空間」が価値を持つようになっています。フランスの社会学アンリ・ルフェーブルが唱えた「空間の商品化」です。最近、お一人用のワークスペースを見るようになりました。家庭でも、自宅の敷地にわざわざコンテナハウスを設置してその中で過ごす人もいます。仕切りで個室の雰囲気を味わえるラーメン屋もあります。「孤食」がストレスを和らげてくれるのです。(南後由和「ひとり空間の都市論」ちくま新書

 

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 このままだと、個人の能力は今以上には上がらず、生産性も落ちます。当然、イノベーションは生まれないでしょう。自己肯定感にも歪みが生じてきます。「いいね」の数やコメントとかいったデジタル・アウトプットでしか自分を確認できなくなってしまいます。その一方で「他人」への寛容さが薄れ、争いの種を生みます。

(荒川和久、中野信子「『一人で生きる』が当たり前になる社会」ディスカヴァー携書)

 

 「ネットワーク」を築くことを、社会が求めていかなくてはなりません。そうしないと手遅れになってしまいます。一人一人が「ネットワーク」理論を知り、その重要性を認識することが大切です。ネットワークの考え方は、話題のワクチンにも応用できます。予防接種は「重症化を防ぐ」だけでなく、感染者が新たに何人に感染させるかという「基本再生産数」を減らすためにも必要であることを教えてくれます。

 また、国内だけでなく国際的な交流を絶やさないことも必要です。例えば、社会的立場や行動履歴、PCR検査結果などいくつかの指標を総合的に見て問題ないと判断された人同士については従来ベースの経済活動を認めるなど、一定の条件下での緩和を図るのです。

 

 感染対策と並行してこれらの取組を行うことによって、経済が活性化し、感染対策に必要な予算も充てられるという好循環を生むことができます。今、必要なのは逆転の発想です。その根本にあるのは、人が人であるがゆえの「本質」なのです。

 

「医療崩壊」なの?じゃあ、医療改革しちゃいましょう

2021年3月22日(月)

 ハルです。

 

 医療崩壊の懸念を残しつつ、1都3県の「緊急事態宣言」が解除されました。こうしてみると改めて新型コロナウイルス感染症の拡大は、医療体制と経済活動が常に天秤にかけられているということを認識させられました。

 しかし、そもそも医療崩壊」って本当に起こるのでしょうか?

 

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 一般に、新型コロナウイルス感染症のような感染症には急性期病院が対応することが想定されています。しかし、都内の急性期病院はそれほど急がなくてもよい医療や収益性の高い人間ドックを相変わらず行っています。また、多くの重症患者を引き受けた大学病院には多数の医師がいるはずですが、対応したのはほんの一握りです。(週刊新潮’21.1.21)

 341病院を対象にした調査によると、2020年2~6月の間、重症患者の4分の1が一般病棟を利用している一方、軽症患者の約半数が感染症専用病床やICU(集中治療室)などの高規格病床を利用しているという「ミスマッチ」も生じました。さらに、集中治療専門医が在籍する都内41病院のうち、専門医がたった1人しかいない病院が15施設もあります。(渡辺さちこ・アキよしかわ「医療崩壊の真実」MdN)

 

 つまり、日本の医療体制は、コストを気にせざるを得ない民間医療機関が圧倒的に多い中、これらも含めて急性期病院の数が多すぎて、「専門性」が分散化してしまっているのです。このため、まずは局地的に医療従事者が疲弊し、患者の受入れが困難になるという「崩壊」が生じているのです。(週刊現代2021年1月23日号)

 この状態を放っておくと次は面的な崩壊となります。こうした構造的な問題が、新型コロナウイルス感染症によって明るみになりました。

  

 本来であれば、新型コロナウイルス感染症のような未知の疾患は、対応できそうな公的医療機関において治療を行い、全国統一的にデータ収集や治療開発を行うべきです。 

 仮に感染力があまりにも強く患者数の増加に歯止めがかからない場合は、その医療機関を「重点病院」に位置付け、他の医療機関から医療従事者派遣などの支援を得るという「資源重点投下」の手法をとるべきなのです。

 人口当たりの病床数が日本の6~7割しかないドイツでは、広域地域に一つの病院をコロナ感染症専門病院として全国に配置・運営しています。(森田洋之「日本の医療の不都合な真実幻冬舎新書

 

 しかしながら、国は医療機関に気兼ねし、強制措置を執ることができないまま、自治体や各病院に「お任せ」してしまいました。そして、病院の収入となる診療報酬や予算は、医療機関や関係団体の言うがままに増額し、垂れ流すこととなったのです。

 当面は何とかなるでしょう。でも、より危惧されるのは、新型コロナウイルス感染症が終息した後の医療体制のひずみが大きくなることです。具体的には、今の医療体制の堅持が謳われ、医療費の増額が止まらなくなることです。こうして、天秤が医療体制に傾き続け、今度は日本経済の「崩壊」というシナリオに突き進むのです。

 

 この「崩壊」を予防する処方箋は、コロナ後の医療体制を今の段階から整えていくことです。

 まずは、機能分化を促進することです。具体的には、国立病院や自治体立病院をはじめとする公的医療機関に緊急性の高い医療を担ってもらい、その他の急がなくてもよい医療を民間医療機関に担ってもらうという役割分担です。

 緊急性の高い医療とは、致死率の高い感染症のほか、脳卒中心筋梗塞など直ちに生命に関わる疾患を対象とする医療が該当します。がんも生命に関わる疾患ではありますが、急がなくてもよい医療に分類します。

 次に、法的整備を行い、こうした緊急性の高い医療を担う公的医療機関に資源を集中投入できるようにします。必要な場合、都道府県知事が地域の民間医療機関に医師派遣などの協力を要請できるようにします。

 最後に開業規制です。医療機関を新たに開業する場合、診療科目のバランスや地域性を都道府県知事が勘案した上で許可することとします。これによって、医療資源の分散や偏在を防ぎます。 

 

 医療は「公器」であり、大事な資源です。「便利サービス」と捉えるべきではありません。しかし、だからといって「医療」と名が付けば、全てにおいて何が何でも維持しなければならないというものではありません。

 なぜなら、医療を提供するためには財源が必要であり、その財源を捻出するための「経済活動」にも限りがあるからです。何を「社会の資源」として次世代に継承していくのか明確にしていくことが大事です。(池上彰ら「いまこそ『社会主義』」朝日新書

 

 医療体制と経済活動との天秤は常に存在します。これらの処方箋を実行に移すことは容易ではありませんが、このコロナ禍の状況だからこそ、医療の存在価値を再確認しつつ、今から打てる手を打っていくべきです!

 

「FIRE」で手に入れろ!早め早めの経済的自立

2021年3月15日(月)

 フィナよ~。

 

 もう年度末ね。定年退職する人も多いんじゃなくて。新型コロナウイルス感染症も治まりきらない中、送別会もあるかどうか微妙だし、・・・ちょっと寂しいわね。

 

 「FIRE」(Financial Independence, Retire Early)ってご存知?早めに引退して経済的自立を果たそうという考え方なの。朝から晩までせっせと働いてストレスにさらされながら生きるライフスタイルを捨てて、倹約、倹約で貯蓄率を高め、リタイア後は投資によって暮らすことを目指すものよ。

 アメリカや欧州ではミレニアル世代(1980年代から2000年代初頭に生まれた人)を中心に、ブームになっているの。背景に格差拡大や雇用不安があるわ新型コロナウイルス感染症の影響でこうした動きが加速するでしょうね。(谷本真由美「世界のニュースを日本人は何も知らない2」ワニブックスPLUS新書)

 

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 「FIRE」が目指すのは「自分自身のセーフティネット」を作ること。もちろん、日本にはちゃんとした社会保障制度があって、医療保険、年金といった社会保険生活保護、生活困窮者自立支援制度といった公的扶助のしくみがあるわ。
 でも、こうした仕組みも、ちゃんと保険料を納めなければならなかったり、給付の際に適用される要件が厳しかったりと一定のハードルがあるわ。加えて、日本の財政事情も厳しいから、いつまでも約束されているとは言い難いし・・・。

 だからこそ、手っ取り早く、かつ、分かりやすく実践できる方法として「FIRE」が広く受け入れられているのね。

 

 ポイントは以下の3つ。

 まずは、モノの所有を減らすこと。もっと言えば「所有欲」を減らすことかしら。所有欲は消費活動には必要だけれど際限が無いわ。「ヘドニック・トレッドミル現象」といって、人は時間と共に新しい状況に慣れてしまい、幸福感は元の水準に戻っちゃうの。高価なネックレスを買ってしばらくは満足できていても、ふとお店のショーケースを覗くともっと高価なものが欲しくなるじゃない。いくら貯金しても足りなくなるわ。

 

 次のポイントは貯蓄ね。「FIRE」ではモノ減らしと併せて、幸せにしない基礎的支出を削るの。要は堂々とケチケチしましょうってこと。

 この理論の面白いところは、リタイアできるタイミングを決める唯一かつ最大の要因というのは、年収ではなく、年収をどれだけ貯蓄に回せるかという「貯蓄率」なのよ。収入に応じて生活に必要な支出も決まってくるから言えることなのね。

 だから、当然貯蓄率が低い場合はリタイアまでの年数は長くなるわ。例えば、貯蓄率が70%であればリタイアまでの年数は10年で済むけれども、貯蓄率が25%だと何も投資活動を行わなければリタイアまで60年(非現実的ね!)も覚悟しなくちゃならないの。

 

 そこで必要となるのが3つ目のポイントである「投資」と「副業」。会社勤めをしている人も自営業の人も、本業で稼ぐこととそれ以外の手法で稼ぐことを考えておくべきね。

 「投資」と聞くと身構える人も多いでしょうけれど、今ではネット証券も発達していて手軽に手続きを進めることができるようになったわ。もちろん、必ず得するというわけじゃあないわ。でも、投資信託にすればある程度は安定して元手を増やせるでしょうね。

 「副業」についても会社の理解がずいぶん進んできたわ。インターネットのおかげで、ちょっとした小遣い稼ぎが可能よ。引退する人はそれまでのキャリアを通して磨いてきた強力なスキルを利用すべきね。

(クリスティー・シェンら「FIRE 最強の早期リタイア術」ダイヤモンド社

 

 そして、こうした術を身に付けるにしても、お金に関する基礎的なことを知っておく必要があるわ

 日本では江戸時代からお金のことを口にするのはよくないとされてきたわ。江戸幕府は300諸侯が集まった大名の連合政権でしかなく、徳川家には徴税権はなかったの。それでも全国3000万石分の財政政策をすべて引き受ける必要があったから、「贅沢は敵」というスローガンを広めて「質素倹約」を勧めたのね。(上念司「経済で読み解く明治維新」KKベストセラーズ

 でも、今はそうも言ってられないわ。お金は生きていくために欠かせない「暮らしの道具」。金融リテラシーを若いうちから身に付けることが重要よ。(坂本綾子「お金の超基本」朝日新聞出版社)

 結婚や住宅購入などライフイベントを通じて勉強する機会はあるけど、不測の事態でも適切な行動をとれるよう、お金について理解を深めておくことが最強のセーフティネットになるわ。分かりやすい本も出ているし、学校教育やリカレンス教育などで学ぶ機会を設けることが大事ね。 

 経済的に自立するということは、好きなように人生をデザインするということ。自由を手に入れるためには、貪欲に「知る」という努力も必要よ。