税金格差が育てた「富」の格差。解決策は消費税をやめること!?

2020年11月9日(月)

 フィナよ~。

 

 アメリカ大統領選挙は大変ね。トランプ政権の総括がなされているってとこかしら。日本でも安倍政権の経済政策「アベノミクス」の総括が必要ね。アベノミクスは雇用の確保と株高が評価されたわ。一方で、新型コロナウイルス感染症の影響もあって、経済成長率やインフレ目標の達成については想定どおりとはならなかったわ。

 10%への消費増税が行われて増収が期待されたけれど、財政収支、いわゆるプライマリーバランスは達成できそうにないわ。社会保障との一体改革」とセットだった税制のあり方をもう一度見直す時かしら

 

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 重要なのは、経済成長もだけど、「富」の再分配に配慮しなくちゃだめってことね。経済格差の拡大はあってはならない。極端な言い方をすれば暴動や犯罪が起きて社会の安定性が損なわれる可能性があるわ。そこまでいかなくても消費活動が全体的に頭打ちになって、成長の足かせとなるわ。だから、税制上も格差の縮小を図ることが必要よ。

 

 税の機能は3つ。①財源調達機能、②所得再分配機能、③経済安定化機能。このうち②の所得再分配機能は、所得・資産の多い人ほど所得税相続税の税率や課税額を大きくして再分配を図ることよ。でも、現状はうまくいっているとは言えないわ

 所得格差を「当初所得」と「税による改善度」に分けて考えると、「当初所得」は1984年で13.8%の格差があったのが2014年には34.1%に拡大している。ところが、「税による改善」では、1981年は5.4%持ち直していたのが2014年では4.5%とむしろ下がっている。つまり、税金では持ち直せなくなっているの。そして、その分を社会保障でカバーしているのが実態なのよ。(梶原一義「税金格差」クロスメディア・パブリッシング)

 

 「どの道みんなで負担することに変わりないのだから、社会保障でカバーできるんだったらそれでもいいんじゃないの」って声も聞こえそうね。でも、医療、年金、介護といった社会保障の財源負担率はどんどん増えているわ。財務省が発表した令和元年度の実績見通しだと、租税負担率25.7%に対して社会保障負担率は18.1%と迫りつつあるの。新型コロナウイルス感染症の影響で税収が大幅に減ればその差はさらに小さくなるでしょうね。

 しかも、社会保険料の実効負担率は、所得税と違って給与所得が増えるにつれて減っていくという「逆進性」なの。だから、富の再分配の観点でいうと格差は縮まるどころか広がっていくのよ

 

 こうなった要因の一つは、富裕層が税制上優遇されてきたってことね。例えば、株式譲渡益は富裕層に集中しているけれど、この譲渡益に対して長年、非課税あるいは低率課税が続いてきたの。不労所得に対する課税のあり方としては問題ね。

 あと、所得税最高税率も下げられてきたわ。それこそ1983年には75%だったのが現在では45%。稼いだお金の半分が税金でもっていかれるのは辛いでしょうけど、そんなに稼げているのはみんなのおかげでもあるわ。その「気持ち」をちゃんと「税金額」で示して欲しいわね。

 

 対策としては新しく効果的な税制をつくることね。「累進消費税」が提唱されているわ。これは、収入に対する「付加価値」を個人の段階と法人の段階の2つに分けて整理し、重複することなくそれぞれから徴収する仕組みよ。(森信茂樹ら「税と社会保障でニッポンをどう再生するか」日本実業出版社

 具体的には、個人については課税対象を「賃金」とする。ここに家族構成などに応じた控除を導入する。もちろん、累進性にして所得の多い人にはより重い課税を課すの。一方の法人については課税対象を「利潤+利子-設備投資」とする。設備投資が直ちに全額控除される点が法人税と違うとこよ。

 そして最も大きいのは、個人からも法人からも「付加価値」に対して課税していることになるから、それ以上の「付加価値」への課税が必要なくなる・・・つまり、消費税をやめていいってことよ

 

 消費税は安定的財源として魅力的なのだけれど、所得の低い人ほど負担感が大きくなるという「逆進性」 がネックね。このため、食料品などに軽減税率が適用されているわけだけれど、所得の高い人も含めてみんなが恩恵を受けるわけだから「逆進性」を解消するには至らないわ。 

 そして、先ほどの「累進消費税」だけれど、広く付加価値に20%ほどの税率をかければ現在の税収分は補えるそうよ。さらに格差をより小さくするため、税率を上げつつ社会保険料は下げていく、という調整を行ってはどうかしら。

 税をめぐる議論は既得権をめぐって厳しいものになりがちだけれど、公平・中立・簡素という税の3原則を守りながら、時代ごとに「何を最優先するべきか」を基本にして制度設計することが大事よ。そして、今こそ「富の再分配」をとことん進めて欲しいわ。