2019年7月22日(月)
エンヴィです。
6月15~16日、軽井沢で「G20持続可能な成長のためのエネルギー転換と地球環境に関する関係閣僚会合」が開かれました。
今、世界レベルでエネルギーの転換が図られようとしています。ここでいうエネルギー転換とは、
①再生可能エネルギーの大幅拡大
②石炭火力の大幅削減
を意味します。
しかし、日本の動きははっきりしません。それどころか前に進むことを拒んでいるようにも見えます。
これに先立つ6月12日、経済産業省が太陽光発電など再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度の終了を検討しているとの報道がありました。再生可能エネルギー発電のコストを下げようと頑張っている企業努力の腰折れになりかねません。
また他の例として、福島県にある小名浜港は東日本の石炭火力発電にとっての最重要港湾に選定されました。今、大型の石炭船が寄港できるよう港湾整備が進められています。(藤井聡「インフラ・イノベーション」育鵬社)
このままでは、世界の潮流から置いてけぼりをくらいます。「日本再興戦略」によると、クリーンエネルギー技術のグローバル市場の規模は2013年で40兆円のところ、2030年には4倍の160兆円が見込まれています。日本が目指しているはずの経済成長の枠が諸外国に奪われてしまいかねません。いえ、むしろ成長の後退につながるおそれがあります。
諸外国をみると、再生可能エネルギーの活用を推進しようとする強い意思を感じます。イギリスは、2050年までに地球温暖化ガスの排出量を実質的にゼロとすることを宣言しました。フランスも同様です。パリ協定を果たすべく政府が旗振り役となっているのです。
British Petroleum社の「2018年版BPエネルギー見通し」によると、2040年にかけて最も成長するエネルギーは再生可能エネルギーとされています。その成長率は年平均7.5%です。
【参考】発電電力量における再生可能エネルギーの構成割合
(平沼光「2040年のエネルギー覇権 ガラパゴス化する日本」日本経済新聞出版社)
ドイツ 30%(2017)
スペイン 25%(2015)
イギリス 24%(2015)
イタリア 24%(2015)
また、日照時間や風力など天候の影響を受けやすい再生可能エネルギーの活用には IoE(Internet of Energy)と呼ばれるコントロールシステムの導入が欠かせませんが、その下地となるIoT(Internet of Technology)の整備率についても、イギリス、ドイツ、韓国、中国の企業は現在20~30%のところ、2020年に70~80%を目指すとしています。日本は40~50%を目指すとしており、ここでも遅れをとる可能性があります。
中国の動きも見逃せません。再生可能エネルギーへの投資金額の伸びが大きく、風力発電、太陽光発電の導入量は世界一です。設備整備に必要な「レアメタル」などの鉱物資源も囲い込んでいくことでしょう。鉱物資源の乏しい日本は窮地に立たされるでしょう。
ESG(Environment, Social, Governance)の視点で経営を行っていない企業は投資者から敬遠されるでしょう。金融機関からの融資も遠ざかるでしょう。世界の金融機関ではダイベストメント(資金引き揚げ)を通じて脱炭素化の動きが加速しているのです。
こうした流れを感じているのでしょうか。アメリカの大手企業であるアップル社は、部品の納入業者に再生可能エネルギー電力調達の取り組みを求めており、今後の取引基準になるものと見込まれています(週刊東洋経済2019.5.18)。「RE100」は、事業運営を100%再生可能エネルギーで行うことを宣言した企業が加盟する国際的イニシアティブですが、これから加盟する企業が増えていくでしょう。
経済成長をけん引する企業の行き場が狭まってきます。そこで、まずは企業の意識を高めることが大事です。そして、煮え切らない政府への働きかけを強めるのです。
さらに、国民一人ひとりの意識も大切です。
再生可能エネルギーの燃料費はゼロです。あるラインを超えると電気代がほとんどかからなくなるのです。そのラインに達するまでは、電気代への多少の上乗せをがまんする必要があります。ちなみに、太陽光発電の設備コストは2010年から2015年にかけて40~75%低下、陸上の風力発電は2008年から2015年にかけて約3分の1にまで低下しています。時代が下るほど電気代が安くなることが期待できます。
また、同じ製品やサービスであればクリーンエネルギーで作られたものや提供されたものを選ぶ心がけを持ってもらうことも有効です。
「今がよければいいんだ」、という近視眼的な発想ではなく、一人ひとりが将来にわたる視点を持つことが必要です。