孤独なあなたに・・・「新ソーシャルイノベーション」

2022年5月23日(月)

 ソシエッタです。

 

 5月11日、ダチョウ倶楽部上島竜兵さんが亡くなられました。ショックでした。家族もいて仲間もいて・・・でも、哀しいものを引きずっていたのでしょうか。

 新型コロナウイルス感染症は日常生活に「距離」を求めました。マスク着用のせいで表情が読み取りにくくなり、コミュニケーションが難しくなりました。普段はほどよい距離感でも、落ち込むようなことがあった時、途端に「孤独」になってしまいます。「環境」と呼ばれる悪徳商法の餌食にもなることでしょう。

 今、「ソーシャルイノベーション」が必要です。「ソーシャルイノベーション」とは、NPOなど様々な関係者が共通の課題について驚くような解決策を見出すことです。

 

 日本社会は、経済成長を追求するあまり、人々の「共感の心」を置き去りにしてきました。同じ国の中に「人口が過密な地域」と「人口が過疎な地域」を作ることで利益が生まれますが、過密地域では人は「使い捨て」にされます。そして、過疎地域から過密地域への人口移動により、社会ネットワークが失われます。みんな自分が何者なのか、どのような人生設計を思い描けばいいのか分からなくなっています。頼りになるのは競争で決まる「ランキング」です。こうして、人々は絶えず他人との優劣を意識するようになり、次第に「孤独」になっていくのです。

 でも、これからは通用しません。人口が減少していきます。一人ひとりを大事にしていくことを考えなくてはなりません。「競争の心」ではなく「共感の心」を養うのです。(内田樹/岩田健太郎「リスクを生きる」朝日新書

 

 「ソーシャルイノベーション」の出番です。課題に対し各々が孤立して立ち向かっても解決には至りません。人と人とのつながりの中で、異なる能力、異なる考え方を出し合って解決方法をシェアしていくのです。具体的には、市民、NPO、企業、大学、行政などが一緒になり、仕組みやサービス、商品をつくっていきます

 例えば、アパレルメーカーのアーバンリサーチ(UR)は、京都工芸繊維大学大学院の研究を基に、廃棄繊維をリサイクルする技術を用い、就労支援を行うNPO法人の協力を得て障害者に作業をしてもらいながら、多目的バッグを商品化しました。また、妊産婦が安心して利用できる滋賀県の「ゆりかごタクシー」は、育児に悩むママのサークル活動から始まり、行政、医師会、看護協会の助産師、消防、警察、タクシー協会を巻き込んで実現しました。(佐々木利廣ら「日本のコレクティブ・インパクト」中央経済社

 

 もちろん、参加者の脱落もあることでしょう。時間が無い、目的が合わない等の理由が挙げられます。そこで提案したいのが、デジタル技術を活用しての「新ソーシャルイノベーション」です。現状を逆手にとるのです。デジタルであれば、より多様なネットワークを作りやすいですし、時間的な融通も利きます。地域も飛び越えます。それにデジタルの世界では、誰もが自分の視点で貢献できます。未成年だって参加できます。自分に合った居場所も見つかります。まさに、誰一人取り残さない社会を実現しやすくなるのです。情報もオープンにできます。参加者の「知」をぶつけ合うことで、より便利なサービスを作り上げることができます。(オードリー・タン「まだ誰も見たことのない『未来』の話をしよう」)

 課題もあります。ネットワークが大きくなると、緊張や摩擦、対立も生まれやすくなります。このため、ネットワークの中で、多様な人たちをまとめていくリーダーシップをとれる人材が必要となります。活動を継続していくための資金の確保も重要です。

 人材については青年海外協力隊員など国際協力を担ってきた人材の活用が挙げられます。今の日本は仕組みが整い過ぎていて、大胆に問題解決に挑む余地が少なくなっています。一つの価値観に縛られず、体ごとぶつかっていける「グローカルな人材」がうってつけです。資金面については信用金庫が期待されます。銀行のように株主に気兼ねすることもなく、多様なステイクホルダーとの関係を包含しながら、みんなの幸福の最大化を目指します。(野中郁次郎「共感が未来をつくる」千倉書房)

 企業と連携して市場のパワーを活かすことも重要です。マクドナルドのビッグマックは、地域のフランチャイズ拠点が発明したものです。会社全体の共通項を持ちながらも地域に適応していく人材の育成に長けています。また、大手企業であれば政府や金融機関からの資金拠出に顔が効くことでしょう。(「これからの『社会の変え方』を、探しにいこう。」SSIR Japan)

 このように「新ソーシャルイノベーション」による活動を通じて、他者との関係性の中で、自分が何者かを理解することができます。その瞬間、「孤独」ではなくなります。等身大の自分で生きていくことができるのです。

 

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