「ウィズコロナ」するなら「ウィズ外来生物」!

2020年12月28日(月)

 エンヴィです。

 

 2020年が終わろうとしています。新型コロナウイルスに始まり、新型コロナウイルスに終わる・・・そんな年でした。そして、他の生き物とのつきあい方について深く考えさせられる年でした。

 人の経済活動はウイルスの移動を伴います。「Go To トラベル」が厳しい批判にさらされるのは当然と言えるでしょう。他の生物だって同様です。今、改めて外来生物の受け止め方を考えてみませんか?

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ハンターハンター

 外来生物=悪」という単純な当てはめを信じていませんか?琵琶湖では在来種が激減する原因としてブラックバスブルーギルが駆除の対象となっています。人気番組「緊急SOS!池の水ぜんぶ抜く大作戦」ではカミツキガメがボスキャラ的に扱われています。

 これまで日本で見かけなかった種の危険性を心配する気持ちが分からないでもありません。さらに「交雑」によって既存の生態系へのリスクが増す危険性も指摘されています。「外来生物法」では「特定外来生物」を定めることによって、飼育や輸送等を禁止するなど、こうした思いを後押ししてくれています。

(小坪遊「『池の水』抜くのは誰のため?新潮新書

 

 しかし、在来生物の消滅リスクを数値化した研究はわずかです。しかも、外来生物だけが犯人扱いされることによって、実は人の手による汚染や環境悪化のほうがはるかに重大という本質的な問題が見えなくなっているおそれがあります

 日本には既に2000種以上の外来生物が住み着いているとされています。最近は猫ブームで関連グッズがたくさん作られていますが、ネコこそ外国からきた動物で、平安時代に輸入されたとも弥生時代に移入されたとも言われています。そんなネコが、国際自然保護連合(IUCN)の「世界の侵略的外来種ワースト100」にランクインしていることをご存知でしょうか?大きな時間の流れの中では「外来」かどうかを問うこと自体がナンセンスなのです

 

 そして、もっと大事なことは、自然はそんなにヤワではないということです。自然を侮ってはいけません。外来生物だろうがなんだろうが全てを飲み込んで「今」を形作っているのです。

 東太平洋にあるガラパゴス諸島は、ダーウィンが『進化論』の着想を得たことで有名で、イグアナやフィンチなどの固有種の宝庫とされています。この諸島で、2000年より「侵入種完全制御」計画が始まり、侵入種である動植物35種を標的にした43件の駆除が進められました。しかし、10年後に目的を達成したのはわずか9件のみでした。反対に絶滅した在来種は少数でした。自然は思うようにならないのと同時に、簡単に滅びたりはしないのです。

 また、原子力発電所事故を起こしたウクライナチェルノブイリでは強い放射線の影響で生物の寿命が短くなると思われましたが、ワシ、オオカミ、ヘラジカといった野生動物は繁殖を続けていますし、研究チームの調査によると、立入禁止区域のネズミの遺伝子変異は通常範囲内だったそうです。

(フレッド・ピアス「外来種は本当に悪者か?」草思社文庫)

 

 今、僕たちに必要なのは「新しい受け止め方(ニュー・アクセプタンス)」ではないでしょうか。「エコロジカル・フィッティング」といって、偶然の出会いの積み重ねで複雑な生物相が形成されるという考え方があります。自然は多様な種を受け入れながら常に変化し続けているものであり、実は、均衡が保たれているという見方は誤りかもしれないのです。それこそ人間が環境を汚しているという罪の意識を少しでも和らげるための「方便」なのではないでしょうか。

 もし、「外来生物はダメ!」と断じるのであれば、「人間こそ移動してはダメ、活動してはダメ!」ということに行き着きます。新型コロナウイルスで証明されたように、地球上で人間にとっての危険を撒き散らしているのは他ならぬ人間自身なのです

 

 もちろん、必要以上に環境を汚染し、種を滅ぼすことは避けなくてはなりません。国連「生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学-政策プラットフォーム」2019年報告書によると、地球上の800万種の動植物のうち100万種が絶滅の危機にあるそうです。

 しかし、絶対にどんな種も絶滅させてはならない、そのためには外来生物を一切受け入れてはいけない、と頑なになるのは人間のエゴです。むしろ、外来生物と交わりながら、逞しく生き残っていく生態系こそ賞賛されるべきでしょう。 

 このような自然に対する考え方は社会への姿勢に通ずるものがあります。島国の日本は外からやってくるものに対して強い抵抗感を抱きがちです。一方で、外国からやってきた文字や食べ物をうまくアレンジして取り込んでいった実績もあります。外来生物についても自然による壮大な営みの一環として捉えることで、温かく見守れるような考え方を持つことが大切なのです。