「医療崩壊」なの?じゃあ、医療改革しちゃいましょう

2021年3月22日(月)

 ハルです。

 

 医療崩壊の懸念を残しつつ、1都3県の「緊急事態宣言」が解除されました。こうしてみると改めて新型コロナウイルス感染症の拡大は、医療体制と経済活動が常に天秤にかけられているということを認識させられました。

 しかし、そもそも医療崩壊」って本当に起こるのでしょうか?

 

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 一般に、新型コロナウイルス感染症のような感染症には急性期病院が対応することが想定されています。しかし、都内の急性期病院はそれほど急がなくてもよい医療や収益性の高い人間ドックを相変わらず行っています。また、多くの重症患者を引き受けた大学病院には多数の医師がいるはずですが、対応したのはほんの一握りです。(週刊新潮’21.1.21)

 341病院を対象にした調査によると、2020年2~6月の間、重症患者の4分の1が一般病棟を利用している一方、軽症患者の約半数が感染症専用病床やICU(集中治療室)などの高規格病床を利用しているという「ミスマッチ」も生じました。さらに、集中治療専門医が在籍する都内41病院のうち、専門医がたった1人しかいない病院が15施設もあります。(渡辺さちこ・アキよしかわ「医療崩壊の真実」MdN)

 

 つまり、日本の医療体制は、コストを気にせざるを得ない民間医療機関が圧倒的に多い中、これらも含めて急性期病院の数が多すぎて、「専門性」が分散化してしまっているのです。このため、まずは局地的に医療従事者が疲弊し、患者の受入れが困難になるという「崩壊」が生じているのです。(週刊現代2021年1月23日号)

 この状態を放っておくと次は面的な崩壊となります。こうした構造的な問題が、新型コロナウイルス感染症によって明るみになりました。

  

 本来であれば、新型コロナウイルス感染症のような未知の疾患は、対応できそうな公的医療機関において治療を行い、全国統一的にデータ収集や治療開発を行うべきです。 

 仮に感染力があまりにも強く患者数の増加に歯止めがかからない場合は、その医療機関を「重点病院」に位置付け、他の医療機関から医療従事者派遣などの支援を得るという「資源重点投下」の手法をとるべきなのです。

 人口当たりの病床数が日本の6~7割しかないドイツでは、広域地域に一つの病院をコロナ感染症専門病院として全国に配置・運営しています。(森田洋之「日本の医療の不都合な真実幻冬舎新書

 

 しかしながら、国は医療機関に気兼ねし、強制措置を執ることができないまま、自治体や各病院に「お任せ」してしまいました。そして、病院の収入となる診療報酬や予算は、医療機関や関係団体の言うがままに増額し、垂れ流すこととなったのです。

 当面は何とかなるでしょう。でも、より危惧されるのは、新型コロナウイルス感染症が終息した後の医療体制のひずみが大きくなることです。具体的には、今の医療体制の堅持が謳われ、医療費の増額が止まらなくなることです。こうして、天秤が医療体制に傾き続け、今度は日本経済の「崩壊」というシナリオに突き進むのです。

 

 この「崩壊」を予防する処方箋は、コロナ後の医療体制を今の段階から整えていくことです。

 まずは、機能分化を促進することです。具体的には、国立病院や自治体立病院をはじめとする公的医療機関に緊急性の高い医療を担ってもらい、その他の急がなくてもよい医療を民間医療機関に担ってもらうという役割分担です。

 緊急性の高い医療とは、致死率の高い感染症のほか、脳卒中心筋梗塞など直ちに生命に関わる疾患を対象とする医療が該当します。がんも生命に関わる疾患ではありますが、急がなくてもよい医療に分類します。

 次に、法的整備を行い、こうした緊急性の高い医療を担う公的医療機関に資源を集中投入できるようにします。必要な場合、都道府県知事が地域の民間医療機関に医師派遣などの協力を要請できるようにします。

 最後に開業規制です。医療機関を新たに開業する場合、診療科目のバランスや地域性を都道府県知事が勘案した上で許可することとします。これによって、医療資源の分散や偏在を防ぎます。 

 

 医療は「公器」であり、大事な資源です。「便利サービス」と捉えるべきではありません。しかし、だからといって「医療」と名が付けば、全てにおいて何が何でも維持しなければならないというものではありません。

 なぜなら、医療を提供するためには財源が必要であり、その財源を捻出するための「経済活動」にも限りがあるからです。何を「社会の資源」として次世代に継承していくのか明確にしていくことが大事です。(池上彰ら「いまこそ『社会主義』」朝日新書

 

 医療体制と経済活動との天秤は常に存在します。これらの処方箋を実行に移すことは容易ではありませんが、このコロナ禍の状況だからこそ、医療の存在価値を再確認しつつ、今から打てる手を打っていくべきです!