「未来薬局」がもたらす医療界の下剋上!

2021年9月27日(月)

 ハルです。

 

 今月末に緊急事態宣言が解除される見込みが高まっています。と同時に、冬場の再拡大の可能性も指摘されています。できれば医療の手を借りず、健康でいたいと考える人も多いことでしょう。生活に身近な「未来薬局」の出現が切望されます

 

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 薬局は、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」に定められた要件を満たしていると都道府県知事の開設許可を得た医薬品の販売店です。

 1974年より医薬分業が進められました。当初は医療機関内で薬をもらうことが当たり前でした。診察後、薬を手渡されるまで院内で待たされるのは苦痛でした。今や分業率は74%を超え、そのような医療機関は少なくなりました。診察が終わって外に出ると解放された気分になります。ところが、近くにあるいわゆる「門前薬局」に行って薬を処方してもらわなくてはなりません。薬をもらえる場所が数メートル~数十メートルだけ移動したに過ぎないのです。そして、薬局は処方箋がないと入れない施設であり、決して多様な商品で賑わっているわけではありません。「土地も建物ももったいない使い方をしているな」と思う人も多いことでしょう。医薬分業の意義が現在も問われ続けている理由の一つです。

 

 全国の薬局は2019年度末で60,171件とコンビニエンスストアの55,710件を上回っています。このうち70%を占める門前薬局の損益率は低下傾向にあります。2016年には13%程度でしたが、2018年度の診療報酬改定によって2.5%に落ち込みました。

 薬局調剤費の約25%を占める技術料1兆9000億円が費用対効果に見合っているかという問題もあります。調剤を行う薬剤師も飽和状態です。31万人の薬剤師のうち、薬局薬剤師が58%となっています(2018年)。2043年度には過剰になると予測されています。(藤田道男「ポストコロナ時代の薬局ニューノーマル」評言社MIL新書)

 薬剤師の役割も、訪れる患者の問題を解決するというより、医薬品という「モノ」を渡す「お店の人」に過ぎません。調剤業務が機械化されていく中、薬剤師の存在意義も問われているのです。(狭間研至「薬局マネジメント3.0」評言社)

 

 こうした中、政府は薬局の機能分化を進めています医療機関中心から日常生活を中心とする「地域包括ケア」に医療がその軸足を動かしつつある中、医療機関や他の薬局と連携しながら地域のハブ的存在となる「地域連携薬局」の仕組みが作られたのです。日本の服薬率は6~8割、飲み残しで無駄になっている薬剤費は年間約475億円とされています。多科受診による重複投薬も課題です。地域連携薬局において、適切な服薬管理を担うことが期待されています。 

 しかし、これだけでは不十分です。より踏み込んだ「改革」が必要です。鍵はドラッグストアにあります。ドラッグストアのイメージは「大衆薬」や「市販薬」の販売店です。政府は、医療用医薬品をこれら「OTC医薬品」にスイッチする方針を打ち出すとともに、医薬品を自分で選んで買う「セルフメディケーション」を進めています。

 ドラッグストアの強みは、日常生活に必要な多様な製品を取り揃えている点です。栄養機能食品も置いています。新型コロナウイルス感染症の拡大時も、感染予防グッズや外出自粛に伴う日用品等の需要増を受けて、順調に業績を伸ばしました。さらに、医薬品ニーズへの対応を強化するため、大手チェーンは調剤併設型事業所を増やしています。健康に関する総合力を前面に押し出しているのです。

 現在、ドラッグストアの店舗数は2020年度で2万店ですが、商圏を小刻みにすれば3万店舗にまで増える可能性があります。国民の生活習慣病アンチエイジングへの取組、美容や食への意識の高まりを見ると、これらに一元的に対応できる新たな「施設体系」が望まれます。それが、薬局の進化系、「未来薬局」なのです。

 模範となる事例として、栄養相談や理学療法士・介護療法士による運動療法を提供しているところもあります。健康測定ルーム、PCR検査センター、フィットネススタジオ、各種セラピー教室、介護相談事業所などを併設してもいいでしょう。デジタル技術の活用も期待されます。(松宮和成「医薬品業界のしくみとビジネスがしっかりわかる教科書」技術評論社

 規制緩和も必要です。薬剤師がその場で血液検査を行い、ウエアラブルデバイスから得られた相談者のデータと合わせて、薬物と食品の効果的な組合せをアドバイスしたり、健康相談を行ったりできると極めて有効です。

 新型コロナウイルス感染症は、思いのほか、自身の健康を真剣に考えさせてくれるきっかけとなりました。裁量を持った薬剤師が力を発揮できれば、医師を中心とする現在の医療を、本人中心の医療へと根本から変えることができるのです。