不安を封じる「第2の公的保険」!

2022年12月5日(月)

 フィナよ~。

 

 新型コロナの第8波はどうなるのかしら。グリフォンとかケルベロスとかおどろおどろしい名前の変異株が登場したわ。みんな、ワクチン接種してね!

 ところで、コロナ保険の契約者って結構いたのね~。正直、これほど多いとは思わなかったわ。おかげで療養証明書の発行だけでも、行政や医療機関にとっては大きな手間だったみたい。日本は生命保険の加入率が80%超にのぼる「保険大国」よ。安全志向が強いのかしら。

 一方の保険業界はピンチね。加入率や保険金額は90年代をピークに下落傾向にあるわ。保険業界にとってはこれからが正念場。それは、私たちの「安心」に直結することにもなるの。フランスの経済学者ジャック・アタリ氏は、「21世紀の社会は、保険と娯楽が栄える」と予言したわ。これからは不安定さが増すと同時に、個人の自由と責任も拡大するからだそうよ。保険業界にとってはビッグチャンスなの。

 

 保険の歴史は案外古いわ。中世ヨーロッパのギルドでは普段から掛け金を出し合って会員の病気や葬儀費用をまかなった。日本では鎌倉時代の「講」に生命保険の仕組みがあった。近代以降は、日清・日露戦争の戦死者、スペイン風邪関東大震災の犠牲者に保険金が支払われ、保険に対する国民の理解が高まった。損害保険については、船の貨物の火災保険から始まって、第一次世界大戦の頃に自動車保険が導入されたわ。当時は国内の自動車がたった1000台の時代よ。人々の「不安」をいち早く先取りしたのね。

(中村恵二ら「保険業界の動向のカラクリがよ~くわかる本」秀和システム

 

 

 ここで強調しておきたいのは、リスクを完全に回避することはできないってこと。どんなに頑張ってもリスクはついてまわるわ。大事なのは「レジリエンス」を持つこと。ショックを受けても回復することね。

 もっと言うと、リスクを怖がり過ぎて、かえって次のショックに耐えられなくなってしまうことは避けなくちゃだめよ。感染を恐れてマスクや消毒に頼り過ぎた結果、本来身体が持っている抵抗力まで失われるっていう状況に等しいわ。話は変わるけど、新型コロナ禍の2020年、多くの国で倒産はそれほど増えなかったみたい。倒産リスク回避のため、「ゼロゼロ金利」のようにお金を注ぎ込んでゾンビ企業が多くなりすぎると、いつまでも成長の足を引っ張ることになるでしょうね。

(アンガス・ディートン「レジリエントな社会」日本経済新聞出版)

 

 次に来るショックに備えて「レジリエンス」を高めるという点で、これからの保険サービスのあり方は重要よ。顧客よりも保険会社のほうが顧客に関する情報を持つことになるの。リスクを最小化しつつ、「立ち直り」を早くするサービスを提供していくの。

 注目株は「デジタルヘルス」ね。病気になったら保険金が支払われるけれど、病気になる前から介入していくの。スマートフォンウェアラブル端末を活用することによって、顧客の身体や活動に関する情報を入手して、個人にカスタマイズされた健康な生活習慣を導いてくれるの。「AI食」や「コンビニジム」などで個別最適な食事や運動のアドバイスをしてくれるんだったら、言うことを聞いてみたくなるわ~。(日経トレンディ 12/2022)

 

 テレマティクスもいいわね。自動車に設置された通信媒体が運転を支援してくれるの。「ここは事故が起こりやすい交差点だから気をつけよう」とAIがアドバイスしたり、顧客の運転のクセを見抜いて警告表示したりすると冷静に運転できるでしょうね。

 もちろん、リスクの低い行動をとればとるほど保険料が安くなるというインセンティブは必要よ。このようにITを使用した保険サービス「インシュアテック」は、2021年度で1880億円もの国内市場規模になるわ。世界でも11.9%の成長率と予測されているの。

 

 保険業界の持つポテンシャルは大きいわ。ポイントは個人に寄り添っていくこと。いっそのこと公的保険みたいにならないかしら。

 例えば、医療保険はカバーできる医療行為が特定されていて、その他の医療行為は自由診療になる。そこで、毎月私たちが払う保険料を公的保険分と民間保険分に分割して財源にする。そして、生活習慣病のような個人の生活習慣が要因とされている疾患に対する医療行為については公的保険を適用せず、民間保険から保険料を支払うこととしてはどうかしら。

 この場合、疾患にかかれば保険料は上がってしまうけど、AIが個人の行動変容を促すわけだから、うまくいけば保険料を抑えられるかも。公的保険は財源不足。かといって民間保険は広がりにくい。だからこそ「第2の公的保険」として活用させるの。

 これからの保険は、単に「安心」を売るのではなく、顧客が「責任」を果たすことを促す仕掛けも必要よ。そのことが個人の「レジリエンス」を高めていくことにもなるわ。

 

「ストーリーテラー」こそが世界のチャンピオンになる!

2022年11月28日(月)

 ソシエッタです。

 

 サッカー・ワールドカップが盛り上がっています。優勝カップを手にするのはどの国でしょうか。とても楽しみです。

 現代社会の勝者は「国」ではありません。「ストーリーテラー」です。「ストーリーテラー」とは、文字どおり「物語の語り手」です。狩猟採集民族では長老がストーリーテラーです。優れたストーリーテラーのいる集団は結束力があり、他の集団よりも機能します。

 

 人はストーリーから学び、社会を形成してきました。コミュニケーションの重要な目的は、他人の心に影響を与えてなびかせることです。その際、ストーリーは有効な手段となります。同時に人はストーリーに適合するように進化してきました。脳は無防備にストーリーを受け入れます。理性が敗北する時は大抵ストーリーによってです。

 トランプ大統領が登場した時、彼は「強いアメリカ」というストーリーを引っ提げました。その主張には、メキシコとの国境に壁をつくるなど危ないものが多かったのですが、支持する国民は決して少数ではありませんでした。

 TVドラマはいつも人気です。人を魅了してやまないのはそこにストーリーがあるからです。勧善懲悪の度合いが高い番組ほど視聴率は高くなります。フィクションは、途中でものごとがどんどん悪くなって最後に好転し、ハッピーエンドになるのがお決まりのパターンです。このため、フィクションをたくさん視聴する人は、自分が「良い世界」に生きていると感じています。

 

 危険です。ストーリーに視聴者を迎合させる研究がなされています。感情と生理反応には関係があります。恐怖を感じれば汗をかき、呼吸が乱れます。逆に、生理反応からコンピュータが心をマイクロ秒のレベルで読み取り、感情を誘導するよう、オーダーメイドのストーリーを提供できるようになります。デジタル・ストーリーが人心を操作するのです。(ジョナサン・ゴットシャル「ストーリーが世界を滅ぼす」東洋経済

 

 既にデジタル・ストーリーは従来のメディアを破壊しています。顕著なのは新聞や雑誌です。新聞の発行部数はこの20年間で4割減です。コンビニの売上に雑誌コーナーが占める割合は、2002年の7%をピークに年々低下し、今では1%程度です。

 代わりに、新聞や雑誌のデジタル版やオンラインニュースが席捲しています。これらに影響を与えているのがSNSの存在です。新聞や雑誌は記者数が限られ、会社の経営が必要です、SNSでは書き手が多く、経営なんて考える必要はありません。そして、SNSはストーリーを提供します。根拠不明であろうが、真偽不明であろうが、面白いものは面白いのです。(小倉健一「週刊誌がなくなる日」ワニブックスPLUS新書)

 

 

 このため、事件や事故が発生して、記事にするためにまず優先されるのはSNSのチェックです。画像は早く確保しないと、他の新聞社やテレビ局に持っていかれます。何人もの記者がパソコンにかじりつくことになります。事件が発生した近所での「聞込み」なんてのは死語になりつつあります。

 また、デジタル版では、ニュースの価値判断より、速報性や話題性が最優先されます。とにかくアクセス数を稼ぐことが重要なのです。デジタル版ランキング上位のニュースは、①事件・事故の速報、②タレントや有名人のスキャンダル、③事件・事故のワイドショー的な周辺記事です。ネガティブな情報は関心を引きやすいのです。悲しいことですが、「他人の不幸は密の味」なのです。

(坂夏樹「危機の新聞 瀬戸際の記者」さくら舎)

 

 このようにして、デジタル・ストーリーは既存のマスコミをシステムごと破壊し、君臨します。提供されているストーリーはどこまで真実か分かりません。不安定さが増幅します。でも、読み手は気にしません。大事なのは、「ストーリーとしてよくできているかどうか」だからです。そして、「ストーリーテラー」は世界の支配者になります。しかし、短命です。皮肉なことに、デジタルは多数の「ストーリーテラー」を生み出すことを可能にします。頂点をめぐる争いが絶え間なく起こります。この結果、社会は劣化していきます。社会を発展させてきた「ストーリー」が、今度は社会を滅ぼすのです。

 

 対抗手段は容易ではありません。欧州連合や米国は、フェイスブックツイッターなどにフェイクニュース対策への協力を要請しました。世界にはファクトチェックをする民間団体が200以上あります。でも、焼け石に水です。

 一人ひとりの鍛錬が大切です。ストーリーに容易に支配されない「心」を身に付けるのです。ローマ五賢帝の一人、マルクス・アウレリウス・アントニヌスは、宮廷内のいざこざや外国との戦いの中で、自らの思考を『自省録』に著し、外化することにより、「ぶれない」自分を保ちました。日記などがいいでしょう。ぜひ試してみてはいかがですか。

 

「デジタル・ダイエット」を広めよう!

2022年11月21日(月)

 エンヴィです。

 

 「COCOA」が去っていきます。新型コロナの接触アプリとして活躍しました。不具合もあって知名度は高かったです。第8波到来と言われる中でのちょっぴり寂しい引退です。

 今回のお話は、デジタルの環境汚染についてです。スマホ、パソコンと身の回りにはデジタル機器がたくさんあります。その一つ一つが環境に負荷をかけています。Youtubeで動画を見ること、LINEでやりとりをすること、食事を写真に収めることを減らしてみませんか。

 

 

 「えっ?デジタルを使うことは『エコ』なんでしょ」とお思いかもしれません。確かにデジタルはペーパーレスを実現し、移動に消費するエネルギーを節約します。この点では間違いなく「エコ」です。でも、トータルで見るとそうでもないのです。

 デジタルはモノを極限レベルで「消化」しています。そもそも身の回りのモノは僕たちが思い描くよりはるかに多くの資源を元にして作られています。重量にして平均30倍です。デジタルに使われるICチップだと、なんと1.6万倍にもなります。

 ここで問題です。僕たちが使い慣れているスマホには、何種類の原材料が使われているでしょうか?答えは50種類以上です。エルビウムハフニウム、ツリウムなど聞いたことのない元素も含まれています。

 

 こうした鉱物資源の「消化」は何を引き起こすでしょう。鉱山や処理工場の残留物の汚染が問題となっています。スマホだけじゃありません。デジタルは、世界の銅の生産量の12.5%、アルミの7%を使用します。高速通信を可能にする光ファイバーにはレアメタルが使われています。世界中で鉱山周辺の汚染が進んでいるのです

 また、資源の採掘には動力が必要です。石油や石炭といった天然資源が消費されます。物流も考えなくてはなりません。ICチップは、製造工程が500にもわたっていて、世界の1万6000社からなる下請けネットワークによって完成します。運搬が必要です。膨大な燃料が消費されます。

 扱うデータ量も青天井で増えています。利用者のストレスを軽減するため、高速性やグラフィックの美しさが追求されています。インストールされるアプリやプログラムは重くなる一方です。利用者も、世の中の動きについていけなくなるのを嫌がり、よりパフォーマンスの高い機種に乗り換えます。その結果、パソコンの「賞味」期限は4年になりました。スマホだと2年です。全く故障していないにも関わらずのチェンジです。

 

 データ量は端末で扱うレベルをはるかに超え、クラウドが無ければやりとりは成立しません。その容量もすぐいっぱいになります。人に代わってマシンが自動的にインターネットをじゃんじゃん使っているせいもあります。さらに、システム障害が起きれば容量を増やさざるを得ません。いたちごっこが続きます。

 クラウドの正体は空中の電波などではありません。地上に根を下ろしたデータセンターです。冷却のため、大量の水、ガス、そして電気が消費されます。この点、タダで「涼しさ」が手に入る北欧諸国はデータセンター設置にうってつけです。ところが近年は安全保障の観点から、大国がデータセンターの自国内設置を進める動きが出てきました。そうなると、自国で冷却する方法を導入しなくてはなりません。森林伐採やダム建設など、環境に大規模な負荷を与えることなく耐えうる土地が一体どれくらいあるのでしょうか。(ギヨーム・ピトロン「なぜデジタル社会は『持続不可能』なのか」原書房

 

 どうですか?デジタルは「エコ」じゃないのです。消費者もデジタル汚染の共同責任者なのです。汚染を減らす行動をとるべきです。

 デジタルは、世界中で生産される電力の10%を消費し、世界中で排出される二酸化炭素の4%を出します。カーボンニュートラル(炭素中立)の世界では、政府は「ゼロカーボンアクション30」を提案しています。節電や節水など30の行動変容を求めています。これらに「デジタル・ダイエット」を加えるのです。不要不急のデジタル利用を控える、長く使用する機器を選んで購入するなどです。(増原直樹「30のキーワードで理解するカーボンニュートラル日本能率協会マネジメントセンター

 デジタル企業の協力は欠かせません。フランスは2021年に電子製品の「修理しやすさ指数」の表示を義務付けています。ドイツやアメリカには自分で修理する「修理カフェ」があります。自分で修理できるレベルの製品化を求めるのです。

 インターネットの無料利用にも制限をかけましょう。緊急対応など本当に必要な情報のやりとりを優先させる仕組みにするのです。世界中のESG投資も注目してくれます。

 大々的な意識啓発が重要です。国際連携も必要です。国の取組が望まれます。クリック1つが、環境汚染を推し進めていることを忘れてはいけません。

 

おにぎりでも食べながら、コメ政策の見直しをしようじゃないか

2022年11月14日(月)

 フーディンだよ。

 

 おいら、毎日パンを食べてるんだ。サンドイッチのほか、ライ麦パンや塩パンをよく食べるよ。でも、パンの値段が上がってきたから、おにぎりに乗り換えようかな~。

 

 

 ロシアのウクライナ侵攻は、頭をがーんと殴られた気持ちだよ。予測不可能な事態が起こっても対応できるよう、普段から準備しておかなくちゃいけないなって改めて思ったね。これは特に「食」に当てはまるね。

 だって、ロシアとウクライナを合わせると、世界の小麦輸出の3割にもなるし、トウモロコシについては、ウクライナの輸出は世界第4位のシェアなんだよ。主な輸出先は北アフリカや中東だから日本は直接影響を受けないけれど、間接的に影響を受けるかもよ。世界は密接につながっているんだから。

 

 そもそも、農産物市場は政治や行政の介入が多い「ゆがんだ市場」なんだ。日本も例外じゃないよ。「コメ政策」が代表格だね。敗戦国日本はアメリカが増産する農産物には手を出せなかった。だから、小麦を作ることは許されなかったんだな~。許されたのはコメ。でも、その後頑張ったおかげで、コメの収穫量は安定的に増え、1967年には悲願の自給を達成したんだ。すごいよね~。ところが誤算もあって、今度はコメが余るようになったんだ。ここは急ブレーキが必要ってことで、コメを作らせない「減反政策」が始まったんだな~。

 減反政策は、財政負担をしてまで消費者に負担をさせるという、どう考えても異様な政策なんだ。また、食糧管理法という、コメの値段を安く抑えてコメを集めて確保する仕組みがあったんだけれど、コメが余るようになると、コメ農家の所得を守る仕組みに変わっちゃったんだ。1971年から84年まで、約3兆円もの赤字を積み上げたんだよ。

 そして、今、農家は農地を持て余している。農地は荒れ果てていく一方だよ。さらに悪いことに、実態がどうなっているのか専門家でも把握しにくくなってるんだな~。(小川真如「日本のコメ問題」中公新書

 

 こうした状況で、日本に「食料危機」は起こらないって言い切れるかな~。農作物ってのは、わずかな需給の動きによって国際価格が大きく変動するし、各国の介入がこれに輪をかけちゃう。すると国際市場は一気に不安定になるんだよね~。

 幸い、現時点では農作物の価格は低下傾向にある。食料供給量が人口や所得の増加を上回ってるからだよ。また、食料には「代替性」ってのが効いてくる。2008年に小麦や大豆の国際価格が2~3倍上昇したことがあったけど、物価は2.6%上がっただけだったんだ。みんなコメに乗り換えたんだな~。

 

 怖いのは何らかの理由で物流がストップすること。不安は小麦だけじゃない。エネルギーだってある。これらが物価を押し上げるし、石油の輸入が途絶えれば、野菜や果物、魚の供給だって困難になるんだよ。輸入に頼りきっているとこうしたリスクを覚悟しなくちゃ。(山下一仁「日本が飢える!」幻冬舎新書

 今まさに、日本が直面しているのがこの手のリスクなんだ。小麦やトウモロコシ、大豆などの価格は、南米、北米といった主要産地の不作によって既に上昇していたんだ。そこへもって、ロシアのウクライナ侵攻が勃発し、作付けの減少や港湾封鎖による輸出制限に対する懸念が高まったんだ。

 

 また、原油の値段が上がってサトウキビがバイオ燃料に振り向けられるんじゃないかと、砂糖の価格まで上昇したんだ。こうした要因が積み重なって、国際的な価格指標である「FAO食料価格指数」は、2020年に100前後だったのが、2022年3月には159.3と過去最高値を更新したんだな~。

 値上げの波は日本にも届いたよ。2022年中は、1万8532品目もの値上げが行われることになったんだ。特に10月は、酒類・飲料や加工食品など6305品目が一気に値上げされた。思わず悲鳴を上げちゃったよ~。(週刊東洋経済2022.9.3)

 

 国内産の食料でみんなの胃袋を満たすことを考えなくちゃいけない。コメでまかなうなら年間1500~1600万トンもの供給が必要だけど、今は800万トンしか無いんだ。

 だからこそ、減反政策を見直して、コメが余るくらいにしておかなくちゃいけないよ。そして、平時は余ったコメを輸出しておくんだ。世界では家畜用のコメの需要がじわじわ増えてきているから、チャンスはあるんだな。

 コメ余りは、有事への備蓄にもなる。歴史を振り返ると、日本では災害用の蔵を設けてコメを備蓄する仕組みがあったんだ。戦国時代のお城や囲米(かこいまい)などがそうだね。(大村大次郎「経済危機の世界史」清談社)

 コメ余りは田んぼの維持にもつながる。スイスの草地は有事には農地になるんだってさ。こうした仕組みを整えるためには法整備が必要だよ。「食」について、みんなで真剣に考える機会になるといいね。

 

壁にぶつかる学校教育にとって、新型コロナは良い「教材」!?

2022年11月7日(月)

 エディカです。

 

 「学校教育って本当に必要?」って、新型コロナウイルスが問いかけているわ。感染者がまた増えつつあるけど、世の中は「ウィズ・コロナ」に向かってまっしぐらね。医療逼迫があろうが行動制限は行わない、海外からの観光客を増やしていく・・・でも、学校教育はついていけているかしら。

 

 

 文部科学省が、新型コロナウイルス感染症の学力への影響を測るため、2016年度と2021年度の小中学生の国語と算数の学力調査結果を比較したわ。結果はほとんど変わらなかったみたい。これってオンラインを駆使するなどして学校が頑張ったってこと?それとも、基礎学力さえ身に付けておけばあとは何とかなるってこと?これほどに学校教育の意義が問われたことはないわ。一つだけ言えるのは、何でもかんでも学校に押し付けるのは可哀想ってこと。

 

 そもそも学校の先生たちの負担は半端ない・・・感染管理も行いつつ、指導計画に遅れが生じないよう教育を行わなくちゃならない。

 児童生徒の毎朝の検温・体調チェックはもとより、マスク着用をしていたとしても、教室などではお互いが向き合うことがないようにする。換気も大切ね。大人に比べて、子どもの鼻の粘膜は抵抗力が弱いから気を遣うわ~。音楽ではリコーダーのような吹奏楽系はタブーね。体育では消毒するとボールが劣化するから球技は控え目よ。

 

 学校保健の現場も大変よ。保健室に殺到されても困るわね。学校医の力も借りながらゾーニングなどの対策を打たなくちゃ。校舎の消毒には先生たちも駆り出されるのかしら。教室のドアやスイッチ、階段の手すりなど児童生徒がよく触る場所は特に念入りにね。陽性者が出た場合の対応は大変ね。個人情報の管理や差別偏見の防止、本人や周囲の心のケアが必要になってくるわ。保護者への説明も一苦労よ。

(鎌塚優子ら「『新しい学校生活』のための感染症対策ハンドブック」)

 

 その上、学校教育は課題が山積みなの。間の悪いことに、新型コロナを契機にGIGAスクール構想や小学校35人学級制が前倒しされるわ。ICT環境の整備や先生たちの技術向上は急務よ。教育の「個別最適化」って聞こえはいいけれど、だったらわざわざ「学校」に来る意味ってあるのかしら

 そのせいか「協働的な学び」も重要って言われるわ。学校行事やアクティブ・ラーニング、地域の関係構築の大切さは否定しないけど、先生の負担も大きいわ。先生たちの働き方改革はどこに行ったのかしら。

細田眞由美ら「コロナ禍の学校で『何が起こり、どう変わったのか』)

 

 こうした一見正当な「型」にこだわり過ぎることが、かえって子どもたちから、自分で考え、試行錯誤する力を奪っているわ。その傍らで、「勉強して少しでもいい大学に行かなきゃだめよ」って脅すでしょう。「そうしないとこれからの世の中は大変よ。少子高齢化、格差問題、赤字財政、非正規雇用、環境問題」うんぬんかんぬんって重たい話を次々にされると、未来に希望が持てなくなるわね。

 そのアレルギー反応の一つが「登校拒否」よ。全国の小・中学生のうち約2%、つまり約20万人が「不登校」になっているわ。中学校を卒業したからといって油断できないわ。「自分の国に解決したい社会課題がある」と回答した高校一年生は46.4%と半分以下よ。早くも「諦め」の境地ね。(おおたとしまさ「不登校でも学べる」)

 

 学校には卒業式がある。でも、「学校教育」の卒業は人それぞれ・・・この点を教えることが大事よ。「何かあれば頼っていいけど、基本は独り立ちしなくちゃだめ。それを忘れずに勉強するのよ」と、一人ひとりに意識付けさせることが必要よ。そうしないと、それこそ卒業式の日まで学校にお任せという甘えが生じるわ。もう何も考えなくていいの。

 こうした「学校依存主義」は「吸収力があるうちに社会生活に必要なことを全部詰め込めばいい」という安直な考え方につながるわ。それって先生たちに過度な負担を負わせることになるし、児童生徒も息が詰まるでしょうね。

 

 国の成長期においては、高度な教育や専門性が個人の生産性や所得に結びついていた。でも成熟社会にあっては「詰め込み」一辺倒なやり方では通用しなくなる。むしろ、変化する「現場」において、自分の頭で考え、対処できる能力を身に付けることが大事なの。

 こんな時に先生ができることはせいぜい「世の中にはこんなリスクがあるよ。あなたならどうやって解決する?」と問い続けることね。そして、新型コロナ禍こそ「教材」としてうってつけよ。日本も外国も試行錯誤しながら対応している。この時代に生きる当事者の一人として「現場」でどうするか、適応していこうとする世の中で自分はどうすべきかを考えさせることが大事よ。

 大変かもしれないけれど、そこに「学校教育」の意義がある・・・先生たち、応援してるわ!

 

ガチガチの雇用市場をときほぐす「やわらかい労働市場」!

2022年10月31日(月)

 レーブだ。

 

 新型コロナウイルス感染症がじわりと増えてきた。いい加減に経済を再回転させなくてはならない。祈るような気持ちだ。ところで、多くの人は気づいていないだろうが、新型コロナは、日本の労働市場が抱える弱点の本質に迫った。それは、正規雇用で働く人たちが、いかに制度的に守られていないか、ということだ。

 これから物価上昇がボディブローのように効いてくる。生活保障が十分でないと社会不安は増す。消費活動は縮んだままだ。とてもじゃないが経済成長など望めない。一刻も早く、「やわらかい労働市場」を構築しなくてはならない

 

 

 感染リスクは、サービス業を直撃した。そこで働く女性は多い。家庭に持ち帰って子どもに感染させたくない、高齢だと重症化リスクが心配だ、職場はちゃんと感染症対策をしてくれるのだろうか。そして、女性労働者の半数は非正規雇用だ。コロナ禍での人員整理は、非正規雇用労働者から実施された。まるで「失業予備軍」の扱いだ。

 

 国による金銭的支援はあった。一つはリーマンショック時に創設された雇用調整助成金。略称「こちょうきん」だ。使用者が休業や時短で労働者に休業手当を支払った場合、休業手当や賃金の一部が助成されるしくみだ。コロナ禍では雇用保険の被保険者以外にも対象者が広げられるなど特例が適用された。おかげで、令和2年度の給付は約3兆円にものぼり、その後も続いた。潤沢だった雇用保険財政があっという間に蒸発した。その他にも、従業員自らが申請できる「休業給付金」、自営業者やフリーランス向けの「持続化給付金」が支給された。

 これらの制度もコロナが終われば元に戻る一時的なものに過ぎない。生活への不安が消えることはない。財政不足の問題もより大きくなった。

(和田肇「コロナ禍に立ち向かう働き方と法」日本評論社

 

 ここは逆転の発想が必要だ。経済成長が鈍くなると職場の選択肢も狭まり、雇用市場の流きは悪くなる。企業は人件費の抑制を行う。その結果、非正規雇用が増えていく。これでうまくいかないことは日本の現状が証明している。

 そこで提案だ。雇用市場をデマンド・プル型に変え、積極的に非正規雇用労働者を吸収しよう。そして、こうした雇用市場を「やわらかい労働市場」と呼ぶこととしよう。

 ここで目指そうとしている「やわらかい労働市場」とは、世の中のニーズに応じて人材を積極的に活用する雇用市場だ。先行きが見通せなくなった時こそ思い切ったビジネスモデルの転換が必要となる。攻めのリストラだってあろう。その代わりに新しいビジネスモデルに適した専門人材を登用することにより生産性を高めることができる。このような「回転ドア」形式の人事戦略を推奨するのだ。そのためには、市場に何らかの「保証」が必要だ。それを国が担うのだ

 

 参考となるのはスウェーデンの取組だ。スウェーデンでは業績不振の企業は救済しないという基本方針の下、労働者1人ひとりにジョブマッチングや雇用助成を行っている。同時に、保育や介護といった家庭内労働の外部化を進めて雇用機会を増やしている。つまり、手厚い社会政策によって雇用市場の流動性を高め、労働生産性の向上を図っているのだ。これで経済成長を促すことが期待できる。

 非正規雇用労働者の吸収についてはドイツの取組が参考になる。ドイツもかなりのペースで非正規雇用労働者を増やしたが、差別的扱いをしないよう権利保護を行っている。失業保険が適用されない求職者にも生活費が支給される。

(山田久「失業なき雇用流動化」慶應義塾大学出版会)

 

 これらの取組を国が行うのだ。国が「やわらかい労働市場」の「保証人」になるのだ。しかし、うまうやろうとすると、もうひとひねりが必要だ。それが「中二階」という知恵だ。国が前面に出ると、失敗しないようにと制度をこねくり回す。これは逆効果だ。市場の良さを消してしまいかねない。このため、「中二階の原理」を活用する

 「中二階」というものは、基本原理である「二階」を現場に貫徹させようとして生まれる「ねじれ感覚」を中和するものだ。分かりやすい例は天皇制だ。江戸幕府などの事実上の統治システムに正当性を与える権威として別に設けられることによって世の中の安定が保たれる。この絶妙さが、欧米の革命とは比較にならないほど流血の少ない明治維新を可能にした。(伊丹敬之「中二階の原理」日本経済新聞出版)

 

 国は、同一労働同一賃金による雇用市場の流動化にこだわっている。ジョブ型雇用を広げようとして、企業に対し勤務地や職務の明示を求める方針だ。しかし、「二階」の原理一辺倒では現場を動かすことはできない。官民共同出資で作る団体に「中二階」の役割を担わせ、あくまでも市場の中で、一人ひとりに合わせたジョブマッチングを行うのだ。個人の「安心感」に思いを寄せる政策こそが国を豊かにする。

 

「経済安全保障」を本気で考える!

2022年10月24日(月)

 トランだ。

 

 みんな、「油断」って言葉のルーツを知ってるか?古代インドの叙事詩で登場するが、判断を誤って油を失った者がその首を断たれたことに由来する。ロシアのウクライナ侵攻が始まって8か月が過ぎた。事態は膠着し、現代の油である石油や天然ガスの供給がひっ迫している・・・「油断」ならない状況だ。日本は「極東のウクライナ」と言われている。実は地政学上のリスクが高い。「経済安全保障」を本気で考えるべきだぜ

 

 

 「経済安全保障」は、文字どおり経済を通じての安全保障だ。したがって、範囲は広い。一つは軍事面だ。民生技術は軍事技術にもなる光通信機器はミサイル誘導に利用、農薬散布ヘリはそのまま軍事ヘリにといった具合にだ。

 怖いのは、専門家の頭の中にある高度な技術が「抜かれる」ことだ。人間ってのは弱い。不遇をかこつ日本人研究者の目の前で、巨額の研究費をニンジンのようにぶら下げられたら我慢できるだろうか。「自分は一般人だから大丈夫」と高をくくっているヤツだってヤバいぜ。LINE情報が誰かに筒抜けだとしたらどうか。人に知られたくないプライベートな秘密をネタにゆすられる可能性だって十分ある。そこから専門家に辿り着くなんてのは朝飯前だ。

 そうこうしているうちに、殺傷能力を備え、AIがコントロールする大量のドローンが東京の空を埋め尽くして人々を襲う。そうなってからじゃあ遅いんだぜ。(北村滋「経済安全保障」中央公論新社

 

 「経済安全保障」で次に考えるべきは、生活支援物資の枯渇だ。ウクライナ侵攻の影響は出ている。エネルギー輸入に占めるロシア産の割合が高い欧州では、エネルギー・インフレが家計を圧迫している。

 日本も他人ごとじゃないぜ。石油や石炭、LNG(液化天然ガス)のほか、半導体製造用ガス、パラジウムを確保しなくちゃならない。LNGは中国に次ぐ消費国でもある。欧州と取り合いになるだろう。うまくいかなければ、原子力発電所を再稼働させようという声が大きくなる。しかし、安全性の保証はない。ウクライナのサポロジエ原発のように、軍やテロの標的になり得る。ジレンマだぜ。

 燃料価格の高騰は一般家庭にとっても産業界にとってもダメージだ。鉄鉱石、木材などの供給減少も懸念材料だ。日常生活に及ぼす影響が大きいことは言うまでもないだろう。(日経BP「ウクライナ危機」)

 

 最後に指摘しておきたいのは、「世界は密接かつ複雑につながっている」ということだ。敵味方、入り混じっている。そして、何でも武器になる。金融制裁だけでなく、法律、フェイクニュースメンタルヘルス、文化に至るまであらゆるものがだ。食料だってそうだ。(マーク・ガレオッティ「武器化する世界」原書房

 この点、アメリカなんかははっきりしている。内向き主義にモードを切り替え、特に中国に備えている。最先端の振興技術(エマージング技術)を14分野指定し、その囲い込みと保護に注力している。中国からの製造拠点移転資金を450億ドルも計上したのにはびっくりしたぜ。輸出品だって管理下だ。海外人材をヘッドハンティングする中国の「千人計画」の摘発も行う構えだ。(渡邉哲也「日本の経済安全保障」宝島社)

 

 しかし、グローバル企業の立場は厳しい。彼らにとって国境は無きに等しいからだ。各国の思いも微妙だ。インドは大量の兵器をロシアから輸入している。背景には中国との対立がある。苦境のロシアは中国にすり寄りつつある。敵味方の色分けは簡単じゃない。

 さらに、歴史は経済のブロック化が不幸をもたらすことを教えている。今後はアメリカの衰退も予想される。いつまでも対米追従でいいのか。日本のバブル崩壊は日米構造協議がきっかけだったってことを忘れちゃいけない。アメリカの「ババ」をつかまされる可能性もあるぜ。いいとこどりと非難されるかもしれないが、多様なつながりをキープしておくべきだ。(大村大次郎「経済危機の世界史」清談社)

 

 「経済安全保障」は一筋縄ではいかない。常に緊張感を持って、バランス感覚を磨いておくことが重要だ。そして、できることから実践だ。まずは情報管理だ。今すぐスマホウイルス対策ソフトをダウンロードして欲しい。往々にして日本人はサイバーセキュリティの意識が低い。

 投資行為は慎重にやろう。目の前の儲けに走ってはいけない。企業経営陣はレピュテーション(評判)リスクを意識すべきだ。投資家や国際世論は企業や国の人道面を厳しく見ているぜ。

 生活支援物資は、国を挙げてサプライチェーンを国内外に広げるべきだ。文字どおりのセーフティ・ネット(網)を作ろう。みんなの協力も必要だ。小麦ではなく米を指向するなど、日本にとって利のある農産品を積極的に消費しよう(山本一仁「日本が飢える!」幻冬舎新書)。国は、一人ひとりが守るんだという意識が大切なんだぜ!