2022年2月7日(月)
コノミです。
北京オリンピックが始まりました。日本人の金メダルも出ましたね!新型コロナへの不安もあるでしょうが、選手たちには頑張って欲しいです。
ところで、昨年の東京オリンピック・パラリンピックがずいぶん遠い過去のことのような気がしますが、期待されていた経済効果はどうだったのでしょうか?そもそもスポーツは経済活動にとってどの程度意味があるのでしょうか。今後のスポーツのあり方を冷静に考えてみます。
厄介なのは、国民が負担を自分ごとと感じていないことです。むしろ、閉幕時の世論調査では「開催してよかった」と過半数と評価しているくらいです。気を良くした日本政府は、早速、2030年札幌冬季五輪の招致に向けた動きを始めています。東京五輪をめぐる騒動、理不尽なIOC、パンデミックの可能性を考えると他国も招致に躊躇するでしょう。札幌招致が現実味を帯びてきます。ちなみに、1998年長野五輪大会が長野県にもたらした経済効果は、地域のGDPは増えたけど人口一人当たりのGDPに換算したら効果はそれほどではないようでした。(吉見俊哉「検証コロナと五輪」河出新書)
招致はさておき、五輪開催によって国民がスポーツやアスリートに対する価値を認めているという点は評価できます。日本リサーチセンターが行った国民意識調査によると、「国民のスポーツに対する関心が高まる」という回答が28.8%、「日本のアスリートのレベルが向上する」が26.6%でした。
スポーツには、健康の維持・増進により生産性を高めたり、健康的な高齢者を増やして介護費の増加に歯止めをかけたりする効果があります。また、協調性、規律、統率力、忍耐力、気配りといった非認知スキルを修得できる効果もあります。見えにくい点ではありますが、経済活動ではとても重要なスキルです。運動部の経験は将来の賃金を約2%から15%引き上げます。人的資本投資と捉えることができます。また、企業がアスリートを雇用することによる経済効果も指摘されています。モラールの向上や一体感の醸成など、アスリートの行動が周りの従業員の行動に影響を与えるのです。
(佐々木勝「経済学者が語るスポーツの力」有斐閣)
心配なのは、日本の将来を背負う若い世代が運動しなくなりつつあることです。全国体力テストの点数が減少しています。原因として、体育授業以外の運動時間の減少、肥満児童や朝食を食べない児童の増加が挙げられます。運動部の活動時間も減少しています。また、スクリーンタイムの増加も要因の一つです。体を動かすことの気持ちよさ、楽しさを経験する前に、スマホゲームなど画面の中で簡単に楽しめることを知ってしまうのです。
そして、スポーツを「する」よりも「見る」ほうに偏りつつあります。プロ野球の観客動員数は2013年~19年まで増加傾向にあります。街中でランニングする人を見かけます。ジムに通う人も多いです。でも、全体的に「歩数」は減少傾向にあります。運動に対する「二極化」が生じているのです。(田中充ら「スポーツをしない子どもたち」扶桑社新書)
でも、勘違いしてはいけません。オリンピックや国体など大イベントを積極的に開催する必要はありません。競技場の新築も不要です。大がかりな環境整備ではなく、オンラインでも楽しめるよう工夫すべきです。運動療法で必要なスペースは1人当たり20㎡とされています。例えば体育館でスクリーンを活用して五輪会場を再現し、運動してもらうのも手です。軽量ゴーグルを使ってVRで臨場感を楽しむのもいいでしょう。遠くにいる人ともつながります。
1964年の東京五輪を経験した世代は、経験していない世代に比べてスポーツをしている割合が高いそうです。2020年東京五輪の「レガシー」はあるのでしょうか。忘れ去られる前に、今後に活かせるようみんなで知恵を絞っていきましょう。