ついに来たインフレ!「異次元の崩壊」の始まり

2022年8月1日(月)

 フィナよ~。

 

 たつき諒の漫画『私が見た未来』(飛鳥新社)は、2011年3月の東日本大震災を予言していたと評判ね。そして、同書によると、2025年7月には日本列島を襲う地球規模の大災難が起きるみたい。

 でも、私の見立てだと、起きるのは自然災害じゃなくて世界経済の大混乱。今、インフレがひたひたと迫っている。これは予兆よ。そして、気がついたら、あっという間に社会のシステムが崩壊しているおそれがあるわ。備えが必要よ。

 

 

 インフレが起きる根拠は以下の3つ。

①世界規模で高齢化が進み、生産力が低下する。

②世界経済をけん引した中国経済が減速し、これに代わる規模の経済は生まれない。

③過度の金融緩和によって作られた相場が崩壊する。

 

 これまでの30年間を振り返ると、あまりにもデフレが世の中を支配してきたわ。その大きな要因は、労働力人口が増加し、供給が需要を上回ったことによるもの。要はモノがあふれて物価が抑えられたのね。

 先進国では戦後のベビーブーマーが労働力を担ってきたわ。女性や65歳まで働く人も増えた。そして、中国の目覚ましい経済成長、ソ連崩壊後に東欧諸国がグローバル経済に参入したことで、大量の労働供給がなされたのね。こうして完成したデフレへの圧力はあまりにも強力だったため、リーマンショック後に行われた大規模な金融緩和や財政投入をもってしても、マイルドインフレーションさえもたらすことはできなかったわ。国が金をどんどん刷っては、というMMT(現代貨幣理論)まで飛び出したわ。(チャールズ・グッドハート&マノジ・プラダン「人口大逆転」日本経済新聞出版)

 

 でも、ついに労働力人口が限界を迎える時が来たの。先進国を中心に少子高齢化が進み、労働人口は減少していく。その上、高齢になると認知機能や運動機能の低下は避けられなくなる。医療・介護のコストは劇的に増加するわ。たとえIT技術を使って労働の自動化が進んだとしても、こうしたケア労働まではカバーできないわ。移民の数も減少傾向にあるから、これまで何とか持ちこたえてきた国もこれからは厳しくなるでしょうね。

 そして、何と言っても中国の経済成長が鈍化することは大きいわ。経常収支黒字は2007年にピークを迎えていて、これからは赤字に振れていくでしょうね。地方の余剰労働力が都市部へ移動することで生じた利益も底を打つわ。「90後」と呼ばれる1990年生まれの若者なんか、給料のほとんどを趣味や娯楽、ファッション、美食に費やしていて自立とは程遠いみたい。「一人っ子」政策を「二人っ子」政策に転換したところで、教育や住居にお金がかかるから人口増加は望めないわ。(青樹明子「家計簿からみる中国 今ほんとうの姿」日経プレミアシリーズ)

 だからこそ、国外に打って出ようと「一帯一路」構想を唱えたはいいけれど、成長が乏しい世界で十分な経済活動が行われるかは疑問ね。中国が望み薄ならと、同様に巨大な人口を抱えるインドに期待が集まるかもしれないけど、インドの弱点は行政資本が極端に弱くって、戦略的な協調性に欠けること。ここは民間活力に頼りたいとこだけど、いかに早く効率的に規制緩和を行えるかが鍵よ。

 以上のような人口トレンドを背景とした世界経済の退潮に加えて、グローバル化から自国ファーストへの反転、原油の値上がり、新型コロナ感染症による流通の停滞と感染終息後の景気回復、ロシアのウクライナ侵攻等の地政学リスクの上昇、米ドル利上げなどによって、インフレが進行することは間違いないわ。

 

 じゃあ、これからどうなるのかしら?

 インフレは私たちの生活を直撃するわ。なるべく無駄な買い物はしなくなるわね。将来が不安だと貯蓄が進むわ。こうして、消費活動が低下して、経済が縮小するの。そうなると、いかにAIやDXで経済成長させると言ってみたところで、「稼ぎ場」が小さくなるわけだから限界があるわ。

 金融面の影響は危機的よ。膨らみ過ぎた株価も天井を打っているから、いざ売りが始まると「投げ売り状態」になるわ。そうなると、みんな現金を欲しがって金利が上がるでしょうね。金利が上がると債権価格も下がって、こちらもバーゲンセールが始まるわ。年金は巨額の運用損失を被るし、国債を大量発行してきた財政運営も一気に窮地に陥るわ。今度は「異次元の崩壊」が起きるでしょうね

 

 問題はこうした事態に全く準備ができていないことよ。今からでも財政規律を「死守」することが大事よ。そして、年金不安に応えながら、消費市場を適正な規模に維持するため、いよいよベーシック・インカム導入の議論を本格化させることね。マイナンバーカードを普及させて給付を確実にするとともに、財源を確保するため、徴税を確実に行って再分配できるよう確固たる仕組みにするの。ピンチはチャンス、新しい世づくりをスタートさせるのよ