新型コロナ対策を振り返りながら「シン・感染症」に備えよ!

2021年11月29日(土)

 ハルです。

 

 新型コロナウイルス感染症は国内では落ち着いているように見えますが油断はなりません。ドイツや韓国、米国ニューヨーク州などで感染者が急増しているほか、南アフリカの変異株「オミクロン」がこれまでにない驚異的な感染力を見せています。年末年始には今夏のような爆発的感染が起きるかもしれません。

 さらに、今後、もっとインパクトの大きい感染症が発生する可能性もあります。新型インフルエンザ感染症は20年の周期で、未知の感染症である「DiseaseX」は10年前後の周期で発現するとされています。こうした「シン・感染症」に適確に対応できるよう、ここでいったん新型コロナウイルス感染症対策を振り返りたいと思います。(阿部圭史「感染症の国家戦略」東洋経済新報社

 

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 未知の病原体については、科学的なエビデンスは無いと考えたほうがいいです。類似する病原体からある程度推測することは可能です。新型コロナウイルスで言えば、SARSやMARSになります。ですが、同じとは限りません。また、感染拡大によって毒性の強い変異株が生まれる確率が高まります。

 結局、対処しながら情報収集していかなくてはならないのです。ここで気を付けるべきポイントは、直ちに対応できる「専門知」が存在するとは限らないことです。専門家会議などでそれなりの見解は出るでしょう。しかし、未知の病原体の性質は予測できません。そこで大事になってくるのがデータです。具体的には、地域や感染経路に関連する感染拡大のトレンドを読むことです。そうすることで、病原体の特徴をつかむことができます。徹底的に検査・分析を行い、リスクを正確に見極めることが重要なのです(金子勝「人を救えない国」朝日新書)。新型コロナウイルス感染症の場合、誰も予想しなかったくらいの強力な感染力で、宴席やカラオケを感染経路にしてしまいました。結果、これらのサービスの提供を縮小することとしたのです。

 また、全容が解明されるまでの間、様々な「専門家」がメディアに登場して、コメントします。でも、彼らは必ずしも現状のデータを持ち合わせているわけではありません。このため、「インフォデミック」が生まれやすくなります。そして、これに対抗する情報発信体制が求められます。ここでも、データが武器になります。あくまでもデータに基づき、メディアや国民とコミュニケーションを図るべきであり、仮にデータが無いなら、「無い」とはっきり言うのです。

 

 最終的には、遺伝子デジタル情報を取得し、いわゆる危機管理医薬品(ワクチン、診断薬、治療薬)を迅速に開発・入手することが決め手となります。ただし、一国だけで対応していても駄目です。グローバル社会では相互の影響を考えなくてはなりません。各国や国際機関との協調が求められます。その一環として、早期警戒システムが必要です。WHO(世界保健機関)がその役割を担ってはいるのですが、新型コロナウイルス感染症については、台湾が、中国の動きを注視することでいち早く対処しました。日本としては、台湾をはじめいくつかの国との連携体制を構築しておくことが重要です。そのためには、日本として、物資やワクチンの供給を積極的に行うことを提案しておかなくてはなりません。

 危機管理医薬品が整うまでの対応は、①医療措置、②公衆衛生措置、③渡航措置が基本となります。ポイントの2つ目は、こうした取組については権限を集中し、全国一斉に同じことを行うことです。法整備が必要です。感染症では、被害者であるはずの患者が加害者のように扱われ、排除されます。これは人と人の分断につながり、自治体間でも分断が生じます。第一次緊急事態宣言は、都道府県が排除合戦を強めたため、結局、全国に拡大することとなりました。全国で一斉に「関所」機能を発揮し、鎮静化のスピードアップを優先することが大事なのです。また、知事などの首長はどうしても「前のめり」の対応としてしまいがちです。それで感染拡大が収まらないと、さらに「前のめり」対応をすることになります。ありがちなのは「経済対策」と称して、公金をどんどんつぎ込むことです。でも、経済を活性化するには至りません(金井利之「コロナ対策禍の国と自治体」ちくま新書)。

 

 もう一点、大事なのは、少しズルいですが、拙速を避け、取組の中進国になることです。日本は戦争を行わないので危機管理の意識がアメリカのように強くない面があります(猫組長(菅原潮)「カルト化するマネーの世界」講談社+α新書)。こうした先行国の取組を見ながら、日本としての最適解を見つけることが効率的です。

 以上の戦略は特効薬ではありません。「シン・感染症」対策は中長期戦になるという前提を皆が理解し、自分たちだけ早く楽になればいいという短絡的な発想に陥ることなく、協力姿勢を貫くべきです。