ロボット(RPA)と歩む!未来のワークプレイス

2021年4月12日(月)

 レーブだ。

 

 職場のRPA(Robotic Process Automation)化が進んでいる。RPAとはソフトウェアによる自動化(ロボット)だ。

  「RPA国内利用動向調査2020」(株式会社MM総研)によれば、大手企業では51%が、中堅・中小企業でも25%が導入済みだ。人口減少に伴う現場の人手不足を補いつつ「働き方改革」を進めなければならないという事情がある。また、日本は諸外国と比べて労働者1人当たりの生産性が低い。テクノロジーでカバーしなければならないという切実な理由もある。(田牧大祐ら「中小企業経営者のためのRPA入門」幻冬舎

 

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『ロボ・コーディ』

 ところで、AI(Artificial Intelligence)との違いって何?という疑問もあろう。AIは「判断を自動化する」ものだ。といっても現状では確率的に「確からしい」方向性を示してくれるに過ぎない。人間には到底及ばない。RPAとの関係でいえば、特化した用途向けのAIとの融合が期待されている。  

 RPAが請け負う業務は多岐に及ぶ。例えば以下のようなものだ。

書類のチェック・・・精算報告の確認

データ入力・・・役所への各種申請様式への入力

ロジスティックスの管理・・・在庫管理

顧客対応・・・AIチャットボットを利用した問い合わせへの対応

秘書業務・・・海外出張の航空券手配

情報収集・・・取引先企業の所定の情報をウェブから収集

(安部慶喜「RPAの真髄」日経BP社)

 

 単調な繰り返しや時間がかかるもの、「誰がやっても結果は同じじゃない?」と思える仕事はストレスが大きい。RPAを活用し、従業員をメンタル面で支えることができれば、離職防止につながる。何より、従業員に時間的な余裕や精神的なゆとりが生まれ、より高度な業務に専念できる。このタスクシフトは大きい。 

 気を付けなくてはならないのは、現状維持で良しとする企業にとって、RPAの導入が人減らしや新規採用停止のツールになってしまうことだ。安易に人件費の最小化を目指す発想では付加価値は生まれない。従業員の管理もその一環と捉えられる。新型コロナウイルス感染症の拡大を防ぐため、テレワークによる在宅勤務を推奨している企業も多いだろう。これに伴い、従業員を監視できるサービスが各社から提供されている。

 NECはパソコンの操作ログから勤怠管理できるサービスを、キャノンITソリューションズはカメラで在籍時間を集計できるサービスを提供している。米マイクロソフトは、メールやチャットのやりとりから「生産性スコア」を数値化できるようにした(さすがにこれは批判を受け、今は個人が特定されないよう変更されている。)。(日本経済新聞2021.2.2) 

 

 人を減らしてコスト削減を図る職場は、当面、効果を上げることができたとしても、いずれ企業価値が問われる場面において、間違いなく淘汰の対象となろう。生き残るのは、人の能力を最大限に活かして「生産性」を高めようとする職場、人的資本を重視する職場である。

 「生産性」を高める方法としては、斬新なビジネス考案や広い視野に立った戦略の立案が想定される。現代はサービスの多様化や高度化、そして変化への素早いキャッチアップが求められる。こうした対応はRPAにはできない。できることをRPAに任せ、「人」の強みを活かしたい。

 さらに、長期的なメリットもある。RPAに触れることによって従業員の意識も変わってくる。デジタルへの苦手意識が無くなるばかりか、デジタル的発想が身につき、むしろデジタルを活用していこうという意識が芽生え、革新的発想を持つようになる

 以下のビジネスモデル例は、デジタル技術を活用した新機軸を生み出す参考となるはずだ。(根来龍之ら「この一冊で全ぶわかるビジネスモデル」SB Creative)

 

「サービス化」・・・自社製品の製造・販売のみならず、何らかの付加価値を提供する。シスメックスは病院の検査装置を、外部施設の検査結果とリアルタイムで比較することによって精度管理している。自社の強みを深化させているのだ。

「オープンビジネス」・・・研究開発を他の企業と行い、価値を生み出す。セコムはソニーと「aibo」を用いたホームセキュリティを開発している。外部とネットワークを構築し、相乗効果を生んでいる。

「パーソナライゼーション」・・・顧客ごとに価値のある製品や情報を提供する。資生堂は、顧客の肌コンディションを解析し、美容液の最適な成分を調合している。 

 

 現代はシステムの「移行期」にある(ウォーラーステイン「入門・世界システム分析」藤原書店)。こうした中、労働者は低賃金に甘んじるのか、それとも人間としての能力を遺憾なく発揮するようになるのか、経営者たちは、RPAと共に歩む未来の職場に思いを馳せつつ、ビジョンを持つことが大事である