デジタル情報を「第二の通貨」にして新たな循環システムへ!

2022年1月24日(月)

  フィナよ~。

 

 昨年11月24日、大手銀行やNTTグループなど74社・団体が参加する企業連合が、デジタル通貨の実証実験をこの3月末までに行うと発表したわ。ブロックチェーン(分散型台帳)の技術を使いながら、企業間の決済や送金のコストを下げる試みのようね。

 経済のデジタル化が進んでいるわ。新型コロナウイルスの感染拡大によって、在宅勤務や遠隔教育といった場面でICTの実装が進んでいる。人口が減少していく日本にとって、デジタル化は喫緊の課題ね。

 でもちょっと待ってちょうだい!ことはそれほど簡単じゃないわ。経済のデジタル化には「個人情報保護」の考えがついてまわるの。お金の動きは最大級の「ビッグデータよ。スマホで買い物をすれば、あなたがいつどこで何をいくつ買ったかというデータが取れるわ。いざとなれば、あなたのプロファイルなんて簡単に作れちゃうでしょうね。中国では「デジタル人民元」を作ろうとしているけど、本当の目的は国民一人一人の詳細なデータを入手することじゃないかって言われているの。(野口悠紀雄「データエコノミー入門」PHP新書)

 では、データは一切提供しないってなるとデジタル化のメリットは大幅に減るわね。そうした事態を見据えると、ここは逆転の発想が必要よ。つまり、「マネーのデータ化」ではなく「データのマネー化」よ。価値ある情報はもはやマネーと同列。思い切って「第二の通貨」と位置付けて、循環システムづくりを考えていくべきよ。

 

 情報の価値が高まる中でデータの集中がさらに進行するわ。うまくやっているのがGAFAなどデジタルプラットフォーム(DPFとされる企業ね。世界レベルで経済の寡占化が進行しているのDPFが寡占化しやすい理由として、規模拡張にコストがあまりかからないこと、アマゾンがデジタル書籍業から配送業に手を広げたように様々なサービスに拡張しやすいことが挙げられるわ。

 一方で、寡占化に伴って、圧倒的な情報量をテコに取引慣行に歪みがもたらされることが懸念されるわ。こうした中、国側の動きもあるわ。2020年10月、米司法省が反トラスト法違反でGoogleを提訴、中国では2021年4月にAlibabaに対し、独占禁止法違反で182億元(約3120億円)の罰金を科したの。国内では2020年に成立した「DPF透明化法」において、DPFに対し取引条件などの情報開示を義務付けたわ。(大橋弘「競争政策の経済学」日本経済新聞出版)

 

 この流れを利用して、デジタル情報を通貨とみなしてうまく付き合う方向にもっていくべきよ。もちろん、価値が伸縮自在だから従来の通貨とは違うわ。でも、今の通貨だって「信用創造」が存在するじゃない。「信用創造」とは、現金を銀行に預金すると預金通帳に金額が記載されて預金者の手元に返ってくる一方で、現金は融資という形で企業に貸し出される。すると、最初の現金の何倍もの量のマネーがコンピュータ上に記録され、あたかも増えた格好になるってことよ。デジタル情報だって「通貨」になれる資格は十分あるんじゃない。(長沼伸一郎「現代経済学の直観的方法」講談社

 「情報バンク」はデジタルがマネー化された一つの形ね。情報を貸し借りできるようにするの。三菱UFJ信託銀行は、2021年7月に「Dprime」を立ち上げたわ。ここでは、個人が提供するのは位置情報や資産情報などに限り、名前や住所など個人を特定できる情報は隠したままにするの。対価として企業の新サービスや割引券などを受け取れるわ。でも、データが十分集まらない可能性があるわね。

 

 ここは世の中に数多ある決済の仕組みにリンクする形でデジタル情報を取得するようにするの。例えば、商品購入時にコンビニでスマホをかざす際、所定のデータセット、性別、年齢、居住地といった個人特定情報に、購入履歴情報を加えたものを提供してもよいとした場合は、より大きなポイント(またはデジタル通貨)がもらえるようにするの。つまり、所定のデータセットを個人所有物として売買に使えるようにするの。もちろん提供しなくてもいいし、一度提供したデータセットであっても消去してもらいたければ、消去対象データ分のポイントを使用してシステム上で消去するの。システム運用については公的機関がチェックする仕組みにすればいいわ。

 これまで無料で入手した情報のおかげで巨大になったDPFだけれど、こうした仕組みによって、無制限の肥大化は避けられるわ。企業会計上も「デジタル情報」が「資産」として扱われることになるでしょうね。

 経済のデジタル化については、個人情報保護の問題のほか、デジタル課税など複雑な議論があるわ。だから、ここはシンプルに「第二の通貨」として「価値」を見える化すればいい。そこから新たなビジネスチャンスが生まれることも期待できそうよ!

 

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