男が疲れている・・・それって「LOH症候群」!?

2022年1月31日(月)

 ハルです。

 

 男性が疲れています。

 新型コロナウイルス感染症はオミクロン株の登場で局面が変わりました。これからの果てしない闘いを想像した人も多いでしょう。一時期、女性の自殺率が高くなりました。理由としてコロナ禍での雇用環境の悪化が挙げられています。でも、コロナだけが悪者ではありません。根底にあるのは社会構造の問題です。男性についても、社会構造を背景とした心身への影響があるのです

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 8割以上のビジネスパーソンが病気の一つ手前の状態にあります。原因の大半が「食べ過ぎ」です。頭では分かっているつもりです。でも、「ストレス解消に」と自分に言い訳をしつつ、ついつい、「快」を求めてしまいます。

 これに、日本特有の問題である通勤地獄と睡眠不足が加わります総務省が2011年に実施した通勤・通学時間のデータによると、全国平均は1時間14分、トップは神奈川県の1時間40分でした。満員電車で「おしくらまんじゅう」に耐えるサラリーマンの姿が目に浮かびます。仕事を始める前から疲れ果てているのです(沢渡あまね「なぜ、日本の職場は世界一ギスギスしているのか」SB新書)。

 かたや睡眠時間も、平均7時間22分とOECD加盟国で最も短いです。スマホによるネット視聴が睡眠時間の短縮化や睡眠障害に拍車をかけています。(石川雅俊「男のヘルスマネジメント大全」クロスメディア・パブリッシング)

 

 さらに、管理職には苦行が待っています。「マネージャー・シンドローム」「サンドウィッチ症候群」「管理職症候群」などネーミングも多彩です。社会や仕事は複雑になる一方であり、彼らの心理的負担は相当なものです。気を付けなくてはならないのは、本人も気付かない深いところで健康問題が進行していることです。

 その一つが、男性更年期症候群(LOH症候群;Late Onset Hypogonadism)です。これは、主たる男性ホルモンの一つテストステロンが二次性徴後に急激に減ることによって引き起こされる症状です。LOH症候群にかかっている人は国内に700万人も存在すると推定されます。

 具体的な症状は、元気はつらつさが失われること、やる気がない、不誠実、ずるい、不親切、内向き傾向といったものです。さらに、疲れやすい、昼間に眠くなる、他人の目が気になる、他人の批評に心が折れる、といった状態も認められます。

 テストステロンには筋肉と骨を強くするほか、動脈硬化の予防、造血、性機能亢進といった作用もあります。糖尿病やメタボリック症候群で生じる小規模な炎症を抑え、免疫力もアップしてくれます。コロナ禍では重要な機能です。性格面では、社会貢献の気持ちを強くする、正直、公平さ、公正さ、計画性があり緻密である、といった側面が強くなります。また、ストレスが多いと気分が沈みがちですが、テストステロンが多い人は比較的幸福感を保ちやすいのです。

 厄介なのは、女性の更年期障害は閉経の前後5年以内と一過性であるのに対して、LOH症候群は全ての男性に起こるわけではないものの、早ければ30代でも発症するなど時期が一定せず、症状が現れる期間も長く、待っていても自然には治らないことです。こうした時に、仕事でうまくいかないことがあったりすると、「自分に能力が無いからだ」「努力が足りないんだ」と自分を追い詰めてしまい、それがまたストレスとなって病気を進行させるという悪循環に陥ることになります。

 

 どうすればよいでしょう?

 テストステロンが減る原因として、がん、糖尿病、肝臓病といった生活習慣病が挙げられますが、最も多いのはストレスです。特に、長時間労働、仕事内容の変化といった仕事関連のストレスは要注意です。しかし、これらは容易に解決できるものではありません。このため、「自衛力」を身に付けることが重要となってきます。映画を鑑賞したり、音楽を聴いたりと、更年期以降も無理なく取り組めるような、自分に合ったストレスマネジメント法を見つけるべきです。マインドフルネスという精神療法も有効とされています。平たく言えば瞑想のようなものですが、専門家の力を借りることも考えましょう。注意したいのはランニングです。ストレス発散にいいとされていますが、月間200km以上のランニングはテストステロンを低下させ、逆効果となります。(堀江重郎「LOH症候群」角川新書)

 そして、より重要なのは、こうした目に見えにくい病気や障害の存在を知り、周囲も理解を示すことです。それは、これまで顧みられることが少なかった女性の更年期症候群や生理の問題など女性が抱える健康問題に目を向けることにもつながります。こうした問題は、現代のストレス社会の中では誰にでも起こり得るものです。思いを致しつつ、満員電車でさっと席を譲る「Give Way」の精神を持っていたいものです。