2020年3月16日(月)
コノミです。
新年度まであと2週間となりました。新型コロナウイルスが心配ではありますが、学生の方は新学期に向けて期待に胸をふくらませているかもしれません。中には、eスポーツ業界への道を選ぶ決断をされた方もいることでしょう。
今、eスポーツが浸透しつつあります。「スポーツ」という呼称から、「体を激しく動かして遊ぶゲームのこと?」と勘違いしちゃう方もいるでしょうね。誤解を恐れずに言うと、「みんなで集まってみんなで鑑賞して楽しむゲーム」なんですね。
「スポーツ」の語源はラテン語の「デポルターレ」からきていて、「気晴らしする、遊ぶ」という意味があるようです。そして、スポーツには体を動かす「フィジカルスポーツ」と囲碁や将棋のような「マインドスポーツ」に分類されます。eスポーツは後者に当たりますね。
そんなeスポーツが、単なるゲームプレイヤ―の集まりという枠を超えて、地域振興の役割を果たすことが期待されたり、オリンピックとセットで行われる可能性が検討されたりしています。
正直、「えっ!」ていう感じです。無理もありません。2018年のeスポーツ市場規模は世界では約1000億円です。かたや日本国内は約48億円と5%程度でしかありません。国内での認知度は今一つといったとこでしょうか。
諸外国を見ると、特に教育分野での動きが早いです。お隣の韓国では多くの大学に「eスポーツ学科」が設置されています。中国では全ての高等教育機関でeスポーツを教える仕組みができています。アメリカでは多くの大学が奨学金制度を設けています。そして、全米の高校で体育の一つとして扱われています。
日本も急いで普及を図りたいところですが、eスポーツを警戒する声があります。それは、「ゲーム依存症(ゲーム障害)」です。国連のWHO(世界保健機関)は昨年5月、ゲーム依存症を病気の一つと位置付けました。でも、病気レベルにまで至る可能性は低いということです。ノッティンガムトレント大学の行動嗜癖のグリフィス教授も、強迫的な問題を抱えているビデオゲームプレイヤーの割合は1%をはるかに下回る、その多くの人々はうつ病、双極性障害、自閉症のような他の根本的問題を抱えている、という見解を示しています。
いずれにせよ大事なのは、①食わず嫌いをせず「可能性」を見てみること、②「ゲーム」に終わらせず「応用」を考えることです。
2月8日にEテレが放送したETV特集『バトルアリーナにはバリアフリー~eスポーツにかける障がい者たち~』では、筋ジストロフィーや半身不随の方がeスポーツに打ち込んでいる姿が放映されました。障がいを持った人がそうでない人と肩を並べて競技し、感動を分かち合う世界はとても新鮮です。
そして、eスポーツのイベントを最終目標にするのではなく、その先も見据えることが大事です。先ほどの障がいを持った方についていえば、創意工夫で編み出されたコントローラー操作法を、IT機器を使って生産活動に応用することが考えられます。世の中にあまり出てこられなかった人たちの潜在的能力がeスポーツで引き出されることは新たな文化・産業を生む可能性があります。
また、地域振興においても、イベントで若者を引き留めておくという発想だけで終わるのはもったいないです。簡便な操作法を一般の人に広げて、老若男女みんなが日常生活の中で、「eスポーツ的な関わり」を持つことが考えられます。
【eスポーツを使った地域振興のモデル】
富山モデル~地酒を味わいながらゲームを楽しむ。
勝浦モデル~地元イベントにあまり顔を出さなかった国際武道大学の学生が参加。
有馬温泉モデル~湯上がりにぶらりと立ち寄れるeスポーツバーを設置。
岡山モデル~商店街から県全域を巻き込む。
大分モデル~eスポーツツーリズム
(筧誠一郎「eスポーツ地方創生」白夜書房)
例えば、認知機能が低下している方が、医師の管理の下、Googleマップを使ったウォーキング宝探しゲームに参加することで脳リハビリを行うとか、これから子育や介護が必要になる方にオンラインでクイズ大会を行い、対処の心構えを持ってもらうとか、いろんなアイデアがあると思います。
フィンランドでは、出産、進学、転居、結婚・離婚、入退院、退職、死亡といった一連のライフイベントについて、AIでニーズを予測し、各種サービスを提供することを検討しているそうです。eスポーツをスマートシティ構想のきっかけづくりに位置付けるくらいの発想が必要です。(三菱UFJリサーチ&コンサルティング「2020年日本はこうなる」東洋経済)
今はどうしても目新しさが先行しています。非日常で終わらせるのではなく「日常」に持ち込めるかどうかが、eスポーツの成功の鍵と言えます。