壮大な博打!IR(統合型リゾート)は成功するのか?

2020年3月23日(月)

 トランだ。

 

 国会は連日コロナ対策で激論が交わされているな。IR(統合型リゾート)をめぐる汚職問題もテーマに上がっていたはずだが、どこへ行った?ま、それはさておき、いったんIRについて冷静に考えてみようぜ。

 

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「Diner ダイナー」VAP Inc. Japan

 

 IRは、カジノを中心として、ホテル、レストラン、劇場などその他のアミューズメント施設、国際会議場、国際展示場といったものを含んで開発される統合的な観光施設だ。インバウンド戦略で勢いがつく日本の観光戦略の目玉と言える。しかも、民間の力で国内外の金持ちを呼び寄せることができる。国も地方も財政が厳しい現状では、うまい作戦と言えそうだ。

 

 最大の課題は、これで本当に日本の観光経済の道が開けるかどうかという点だ。IRは施設全体で集客する形式をとるとはいえ、かなりの部分を収益性の高いカジノに依存することになる。

 しかし、カジノに絞って言えば、日本のスタートは立ち遅れている。2010年時点で全世界のカジノ市場は総計1175億米ドル(11兆7500億円)にものぼり、そのうちアジア太平洋地域が実に約30%を占め、かつ、最も高い成長性を示している。

 特に、シンガポールの成功例は大いに刺激になったようだ。また、マカオももはやラスベガスを凌ぐレベルにまで成長している。東アジア圏はカジノの空白地域とされてきたが、韓国が猛追している。日本でIRが立ち上がる頃には市場は飽和しているだろう。よほどのうま味が無いと外国からの観光客を呼び込むことは難しい。

(木曽崇「日本版カジノのすべて」日本実業出版社

 

 かといって、観光客を呼び込むため、カジノにのめり込ませる作戦はとりにくいぜ。ギャンブル依存症、犯罪などの発生、青少年への影響といった社会的コストが跳ね上がるからだ。そもそも、大負けさせることによって儲けを大きくしようとするのは日本人の美徳に合わないんじゃないか?(島畑与一「カジノ幻想」ベスト新書)

 とすれば、カジノの収益比率を下げるしかないが、うま味がないと業者は乗ってこないか、もしくは早晩撤退することになるだろう。そんなことになれば、残るMICE施設(Meeting, Incenteive, Convention, Exhibition)やエンターテイメント施設でどこまで収益を上げられるだろうか疑問だ。論客の大前氏によると、街の中心部にMICE施設をもってくるのはもったいないとのことだ。(大前研一日本の論点2020~21」プレジデント社)

 

 相当の危機意識と覚悟をもって日本の総合力を発揮しなくてはならない。そうでなければ、ハコモノが無駄に終わる。ここで提案するぜ!

 カジノが周回遅れだからといって単なるキャッチアップをしているようでは駄目だ。未来型のIRをイメージしなくてはならない。

 例えば、エシカル消費という考え方がある。エコ商品、フェア・トレード商品、被災地や地元の産品、障害者の支援につながる商品の購入が挙げられる。IRでの消費は全てエシカルにするくらいの割り切りが必要だ。(三菱UFJリサーチ&コンサルティング「2020年日本はこうなる」東洋経済新報社

 レストランの食事におけるフードロスは重要だ。電力は太陽光発電などエコ発電にするとともに、設備全体の節電の試みと客への協力のお願いがあってもいい。(ジェイソン・ハイランド「IRで日本が変わる」角川新書)

 夜の消費は魅力的だが、これも思い切って制限してはどうか。その代わり、宿泊ルームも含めて施設という施設にプラネタリウムを導入するんだ。疑似体験かもしれないが、自然を身近に感じられるぜ。

 

 また、先進国を中心として高齢化が進む。ぜひ、高齢者にやさしいIRを創設してほしい。アクセスはMaaS(Mobility as a Service)を試験的に導入する。その一方で、健康に気を付けたい人には、ウェアラブルなモニター装置を貸し出ししてセルフチェックしてもらおう。

 プールやテニスコートといったスポーツ施設だけでなく、ちょっとだけ体を動かすようなしかけもいいだろう。景色を楽しみながら散歩したり、軽いジョギングをしたりするコースをつくるんだ。また、演劇やパフォーマンスだけでなく、高齢者も参加しやすいようなeスポーツを採り入れてもよい。

 とにかく、IR後発組としての強みを活かすべきだ。

 

 金勘定をするのは気が引けるが、年間で7人の海外観光客を地域に呼び込めば、住民1人相当の消費額に相当するとされている。人口が減っていく地域にとっては魅力的な話だ。しかし、IR自体が博打になってはいけない。未来志向のビジョンでもって、どうせやるなら新しいコンセプトでやってほしいぜ!