「スポーツ立国」は間違いの2乗!

2020年8月10日(月)

 エディカです。

 

 夏と言えば高校野球。今年は地方大会はあるけれど全国大会が無いからちょっと寂しいわね。多くのスポーツが、新型コロナウイルス感染症の影響を受けているわ。「スポーツロス」になっている人も多いんじゃなくて・・・・スポーツは、もはや「生活必需品」ね。

 でも、だからといって日本がスポーツで稼ぐ「スポーツ立国」を目指そうってのは間違いよ。どうしてかって?

 

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 確かにスポーツの市場規模は無視できないわ。アメリカでは1994年時点で約22.6兆円だったのが、2018年で59.4兆円と20年間で倍以上に膨らんでいる。かたや日本は5.8兆円から4.1兆円とむしろ減少している・・・・日本経済の起爆剤として何とかしたいし、テコ入れの余地があるんじゃないと思わなくもないわね。 

 それにスポーツには大きな魅力があるわ。人は知らないものを簡単に信じることができないけれど、実際に目の当たりにすると抑えきれない興奮と感動を覚えてしまう生き物よ。それを実現してくれるのがスポーツね。

 さらに、石原莞爾が『世界最終戦論』で言っているように、「人類の闘争心は決して無くならない。」ってことだから、戦争の代役としてスポーツに白羽の矢が立つのは無理ないわね。(安田秀一「スポーツ立国論」東洋経済

 

 でも、だからといって「スポーツ立国」になろうと無理をする必要はないわ。大きな理由は、「時すでに遅し」ってことね。

 日本は少子高齢化社会の「先頭ランナー」よ。競技人口は減っていくわ。先ほど示した市場規模の伸び悩みがそれを物語っているわ。もちろん、スポーツの「健康」への効能は否定しないわ。世界スポーツ用品工業連盟(WFSGI)によると、幼少期から運動する習慣のある人は、スポーツをしてこなかった人と比べて成人後の医療費が年間約30万円も少ないそうよ。

 一方で、一体どれだけの人が貴重な生活費を割いてスポーツに投資するかしら。せいぜいスポーツジムに行くための費用だったり、ランニングウェアを買ったりする費用くらいじゃないの・・・・。

 

 極めつけが、国の「戦略」のなさね。そもそもスポーツってみんなが言いたい放題の世界だから、議論がまとまらず、有力者の一声で動くという側面があるわ。東京オリンピックパラリンピックがいまいち盛り上がらないのはこうした点にあるのかもしれない。象徴的なのは新国立競技場をめぐるドタバタ劇ね。建設費用が膨らんでデザインを変更せざるを得なかったし、その結果、聖火台は競技場の外で追加工事で作ることになったし・・・・。

 最悪なのは、オリ・パラが終われば、サブトラックの無い新国立競技場では、いくら競技を行っても「公式記録」として認められないってことね。ちゃんと使えなければお金(総建設費約1529億円、年間維持費24億円)だけがかかるお荷物でしかないわ。(後藤逸郎「オリンピック・マネー」文春新書)

 

 サッカーワールドカップもそうよ。2006年開催国ドイツでは既存のスタジアムの改修を軸にスタジアムをいくつも造った。一方、2002年開催国日本は建設に数百億円の税金を投入した上、その後は赤字を垂れ流している・・・・。こんな状態で、数多ある競技をどう整理していくのかしら。後世への負担の付け回しでしかないわ。毎年300~1000億円の税金が投入されている国民体育大会も不可思議よ。

 国が今どういう人口動態や財政事情にあって、今後どうなるかを冷静に分析しながら、総合的な観点でスポーツの立ち位置を整理すべきね

 

 最後に要注意なのは、スポーツが放送権料をめぐる巨大な利権の場と化しつつあることよ。これに手を貸すことになる「スポーツ立国」は間違いを重ねることになるわ。

 オリンピック・パラリンピックテレビ放送権料は、IOC国際オリンピック委員会)の収入全体の7割超にのぼるわ。金額の伸び率もこの20年間で3倍以上と金メダル級ね。こうしたお金の動きがあるから、競技内容も開催時期もIOCのさじ加減一つで決まるの。決して「アスリート・ファースト」じゃないわ。

 他のスポーツも似たようなものね。スポーツのテレビ放映はどんどん有料化の道を突き進んでいくでしょうね。そうすると、スター選手の引き抜きをめぐって巨額の契約金が積まれるわ。選手はもう「商品」でしかないわね。

 

 繰り返しになるけれど、スポーツ競技のほうにお金をかけるのはほどほどにしましょう。そうではなく、スポーツを通じて、健康を保つ、リーダーシップやチームワークを培うことを目指すのよ。

 何よりも、「負ける」ことや「できない」ことを体験することで、向上心や負けた相手、「できなかった」人のことを思いやる気持ちを養うという、スポーツが与えてくれる豊かな人間性を育むという理念でもって推進するのであれば大賛成ね。