シーレーンの「海賊」と呼ばれる日は来るのか!?

2019年6月24日(月)

 トランだ。

 

 「海賊と呼ばれた男」をDVDで観たぜ。「これから石油の時代が来る」ってかっこよかったよな。海の上で船の燃料を直接商売する発想にはぶったまげたが。

 

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海賊とよばれた男SONY Music Marketing Inc.

 

 従来よりシーレーン海上交通路)の確保は重要だとされている。商業的にも軍事的にもアメリカの海軍将校だったアルフレッド・マハン(1840~1914)は、『海上権力史論』を説いて、制海権の掌握などによる「シー・パワー」の強化を主張したぜ。(宮崎正勝「世界〈経済〉全史」日本実業出版社

 その後、アメリカは海洋帝国になっていくわけだが、今度は中国が2013年に「一帯一路」構想を提唱して、陸のシルクロードだけじゃなく海のシルクロードも抑えようとしている。原油の世界生産量は増加している。海上輸送がますます重要度を増す中、大国の動きに目が離せないぜ。

 

 我らが日本も例外ではないぜ。

 

 海上輸送は貿易量の実に99.7%(重量ベース)を占めている。そして、石油、天然ガスを輸入に頼っている。(アジア物流研究会「グローバル・ロジスティクス・ネットワーク」成山堂書店

 

 重要な航路は近隣の国の利権にもつながる。物資輸送経路として広く使われている海峡や運河は「チョークポイント」と呼ばれている。代表的なのは、ホルムズ海峡やマラッカ海峡スエズ運河パナマ運河などだ。(スーザン・ヨシハラら「人口から読み解く国家の興亡」ビジネス社)

 総輸入量のうち、このチョークポイントを通航して輸送されている資源量の割合(チョークポイント比率)は、原油が160、天然ガスが60となっていて、諸外国に比べてとても高い。だから、チョークポイントを抑えることが戦略的に極めて重要となるんんだぜ。

 

  しかし、海上輸送にはリスクが伴う。事故や災害もそうだが、海賊問題もある。つい先月も、ホルムズ海峡でケミカルタンカーが襲撃されたところだ。犯人は不明だが・・・。

 

 また、海上輸送はコストが安いから重宝されているわけだが、これからは地球環境への配慮のためそうでもなくなる。2020年1月には船舶燃料に含まれる硫黄分の上限が下げられる。大気汚染の原因となるからだ。この規制に対応するコストは世界全体で年間3兆円を超えるとされている(週刊東洋経済2019.4.13)。超大型(20,000TEU級)のコンテナ船の輸送費用に占める燃料費の割合は30%とされているから影響は大きいぜ、

  

 併せて、エネルギー戦略の再考も求められる再生可能エネルギーを基本軸に検討すべきだろう。ブルームバーグ・ニューエナジーファイナンスの予測によると、2050年には世界の発電量のうち64%が再生可能エネルギーが占めるらしいぜ。(週刊東洋経済2019.5.18)

 

 こうなってくるとシーレーンの重要度は微妙なものになってくる。これは、石油・天然ガス業界を中心に築かれた地政学的構造が変わることを意味する化石燃料への依存度を低くしようとすれば、大きなシステミック・リスクが生じる可能性があるから、一定の緩和策も考えておきたい。(クラウス・シュワブ『第四次産業革命』を生き抜く」日本経済新聞出版社

 

 以上を踏まえて、新たな戦略を考えようぜ。 

 

 例えば、再生可能エネルギーの実用化が進むとなると、大量の石油・天然ガスを直輸入する方式はむしろコストが大きくなる。だから、産油国・輸出国から、より近い国に輸送してもらい、さらにそこから輸入するという再輸入の仕組みを考えてはどうだろう

 実際、欧米諸国との間の基幹航路の便数はこの10年間で3分の1に減少している。2016年だと週の40便程度だ(藤井聡「インフラ・イノベーション育鵬社)。これは、国内で経由便の受け入れが整っていることを意味する。

 

 サウジアラビアなど中東諸国からの石油輸入について考えると、一次輸入には同じく多大なエネルギーを必要とする中国や東南アジア諸国が想定される。二次輸入には、東アジア諸国が想定される。例えば、中国が運搬する石油の何割かを中国の港から日本に再運搬することとしてはどうだ。

 もちろん、一次輸入元が介在することのリスクはある。経由便に完全依存すると価格が吊り上げられるかもしれない。このため、直輸入も含めた複数のチャネルは残し、リスク分散しておくことが必要だ

 一次輸入の国に料金を払うことのデメリットを指摘する声もあるだろう。しかし、北極海航路ではロシアの国内法により砕氷船エスコート料金や水先人の費用(アイスパイロット)が必要なんだぜ。それを考えれば今回の話もOKだろう!トータルでコストを考えるとともに、地政学的なシステミック・リスクを緩和することが重要だぜ

 

 今のシーレーンは長くてリスクが大きい。国際協調によりリスク分散を図りつつ、できる限りシーレーンをコンパクトにし、海洋上の安全確保に必要な資源投入を最小範囲に抑えることが大事だ。そのための多様で柔軟な発想を関係者間で醸成しておくことがエネルギー対策や国内産業の活性化につながる。

 

 日本がシーレーンの新戦略における「海賊」と呼ばれる日も近いんじゃないか!?