中学受験は正しいのか?

2022年2月28日(月)

 エディカよ。

 

 2月も終わりね。中学受験生のみなさん、親御さん、教育関係者の方々、お疲れさまでした。結果はそれぞれでしょうけど、ここでは改めて中学受験の意味って何か、振り返ってみない?

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日本テレビ「2月の勝者ー絶対合格の教室ー」

 大学受験対策を考えると、中学受験イコール中高一貫教育ね。中高一貫教育の良いところは、6年もの間、目先のことにこだわらず、地に足の着いた勉強ができること。特に進学校だと早い段階から幾何を徹底的に学んで数学的な素養を高めるとともに、古典を知ることで、自分たちが無意識に使っている日本語の論理的構造を改めて認識するの。つまり、思考のオペレーションシステム(OS)の性能がぐんと高まるのね。もともと中学受験に合格する時点で地頭の良い子なんでしょうけど、さらに頭脳が鍛え抜かれるの。

 また、高校受験に関わらないから、思春期という大事な時期をじっくり過ごせるわね。人は14歳くらいから抽象的な思考をするようになり、自分や社会を相対化してみることが可能になるの。だからこの時期は「反抗期」でもあるけど、大人になるための大事なプロセスよ。でも、最近の子は比較的おとなしいみたい。ひょっとして、中学校の成績表に「意欲・関心・態度」の項目が追加されたことで「骨抜き」になったのかしら?それとも、習い事づくめの生活の中で、勉強も塾任せになっていて、親が教育に口出ししなくなっているからかしら?

 ちなみに、小学生の習い事にかけるお金は平均1万5300円。内容は、スポーツ(63.6%)、通信教育(60.1%)、塾(49.1%)、アート(28.7%)などね。いずれにしても、この大事な時期を入試対策で追い回している国は世界的にも少ないわ。この日本特有のシステムは戦後の学制改革で生まれたの。全ての人に門戸を広げるため、中学を5年間にした上で、小・中の計11年間を義務教育にしようとしたのだけど、予算が足りなかったから、今のような「6・6・3」制になったのね。その後、一本調子じゃだめだということで、1990年代以降の「多様化」改革で、中高一貫教育や、小中一貫の「義務教育学校」が推し進められたけど、多感な時期を見守るという意味では、中高一貫教育のほうに軍配が上がりそう。中学生の25%が私学に通っているという東京都では、2023年度までに併設型中高一貫教育校の高校募集を止めて、完全中高一貫校化するわ。

 

 一方で、私学人気が復活していることに注目ね。コロナ禍で授業をこなすのに汲々としていた公立中学に対し、いち早くオンライン授業を始めた点が評価されたみたい。また、学業もそうだけど、野球やラグビーなどスポーツでも「私学強し」という好印象が後押ししているわ。もともとは正統派としての公立校に対し、異端としての私学というイメージがあるけれど、現代のように変化の激しい時代では、国の方針に右往左往する公立校に比べると、「建学の精神」という不動点を持ちつつ柔軟に対応をみせる私学は魅力的かも。(おおたとしまさ「なぜ中学受験するのか?」光文社新書

 改めて浮き彫りになるのは「教育」の位置付けね。本来、どんなに些細な教育でも役に立つはずだけれど、教育に投資すればするほどリターンが多いと多くの親が信じ込んでいるわ。(A・V・バナジー/E・デュフロ「貧乏人の経済学」みすず書房

 こうした中、「教育を選ぶ」自由を強調し過ぎると、「教育」が持っている公共性を損なうことになりかねないわ。全国的に90%以上の子どもたちが公立中学校に通っているけど、現実問題、中学校間の学力格差は拡大傾向にあるわ。「教育を選ぶ」声はますます強くなるでしょうね。そうなると、親の財力次第で、私学などを「選ぶ層」と「選べない層」との関係が固定化していくことになるわ。そこへもって親からの「押し付け」が加わると、子どもが歪んでいくことになるわ。思春期の時点で、金銭や安定した地位を大切にしたいという価値観が強い子どもほど、高齢期の幸福感が低くなる傾向にあるみたい。(志水宏吉「二極化する学校」亜紀書房

 

 そもそも学校で学ぶのは、道理を見極めるための「目」を良くすることよ。特定の分野からだけ見ていては現実社会における最適解にはたどり着けない。そして、才能を確認する正攻法は、たっぷり時間をかけて、何が得意なのかを自分で示せるようにすることよ。親にできるのは、せいぜい、「建学の精神」など学校の持つ「ハビトゥス」を見極めて教えてあげることね。「ハビトゥス」とは、フランスの社会学ブルデューが提唱する「文化資本」の一つよ。受験結果は、それはそれとして受け止めて、プロセスを楽しんで欲しいの。親子で受験の「正しさ」について話し合いながら信頼関係を築き、そのことが親子双方の人生を支える、そんな中学受験であって欲しいわ