「まあまあ」で満足する社会に潜む罠。見せるは先輩たちの心意気!

2019年10月21日(月)

 ソシエッタです。

 

 みなさん、今の生活に満足していますか?

 内閣府の「国民生活に関する世論調査」(2019年6月)によると、現在の生活に対し「満足」している人の割合は73.8%に達しているそうです。結構高いです。ところが、年齢別に見ると、18~29歳代の満足度が高く、50歳代になると「不満」の割合が高くなっています。 

 

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 若い世代は、バブル景気のような好景気を経験したことがありません。今が普通なのでしょう。一方で、中高年層は経済的にいい時代から厳しい時代を経て今に至っています。このため、こうしたギャップが生じたのかもしれません。社会全体が潜在的な危機に鈍くなっている気がしてなりません

 

 アメリカでは、1990年代半ば以降に生まれたいわゆる「Z世代」が大学を卒業して社会に出る頃です。この世代は物心ついた時に2008年金融危機に遭遇しています。このため、現実的で慎重派とされています。就職に当たって彼らが最も期待しているのは「安定」です。

 当然、リスクを避けたがります。このためストレスへの耐性が危ぶまれています。全米心理学会の調査によると、大学4年生の91%が「うつ」や「不安」などの症状を抱えていたそうです。非正規雇用形態が増えている中、将来にわたって安定した生活が送れるのだろうか、といった現実的な思いが顔をのぞかせるのでしょう。

 

 明るい材料を挙げると、マッキンゼーの調査からは、彼らは希望に満ちていて、不公平や間違いがあれば自分たちで変えていけるとも信じていたという結果が得られています。(Newsweek 2019.7.30) 

 若い世代への責任は上の世代にあります。世代を超えた解決策を模索しなくてはなりません。ところが、アメリカも日本も、社会と経済の活力が減退し、様々な面で変化が起きなくなっています。

 

 特に日本企業の国際競争力は低下しています。世界銀行の「ビジネス環境ランキング」によると日本のそれはOECD諸国の中で25位と低位に甘んじています(経済同友会「危機感なき茹でガエル日本」中央公論新社)。

 市場は寡占化が激しくなり、新しい雇用も生まれにくくなっています。国家予算は社会保障制度を維持するだけでいっぱいいっぱいです。地方では新しい建物が増えているようには見えません。目に見えないと、「世の中は変わらないな」と感じてしまいます。そして、手っ取り早い、変化に富んだネット世界に没入してしまいます。

 

 そもそも人は自分でコントロールできないような変化を好みません。高齢化が進むとなおさらです。現状に不満を感じそうな上流階級の人たちでさえ現状維持に陥ってしまいます。政治も現状維持から抜け出せず、人々の政治に対する期待や関心も低下していきます。こうして現状や社会階層が固定化していきます。居住地も階層化します。デジタル社会の成功者が今は渋谷に集まっています。人々の分断も進むことでしょう

 

 とても危険な状態です。都市経済学者のリチャード・フロリダによると、変化を先送りし過ぎた時に「大きなリセット」が起こるそうです。(タイラー・コーエン「大分断」NTT出版

 香港で起きた大規模デモには正直驚きました。暴力的な行為はいけませんが、それを置けば、若い人たちの危機感とエネルギーを感じました。でも、若い人たち任せにしてはなりません。上の世代の人たちが、「まあまあ」の生活が送れて満足できるのであればいいんじゃない、で終わっていてはいけません。デモ行進までは要りません。例えば、社会保障や税金はきちんと払おう、これからの改革を受け止めて「痛み」を覚悟しよう、既得権益にしがみつかずチャンスをみんなで分かち合おう、そして、こうした耳障りのよくないことを言葉にし実行に移すことのできる政治家を支援しよう、といった姿勢を見せることが大事です