「コミュ力不足でしょ!」で本当にいいの? 就職氷河期世代!

2020年6月29日(月)

 ソシエッタです。

 

 「コミュニケーション能力が大事」って言われます。サービス産業がメインとなり、人と人との接触の機会が著しく増えています。コミュニケーションがうまくとれないと、重要な業務から外されてしまうかもしれません。

 

 でも、「コミュニケーション能力」ってそもそも何なのでしょうか?測定して評価することができるものなのでしょうか?そうでないならば、安易に「空気が読めないわね」、「結局、コミュニケーション能力が足りないんだよね~」と片付けてしまうことは問題です。特に、就職氷河期世代については・・・。

 

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 就職氷河期世代は、1971~74年生まれの団塊ジュニア世代と、1975~84年生まれのポスト団塊ジュニア世代が該当するとされています。現在だと、36~49歳の方々になります。この世代は新卒時に、バブル崩壊により雇用情勢が特に厳しかった時期に遭遇しています。

 「労働力調査」(総務省2019)によると、就職氷河期世代に概ね当てはまる「35~49歳」の人口は計2613万人です。このうち完全失業者数は49万人、非正規雇用者数は592万人で合計641万人にのぼります労働力の中核を担う20~69歳の人口は6825万人ですから、約1割を占めることとなります

 

 経団連の新卒採用アンケート調査(2018年)によると、「選考にあたって重視した点は何か?」という問いに「コミュニケーション能力」と回答した企業は82.4%と高い割合を示しました。

 他者に依存する能力と言えるコミュニケーション能力ですが、正規職員として育ててもらえる機会が少ない就職氷河期世代にとっては圧倒的に不利です。でも、コミュニケーション能力を高めることは「自己責任」とされてしまいがちです。

 ビジネス書で学ぼうとすると、「まずは、聞き上手になる」、「相手に対する敬意が必要」といったごく普通のことしか書かれていません。しかし、本当に必要なのは、多少の失敗を重ねながらも「実経験」を積むことです

 しかし、企業は非正規を育てようとはしないでしょう。想像できるでしょうか?社員が、自分より年上の非正規職員に懇切丁寧に指導するという場面を・・・。

 こうして、非正規という働き方が職場の人間関係を不安定にします。その結果、非正規は「コミュニケーションが不足している」とレッテルを貼られ、就職の場から排除されるという悪循環に陥るのです。(藤田孝典「棄民世代」SB新書)

 

 恐いのは、こうした不安定さを抱えた世代が中高年となり、将来に希望を持てなくなり、その結果、自分を被害者だと思い込んでしまうことです。そして、自分の受けた被害の憂さ晴らしをするかのように他人に攻撃を加えてしまうことです。これは、「置き換え」と呼ばれる防衛メカニズムです。暴力にいたる人はまれでしょうが、社会が一層不安定になります。(片田珠美「一億総他責社会」イースト新書)

 

 今、必要なのは「団結すること」です。就職氷河期世代は、高度経済成長を享受した団塊世代の影響を受けています。真面目に努力すればいつか必ず自分にリターンがあると信じていますが、みんなで団結しようとすることには必ずしも長けていません。

 例えば、様々な分野で働く多数の非正規労働者が横でつながって、協同組合を作ってはどうでしょうか?組合は、派遣会社や派遣先の会社との交渉も行います。職場環境に関する評価が低い会社には労働者を出さないようにします。

 また、組合のメンバーは自ら出資してその事業を運営します。事業内容の一つに、メンバーに対するコミュニケーション能力向上のための研修事業を盛り込みます。研修は自前でやっても、関係を持つ企業の協力を得てもいいでしょう。実社会で役立つようなより実践的な研修が求められます。

 

 就職氷河期世代は一言で言うと運が悪かったのです。でも、同じ社会の構成員です。今後の日本の経済情勢によっては「第二の就職氷河期世代」が現れることだってあるでしょう。

 この現実を社会全体が理解し、支援する姿勢が重要です。そのことによって、相互理解が深まり、社会が安定化していきます。社会全体のコミュニケーション能力の向上につなげていくことが大切です

 

【参考】会話の絶対ルール(ムーギー・キム「世界トップエリートのコミュ力の基本」PHP)

(ルール1)全力前のめりで聞くが、ダメなら早期に切り上げる

(ルール2)「話す内容」以上に、「話し方」に配慮する

(ルール3)凍りつく沈黙の気まずさは、先制攻撃・太陽政策・禅戦略で解凍しよう

(ルール4)特別な関心と敬意を、会話の参加者全員に払う

(ルール5)最強の賞賛力で、相手の自己肯定感を高める

(ルール6)叱り方・断り方・謝り方でも、敬意がすべて

(ルール7)信頼を失う会話の3大パターンに要注意