熾烈な半導体戦争。日本よ、遅れを取るな!

2022年4月18日(月)

 トランだ。

 

 ロシア軍によるウクライナ侵攻は、石油という天然資源の重要さを再認識させてくれたが、新型コロナウイルス感染症は思いもかけない素材の重要さを教えてくれた。それは半導体だ。次世代移動通信(5G/6G)やAI、量子コンピュータなど、システム社会が到来しつつある。今、世界が血眼になって半導体を取り合っている。果たして日本は競争に乗り遅れてやしないか、心配だぜ。

 

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 21世紀のインフラの主役は、間違いなく半導体だ。半導体は電気を通す部分と通さない部分から構成されていて、これで電気信号をコントロールする。この性質が重宝され、今ではほとんどの電子機器に組み込まれている。半導体が無ければスマホも使えないし、自動車や鉄道も動かない。新型コロナウイルス感染症のおかげでリモートライフが進んだが、半導体が無ければ何もできやしないぜ。

 こんな中、世界では半導体争奪戦が激しさを増している。特に米国の動きは素早く、実に露骨だ。バイデン政権は半導体の製造工程のシェアを抑えるため、台湾にある世界最大の半導体メーカーTSMCに対し、米国内に工場を建設させようとしている。TSMCは、製品値上げに踏み切れば世界が震えると言われているほど価格決定力を持つ。米国は設計企業は粒ぞろいだが生産部門は弱い。中国のキャッチアップも脅威だ。米国が台湾への関与を強めたのは、中国の軍事的野心を警戒するからだけじゃない。半導体を守りたいからだ。中国軍が台湾のシリコンバレーである新竹を支配すれば世界のサプライチェーンは崩壊する。分かりやすいだろう。さらに、米国は韓国にも圧力をかけている。TSMCに次ぐ半導体工場を持つサムスン電子にも国内への工場進出を促している。どこまでも貪欲なんだぜ。

 こうした姿勢は補助金にも表れている。米国は半導体分野に対し、2021年は3兆8000億円の支援をしている。各国も力を入れている。中国は国・地方合わせて10兆円規模の予算だ。アメリカによる締め出しを受け、自給体制の確立を目指して急成長中だ。EUは2030年までに世界シェア20%を目指している。かたや日本の予算は2000億円と心許ないぜ。(太田泰彦「2030半導体地政学日本経済新聞出版)

 

 日本はかつて、半導体生産能力ではトップを走っていたが、今は台湾、韓国に次ぐ第3位だ。こうなった原因に、86年の「日米半導体協定」が挙げられる。海外製半導体を20%以上輸入することを義務付けられ、日本製は締め出しに合ったんだ。知的財産権に対する姿勢も甘かったな。諸外国の設備投資に合わせて装置を販売する際、技術やノウハウまでも教えちまった。これまでは業界再編で凌いできたが、これからは巻き返しを図らなきゃだめだぜ。

 日本はシステムLSIを得意としている。システムLSIは、CPUやメモリ、その他の電子機器に必要な周辺回路などを一つのチップに集積したもので、大量生産という訳にはいかない代物だ。部品点数の削減、小型化、多機能化などの課題を克服すれば、次世代システムを手中に収められる。さらに、マニアックな話になるが、光電融合の技術を磨けば、アナログ世界を丸ごと捉えて情報処理することができる。期待大だぜ。

 半導体の製造装置も有望だ。仮に半導体産業全体の市場規模を30兆円とすると、製造装置産業は5兆円以上にもなる。しかも、製造装置を抑えれば素材も抑えやすくなる。現在、世界トップ企業の半数は日本メーカーが占めるまでに復調している。さしもの中国も決して強くない分野だ。(センス・アンド・フォース「半導体業界の動向とカラクリがよ~くわかる本」秀和システム

 

 そして、一番重要なのは国の姿勢だ。1980年代以降、産官学連携の大型プロジェクトは存在しない。改めて、半導体を国の戦略物質として位置付けて、支援すべきだぜ。

 一つは、人材の確保だ。ISSCC(国際固体素子回路会議)における日本の半導体論文提出数は上位ながら年々減少している。次世代素材は他国からの攻撃対象にもなる。高い技術力や開発力を持った技術者を優遇するとともに、知的財産権を手厚く保護していくことが重要だ。

 業界の再構築も必要だ。部品を買う側にいたユーザー企業も、これからは設計を自ら手がける流れになる。世の中の急激な変化に柔軟に対応できるよう水平型分業を徹底させるとともに、企業間で解決しなければならない課題について国が調整役を担うことだ。

 さらに、日本は高齢化など人々の暮らしの質が問われる課題先進国だ。次世代半導体とされる「有機バイス」のような柔らかい素材を体に張り付ければ健康管理をより精緻に行うことができる。産業部門だけでなく健康、教育など政府の様々な部門が一丸となって国内で実装化し、世界に売り込みをかけていく土壌をつくることが大事だぜ。