災害対応はリスクコミュニケーションから!

2022年5月2日(月)

 エディカよ。

 

 大型連休に入ったわ。ロシアが核攻撃をちらつかせているウクライナ情勢も大いに不安だけれど、今、何が心配かというと観光産業の安全性ね。「KAZU1」の事故は大惨事になったわ。新型コロナによる経済停滞状態から一気に挽回しようと、業界全体で無理をしてしまう可能性があるわ。みんなも気を付けてね。

 

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 自然災害のことも忘れちゃだめよ、そもそも日本列島は世界の地震の1~2割、火山の約1割が分布する特殊地域なの。特に3つのプレートが接する「三重会合点」に近い関東地方は要注意よ。(中島淳一「日本列島の未来」ナツメ社)

 国家の危機管理の成否を分けるポイントは、平常時に最悪の事態をリアルな形で想定しておいて事態発生の初期から手を打つこと、組織・人員・資材を用意すること、そしてもう一つは適切なリスクコミュニケーションをとることよ。リスクコミュ二ケーションのあり方一つで状況が全く変わるの。

(柳田邦男「この国の危機管理失敗の本質」毎日新聞出版

 

 ドイツの社会学ウルリッヒ・ベックは、現代を「リスク社会」としたわ。その心は、自然災害や感染症を乗り越えるため人類は土木や医療といった科学技術を発展させてきたけれど、進化した科学技術が新しいリスクを生み出し、さらにこれを克服するため、新しい科学技術が必要になってくるという永遠のサイクルの中に私たちは生きているの。洪水を防ぐためダムや堤防を築くと土砂がたまってその処理が問題となる、感染症も耐性菌が出現し、もっと強力な抗生物質が必要となる・・・要は常にリスクと向き合っていかなくちゃならないの。

 こうした世の中では、モノや制度を作る立場にある人の意識が大事よ。例えば、工学的な視点だけで安全性を考えると、住民の避難対策や環境汚染といった問題はなおざりにされるわ。また、危機管理の仕組みを作ろうとシステムの中枢領域の安全性の確立に力を入れすぎちゃって、他の領域の対策はほどほどでよいといった安易な考えも生じるわ。いずれも、「被害者の視点」が不足しているのね。危機管理を考えるためには、現場をよく理解し、被害者・被災者の視点をもった専門家を動員して、従来の枠組みにとらわれない発想を持つことが大事よ。

 その意味で、リスクコミュニケーションは重要な意味を帯びてくるわ。対策の向こう側にいる人々の生活を知るため、対話の場をどんどん設定することね。時に、新型コロナ対応ではどれだけ対話がなされてきたのかしら。自宅療養やワクチンに対する不安に対してどれだけ答えてきたのかしら。世の中が非対面になっているからと、こうしたことを疎かにしてやしない?

 

 リスクコミュニケーションのもう一つの観点は、国民一人ひとりの意識醸成ね。現代リスク社会では、全ての危機に対応する「オールハザード・アプローチ」が必要とされているわ。それこそ、自然災害、大規模事故、国民保護事案、安全保障、情報セキュリティ、気候変動、感染症パンデミックなど様々なものが挙げられる。さすがに国や自治体の対応にも限界がくるわ。私たちの心構えが必要となってくるの。

 特に、科学や法律が絶対視されてると、一人ひとりが生きる上で重要な個別性や多様な価値観といったものが無視されがちね。科学や法律で作られる判断基準はあくまでも目安に、状況によって柔軟に対応することで自らの命を守るという意識を持つことが大事よ。これこそが「リスクの個人化」・・・つまり、近代化がもたらした自己決定に基づいた社会において、個人の危機管理能力が求められる状況にあるということよ。

 ひどい大雨でも避難しない人がいるわ。物理的なハードルがあるのかもしれない・・・でも、より大きいのは心理的な要因ね。「自分は大丈夫」という正常化バイアスや、過去の経験から「これくらいなら大丈夫」と判断して逃げ遅れてしまう「経験の逆機能」が作用するの。こうした心理的な壁を崩すためにもリスクコミュニケーションが欠かせないわ。特に日本人に有効なのは説得コミュニケーション・・・お願いの中で、意識や態度、行動を変容させることよ。また、初等教育も期待できるわ。様々な媒体も大事ね。例えば、災害のハザードマップや冊子。東京都の『東京防災』は有名だけれど、スイスの『民間防衛』はさらに広範にオールハザードに対応しているわ。ぜひ、見習って欲しいし、行政も説明会をして欲しいわ。実際に行動することによって双方の意識が高まるの。(福田充「リスクコミュニケーション」平凡社新書

 リスクコミュニケーションのポイントは、災害対応をどれだけ自分ごとと捉えられるかということ。ちなみに、みんな、防災グッズは持ってる?これからは、自然災害だけでなく、「感染症パンデミック拡張版」も必要よ。目に見える形で準備することが大事なの。「後で」じゃなく「今」すぐ行動してみてね!