コロナが教えてくれた!これからの世界経済の形・・・

2020年9月21日(月)

 コノミです。

 

 菅内閣が誕生しました。閣僚の布陣からは前政権からの継承路線が見えてきます。まずは新型コロナウイルス感染症による経済への負の影響を消し去ることが優先されるでしょう。では、どうしたらいいでしょう?

 結論から言うと、これからのグローバル経済活動は、中国一辺倒にはしない「分散型」を目指すべきです。鍵はアジアにあります。

 

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 代表は台湾です。中国との緊張関係の中で、「台湾は台湾」として生きる道を選択しています。

 その台湾は、新型コロナウイルス感染症に対し、初動の24時間のうちに、検疫体制強化、中国への確認、WHOへの通報、国民への注意喚起を行いました。その後も対中国遮断を徹底することで感染拡大を阻止し、「台湾モデル」と呼ばれました

 習近平国家主席の来日を控え、インバウンド経済への依存度を増やしていた日本ではここまで迅速な動きはとれませんでした。日本の人口当たり死亡率、感染者の致死率はともに東アジアで下位レベルとなっています。

 

 日本以上に経済の対中国依存が大きい台湾で「台湾モデル」が成立した理由・・・それは、経済の「脱中国」を進めようとしていたからです。

 蔡英文政府は、中国に生産拠点を持つ台湾企業に対し、東南アジアに拠点を移すか、台湾への回帰を求める政策を打ち出しました。観光についても、中国人の台湾訪問客は、前政権で40万人を超えていたところ、2020年1月には10万人を切るレベルに減っていました。そして、日本、韓国、東南アジアなどからの受入れを進めました。

 こうした「中国に拠らない」姿勢は、マスクの確保にも現れています。政府自ら60台のマスク生産機械を発注しました。自給自足の道を選んだのです。おかげでマスクの生産能力は世界で第2位にまでなりました。

 そして、最も大事なことですが、台湾は中国政府の公式発表を最初から信用していませんでした。中国では共産党一党支配のもと、誤報や恥ずかしい情報を上層部に上げられない構造的・心理的理由が存在するからです。このため、中国現地のヒューミント(人間による諜報)によって得られた情報が重宝され、世界最速の対応に至ったのです。

 

 一方の日本ですが、専門家の多くがWHO(世界保健機関)の情報を信用しました。しかし、それは中国を信用するという前提に立ったものでした。この結果、台湾が危険性をWHOに通報した2019年12月31日からWHOがヒト‐ヒト感染を認めるまでのいわゆる「失われた3週間」は、日本の姿勢は受け身的なものとなりました。

 この背景にも中国が絡んできます。WHOのテドロス事務局長には、エチオピア外相時代に中国政府から多額の経済支援を引き出した過去があります。2017年の事務局長選挙では中国の支持を得ています。

(野嶋剛「なぜ台湾は新型コロナウイルスを防げたのか」扶桑社新書

 

 一国に対する経済的関係が深ければ深いほど、未曾有のリスクが生じた場合の損害は大きくなります。日本はもっと他のアジア諸国に目を向けるべきでしょう。欧米式に染まり切っていないアジアの資本主義にはリスクヘッジを図りやすい土壌がありです。

 アジア資本主義にはいくつかの特色があります。一つは、新しいものを受け入れる開放性です。「カエル跳び」現象とまで言われています。キャッチアップのスピード感はアジア全体の力強さを象徴しています。

 二つ目は、経済活動に政府が関与する度合いが高い点です。このことは、投資する側としては信頼を置きやすい環境となっています。アジア諸国には、IMF国際通貨基金)から厳しい構造改革を迫られたものの結果が出せなかったという苦い経験があります。国家が関与する仕組みを「遅れている」と両断することは適当ではないでしょう。

 さらに、ESG(環境・社会・ガバナンス)への投資が注目されています。ESG投資の世界市場規模は2018年で30兆7000億ドルと14年に比べて7割近く増え、今後も年率10%超のペースで伸びるとされています。このESG投資で焦点となる具体的な問題は、特にアジアの新興国と密接に関連しています。ちなみに、CSR(企業の社会的責任)を法律で義務付けたのは世界でインドが初めてです。医療、水、衛生分野への投資がなされており、インドらしいと感じられます。

(小平龍四郎「アジア資本主義」日本経済新聞出版)

 

 こうしたアジア各国の取組や事情を日本は知りません。相変わらず、欧米諸国のやり方を追っかけています。しかし、欧米式の合理主義の集大成が、新型コロナウイルス感染症がもたらした経済影響として表面化したのです。

 今回のことを教訓として、ダイナミックにグローバル経済を再構築すべきです。台湾や他のアジア諸国の事情を分析して、経済的コネクションの多角化を進めていくのです