忍び寄るクライシス。守ろう!「ワークウーマン」の健康

2022年8月8日(月)

  ハルです。

 

 渡辺満里奈さんたちが、「大人の女史会」というプロジェクトの中で更年期のことを語っていますね。女性ホルモンが枯渇して「砂漠です」にはドキッとしました。日本の女性は男性より平均寿命は長いものの、健康寿命についてはそこまで差がない状況にあります。女性の社会進出を後押ししようというのであれば、女性の健康を守ることが重要になります

(平均寿命)男81.41 女87.45 (健康寿命)男72.68 女75.38(いずれも令和元年)

 

 

 女性の健康の特徴は、ライフサイクルに応じて考える必要があるという点です。月経があり、ライフイベントとして妊娠・出産があるのです。

 月経は月経痛のほか、動機、めまい、頭痛、悪心、嘔吐などの症状を伴います。毎月あると思うだけでもげんなりしますが、加えて、月経の3~10日前にうつやイライラなどの精神症状をきたすことがあります。これは月経前症候群PMS)と呼ばれ、女性の9割が影響を受けます。でも、満足に研究されたためしはありません。むしろ、勃起不全(ED)の研究のほうが進んでいて、様々な治療薬があるくらいです。

 こんな月経とおさらばできるのは嬉しいかもしれませんが、閉経前後に更年期障害が出現する可能性があります。症状はのぼせ、ほてり、めまい、うつ、食欲不振など様々です。出現時期は45~55歳であり、職場では管理職を任されるなど周囲から頼られる時期と重なります。

 そして、妊娠の時期には糖尿病や高血圧などの妊娠合併症が出現するリスクがあります。ただでさえ、お腹の子どものことを心配しなくてはなりません。自身の健康管理も忘れてはならないのです。

(太田博明ら「女性医療のすべて」メディカルレビュー社)

 

 こうした事情があるため、職場で男性と同じ働きを求める単純な「当てはめ」は困難であり、そのことが「女性の不利」を生んできました。結果、無償労働の75%は女性が担う状況となっています。それでも、職場で働くことも求められるので、世界中どこでもほぼ例外なく、女性は男性よりも長く働いています。ちなみに、ILO(国際労働機関)は、労働時間は週48時間を超えてはならないとしていますが、その「労働」とは有給労働のことです。家庭での無償労働はカウントされていません。女性の場合、長時間働くと心臓疾患やがんなど命に係わる病気の発症リスク、うつ病や不安症の発症リスクが高まります。配慮が必要です。(キャロライン・クリアド=ペレス「存在しない女たち」河出書房新社

 職場での化学物質への曝露も要注意です。一般に女性は男性より体が小さく皮膚も薄いため、毒物に対する安全な曝露量が低くなります。その上、体脂肪率が高く、脂肪に蓄積しやすい化学物質を吸収してしまいます。ネイルサロンでは毎日、マニキュア液、ニスに含まれている様々な化学物質に曝露することになります。こうした化学物質の多くは、がん、流産、肺病との関連が指摘されています。立ち仕事も多いです。男性より血圧が低い女性にとって、足のむくみも悩みです。

 その他、男性に馴染みの薄いものに、やせ願望と骨粗鬆症があります。ぽっちゃりした女性よりもスレンダーな女性を美人ともてはやす文化が影響を与えています。典型はモデルです。彼女たちに摂食障害が多いことは知られていません。自ら食事制限を行い、体重減少や無月経をきたすのです。女性の社会的役割が変わる中で、母性を中心とした伝統的な女性観を嫌がり、自ら「からだ」をコントロールしようとするのです。(ロバート・L・パーマー「摂食障害者への援助」金剛出版)

 無理なダイエットでカルシウムを十分に摂っていないと、骨粗鬆症のリスクが増大します。閉経により女性ホルモンが欠乏し、骨が脆弱になります。だから、成人すると手遅れで、フレイル状態に陥るおそれが高まります。若い時からの健康な食習慣と運動習慣が重要なのです。

 

 女性の健康を守る社会にしなくてはなりません。今後の取組として、研究が挙げられます。女性の健康に関するデータの蓄積は、男性と比べて圧倒的に少ないです。ライフサイクル別に健康課題を整理し、日常生活や仕事への影響も評価する必要があります。

 もう一つは理解の促進です。三菱UFJリサーチ&コンサルティングが行った生理痛に関する実態調査によると、男性の76%は「分からない」「生理痛はない」と回答しています。特に男性は正しい知識を持つことが重要です。併せて、月経随伴症状や更年期障害のように目に見えにくく、想像力が働きにくい健康課題については、差別や偏見を招かないよう注意を払う必要があります。アンケート調査を通じて注意喚起する手法が有効です。

 少子化社会となり、「子どもを守る」という意識は高まりました。今度は、社会全体で「女性を守る」という意識を持つことが大切です。

 

ついに来たインフレ!「異次元の崩壊」の始まり

2022年8月1日(月)

 フィナよ~。

 

 たつき諒の漫画『私が見た未来』(飛鳥新社)は、2011年3月の東日本大震災を予言していたと評判ね。そして、同書によると、2025年7月には日本列島を襲う地球規模の大災難が起きるみたい。

 でも、私の見立てだと、起きるのは自然災害じゃなくて世界経済の大混乱。今、インフレがひたひたと迫っている。これは予兆よ。そして、気がついたら、あっという間に社会のシステムが崩壊しているおそれがあるわ。備えが必要よ。

 

 

 インフレが起きる根拠は以下の3つ。

①世界規模で高齢化が進み、生産力が低下する。

②世界経済をけん引した中国経済が減速し、これに代わる規模の経済は生まれない。

③過度の金融緩和によって作られた相場が崩壊する。

 

 これまでの30年間を振り返ると、あまりにもデフレが世の中を支配してきたわ。その大きな要因は、労働力人口が増加し、供給が需要を上回ったことによるもの。要はモノがあふれて物価が抑えられたのね。

 先進国では戦後のベビーブーマーが労働力を担ってきたわ。女性や65歳まで働く人も増えた。そして、中国の目覚ましい経済成長、ソ連崩壊後に東欧諸国がグローバル経済に参入したことで、大量の労働供給がなされたのね。こうして完成したデフレへの圧力はあまりにも強力だったため、リーマンショック後に行われた大規模な金融緩和や財政投入をもってしても、マイルドインフレーションさえもたらすことはできなかったわ。国が金をどんどん刷っては、というMMT(現代貨幣理論)まで飛び出したわ。(チャールズ・グッドハート&マノジ・プラダン「人口大逆転」日本経済新聞出版)

 

 でも、ついに労働力人口が限界を迎える時が来たの。先進国を中心に少子高齢化が進み、労働人口は減少していく。その上、高齢になると認知機能や運動機能の低下は避けられなくなる。医療・介護のコストは劇的に増加するわ。たとえIT技術を使って労働の自動化が進んだとしても、こうしたケア労働まではカバーできないわ。移民の数も減少傾向にあるから、これまで何とか持ちこたえてきた国もこれからは厳しくなるでしょうね。

 そして、何と言っても中国の経済成長が鈍化することは大きいわ。経常収支黒字は2007年にピークを迎えていて、これからは赤字に振れていくでしょうね。地方の余剰労働力が都市部へ移動することで生じた利益も底を打つわ。「90後」と呼ばれる1990年生まれの若者なんか、給料のほとんどを趣味や娯楽、ファッション、美食に費やしていて自立とは程遠いみたい。「一人っ子」政策を「二人っ子」政策に転換したところで、教育や住居にお金がかかるから人口増加は望めないわ。(青樹明子「家計簿からみる中国 今ほんとうの姿」日経プレミアシリーズ)

 だからこそ、国外に打って出ようと「一帯一路」構想を唱えたはいいけれど、成長が乏しい世界で十分な経済活動が行われるかは疑問ね。中国が望み薄ならと、同様に巨大な人口を抱えるインドに期待が集まるかもしれないけど、インドの弱点は行政資本が極端に弱くって、戦略的な協調性に欠けること。ここは民間活力に頼りたいとこだけど、いかに早く効率的に規制緩和を行えるかが鍵よ。

 以上のような人口トレンドを背景とした世界経済の退潮に加えて、グローバル化から自国ファーストへの反転、原油の値上がり、新型コロナ感染症による流通の停滞と感染終息後の景気回復、ロシアのウクライナ侵攻等の地政学リスクの上昇、米ドル利上げなどによって、インフレが進行することは間違いないわ。

 

 じゃあ、これからどうなるのかしら?

 インフレは私たちの生活を直撃するわ。なるべく無駄な買い物はしなくなるわね。将来が不安だと貯蓄が進むわ。こうして、消費活動が低下して、経済が縮小するの。そうなると、いかにAIやDXで経済成長させると言ってみたところで、「稼ぎ場」が小さくなるわけだから限界があるわ。

 金融面の影響は危機的よ。膨らみ過ぎた株価も天井を打っているから、いざ売りが始まると「投げ売り状態」になるわ。そうなると、みんな現金を欲しがって金利が上がるでしょうね。金利が上がると債権価格も下がって、こちらもバーゲンセールが始まるわ。年金は巨額の運用損失を被るし、国債を大量発行してきた財政運営も一気に窮地に陥るわ。今度は「異次元の崩壊」が起きるでしょうね

 

 問題はこうした事態に全く準備ができていないことよ。今からでも財政規律を「死守」することが大事よ。そして、年金不安に応えながら、消費市場を適正な規模に維持するため、いよいよベーシック・インカム導入の議論を本格化させることね。マイナンバーカードを普及させて給付を確実にするとともに、財源を確保するため、徴税を確実に行って再分配できるよう確固たる仕組みにするの。ピンチはチャンス、新しい世づくりをスタートさせるのよ

 

さようなら男性・・・人新生は「女性がリード」する時代です。

2022年7月25日(月)

 ソシエッタです。

 

 ウクライナ侵攻は長期化し、混沌としています。ロシアのプーチン大統領に毅然と立ち向かい、NATO加盟に踏み切ったフィンランドのマリン首相、スウェーデンのアンデション首相はいずれも女性です。

 現代社会はあまりにも「男性中心」で作られ過ぎています。その社会とは経済至上主義の世の中です。そして今、行き着くところまで来てしまった感があります。これからは人口が減って国を維持できなくなります。環境問題のように経済成長の足を引っ張ると捉えられる課題は先送りされ、結局は自分たちの首を絞めることになります。「人新生」の社会は、人類全員が共栄すること、地球と共存することが求められます。女性がリードする社会が切望されます

 

 現代社会では「男性=普遍的」です。私たちの意識の奥底にまで浸み込んでいます。 ごく身近な例だと、オフィスの標準室温があります。標準室温は、1960年代に47歳で体重70キロの男性の安静代謝率を基準に設定されました。でも、女性の安静代謝率は男性より少ないです。だから、標準室温は、女性にとっての適温より2.8度も低くなっているのです。女性はクーラーの効く部屋で、余分に一枚服を重ね着しなくてはなりません

 命の危険さえあります。自動車事故に遭う確率は男性の方が高いですが、女性が事故に遭った場合の重傷化率や死亡率は男性より高くなります。女性にとっての安全性が十分でないのです。ニュースなどで見る衝突安全テストでは、運転席に男性ダミーを、助手席に女性ダミーを置くのが典型です。これでは、運転席のスペースなど女性に適したデータが取れません。妊婦だとなおさらです。

 医療データはもっと露骨です。医薬品の治験は男性が多いです。このため、女性は医薬品の過剰摂取のリスクにさらされています。高血圧の治療薬は、男性の心臓発作による死亡リスクを下げる効果がありますが、女性だと逆に心臓関連死のリスクが高まります。診断基準も同様です。自閉症の診断基準は男子向けに開発されています。このため、女子のケースが見過ごされた結果、「自閉症は男子に多い」とされている可能性があります。AIによる医療診断補助も、今のままでは女性にとって致命的な問題が生じる可能性があります。

 このように男性中心にデータがとられ、これに基づいた技術開発が行われています。女性にとっては、目に見えない「虐待」なのです

(キャロライン・クリアド=ペレス「存在しない女たち」河出書房新社

 

 極めつけは、経済への貢献が何ら評価されていないことです。経済成長率を示す指標「GDP」が開発された時、料理や掃除といった家庭における無償労働が「除外」されました。データ収集に膨大な手間がかかることが理由です。実は、女性による無償労働は10兆ドルもGDPに貢献しているそうですが、女性は経済成長の蚊帳の外に置かれることとなりました。そして、社会保障をはじめとする各種制度は男性の世帯主を中心に構築され、現在に至っています

 特に、婚姻制度は男性と女性の関係を法的に認めることで、次世代を再生産するための「家族」を形成する役割を果たしてきました。これは、女性を家父長制の支配下に留める「仕掛け」と言えます。しかし、これからは変わっていくことでしょう。経済至上主義を追求した挙げ句、女性も家庭外での仕事に駆り出されることとなりました。帰宅したら家庭内の無給労働もあり、くたくたです。でも、経済的に自立できるとなれば話は別です。もはや家庭に縛られる必要はありません。婚姻率は低下し、婚姻制度はセーフティネットの機能を果たせなくなっています。社会保障のあり方そのものが問われるようになっているのです。(清水晶子「フェミニズムってなんですか?」文春新書)

 

 これからの社会をリードしていけるのは女性です。女性は10年先を見て生きています。心身が種を保存し、次世代につなごうとするためかもしれません。モノを買う時は、自分を取り巻く人たちのことも考えて商品を見ています。周りをよく見ているのです(日野佳恵子「女性たちが見ている10年後の消費社会」)。このため、社会のどこが脆弱で、どこをケアすればいいかを考え、協力しながら社会をまとめていくリーダーシップは、女性リーダーにこそ期待できるのです。

 どんな社会にも他者をケアするしくみは必要です。そうでないと、経済だってうまくいきません。公正、平等、ケア、環境、信頼、健康といった、これまで経済の「お荷物」とされてきた価値観が重要になっています(カトリーン・マルサル「アダム・スミスの夕食を作ったのは誰か?」河出書房新社)。経済至上主義が飽和しきった「人新生」の社会では、男性は口をつぐんで女性によるリードを見守るべきです。そして、女性は社会をリードしていくことを自覚するのです!

 

 

2040年、日本は「ごみの国」となる!?

2022年7月18日(月)

 エンヴィです。

 

 新型コロナがまた猛威を奮っていますね。鳴り物入りの「県民割」などはいったん中止です。でも、この連休も含めて行楽の予定を入れているみなさん、ごみの処理はちゃんと行っていますか?

 分別しているから「自分の役目は終わり」と思っていませんか。だとしたら、大いなる勘違いです。ごみクライシスの脅威が迫っています

 

 

 日本では年間約4,300万トンの一般ごみが出ていますが、焼却処理された後の残りかすは最終処分場に埋め立てられます。直接埋め立てられるものもあります。そして、全国に1,620ある埋め立て処分場は、あと20年で満杯になるそうです

 悩ましいのがプラスチックごみです。ちゃんとリサイクルされていると思われがちですが、現実は違います。6割以上が燃やされ、1割は海外に輸出、真の意味でリサイクルされているのは1割ちょっとなのです。さらに、新型コロナによって、プラスチックごみが増えます。食料品や日用品のデリバリーやネットショッピングの利用が増加し、容器・梱包資材が大量に使用されるとともに、マスクの多くが不織布やウレタンといったプラスチックでできているからです。

 世界はどうなの?と思われるかもしれませんね。主要国の「リサイクル」と「コンポスト」が占める割合(%)は以下のとおりです。

 韓国(59.2, 0.8)ドイツ(49.5, 17.8)スウェーデン(29.9, 15.9)オーストラリア(28.0, 17.7)イギリス(27.1, 16.8)アメリカ(25.1, 10.0)フランス(25.1, 18.9)

 

 日本はそれぞれ19.8%と0.4%です。一目瞭然ですね。どちらも進んでいません。ちなみに、日本のごみ処理は圧倒的に「焼却」(73.7%)です。世界には2000以上のごみ焼却施設がありますが、日本はその半分以上です。

 焼却処理の課題は、焼却炉を止めると再起動に時間がかかるので24時間稼働させなくてはならず、そのため常にごみが必要という本末転倒な状況にあることです。これでは、リサイクル等に舵を切ろうというインセンティブが働きません。紙おむつごみの問題もあります。紙おむつは水分を含んでいるので燃えにくく、多くの燃料を要します。焼却炉を傷めてしまいます。日本は高齢化が進み、大人用おむつが増加しています。

 さらによくないのが、ごみの輸出問題です。日本は世界第2位のプラスチックごみ輸出国です。輸出先は中国から東南アジア諸国、今はアフリカへと移っていっています。石油プラントが無い国にとっては輸入するのが手っ取り早いのですが、中には汚染ごみや有害物などリサイクルできないものもあります。低賃金で雇われた労働者や子どもたちが手作業で仕分けを行います。処理されないものは放置され、環境汚染につながります。「SDGs」と無縁の世界なのです。

 

 日本は先進国としての責務を果たさなくてはなりません。まずは、生産・流通の段階から、ごみを出さない工夫が必要です。欧米の取組が参考になります。EUでは、使い捨てプラスチック10品目の市場流通を禁止しています。フランスは世界で初めて食品の売れ残り品の廃棄を法律で禁止しました。ファッション業界も同様の措置に踏み切りました。

 リサイクルでは、元の製品より価値の高いものに再生することを「アップサイクル」と言います。スナック菓子からアルコール飲料まで、幅広い商品がアップサイクルされていて、アメリカでは認証システムまで設けられています。(インフォビジュアル研究所「図解でわかる14歳から知るごみゼロ社会」太田出版

 

 日本の1人1日当たりのごみ排出量は約1kgと世界第2位です。まずは、絶対量を減らさなくてはなりません。ごみ処理についても、自治体がかける費用と比べて製造企業の「委託金」はその7分の1と少ないです。委託金が、「役目は終わった」という「免罪符」になってしまっています。企業の努力と個人の意識が重要です。

 例えば、使い捨て容器・包装資材をやめることです。どうしても使用する場合は、リターナブルにして、RFIDタグを付けて管理するのです。「透明化」を図り、責任の所在を明らかにするのです(廃棄物処理・リサイクルIoT導入促進協議会「サーキュラーエコノミーを加速する『情報革命』環境新聞社)。

 そして、デポジット式にして、商品の購入者がコンビニ等を通じてこれらを返却すれば、上乗せした価格分を還元するのです。国は、ごみの流れを上流(製品の段階)から整えつつ、個々のプロセスをビジネス化する方向に誘導するのです。同時に、全国の焼却施設を集約化して減らしていきながら、リサイクル技術の研究開発に投資すべきです。ごみ箱に入れて見えなくするのではなく、ごみクライシスの現実を個人が「直視」できるようにすることが重要です。

 

養殖で守れるか、寿司ネタたち!

2022年7月11日(月)

 フーディンだよ。

 

 8日、安倍元総理が亡くなったね。悲しいよね~。

 お魚もそうだよ。総務省家計調査によると、よく食べられているお魚は多い順にサケ、マグロ、ブリとなってて、寿司ネタでも人気だな~。こうしたお魚が食べられなくなるかもしれないって聞いたら悲しくない?

 

 日本の漁業生産量は1980年当時は世界1位だったけど、その後減少しているんだ。200海里規制に加えてマイワシ資源の減少が原因みたい。つらいのは、漁業就業者が激減していること、魚介類資源が底をつくかもしれないってことなんだな~。

 生産量の主力は6割を占める沖合漁業だけど、その担い手は中小規模の漁業層なんだ。沿岸漁業に至ってはほとんどが個人経営で、年間販売額が300万円未満ってところが大半だよ。いずれも経営規模が小さいんだな。それに、早朝から始まり、危険も伴う厳しい労働環境、機械化や自動化に馴染まない作業など、高収入じゃなきゃ割に合わない仕事なんだな~。しかも、漁港集落の7割が過疎地域で高齢化率39.7%。漁業就業者数は1993年の32.5万人から2018年の15万人と、この四半世紀で半減している。漁船も操業20年選手が7割を超えていたりと、とても「持続可能」とは言えないんだな~。

 加えて、国内の消費量も減少傾向にあるから、市場も活気づかないんだな~。お肉が安く手に入るっていうのも考えものだね。一方で、世界の消費量はこの半世紀で2倍以上に伸びている。生産量も、中国、インドネシア、インドといったアジアの大国が上位に名前を連ねるようになってる。でも、漁獲を増やすことが可能な資源は15%しか残されていないから、このままだと本当に魚介類全部がウナギのように貴重な存在になっちゃうよ。このため、国際的な資源管理が進められているよ。国内でも2020年に施行された改正漁業法によって、TAC(漁獲可能量)などの新しい資源管理システムが整えられたんだな~。(濱田武士ら「図解知識ゼロからの現代漁業入門」家の光協会

 

 お魚を食べ続けていくことが厳しい状況にはあるけれど、解決策として「養殖」が挙げられる。世界的にも、漁業生産量が約9000万トンで横ばいの中、養殖生産量は1990年に約1700万トンだったのが2016年に約11,700万トンと急増しているし、種類も約600種もある。養殖だと質・量ともに安定供給できるから安心だよね。

 ちなみに歴史的に海水魚の人工孵化・仔魚飼育で最も古いのはマダイで、1869年に岡山県で行われたんだって。今だと近畿大学水産研究所の「近大マグロ」が有名だよね。クロマグロの「完全養殖」は、厳しい漁獲量制限が行われていることもあって、世界的にも注目されている。他にも、ブリ、トラフグ、ウナギ、サケ・マス、エビ類、貝類、藻類の養殖が行われている。期待できるね~。政府も、2018年の「水産生産の改革」の中で、養殖業を成長産業にする方向性を打ち出したよ

 

 もちろん課題もあるよ。大きいのは餌問題。餌料代は経営を左右する。さっきも言ったように、世界的な養殖生産の増加に伴って、餌となる魚粉や魚油の価格が高騰しているんだ。このため、これらの代替化が必要になっている。魚粉のほうは、昆虫や微生物性タンパク質などに注目が集まっている。栄養面から100%の代替は無理としても大豆やトウモロコシといった植物性タンパク質を利用するのも手だね。水銀蓄積量が減少するというメリットもあるし。あと魚油のほうは、大豆油、パーム油などの植物油が利用されているよ。

 管理コストも重要なんだな~。餌の食べ残しやフンが海水中で分解される過程で多くの酸素が消費され、しかも窒素とリンができちゃうんだ。これは、海水の「富栄養化」を引き起こして、お魚にとって有害な植物プランクトンを発生させるよ。また、稚魚を選別する作業は目視で行う必要があるから大変なんだな。軽い異常だと見分けにくいみたいだよ。さらに、養殖漁場も拡張したいところだけれど、沿岸域の適地はほとんど開発されてしまってるんだな~。(近畿大学水産研究所「トコトンやさしい養殖の本」B&Tブックス日刊工業新聞社

 

 次なる方策として、今後は「陸上養殖」を積極的に開発していくことが考えられるよ。場所やコストの問題はあるけれど、環境をコントロールしやすいというメリットは大きいね。それから、品種改良にも期待したいね。「遺伝子組換え」によって、飼育期間が半分近く短縮されたサーモンが開発されているし、「遺伝子編集」によって、可食部が増えたマダイやトラフグの研究が進められている。病気に強い品種を作る試みも必要だね。お魚には認知症予防が期待されるDHAや抗酸化作用を持つアスタキサンチンといった成分が含まれている。技術開発を進めて、おいしくて多様な日本の食文化を維持したいね。

 

オードリー・タンが選ぶ学校教育ー科学的思考の世界ー

2022年7月4日(月)

  エディカです。

 

 新型コロナ感染症がじわりと再拡大する様子を見せているわ。驚いたことに、お隣の台湾では日本を上回る感染者を出しているの。台湾といえば、初期対応とその後の封じ込めに成功してきた印象が強いだけに、これって一つの割り切りと捉えていいのかしら。大事なのは、政府の方針を国民が受け容れていること。そのためには、科学的思考をみんなが持てる教育システムを追求すべきね。

 

 感染拡大が始まった当初、日本ではあっという間にマスクが入手困難になったわ。台湾も同じ道を行きかけたけど、それを止めたのが、マスクを買った個人一人ひとりを登録したことと薬局にあるマスクの在庫数情報をオープンにしたこと。これらの仕組みを考案したのが、デジタル担当大臣であるオードリー・タンよ。IQ180というケタ外れの知能もさることながら、オープンな政治を提唱する彼女の思想に影響を与えたのは、人生を通じて痛感した教育の大切さなの。

 彼女は子どもの頃、成績が優秀過ぎて周りのやっかみを買い、壮絶ないじめに遭ったの。でも、彼女は思ったの・・・悪いのはいじめた相手じゃない、彼らは成績が伸び悩んでいることに苦しんでいる、我が子の成績を責める親もいる、学校では先生の言うことを聞かないと体罰もある・・・こうした世の中に疑問を持った彼女は、成績順位は人々がお互いに助け合い、協力して問題を解決する力とは何の関係もない、という信念を抱くようになったの。今回の仕組みだって、8000人にものぼるハッカーの力を借りてできたことよ。(石崎洋司「『オードリー・タン』の誕生」KODANSHA)

 

 オードリーの姿勢に見られるのは、どのような権威が相手であっても、その言うことを鵜吞みにせず、主張の前提を問う姿勢ね。まさに科学的思考よ。「科学」と聞くと、ついつい真理を追究することと捉えがち・・・そのせいで、科学はことあるごとに「支配」をもたらすものと批判されてきたし、予測が当たらないと「科学の限界」と片付けられてきたわ。でも、科学の本質は、世界を見て、調べ、考えるための最良の方法を絶えず追求するという姿勢そのものにあるの。

 なぜなら、私たちに見えていることが全てじゃない・・・世の中はあまりにも複雑で、私たちの感覚も様々な思考や先入観のせいで、結局は間違うように作られているからなの。例えば「地球は丸い」でしょ。そう教えられてきたし、宇宙からの写真を見ると納得よね。でも実際は完全な球体じゃないの。むしろ、地球を横からみると、両局がわずかにつぶれた楕円形をしていて、しかも南極の方がつぶれ具合が大きいの。こうした事実は科学的探究によって明らかにされるの。

 大事なのは、過去に得られた仮説や結果を絶えず問い直すこと、そのためには、まず、それまで得られた「知」を尊重し、どっぷりつかった上で、みんなが自由にかつ対等に議論を重ねていくことよ。(カルロ・ロヴェッリ「カルロ・ロヴェッリの科学とは何か」河出書房新社

 

 こうした科学的思考を養ってくれる「場」が必要よ。もはや、知識をひたすら暗記する教育は時代遅れね。スマホで何でも検索できる今日、教師が生徒にさらに情報を与えることほど無駄な行為はないわ。必要なのは情報の意味を理解したり、重要なものとそうでないものを見分けたりする能力や、大量の情報の断片を結び付けて世の中の状況を的確に捉える能力を身につけることよ。学び方については、基本的な英語力や計算力を身につけるとあとはいくらでも自習できる時代・・・個人個人の向き・不向きを捉えて、その時に必要なものを提供することが大事よ。

 オードリーが育った台湾では、1999年に「非学校形態実験教育」という方式が認められ、ホームスクールを申し込む人が増えたわ。ユニークなのはオランダね。学校を設立する自由まで認められているの。そこでは、モンテッソーリ、シュタイナー、ギフテッドなど様々な教育手法が採用されているわ。さらに言えば、どのような教育形態であっても、子どもたちが意見を言いやすい環境を意識的に作ることが大切ね。間違ったことを言ってもバカにされない、何を言っても怒られないといった心理的安全性を用意することで、科学的思考を導くことができるわ。(野本響子「子どもが教育を選ぶ時代へ」集英社新書

 こうした環境は多様な生徒を受け入れる土壌にもなるわ。ちなみに、今のGAFAMを支えている経営陣の中に純粋なアメリカ人はいないわ。世界中から才能が集まって、さらにアメリカで多様な才能に揉まれることで、斬新な創造力が生み出されるの(大前研一「経済参謀」小学館)。これからは、小中学校でも多様な教育形態を認めて、子どもたちが自分に合った学校を選べるようにすべきよ。もはや、成績順位は意味をなさなくなり、世界から一目置かれる教育システムになるはずよ。

 

「もう仕事しなくていいよ」と言われたら・・・?ケインズの大予言「仕事不足社会」!

2022年6月27日(月)

  レーブだ。

 

 参議院選挙が始まったが、今一つ盛り上がりに欠けるようだ。物価は上昇の気配にあるが、完全失業率は2.5%(4月)であり、雇用情勢は安定しているからだろうか。当初、心配された新型コロナウイルス感染症による雇用への影響も最小限だった。しかし、今後、仕事が減っていったら我々はどうなるのだろうか。このような思考実験が必要だったのではないだろうか。

 テクノロジーが進むと労働時間は短縮する。生産性の高い国ほど国民の労働時間は短いものだ。1930年、ケインズは、「100年後、1日に3時間働けば十分に生きていける社会がやってくる」と予言した。日本の労働時間でみると、1990年は2031時間だったが、2020年には1598時間と短縮されている(小黒一正「2050日本再生への25のTODOリスト」+α講談社新書)。

 ケインズの予言ほどに極端に短縮されていない理由の1つは「パイ変容効果」だ。経済情勢の変化によって職を失った労働者が別の作業に従事するようになることだ。製造業からサービス業への転換がイメージしやすい。

 しかし、21世紀の「パイ変容効果」は人間が対象でなくなる。理由はAIの進化だ。従来の機械は人間の動作をまねることが前提だった。その不十分な点を人間が補っていた。つまり、「機械+人間」のコラボが機能していたのだ。しかし、AIの進化は世界を一変させた。AIは全てのパターンの中から最適解を超高速に導き出す。それは決して「知能」とは言えないが、人間が従っている法則とは全く違う別次元の法則に従う。その結果、「機械+人間」より「機械」だけのほうが信頼のおける存在となり、「人間」はお払い箱となる。世界チャンピオンを破った「アルファ碁」を開発したディープマインド社は、50種類以上の眼疾患をエラー率5.5%で診断するプログラムを作った。このプログラムを眼科専門医8人の見立てと比較したところ、診断精度の高い医師2人と同じ結果を出し、残る6人を上回る正確さを発揮した。この6人は診断業務から外され、別の業務に就くかもしれない。しかし、その先には別のAIが待っている。こうして、人はどんどん追いやられる。タスクは細分化され、分析され、定型化していく。定型タスクはAIに奪われ、非定型タスクを担う労働者は、一部の高賃金者とその他の低賃金者に二極化していく。その中間にいる者こそ、「もう仕事しなくていいよ」なのだ。(ダニエル・サスキンド「WORLD WITHOUT WORK」みすず書房

 

 2020年はこうした未来に向けた思考実験ができるはずだった。新型コロナの感染拡大はテレワーク導入のブースターとなった。テレワークを進めるためには、仕事の内容に加えて、テレワークを受け入れられるだけの周りの理解や体制が必要となる。そのため、大企業ではテレワークにより労働時間を確保できたが、小規模企業は労働を中断せざるを得なかった。適応力に差が出た。また、新入社員にはテレワークばかりだと成長実感が得られないという問題も生じた。彼らのワークエンゲージメントをどう高めていったらいいか、試行錯誤した会社もあったことだろう。ピンチはチャンスなのだ。(玄田有史ら「仕事から見た『2020年』」慶應義塾大学出版会)

 

  危機は思いのほか短かった。まん延防止重点措置が繰り返される中、テレワークを一部取り入れつつ、従来どおりのオフィス出勤とのハイブリッドが進んだ。このハイブリッドの働き方でさえ、グローバルには65%が生産性向上を感じている一方、日本単独では39%と低い傾向にある。ジョブ型とメンバーシップ型の違いの現れと言えよう。(EY Japan ピープル・アドバイザリー・サービス「HRDXの教科書」日本能率協会マネジメントセンター

 裏を返せば、日本の働き方は、一人ひとりをみると非定型タスクの割合が高く、AIに浸食されにくい「堅牢」なスタイルと言える。しかし、それは生産性の点で、日本が世界から置いてけぼりを食うことを意味する。テクノロジーがもたらす失業は21世紀の間に深刻さを増し、世界は一足先にその洗礼を受ける。1日3時間の労働で済んでしまうのだ。世界は仕事に依存しない社会の創出に向けて切り替えていくかもしれない

 例えば余暇政策だ。観光地やテーマパーク、リゾートだけでなく、日常の暮らしの中で、コミュニティの人たちと手軽に余暇を楽しむ方法を見出すかもしれない。教育も、仕事能力の育成に留まらず、多面的な意義が見出され、その役割や手法が変わるかもしれない。ベーシックインカムなど、AIが稼ぐ収益を再分配するしくみが整えられ、文字通り、遊んで暮らせるようになるのかもしれない。そんな世界を指をくわえて見ていることにならないよう、働き方改革」の芽を真剣かつ丁寧に育てていくことが大事だ