インターネット時代の「著作権」。どこまでが許される?

2021年10月25日(月)

 エディカです。

 

 今日から1都3県では飲食店が通常営業になるわね。もちろん、油断はできないけれど、カラオケも気兼ねなく行けるわ。そういえば、カラオケって1曲歌うたび、著作権のおかげで5円前後が作詞家・作曲家の懐に入るって聞いたことあるけど・・・一安心ってとこかしら。

 

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 著作権の存在理由は、芸術文化活動が活発に行われる土壌を作ることよ。著作者にとっては、著作物から利益が得られるというインセンティブがある・・・だからこそ、創作への意欲がわくの。でも、ほとんどは他人の作品からアイディアやイメージ、モチーフや手法、その他様々な要素を吸収して、自分の作品を作り上げていくものよ。だから、著作権なんて要らない、自由に使わせろって声もあるわ。

 ここで、簡単に「著作権法」を解説するわ。著作権法の目的は、文化の発展に寄与すること著作権が著作物を守るの。コピーや上演、譲渡や配信を著作者に断りなく行ってはいけないの。著作権には「権利の束」って言われるくらいたくさんの権利があるわ。

 でも、がんじがらめだと「文化の発展」につながらないから「制限規定」を設けて、一定の要件の下であれば著作権者から許諾を得ずに著作物を自由に利用できるようになっているの。例えば、私的に使用する場合、非営利目的で上演する場合、引用として用いる場合ね。このブログでも「引用元」はちゃんと掲載するようにしているわ。

 そして、現代はインターネットの時代・・・様々な情報が行き交うの。著作権の整理も大変になっているわ。というより、著作権法がどんどん強化されているわね。2018年の著作権法改正では、「アクセスコントロール回避規制」が導入され、著作物利用の手前にある「著作物へのアクセス」自体を保護する方向が決まったの。また、学校が授業をオンデマンド配信する場合、学生・生徒数に応じた補償金を支払わなくてはならないという「授業目的公衆送信補償金制度」ができたわ。ちなみに、著作権侵害は10年以下の懲役または1000万円以下の罰金・・・切ない話ね。(福井健策ら「インターネットビジネスの著作権とルール(第2版)」CRIC公益社団法人著作権情報センター) 

 

 そもそも、「文化」というものはみんなが自由に享受できる「公共財」のはず。著作者だけでなく、ユーザーにだって自分らしく利用する権利があるはずよ。アメリカの著作権法には、他人の著作物であっても公正な利用ならば著作権侵害ではないという「フェアユース」と呼ばれる規定があるわ。また、「クリエイティブ・コモンズ」と言って、非営利目的なら誰でも自由に利用・改変していいですよという表示を作品に記載するなどして自ら著作権を弱めるケースもあるわ。(福井健策「改訂版著作権とは何か」集英社新書

 それに、著作権法特許法などの知財法は社会的にも大きな影響を与えるものよ。新型コロナウイルスワクチンを世界に流通させるため、WHOが企業に特許を一時的に凍結するよう求めたこと覚えているかしら。 

 微妙なのは、著作権について、従来の「文化振興」に加えて「産業保護」の側面に光が当たってきたことよ。2017年に発表された「文化経済戦略」によって、オリパラをはじめ、産業、観光、まち・ひと・仕事等といった広範囲にわたって文化資源を活用する政策がスタートしたわ。(山田奨治著作権は文化を発展させるのか」人文書院

 それに、「文化の安全保障」という問題もあるわ。英語による文化情報の重要性が高まることで、英語以外の文化情報が相対的に弱くなる傾向にあることが指摘されているの。

 

 どう?著作権をめぐる問題の奥深さを感じてもらえたからしら。こうしたジレンマを解決するのは簡単じゃないわ。個人の権利と公共の福祉・・・これをいかにバランスさせるかよ

 解決方法として税金の考え方が参考になるわ。富裕層から多くを得て社会に還元する・・・みたいに。例えば、著作権にも何らかの「安定装置」を導入するの。具体的には、著作権が厳しくなるようであれば、著作権料収入にかかる税金を上げる。反対に著作権が緩和されるようであれば税金を下げる。いずれの場合でも得られた税収は文化振興に還元する、という風に・・・。この場合、著作権の強化・緩和のバロメーターを設定しなくてはならないけど、このように規制と連動したシステムを導入することで、著作者の権利と、ユーザーや他の創作者の権利とのバランスを図ることが期待できるわ。 

 インターネット社会は、「一億総ユーザー化」、「一億総クリエイター化」とさえ言われていて、一人ひとりが「文化」を楽しみ、これを創り出すポテンシャルが増大しているの。そのことが多様性を育み、「文化の発展」につながるわ。今一度、人間が知識に「アクセス」することを最大限に尊重すべきという著作権法の原点に立ち返るべきね。