がん検診は絶対なのか? もっと「濃淡」をつけるべきでは。

2018年11月4日(日)

私はハル。よろしくお願いします。

 先日、胃がん検診として胃エックス線検査を受けました。鉄製の半カプセル内で何回も身体を回したり、腰をよじった姿勢を保持したりするのでおっくうに感じました。また、何度も撮影されたので被ばく線量も気になりました。

 

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  その後、全国545人の現役医師のアンケート調査(週刊現代平成30年10月13・20日合併号)を見てさらにショックでした。彼らが実際に受けている検査のうち「胃バリウム」は16位(16.5%)と低かったのです。

 

 芸能人やスポーツ選手が若くしてがんで死亡する報道を見ると胸が痛みます。早く適切に対処していれば、と後悔するコメントがあるとなおさらです。「やった後悔」と「やらなかった後悔」とでは、後者のほうが後悔の度合いが強くなるそうです(大竹文雄・平井啓「医療現場の行動経済学」(東洋経済新報社))。

 

 がん検診は有用とされています。特に、胃がん、子宮頸がん、肺がん、乳がん、大腸がんの5つについては、厚生労働省が、検診の効果が科学的に証明されていると推奨しています。このうち、乳がん、子宮頸がんについては海外と比較して日本人の検診受診率が低いことからその向上が特に叫ばれています。

 では、ほかのがんはどうでしょう?あまり具体的なデータが見つかりませんでした。がん死亡率を見てみましょう。

 

【がん死亡率の国際比較】(世界保健機関年報。人口10万対)
日本(1994)アメリカ(1992)イギリス(1994)フランス(1993)ドイツ(1994)

<男>
胃がん  50.2  6.4  18.2  13.1  20.4
結腸がん 15.9  19.0  20.3  22.2  22.6
肺がん  52.1  73.4  85.0  71.3  70.6

<女>
胃がん  27.2  4.3  11.2  8.8  18.6
結腸がん 14.9  18.9  22.0  20.2  29.8
肺がん  18.6  41.8  43.1  11.0  19.3
子宮頸がん 3.0  3.6  5.2  2.6  5.7
乳がん  11.3  33.0  48.5  36.1  43.9


 先ほど述べたように日本は子宮頸がんや乳がんの検診率が低いとされていますが、死亡率は低いです。一方、胃がんは死亡率が高いです。検診の効果はいかほどと言えるでしょうか?

 もちろん、がんの罹患には食事や喫煙など生活に関連する他の要素も関わってくるため評価が困難です。最終的に、がん検診が私たちの平均寿命をどの程度延ばしてくれているのかも微妙です。

 しかし、そもそも日本は欧米よりもはるかに多くの画像診断機器が導入されており、大変恵まれているはずです。当然その分医療費も高くなっている訳ですが、果たしてこれらが活かし切れていると言えるでしょうか?


【平均寿命の国際比較】(厚生労働省
日本(2010)アメリカ(2007)イギリス(2007-09)フランス(2010)ドイツ(2007-09)

<男>  79.64  75.4  77.7  78.1  77.33
<女>  86.39  80.4  81.9  84.8  82.53

 

【高額医療画像機器の配置状況】(厚生労働省2016年7月15日検討会資料)

CT(Computed Tomography) 101.3台(人口100万人当たり)

        →OECD諸国平均24.6台の4倍以上

MRI(Magnetic Resonance Imaging) 46.9台(人口100万人当たり)

        →OECD諸国平均14.3台の3倍以上

 

 

 本来、こういったデータをしっかりと見比べながら、がん検診の有効性を精査・検討する必要があります。その上で、がん検診の推奨のあり方についても、どれも一律とするのではなく、性別とがんの種類の組合せによる「濃淡」をつけてはどうでしょうか。