群雄割拠の医療DX、なるか?全国統一!

2022年6月6日(月)

 ハルです。

 

 医療DX(デジタルトランスフォーメーション)が熱いです。新型コロナウイルス感染症はオンライン診療を拡張しました。政府の「経済財背う運営と改革の基本方針2022」(骨太の方針)にも記載される見込みです。将来を見越して、アナログからデジタルにシステムを切り替えた医療機関も増えたのではないでしょうか。

 これから間違いなく医療DXが進みます。しかし、旧態然とした医療機関も多い中、サービスを売り込みたい業者は百花繚乱状態です。医療DXの統一が必要です。(野末睦ら「病院DX」秀和システム

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関西テレビ放送『ドクターホワイト』

 医療DXには、患者を支えるものと医師など医療機関を支えるものがあります。後者は医療技術に関わるものと環境整備に関わるものに分けられます。

 患者を支えるものの代表は、患者が自分の健康状態や治療結果を把握するサービス、医師やデバイスを活用した健康相談などによって、日々の健康増進や受療行動に役立ててもらうサービスです。株式会社Xenomaはセンサー衣服(スマートアパレル)を開発しています。着るだけで健康状態や歩行状態をチェックします。寝ている間の心拍・呼吸をモニタリングしてエアコンの自動調整も行います。MRT株式会社の「Door. into健康医療相談」は新型コロナの自宅療養者の支援やワクチン接種後の体調変化の相談を行います。(加藤浩晃ら「Digital Health Trend 2022」MCメディカ出版

 医師など医療機関を支えるものの代表は、医師の診療支援サービス、医師間の情報連携や病院の環境整備などによって、治療の質を高めながら効率的・効果的に行うことができるサービスです。株式会社プレシジョンはAI問診票を開発し、医師のカルテ作成時間の短縮に貢献しています。株式会社T-ICUは、集中治療の専門医が少ない中、救急患者の検査結果を、離れたところにいる専門医に相談できる「遠隔ICU」サービスを提供しています。株式会社アルムの「Join」は、医師間の情報連携やコンサルテーションのプラットフォームを設置しています。ブラジルでは、同サービスにある医療画像等の共有によって脳卒中の改善に効果があると立証されています(高尾洋之「デジタル医療」日経BP)。Dr.JOY株式会社では医師がビーコン発信機を携帯し、院内のどこでどう働いているかを自動で把握することによって、医師の働き方改革につなげています。

 

 例を挙げるときりがありませんが、医療のあらゆる場面や工程において、患者や医療機関を支える仕組みがDXによって実現しつつあります。しかし、課題もあります。

 一つは、DXに対する医療機関側の理解です。電子カルテ一つとってもみても、2017年時点の普及率は、病院、診療所ともに50%に達していません。余計なコストと捉えられているのです。また、日々の診療が忙しすぎて、医療従事者がデジタル技術の変化についていけてない点も挙げられます。さらに、医療機関の持つ情報は、患者の個人情報の固まりです。システムエラーやハッキングなどによる情報漏洩のリスクを恐れ、DXに消極的になってしまうのかもしれません。

 しかし、患者の満足度を上げるにはDXが不可欠です。医療も他のサービスと同じようにできる限り効率的に行われるべきでしょうし、健康に対する関心が高まる中、医療機関で何が行われているのか、自分の状態はどの辺りにあるのか、患者にとってもっと「見える化」して欲しいという気持ちもあるでしょう。また、こうしたニーズに応えていくためには、限られたリソースの中で、AIなどシステムでできることはシステムに対応してもらい、医療従事者はもっと治療行為に専念できるよう、「攻め」の環境づくりが求められます。また、新型コロナのような感染症だけでなく、地震などの自然災害発生時にも非接触でコミュニケーションはできるようレジリエンスを高めておくことも重要です。院内の新たな人材として、医療IT専任担当者(医療情報技師)の設置を推進してみてはどうでしょう。

 

 また、患者側で複数の医療機関にかかる場合、情報が統一されている必要があります。地域や医療機関、サービスごとにシステムが異なっていては、それだけで余計なコストです。サービス内容は多様でも、互換性が担保されるよう、基幹部分について「統一」することが必要です。そのためには、氏名、生年月日といった基本情報を、マイナンバーを基に国がクラウド上で管理し、患者本人の同意の下、そこから紐づけした形で様々なサービスをその都度提供できるようにしておくのです。あくまでも患者個人を中心に捉え、これを取り巻くネットワークを効率的に使える仕組みを構築することで、無駄なコストを省くことができ、さらなるDXの進化を促すことが期待できるのです。