「神の食べ物」降臨!ほろ苦きチョコレート物語(ヒストリー)。

2020年2月10日(月)

 フーディンだよ。

 

 もうすぐバレンタイン・デーということもあって、あちこちでチョコレートが溢れかえっているんだな~。

 ところで、チョコレートを作るのにカカオ豆がどれくらい必要か知ってるかい?カカオ豆が入っている大きな莢(さや)であるカカオポッド1つでようやく板チョコ1枚になるんだって。こんな話を聞くと改めて貴重な食べ物なんだなあと思うよね~。

 

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 カカオの原産地は中南米なんだな~。16世紀以降、まずはカカオから抽出されたココアが飲み物としてヨーロッパで広がっていったんだな。日本だと戦国時代のことだよ。びっくりだよね~。ココアには精神をリラックスさせる効果や集中力を高める効果があったから、薬品として重宝されることもあったみたいだよ。

 そして、固形のチョコレートが初めて作られたのは1847年、イギリスでのことなんだな~。産業革命時には労働者のエネルギー源として普及していった。その後、オランダ、スイス、ベルギー、フランスなどで技術改良が加えられていく。今でも有名なチョコレートメーカーやショコラティエはこうした国々の出身だったりするよね~。ちなみに、売上げ世界1位はアメリカのマースで、日本1位のロッテの15倍というスケールなんだよ~。

 

【世界市場シェア(market share of leading chocolate companies worldwide in 2116)】

1位 マース(アメリカ) 14.4%

2位 モンデリーズ(アメリカ) 13.7%

3位 ネスレ(スイス) 10.2%

4位 フェレロ(イタリア) 9.5%

5位 ハーシー(アメリカ) 7.2%

6位 リンツ&シュプルングリー(スイス) 5.1% 

 

 

 でも、こうしてみんながチョコレートの恩恵を受けられる陰では、生産者さんの苦労があるんだな~。当時はアフリカから中南米に連れてこられた黒人奴隷が収穫を行っていた。カカオポッドに収まっている種子を傷めないよう手作業で割って取り出すのは大変な作業だよ。

 今は西アフリカのコートジボアールとガーナで世界の生産量の6割を占めている。でも、カカオだけでは生活していけないからゴム生産に転換する農家が増えている。このため、今年の10月から業界団体が割増金を買付け業者に課すみたいだよ(読売新聞2019年12月26日)。ひょっとしたらチョコレートの値段が上がるかもしれないけれど、安価な買付けでは農家の「搾取」につながってしまうから、おいらは賛成なんだな~。

 

 そんなチョコレートが、作る人に対する思いやりの中で進化してきたっていう歴史を知ると、一層、味わい深くなるんだな~。

 イギリスにはクエーカーというプロテスタントの一宗派があって、信者の多くは商工業に従事していたんだ。この宗派は自然治癒力というものに関心が高かったから、栄養価の高いチョコレートを製造する人も多くいたんだ。有名どころでは「キットカット」のオリジナルメーカーだったロウントリー家(今はネスレのものになったけどね)だな~。

 このロウントリー家がすごいのは世界最初の貧困の研究をしたことなんだ。この研究では、世帯当たりの最低必要経費を算出するとともに、「貧困のサイクル」という概念も導き出したんだ。研究成果がその後のイギリスにおける福祉制度の充実につながったことは言うまでもないよね~。

 さらに、ロウントリーのチョコレート工場では入社して間もない14~15歳の少女たちが離職してしまう問題があったことから、働きながら学べる成人教育プログラムを充実させたんだ。また、産業心理学を採り入れて、労働者が自発的に仕事に打ち込めるような取組を行ったんだ。

武田尚子「チョコレートの世界史」中公新書

 

 こんな話を聞くと、倉敷紡績大原孫三郎を思い出すよね~。彼も事業を進めるかたわら、働く人が幸せかつ健康でいられるようにと、倉敷労働科学研究所を作って、労働時間を短縮することや女性労働者の福利施設を改善することの必要性を科学的に裏付けていったんだな~。(兼田麗子「大原孫三郎」中公新書

 

 また、クエーカーの信者たちは労働者階級の生活改善のために運動を起こして、貧困や教育について議論をしたんだ。チョコレート製造家の一つ、キャドバリー家は、煙突掃除に少年労働者を使うことを禁止するキャンペーンや、労働者が憂さ晴らしに動物を使った賭博や動物いじめを行うことに心を痛めて動物虐待を禁止するキャンペーンを行ったんだ。すごいよね~。

 

 チョコレートを味わう時は、こうした歴史に思いを馳せることが大事なんだな~。だから、チョコレートの値段が上がることがあっても文句を言っちゃあだめだよ。そして、一粒一粒を大事にしようね。なにせ、カカオの学名「テオブロマ・カカオ」の「テオブロマ」はギリシャ語で「神の食べ物」って言うくらいだからね。