狙われた「置き配」。物流危機を、ドライバーを救え!

2020年5月25日(月)

 トランだ。

 

 ついに、「置き配」が狙われちまったな。東京で団地玄関前に置かれていた配達荷物を盗んだとして、5月14日、容疑者が逮捕された。

 「置き配」は、利用者が指定する場所に宅配業者が荷物を置いて配達するサービスだ。宅配業者がイラっとくる「再配達」を減らす仕組みとして導入され、新型コロナウイルス感染症の影響で、対面で荷物を渡すことによる感染リスクを減らせることから利用が高まっていたところだ。せっかくの取組にとんでもないことをしてくれたぜ!

 

 今、物流がピンチって知ってるか?

 日本の貨物輸送の9割超がトラックによるが、ドライバーの確保が危機的状況に陥っている。早く手当てしないと、欲しいものがすぐ手に入るっていう状況が、昔みたいに夢物語になってしまうぜ。

 

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 ドライバーが減っている理由は、低収入と過酷な勤務環境だ規制緩和によって新規参入が続出し、価格競争が激化した。買い手市場になって、荷主の言うことが絶対になった。指定された時間帯にきちんと荷物を届けなければならない。

 そこへもって安全基準や労働基準が強化された。本来、ドライバーにとって良いことのはずだが、逆にドライバーの首を絞めることとなった。スピードリミッターの装着が義務づけられ、スピードは思うように出せない。長時間の連続運転も禁じられた。どこかで休憩を取らなければならないが、時間の猶予も場所も無い。道路交通法改正で集荷や集配のための一時的な路上駐車であっても即駐車違反だ。

 これでは、ゆっくり休憩など取れず、精神的に参ってしまう。基準は大事だが、ドライバーをとりまく環境全体が矛盾だらけだ。抜本的な見直しが必須だぜ!

 

 ドライバー特有の職業病も気になるぜ。身近にドライバーがいれば聞いてみてくれ。十中八九、腰痛に悩まされているはずだ。狭い空間にずっといるんだもんな。ほかにも、睡眠障害、便秘、歯のトラブルに悩まされているはずだ。ストレス解消ということでタバコや酒に手を出していると、がん、脳血管疾患、心疾患のリスクも高まる。エコノミークラス症候群にも狙われる。そして、ドライバーは高齢化していってる。

 

 過酷な勤務環境が収まる気配は無い。平成30年の宅配便取扱個数は43億701万個だ。配達員1人当たり、多い時で200個にものぼる。配る側になってみて想像して欲しい。その上、「送料無料」ってのがクセものだ。ドライバーにとって存在を消されたような感覚になる。これで本当にいいのだろうか。(橋本愛喜「トラックドライバーにも言わせて」新潮新書

 

 物流の維持は大事だ。改善もなされつつある。経営で有名なピーター・ドラッカーも「ロジスティックスは最後の暗黒大陸」と言っている。物流センター内に工場を作る、物流センターを港やインターチェンジといった交通の要衝近くに立地して運転距離・時間を短くする、作業時間を見える化して効率を上げるシステムを開発する、といった工夫もされている。冒頭に挙げた「置き配」なんかもそうだ。2019年にアマゾンが本格的にスタートした。(角井亮一「すごい物流戦略」PHPビジネス新書)

 しかし、根本的解決には程遠いんじゃないか。しかも、新型コロナウイルス感染症の拡大で、サプライチェーンが滞るとドライバーの需要も減る。今のままだと早晩ドライバーがいなくなるぜ。日本経済への影響は計り知れない。

 

 そこで提案だ。そろそろ個別宅配を見直してもいいんじゃないか?

 宅配先は原則、「集配所」とする。地域の廃校スペースを活用するといいだろう。「パケットショップ」といって、文具店や土産物ショップ、コンビニなどに受取場所になってもらってもいい。そして、一定規模の集配所には休憩スペースを設けてドライバーに最大限の配慮をする。

 利用者は自分の都合の良い時に、自ら集配所に出向き、荷物を自宅に運ぶ運転できないから運べない、家具や家電など重くて無理、冷凍・冷蔵が必要、といったケースもあるだろう。そうした場合はオプショナル料金を必ず払うこととして個人宅に届けてもいいだろう。いずれにせよ、「送料無料」などもってのほかだ!ここはきちんと法規制をかける。

 そして、配送料金は、物流を維持できるよう国が調整を行う。4月24日に国土交通省が「標準的な運賃の告示制度」に基づいて標準運賃を示したようだが、もっと踏み込んでもいいぐらいだ。

 

 行き過ぎた個別物流サービスを根本から見直すべきだ新型コロナウイルスのおかげで物流に限らず様々なサービスのあり方が見直されることだろう。本当に必要最低限なサービスはどこまでか、それ以上を求めるのであればそれなりの対価が支払われるべきではないか、といった視点でもって解決していくことが大事だぜ!