非正規が当たり前?発動せよ!「第2の雇用セーフティネット」

2021年6月14日(月)

 レーブだ。

 

 新型コロナウイルス感染症の緊急事態宣言・まん延防止等重点措置の解除まであと1週間となった。新規感染者数は減少傾向にあるが、インド型変異株が拡大しており、依然、予断を許さない。そして、雇用市場も厳しい情勢が続いている。

 読売新聞社日本テレビ放送網の調査によると、主要企業101社における2022年春の新卒採用は、「減らす」としたのが21社、「前年並み」が49社、「増やす」が14社であった。ますます非正規雇用が増えることになるだろう総務省労働力調査によると、2020年の非正規雇用者数は2090万人で全体の37.1%を占める。早晩、半数に及ぶ。

 そもそも、サービス産業の比重が高まると非正規雇用が多くなる。サービスは需要が発生した際に即提供されなくてはならないという「生産と消費の同時性・同地性」が求められているからだ。さらに、今後はICTが普及する。企業で職員をじっくり養成する必要が無くなり、長期雇用は必須でなくなるのだ。(酒井正「日本のセーフティネット格差」慶應義塾大学出版社) 

 

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名刺ゲーム

 問題は、非正規雇用が今も「常態」でないものと扱われ、このため、セーフティネットがおろそかになっていることだ。非正規雇用の増加は1980年代後半から始まっていた。しかし、正規雇用のほうも増えていたため実態が見えづらくなっていたのだ。そして、バブル崩壊後の「就職氷河期」(1994~2007年)という魔法の言葉が、特殊事情であるかのように錯覚させた。だが、経済のマクロトレンドは「ごまかし」を許してくれない。2000~2013年は「第二氷河期」と言えるし、今回のコロナ禍は「永続氷河期」と化すだろう。今後、こうした世代が社会の中枢を占めるようになる。 

 

 では、非正規雇用の何が問題なのか。一つは健康リスクである。以前、エディカが紹介したように、非正規雇用者の不健康感は正規雇用者より2割程度高くなる。これは、雇用が将来にわたって保証されないことによる精神面のプレッシャーによる。(小塩隆士「日本人の健康を社会科学で考える」日本経済新聞出版)

 特に、非正規雇用のうちパート主婦を除くアンダークラス」と呼ばれる人たちは、生活に強い不満を感じ、自分は不幸だと考える傾向が強い。2016年首都圏調査によると、「うつ病やその他の心の病気の診断・治療を受けたことがある」人は22.6%に及ぶ。(橋本健二アンダークラス2030」毎日新聞出版) 

 もう一つの問題は、セーフティネットから外れるリスクだ。国民年金の納付率は7割を切る状況だが、未納は自営業者等よりも非正規雇用や無業者に多い。理由として、年金を払える能力が無いという「流動性制約要因」が挙げられる。雇用保険は早くから非正規雇用に適用されたが、実際の受給者割合は低下している。一度でも不安定な職に就くとその後も不安定な状態が続くことになり、所得が低くなるからだ。「流動性制約要因」の罠と言われている。

 

 危険な状況だ。放置すると影響は労働者の大半に及び、中間層をも飲み込んでしまう。中間層が沈むことは国家が沈むことを意味する(吉田徹「アフター・リベラル」講談社現代新書)。抜本的な取組が必要となる。解決策は、雇用経験を条件としない給付を行うことだ。それは、既存のセーフティネットに代わる「第2の雇用セーフティネット」の出番を意味する

 具体的には、正規雇用・非正規雇用の如何を問わず、失業給付を誰にでも公平に行うこととする。そして、年金給付については、徐々にベーシック・インカムに置き換えていけばいい。これによって、誰もが「安心」を得ることができるし、健康リスクを下げることにもつながる。 

 当然、財源の確保が必要だ。既存の社会保障の体系的見直しが求められる。例えば、医療保険と労働保険の統一が挙げられる。加齢によるリスク上昇が労災を招いている可能性があるからだ。どのような場合も一律の医療給付を行えばよい

 また、効果の薄い給付は止めるべきだ。就業支援制度は一例だ。就労支援はもともと情報の非対称性による「構造的失業」を想定したものだ。しかし、今、生じているのは「需要不足失業」だ。現状に即しているとは言い難い。 

 さらに、保険料だけでは限界がある。富裕層ほど負担感が小さくて済むという逆進性があるからだ。税金の役割が期待される。以前、フィナが提案した「累進消費税」が参考になる。

 このように、ベーシック・インカムの導入は既存の制度を徹底的に見直すきっかけを与えてくれる。 これからは、非正規雇用が当たり前となる。誰もが、引け目を感じることなく、健康面や将来への不安も感じることなく、様々な経験を積めるようにすべきだ。こうした人材が我が国の「宝」となる。時代の動きを先取りし、社会全体で包摂していく姿勢が求められている。

 

コロナが導いてくれる、これからの公共交通システム

2021年6月7日(月)

 トランだ。

 

 新型コロナウイルス感染症は俺たちの「移動」を制限した。リーマンショックとは異なる経済影響の一つと言える。

 だが、少子高齢化・人口減少が避けられない日本だ。冷静に見れば、いずれ来るべきものが少し早めに来たとも言える。新型コロナによる経済影響を分析して、国家財政のことも考えながら、交通体系の抜本的見直しを進めるべきだぜ。

 

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 総務省家計調査によると、2020年3月に「平時と異なる大きな増減のあった消費品目」として交通関係の項目が多数挙がった。中でも「航空」は80%以上減で、鉄道は60%以上減。燦燦たる状況だ。さもありなんだな。航空路線については、2021年3月期の最終決算の見通しは、JALが3000億円の赤字、ANAホールディングスが約5100億円の赤字だ(鳥海高太朗「コロナ後のエアライン」宝島社)。他の公共交通については、2020年度の損失額試算ではあるが、鉄道大手(JR、大手私鉄)で1.8~4.2兆円、地域公共交通(船舶、タクシー、バス、中小私鉄)で1.0~2.3兆円という数字が出た(上岡直見「新型コロナ禍の交通」緑風出版)。

 JR本州3社、大都市圏の大手私鉄東京メトロでも利用者3割減なら赤字に転落するとされている。ちなみに、鉄道事業の利益率は人口密度に比例する。人口密度約350人/㎢を下回ると赤字になるらしいぜ。(石井幸孝「人口減少と鉄道」朝日新書) 

 

 ところで、実際のところは、人の移動が感染を「飛び火」させたにせよ、公共交通それ自体でクラスターになったとは考えにくい。IATA(国際航空運送協会)によると、2020年初頭からの総乗客数12億人に対し感染例44件という理由から、「航空機内で感染するリスクは非常に低い」としている。だが、感染拡大が収まらないのであれば移動は避けるべきだろう。今の沖縄、特に石垣島の感染爆発を見ると強く思う。 

 もちろん、人の移動が大事なことは否定しないぜ。ビジネスや観光など移動に伴って経済が活性化される。しかし、ここは割り切りが必要だ。今後の人口減少も踏まえて公共交通システムのあり方を考えてみようぜ。

 遠距離システムについては原則、人の移動を制限的にすべきだ。すでに、ITネットワークを使って人の移動を最小化する試みは進められている。そうは言っても移動が必要な場合もある。こうしたケースでは、感染が判明した場合の探索ができるよう、移動履歴を「記録」しておくべきだ。「記録」にはマイナンバーカードを利用するといい。専用アプリをインストールしたスマホを改札でタッチすれば精算できると同時にマイナンバーに移動「記録」を紐づけるようにする。いっそのこと新幹線の座席は、飛行機と同様全席指定として、座席情報も紐づけるといい。このシステムを利用しない者には料金を割り増しすればいいだろう。

 移動の自由や権利はどうなるかって?残念だが制限されるべきだろう。もはや、移動による感染拡大のリスクが半端ないって知ってしまった。自由や権利を主張するのであれば、引き換えに義務を果たしてもらおう。ちなみに国際線はもっとシビアになる。LCCのピーチのように国内線拡大に舵を切るところもある。移動の選択肢自体が少なくなるんだぜ。自由だ権利だなんて言ってられるかい?

 

 こうした絵姿を想定して供給体制や価格体系の見直しを行うべきだ。車両数や便数の削減は必至だ。コストは利用料金に上乗せだ。利用客が少ない地方空港は閉鎖すらあり得る。

 そして、交通システムをより物流に活用すべきだ。人の移動は何とかなるにしても、物の移動はさすがにどうしようもない。例えば、新幹線を拠点間貨物輸送に転用する。そうやって高速道路を走るトラックの負担をいくらかでも減らすべきだ。なお、これら基幹インフラは危機管理の観点から存続は必至だ。いざという場合の国による支援策を用意しておくべきだ。

 一方、都市内の近距離移動は維持していいだろう。ただし、自家用車の使用はなるべく制限しよう。道路容量の制約という問題がある上に、エネルギー面の課題もある。日本全体で1万9709ペタジュールの一次エネルギーを使用しているが、運輸部門の使用はその約6分の1にも上り、ほとんどは自動車用燃料だ。鉄道はわずか63ペタジュールしかないんだぜ。自動車を減らした分、レーン確保など自転車利用を促す環境整備をしようぜ。

 

 以上のように、公共交通システム全体を「統合的」に議論することが大事だ。交通には経済活動、観光やエネルギーだけでなく、医療、教育、地域活性化など様々な分野が関係してくる。繰り返しになるが、人口減少や国・地方の財政逼迫といった現実を見据えた冷静な議論だ。人流ー物流バランスも考えながら、取捨選択を断行し、システム全体の最適化が常に図られるような交通戦略が必要だぜ。

 

「宗教」がもたらす経済成長。継承者は・・・

2021年5月31日(月)

 コノミです。

 

 緊急事態措置が延長されましたね。この間、ワクチン接種が進められます。東京オリンピックに間に合うのか、神のみぞ知るです。

 ところで、宗教が経済に影響を与えるってご存知ですか?ある研究によると、経済成長への効果は「信じること」と強い相関があるそうです。

 

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 ドイツの社会学マックス・ヴェーバーは、信仰は人間の職業倫理、正直さ、節約等の特性を育てることを通じて経済成長を促すとしました。オーストリア精神分析創始者ジークムント・フロイトの見立ては、人がそこにないものを崇拝できるのなら、象徴的なものについても熟考できるとしました。事柄の「概念化」が経済成長の背中を押したということです。(ロバート・バローら「宗教の経済学」慶應義塾大学出版会)

 

 中でもプロテスタントは典型です。アメリカやドイツなどでその影響力が指摘されています。プロテスタントは、ジャン・カルヴァンが唱えた「予定説」がポイントになります。これは、神の祝福を受ける人は誰かは分からないけれど予め決められている、でも人は自分が神に選ばれる確率を高めるために道徳的に正しい生活を送ることによって「救済の不安」から解放される、という考え方です。こうしてプロテスタントは、禁欲を重視し、勤勉によって得られる利益であれば獲得してもいいと肯定したのです。

 そのプロテスタントキリスト教の一つですが、キリスト教は高利貸しを禁止していました。差別を受けてきたユダヤ人がこれを請け負いました。チャンスが与えられたのです。また、彼らは子どもの頃から聖典や生活規範を集大成した経典を教材に識字率を高めていました。高い人的資本で世界規模の活躍を果たしているのです。このような点でも宗教は経済活動に影響を与えています。(宮崎正勝「10大民族で読み解く世界史の興亡」KAWADE夢新書)

 

 逆に、経済は宗教に影響を及ぼします。日本では高度経済成長に新興宗教の信者が増加しました。経済格差が広がり、恵まれない階層が生み出されたからです(島田裕巳「宗教消滅」SB新書)。やがて、経済発展の恩恵が行き渡ってくると、今度は個人の信仰活動への参加が減っていきます。「世俗化仮説」と呼ばれるものです。

 フランスなどの先進国を中心に「宗教離れ」が指摘されています。経済活動が盛んになると教会に行く時間を割けなくなります。また、経済的な豊かさが得られると、「生活上の不安」が少なくなります。不安解消を図るための信仰活動の理由が無くなるのです。 

 

 ところが今、「生活上の不安」が再び増大しています。リーマンショック以降、世界的に経済成長が減速しています。国内外の格差を利用したグローバリゼーションは行きづまり、再び国内格差の問題が浮かび上がってきました(池上彰的場昭弘「いまこそ『社会主義』」朝日新書)。こうした状況への反動でナショナリズムが台頭し、アメリカやイギリスでは国内の分断が生じることとなりました。

 そして、新型コロナ感染症が「不安」の増大に輪をかけています。中国のように国家統制が感染拡大防止に成功しているという見方がなされる反面、民主主義そのものに疑問符が付き始めました。これまで当たり前のこととして受け止められていた価値観が揺さぶられているのです。

 

 人は何かを信じて生きなければならない生き物です。これまでは、宗教が「拠り所」としてその役割を果たしてきました。でも、宗教を追いやった現代経済は皮肉にもカオス状態を創り出し、「信じるべきもの」の登場が切望されています。

 そうはいっても、「宗教離れ」の流れが反転化することは考えにくいでしょう。地域や家族といった共同体に基盤を置く伝統的宗教であればなおさらです。たとえ、これから宗教を「拠り所」にする人が増えたとしても、それは、個人単位で終わるでしょう。また、宗教とは言わないまでも、よく似たイデオロギー的なものかもしれません。

 そうすると、今、国家に求められるのは、これらに代わる「拠り所」としての存在です。財政が厳しいからといって「自助」頼みとするような制度設計は禁物です。たとえ負担をより求めることになるとしても、国民から信頼されるようなサービス提供を心掛けるべきです。

 また、個人の「不安」を解消させるあらゆる取組が必要となります。行政機構はもっと人の「心理」を学んで対応すべきです。透明性を確保し、生活に関する情報をできる限り詳細かつ分かりやすく、迅速に発信していかなくてはなりません。併せて、公認心理師などの専門職を活用して、心理的不安に応えられる相談体制を整備することが重要です。

 こうした取組を通じて生まれる「信頼」や「安心感」が、新たな経済活動を促すことになります。これからは、「宗教」に代わって「国家」が人々の不安を受け止めていくという覚悟が求められています。

 

ヤングケアラーに忍び寄る健康危機。「必ず生きて帰る!」

2021年5月24日(月)

 ハルです。

 

 「ヤングケアラー」について、17日、厚生労働省文部科学省のプロジェクトチームが支援策をまとめました。ヤングケアラーとは、家族に病気や障害などケアを要する人がいるために、家事や家族の世話などを行っている18歳未満の子どもを言います。今回、政府がスポットライトを当てたことで、その存在が広く知れ渡りました。

 実数は把握されていませんが、宮川ら(2021)の調査では大阪府立の高校生4,509人のうち1.0%が幼い兄弟のケアを、5.2%が家族のケアを担っていました。

 そして、彼らの不満感や健康感(体がだるい、リラックスできないなど)は、そうでない人と比べ高くなっています。若いから大丈夫と無理を重ね、ついには自らの健康まで損ねてしまいかねません。ヤングケアラーの健康が問題です

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 ヤングケアラーが置かれた境遇には、その後の人生と合わせて、他の人よりも健康が損なわれる、より大きな可能性が潜んでいます。なぜならは、健康は低学歴、不安定な雇用形態やセーフティネット、社会的孤立といった要因に左右され、これらいずれもが当てはまってくるからです。(小塩隆士「日本人の健康を社会科学で考える」日本経済新聞出版) 

 「ライフコース・アプローチ」は、成人期における疾病の原因を、胎児期や幼少期、その後の人生をどのような環境で過ごし、今に至ったかに注目する考え方です。これによると、教育や学歴は極めて重要な要素です。具体的には、学歴による健康格差は男女ともに加齢に伴って拡大傾向を示します。特に高卒かどうかが分かれ目のようです。

 ヤングケアラーの場合、学校で欠席や遅刻が多くなりがちです。勉強時間も制約が生じるでしょう。内申点にも影響します。家計を助けるため進学をあきらめる人もいることでしょう。

 

 就職後も「非正規雇用」となると厳しい状況が待っています。就職氷河期世代に関する研究によると、男性の場合、最初に就いた職が不安定だと年収が100万円以上低くなり、経済的にも不安定な状況に置かれ、未婚の確率も高くなります。女性の場合は、より直接メンタルヘルスに影響します。そして、不健康感は正規雇用者よりも2割程度高くなります。さらに、正規雇用でない場合、セーフティネットから外れる確率が上がります。公的年金に加入していない人の健康感はより低く、抑うつや不安の度合いが強くなります。 

 

 「社会参加」も健康に影響します。自治会や趣味活動など何らかの形で社会と関わる社会参加活動には糖尿病や脳卒中の発症リスクを抑制する効果があります。 

 ヤングケアラーは「孤立」することが多くなります。就職などで同級生と道行きが異なれば、つながる友人の数は絞られてきます。抑うつの度合いを示す「K(ケッスラー)6スコア」を用いて比較すると、社会的に孤立している人や一人暮らしの人は統計的に高くなります

 「最近ではSNSがあるから、社会参加しやすいのでは」と思われるかもしれません。SNSでは多くの人とつながって生きているという思いが強まりますし、実際、SNS上の友人が多いほど健康感は良好となります。ただし、若者の場合、つながる友人が少人数だと全くつながっていない状況とあまり変わらないみたいです。

 さらに、ケアの対象者である親が高齢化してますます介護が必要となり、孤立の度合いが強まるおそれがあります。「家族介護」は男女ともに最大のメンタルリスク・イベントです。

 

 こうしたことから、ヤングケアラーにはできる限り早期からの支援が必要です。子どもへの気づきや声がけができる学校、ケア対象者の支援を通じてヤングケアラーの存在を把握できる保健師や福祉関係者、それぞれが情報を共有し、できることを組み合わせる必要があります。支援内容は、ヤングケアラーが安心して話せる環境を用意し、適切なアセスメントを行い、ケアの量を減らすことです。

 先進事例としてイギリスの取組が挙げられます。イギリスでは地方自治体にヤングケアラーのニーズ・アセスメントを行うことを義務づけています。ここでは、ケアの内容を家事から金銭面・実用面のやりくりまで幅広く把握した上で、彼らが何に困っているのか自分の言葉で回答させることによって、きめ細かな支援につなげています。相手は何といっても「子ども」です。支援側の当たり前が彼らにとっては当たり前でない可能性があります。(澁谷智子「ヤングケアラー」中公新書

 

 私たちは「親子なんだから当然でしょ」とヤングケアラーの行っていることを、自然なものと受け止めてしまいがちです。しかし、今や家庭の問題は社会全体の問題となりつつあります。格差が大きい社会ほど平均寿命が短くなる傾向があります。必要な支援を届け、負担感を減らして「彼ら」の健康を守ることは、実は「私たち」の健康を守ることになるのです。

 

相続サバイバルが始まった!

2021年5月17日(月)

 フィナよ~。

 

 「紀州ドン・ファン」の殺人容疑で元妻が逮捕されたわね。13億円を超えるとも言われる遺産を相続できるかは今後の判決次第ね。ところで、みんなは「相続」のこと、ちゃんと考えたことある?

 せいぜい、身内に不幸があったら勉強するという程度でしょう。明るくない将来のことを考えるのは脳にとってストレスだものね。

 

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 しかも、「相続」と聞くと「トラブル」がつきものというイメージがあるわ。経済コメンテーターとして有名な森永卓郎氏も例外じゃなかったみたい。ご本人は長男だけれど、奥様が父親の介護を亡くなるまで担ってきた手前、金額を弟と折半という結論に至るまでは相当の葛藤があったようよ。「争続」なのよね~。(森永卓郎「相続地獄」光文社新書

 

 みんなもうすうす感じてるんじゃない?「考えておかなきゃ」って。

 日本は少子高齢化が進み、2024年には国民の3人に1人が65歳以上という「超・高齢者大国」になるわ。75歳以上も6人に1人。すると「多死社会」が追いかけてくるわ。2030年には160万人超の人が亡くなるの。さらに、世帯数も減少して空き家が増加中よ。2033年の空き家数は2167万戸、空き家率は30.4%にまで上昇する見込みよ。(河合雅司「未来の年表」講談社現代新書

 

 嫌でも「相続」のことを本気で考えなくちゃならないわ。手続きは複雑だけれど、ここでは基本となるポイントを3つだけ押さえておくわ。

 1点目は、葬儀から始まる流れの「全体像」を把握すること。「相続を放棄できる期限」は3か月以内、「相続税の申告」は相続発生の翌日から10か月以内と締切りがあるものは注意してね。

 流れは、①葬儀・法要、②社会保障関係や公共料金の手続き、そして、③相続関係の手続き、と大まかに整理できるわ。このうち、①は葬儀社に依頼すれば手続きを教えてくれるから楽よね。②まではとにかく早めに、遅くとも10日~14日以内には済ませておくこと。そして、いよいよ、③の相続関係の手続きに着手よ。 

 

 2点目は、「相続財産」全体を把握すること。これが割と手間かもね。土地・家屋といった不動産や自動車・家財道具など目に見えるものは分かりやすいわ。一方で、預貯金などオンラインでやりとりされているものは分かりにくいでしょうね。日頃から通帳やキャッシュカード、株取引書類の保管場所を決めておくなど、関係する金融機関の情報を共有しておくべきね。

 

 3点目は「相続人調査」。相続人を確定させるため、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本を取り寄せなくちゃならないわ。そして、遺言書が無い場合は・・・ていうか、遺言書が残されているのは全体の1割程度らしいけれど、相続人全員で遺産をどう分け合うかを決める「遺産分割協議」をしなくちゃならないの。ドラマでおなじみの「揉める」シーンね。制度も変わってきているから、書籍などで確認しておくことをお勧めするわ。

 (児島明日美ら「身近な人が亡くなった後の手続のすべて」自由国民社

(相続サポートセンター「まんがでやさしく分かる失敗しない相続・贈与のすべて」コスミック出版)

 

 相続人同士の不要な争いを防止するためには遺言書を作成しておくことね。

 問題は認知症2025年には65歳以上の5人に1人である約730万人が認知症になると見込まれているの。認知症が進むと不要な支出が増えたりして、残すべき遺産も残せなくなるわ。同居家族の3割が何らかの経済的損失を受けているみたい。そして、生前贈与や遺言は当人の意思に基づくことが大原則だから、せっかく準備を進めていても無効となってしまうわ。遺言書保管制度で対応しておくか、発症後は成年後見制度、あるいは家族信託を活用する方法が想定されるわ。いずれにしても、早めの準備が必要ね。

(木下翔太郎「金融老年学の基本から学ぶ、認知症からあなたと家族の財産を守る方法」星海社新書)

 

 それにしても複雑な仕組み。もうちょっと何とかならないかしら。相続件数は増えるから、もっと手続きを簡便にすることが必要よ。そのためにも、「相続税」を確実かつ簡単に徴収できるようにすべきね

 相続税は税務署が最も力を入れていて、申告者の2~3割が税務調査を受けているにも関わらず、その8割以上は申告漏れ等で追徴税が課されているの。それでようやく2兆円の税収・・・全税収の3%よ。

 もう、面倒で非効率な申告納税方式ではなく、国や地方自治体が納入額を計算して通知する方式にすべきよ。例えば、故人が生前に利用した社会保障サービスのうち公費負担分を徴収対象として、残りは遺族で相続してもらうの。その分配の基本ルールも改めて示すべきね。こうすれば、頑張って稼いだ分を公平に子孫に残せるし、国や地方自治体の将来の公費負担分も確保できるわ。みんなが安心して「逝ける」よう、知恵を絞ってね。

 

本当に見えてる?そこにある「人種差別」

2021年5月10日(月)

 ソシエッタです。

 

 2月に起きたタイガー・ウッズ交通事故のニュースはショッキングでした。一命はとりとめましたが、ゴルフ生命が絶たれる可能性があります。再びトップクラスの活躍はできるのでしょうか。一刻も早い回復を祈ります。

 

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 タイガーは自分のことを「カブリネイジョン(coblinasian)」と表現していました。これは合成語で、コーケイジョン(白人)、ブラック(黒人)、インド人、アジア人の頭文字をとったものです。自分のルーツに4つの人種があることを表現したのです。さしものタイガーも差別偏見から免れませんでした。保守的なクラブではラウンドさせてもらえなかったそうです。

 アメリカでは有色人種が車を運転していると、警官から故意に呼び止められることがあるそうです。タイガーほどの人なら運転手を雇ってもいいのでしょうが、普段から運転していました。差別偏見への抗いだったのかもしれません。そのことを思うと今回の事故は切ないです。

(ジェームス・M・バーダマン「アメリカ黒人史」ちくま新書

 

 人種差別が無くならない理由は、「差がある」ことにしたい私たちの「信念」、それを支持しようとする「科学」、そして、これらを背景にした「政治」が存在するからです。

 例えば、「統合失調症」は代表的な精神疾患で、日本では120人に1人が発症するとされています。カリブ海域系の黒人が白人よりも多く診断されたことから、イギリスでは「黒人の病気」と呼ばれています。そして、研究者は探索によって関連し得る遺伝的領域を発見しました。でも、その影響は発症リスクを0.25%高める程度でしかなく無視できるものでした。ちなみに、第二次世界大戦の勃発前、ナチスの科学者は、「精神障害ユダヤ人では精神障害ポーランド人より2倍多く統合失調症が見られる」と考察しています。状況により人種的偏見のターゲットは変わっていくのです。それほど脆いものなのです。(アンジェラー・サイニー「科学の人種主義とたたかう」作品社)

 

 アメリカやイギリスだけではありません。今、中国でもウイグル人チベット人に対する差別が問題になっています。いえ、事態はそれ以上に深刻と言えます。

 新疆ウイグル自治区では、2017年以降、推定で100万人以上のウイグル人強制収容所に収監されています。強制労働や妊娠中絶・不妊手術が強いられ、宗教施設は破壊され、街中いたるところに監視カメラが設置されています。(清水ともみ「命がけの証言」WAC)(NEWSWEEK 2021.4.6)

 2020年6月、トランプ大統領が署名して「ウイグル人権法」が成立しました。拷問や不当な長期拘束を実施した中国当局者らを特定し、資産凍結や入国禁止を科すというものです。人権を重視するバイデン政権もウイグルの状況を「ジェノサイド(民族集団虐殺)」と認定しました。中国政府は「少数民族の人権は守られている」と反論しています。 

 チベットについても同様です。日常的にロックダウン状態にあり、別の村に移動するだけでも許可が必要とされます。血液・体液の強制抽出という拷問もなされています。チベットのような高地では十分な血液が無ければ生きていけないことは周知の事実です。加えて、46%以上の森林が失われ、核兵器製造施設による地下水土壌汚染が発生するなど自然破壊も行われています。(ペマ・ギャルポ「日本人が知らない中国の民族抹殺戦略」扶桑社新書

 そして、こうした背景には、単なる人種間の問題以上に、中国による領土拡大、石油やレアアース等の地下資源の確保といった政治的な戦略が存在します

 

 人種差別は日本には存在しないと思いがちです。しかし、先日、バスケットボール選手の八村塁さんと弟の阿蓮さんのツイッターのやりとりから、彼らへの差別中傷が毎日のようにあることが明るみになりました。アイヌ、沖縄の人たちに対する差別が問題になることもあります。「人と差をつけ、自分だけは安泰でいたい」という気持ちが無くならない限り、知らず知らず差別意識が頭をもたげてくることに注意しなくてはなりません。

 

 今、新型コロナウイルス感染症の拡大が人々の不安を増大させています。人種別の感染者数の統計結果まで報道されています。「自分だけは無事でいたい」という気持ち、差別意識を増大させかねません。

 今こそ、「Black Lives Matter(黒人の命が大切)」ならぬ「Everyone's Lives Matter(一人ひとりの命が大切)」という姿勢が必要です。差別があってもいいという風潮を野放しにすれば、次はあなたが差別されることになるでしょう。人種間の「差」なんて無いのです。いえ、そもそも「人種」という概念さえあってはならないのです。一人ひとりが違っていいということを尊重する意識を持たなくてはなりません。

 

電磁波包囲網が迫る!青い惑星の危機

2021年5月3日(月)

 エンヴィです。

 

 5Gが始まって1年が経ちました。実感がわきませんが、ひょっとしたらそのほうが幸せなのかもしれません。なぜなら、これからの僕たちの生活は電磁波の網にがんじがらめに絡み取られることとなり、そのことは、僕たちの健康にも自然環境にも大きく影響するからです。

 

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 電磁波による健康影響として、成長細胞へのダメージ、発がん性やがんの増殖、催奇形性、自殺や異常行動、免疫力低下、学習能力低下・・・が挙げられます。きりがありません。電磁波研究の世界的権威ロバート・ベッカー博士は、「人工の異常な電磁波は、周波数に関係なく全て有害である」と警告しています。 (船瀬俊介「ショック!!やっぱりあぶない電磁波」花伝社)

 

 日本にいると感じませんが、諸外国では研究が進んでいます。アメリカの国立環境衛生科学研究所(NIH)は、2Gと3Gの携帯電話から発生する電磁波にラットを被曝させて発がん性を調べる実験を行いました。約33億円を投じ10年以上の歳月をかけた世界最大規模の実験です。その結果、オスの心臓、脳、副腎で腫瘍が発生することが確認されました。また、ロシア国立研究センターで、カエルの心臓に電磁波を照射したところ、9割が心筋梗塞で止まったそうです。その他、カロリンスカ研究所が、高圧線の近くに住むと子供のがんが3.8倍増えるとするなどこの手の話は枚挙にいとまがありません。

 

 メカニズムとしては、細胞内のカルシウムイオンチャンネルへの影響が指摘されています。カルシウムイオンは、神経伝達物質の放出や筋肉の収縮、遺伝子の発現、免疫細胞の活性化など多くの役割を果たしています。電磁波はこれを過剰にさせるようです。

 各種ホルモンにも影響を与えるとされています。外的ストレスに対抗するために分泌されるアドレナリンとノルアドレナリン、その前駆物質であるドーパミンを減少させます。さらに、これらのホルモンを調整するフェニルチアミンも減少させます。ちなみに、フェニチルチアミンは注意欠陥多動障害(ADHD)やうつ病で低下するそうです。(加藤やすこ「5Gクライシス」緑風出版

 

 こうして改めて周りを見渡すと、僕たちの日常は電磁波を発生する器具でガッチリ固められています。電子レンジ、IH調理器、ホットカーペットからACアダプター、配電線、蛍光灯・・・と幅広く存在します。

 そして、さらに強力な電磁波を生む「5G」のスマホが待ち構えています。5Gの新技術「ビームフォーミング」は、ユーザーに向けて集中的に電磁波を送ることで超高速・大容量通信を実現するものです。そして、高い周波数は遮蔽物を嫌いますので、5Gを利用するのであれば基地局を増やすこととなります。スマホによる脳へのリスクは指摘されています(アンデシュ・ハンセン「スマホ脳」新潮新書)。ひょっとしたら、電磁波が影響しているのかもしれません。

 

 ヒトだけでなく、動物や植物など自然界への影響も心配です。ドイツでは、携帯電話基地局に面している方向だけ樹木の枝が枯れるという異常が見つかりました。ヨーロッパ各地では野鳥や昆虫が消えたという報告もあります。

 驚くべきは、地球全体への影響までも指摘されていることです。ミリ波を出す通信衛星に囲まれると、地球と電離層の間に存在する「シューマン共振」が変化し、人間や動物の脳波や、睡眠と覚醒に関わる生体リズムに影響を及ぼす可能性があるからです。

 

 僕たちは、リスクを正しく知ることから始めなければなりません。日本では総務省が1990年に発表した「電波防護指針」に従っていますが、多くの国が採用しているのは、日本よりも厳しい国際非電離放射線防護委員会(ICNIRP)の指針値です。諸外国では、訴訟も多く起きています。ロイズなどの保険会社は、いちはやく電磁波を保険の対象から外しています。

 しかし、日本における「声」は小さいです。目の前にあるメリットが大きすぎること、電磁波のように見えないものによるリスクを感じにくいことが理由ですが、それ以上に、海外の情報が日本語として出回らないことが問題です。大手メディアも巨額の広告料を失うので広言しません。

 そうです!日本は放っておけば「鎖国」を続けることができる国なのです。いつの間にかリスク(黒船)が突如目の前に現れて、それこそ「夜も眠れない」状況に陥るのです。

 

 新型コロナウイルス感染症についても同じと言えるでしょう。お上や国が提供する情報を待ってから動くのではなく、日頃からリスクへの警戒心を持ち、英語など外国語により情報収集することが大事です

 今の日本は世界のトップランナーではありません。あらゆる分野において「先進国」であるというプライドを捨てなくてはなりません。世界がどのような状況にあるのかを知りながら、日常生活を快適に暮らす習慣を身に付けるべきです。