夢の超特急「リニア新幹線」はやはり「夢」?

2020年1月20日(月)

 トランだ。

 

 今年もよろしくな。

 

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 2020年ともなるとリニア新幹線の開業が見えてくるな。東京(品川)~名古屋間が2027年頃、そして東京~新大阪間が早ければその10年後頃だ。世界で唯一の「超電導リニアモーターカー」技術により磁力で車両を浮かせる。もはや低空飛行車両だ。スピードは時速500キロ。そのインパクトは大きい。東京~名古屋間が最速で40分、東京~新大阪間が67分だ。もはや通勤圏じゃないか!

 

 しかし、浮かれてはいられないぜ。本当にメリットがあるだろうか。これだけの巨大プロジェクトを成功させるには、経済性の確保が大事だ。開業当初から大幅な赤字を出すようでは収支改善は厳しい。この点、需要見通しはどうか。

 JR東海によると、新幹線による輸送人員は157万人(2015年3月)から174万人(2019年3月)とこの4年間で1.1倍だ。インバウンドの効果もあってこの数字だ。今後、新幹線の利用が多いとされる15~64歳人口は減少していく。リニア新幹線と既存の東海道新幹線とのダブル運用が成り立つのか心配だ

 料金を大幅に増やせるかが鍵となる。しかし、あまり増やすと客は高速バスに流れていく。そうでないとなると公金投入を覚悟しなければならない。そして、その可能性は高いと考えるぜ。実際、これまでも国からの財政支援として補助金地方自治体の負担金が投入されている。結局はオレたちにツケが廻る。

 

 その他にも問題がある。安全第一は当たり前だが、時速500キロの世界は未知数だ。万が一の対応は大丈夫だろうか?運転は遠隔操作だ。しかし、全線のうち8割がトンネルに覆われている。現場での臨機応変な対応は期待できるのだろうか。

 リニアから発生する電磁波も心配だ。座席で2~5万mGの電磁波を受けるとされている。一方、世界保健機関(WHO)の基準値は1000mGとずっと低い。頻繁に利用すると体がおかしくなるんじゃないか。

 自然環境への影響も軽視できない。掘削工事による岩盤崩落、地下水脈切断等の問題はクリアにしなければならない(橋山禮次郎「必要か、リニア新幹線岩波書店)。期待度で第1位とされている静岡駅週刊ダイヤモンド2019.12.14)を抱える静岡県だが知事が「待った」をかけるのもうなずけるぜ。国土交通省が1月17日に専門家会議の設置を提案したようだが、メンバー選定を含めて波乱含みだな。

 

 一方で、開業を心待ちにする気持ちも分からないではない。全線開通すれば、人口7000万人による交流圏「スーパー・メガリ-ジョン」が完成する。これからの世界はメガ地域が舞台となる(リチャード・フロリダ「新クリエイティブ資本論ダイヤモンド社)。停滞している日本経済の成長エンジンと期待されるのはやむを得ないぜ。

 先に開業する名古屋圏は沸くだろうよ。東京圏からみれば低コストで便利な立地選択肢が名古屋駅を中心に広がる。名古屋駅の鉄道2時間圏人口は新大阪駅を大きく上回る。(奥野信宏ら「リニア新世紀 名古屋の挑戦」ディスカヴァー携書)

 しかし、そんなに甘くはないぜ。東京圏優位の世界は変わらない。むしろ、ますます加速する。新幹線開業の時もそうだった。かつて大阪~東京間は約8時間かかっていたところ、新幹線の登場で70%も時間短縮した。その後、東京経済は伸長したが大阪経済は地盤沈下とさえ言われている。名古屋圏も同じ轍を踏むことになるだろう。

 沿線にある他の自治体が得られるメリットはもっと少ないぜ。駅舎を造らされた上、新駅と街の中心部との公共交通にかかる費用も捻出しなくてはならない。さぞかし、JR東海や国の動きを冷ややかに見ていることだろう。

 

 だとすれば、違う見方を提案しておきたい。一つは、首都圏機能をメガリージョン内でバックアップすることだ。具体的には、大阪を「大阪都」にして副首都とする。そして、中央省庁も一部移転する。災害で首都圏機能がマヒすることがあってもリカバリーできるだろう。

 もう一つは、経済重心のリバランスを図ることだ。大阪はもともと商人の町だ。東京と大阪のアクセスが抜群に良くなる中で、東京は東日本を、大阪は西日本をリードするという双発型エンジンで日本を再浮上させる。

 移転対象となる中央省庁は経済系を中心に選ぶといいぜ。経済産業省厚生労働省のうち旧労働省部局、そして環境省などが候補だ。

 

 さらに、リニア新幹線導入を契機に、道州制とまでいかなくても、地域ブロック単位でものごとを考える方向にもっていくことが重要だ。国全体のアクセス改善とリスクヘッジが今より図られるのだから、地域の主体性をもっと引き出すべきだ。規制を緩和し、行財政権限を地方ブロックに移管するといいぜ。静岡県が交渉の鏑矢になってもいいんじゃあないか。ここまでダイナミックに考えるのであればリニア新幹線の導入については大賛成だ。(佐々木信夫「この国のたたみ方」新潮新書

 これだけの大プロジェクトだ。惰性で物事を進める必要は無い。計画中止もあり得べしという視点で今一度冷静な検討を求めたいぜ。