警戒する植物 油断する人間

2020年8月17日(月)

 フーディンだよ。

 

 暑い日が続くね~。熱中症には気をつけてね。

 ところで、「美食探偵 明智五郎」ってTVドラマ見てた?食にまつわる殺人事件があって、探偵が謎を解いていくんだけれど、扱われた事件では、スイセントリカブトが出てきたんだな~。

 

 トリカブトの毒はサスペンスの定番って感じで有名だけど、スイセンのほうは知らなかった人も多いんじゃない?ニラと間違えて食中毒になったっていう話がたまにニュースになるけど、実は、平成21年~30年に180件もの食中毒が発生しているんだって!

 

f:id:KyoMizushima:20200704092039j:plain

 

 ニラなどのお野菜はスーパーマーケットや市場に並んでいるものを目にするだけだから、おいらたちにとって「食材」でしかないよね。だから、「植物」であることをついつい忘れてしまうんだな~。だけど、その「植物」は、動物に食べ尽くされてしまうといけないから自分の身を守る工夫をしている。その一つが「毒」を身につけることなんだな~。

 

 例えば、みんなもよく食べるジャガイモの食中毒は平成21年から30年の間に346件も発生しているんだよ。ジャガイモは芽にソラニンといった有毒物質を持っているんだけれど、遺伝子操作によって毒を作らないジャガイモを作ったら、不思議なことに芽が出なかったんだって。つまり、芽を出すときには土の外に出て食べられてしまうというリスクがあるから、先に毒を準備しておくんだな~。(田中修、丹治邦和「植物はなぜ毒があるのか」幻冬舎新書

 

 また、有毒物質を持っている植物に自分のからだを似せる「擬態」によって自分のからだを守る植物もあるんだな~。ニラもそうだけれど、お茶で有名なジャスミンもそうなんだな~。ジャスミンとよく似た香りを放つカロライナジャスミンは、ジャスミンと全く違う科なんだけれど、こちらは有毒物資を含んでいるからお茶にして飲んじゃあいけないんだな~。

 

 そのほか、面白いのはトウガラシだね。トウガラシと言えば暑い国ってイメージだけど、そんな昆虫が多い地域のトウガラシはカプサイシンを多く含んでいるんだって。昆虫が実をかじると傷口から病原菌が侵入して種をだめにしてしまうから、それを防ぐためにカプサイシンを装備するらしいよ。(田中修「植物はすごい」中公新書

 

 このように、この世に生き残っている多くの植物たちは、量の多寡はあっても有毒な物質を持っている、と思ってていいんじゃない。こうしたリスクを、動物なら鋭い感覚で避けていくんだろうけれど、人間はそうじゃないから「知識」として継承していくことが大事なんだな~。

 

 話が変わるけれど、「感覚デスクトップ」という概念があるんだな~。カリフォルニア大学のドナルド・ホフマンさんが言っているんだけれど、おいらたちの「認知」はすべてコンピュータのデスクトップと同じような機能を持つんだって。つまり、複雑なコンピュータの中身までは分からなくても、デスクトップ上のアイコン操作だけで簡単に処理ができるのと同様に、感覚を通じて得た「認知」についても、「何が真実か」ではなくって「何が有用か」で簡便にものごとを選択できるようになっているんだな~。

 例えば、顔の美しい人は魅力的だけれど、顔そのものに本質的な魅力があるんじゃなくて、子孫を残したいという気持ちを起こさせるために「顔による魅力」が便宜的に付け加えられているんだな~。(ジョン・ブロックマン「天才科学者はこう考える」ダイヤモンド社

 

 この「感覚デスクトップ」の考え方を用いると、スーパーなどで見る「植物」はすでに「食材」というアイコンでしかないんだな~。食べられて当然だし、食べても安全だって無意識に感じているよね。でも、本当は「植物」としての本質を知った上で、「食材」としてお付き合いしていくことが大切なんだな~。それが、植物や自然に対する敬意にもつながるし、おいらたちの安全をより確実に「継承」していくことになるんだな~。 

 ぜひ、スーパーなどで、お野菜の内容をお知らせしてくれるようなアプリを開発してほしいよね。スマホをかざすと、お野菜の調理方法や栄養素はもちろんのこと、それ以前に、「植物」としての原産地、木や草花の形態をとっている時の全体像、その植物が持っている危険性(人間にも動物にも)といったプロファイル形式でお知らせしてくれるとありがたいんだな~。グルメサイトを見る際の広告として入れてもらってもいいんじゃない。

 こうした一通りの知識を持って行うお野菜の買い物はこれまた「ひと味」違ったものになるんだな~。えっ、「なに『うまい』こと言ってんの」って!?

 

【その他の有毒物質を持つ主な植物】(船山信次「毒の科学」ナツメ社)

チョウセンアサガオ;アトロピン系アルカロイド

モモやアンズの種;青酸配糖体

スズラン;強心配糖体

ヒガンバナスイセンギンナンイチョウ);アルカロイド

タバコ;ニコチン

ソテツ;サイカシン

ヨウシュヤマゴボウヒスタミン

ウルシ;フェノール系化合物