忍び寄るクライシス。守ろう!「ワークウーマン」の健康

2022年8月8日(月)

  ハルです。

 

 渡辺満里奈さんたちが、「大人の女史会」というプロジェクトの中で更年期のことを語っていますね。女性ホルモンが枯渇して「砂漠です」にはドキッとしました。日本の女性は男性より平均寿命は長いものの、健康寿命についてはそこまで差がない状況にあります。女性の社会進出を後押ししようというのであれば、女性の健康を守ることが重要になります

(平均寿命)男81.41 女87.45 (健康寿命)男72.68 女75.38(いずれも令和元年)

 

 

 女性の健康の特徴は、ライフサイクルに応じて考える必要があるという点です。月経があり、ライフイベントとして妊娠・出産があるのです。

 月経は月経痛のほか、動機、めまい、頭痛、悪心、嘔吐などの症状を伴います。毎月あると思うだけでもげんなりしますが、加えて、月経の3~10日前にうつやイライラなどの精神症状をきたすことがあります。これは月経前症候群PMS)と呼ばれ、女性の9割が影響を受けます。でも、満足に研究されたためしはありません。むしろ、勃起不全(ED)の研究のほうが進んでいて、様々な治療薬があるくらいです。

 こんな月経とおさらばできるのは嬉しいかもしれませんが、閉経前後に更年期障害が出現する可能性があります。症状はのぼせ、ほてり、めまい、うつ、食欲不振など様々です。出現時期は45~55歳であり、職場では管理職を任されるなど周囲から頼られる時期と重なります。

 そして、妊娠の時期には糖尿病や高血圧などの妊娠合併症が出現するリスクがあります。ただでさえ、お腹の子どものことを心配しなくてはなりません。自身の健康管理も忘れてはならないのです。

(太田博明ら「女性医療のすべて」メディカルレビュー社)

 

 こうした事情があるため、職場で男性と同じ働きを求める単純な「当てはめ」は困難であり、そのことが「女性の不利」を生んできました。結果、無償労働の75%は女性が担う状況となっています。それでも、職場で働くことも求められるので、世界中どこでもほぼ例外なく、女性は男性よりも長く働いています。ちなみに、ILO(国際労働機関)は、労働時間は週48時間を超えてはならないとしていますが、その「労働」とは有給労働のことです。家庭での無償労働はカウントされていません。女性の場合、長時間働くと心臓疾患やがんなど命に係わる病気の発症リスク、うつ病や不安症の発症リスクが高まります。配慮が必要です。(キャロライン・クリアド=ペレス「存在しない女たち」河出書房新社

 職場での化学物質への曝露も要注意です。一般に女性は男性より体が小さく皮膚も薄いため、毒物に対する安全な曝露量が低くなります。その上、体脂肪率が高く、脂肪に蓄積しやすい化学物質を吸収してしまいます。ネイルサロンでは毎日、マニキュア液、ニスに含まれている様々な化学物質に曝露することになります。こうした化学物質の多くは、がん、流産、肺病との関連が指摘されています。立ち仕事も多いです。男性より血圧が低い女性にとって、足のむくみも悩みです。

 その他、男性に馴染みの薄いものに、やせ願望と骨粗鬆症があります。ぽっちゃりした女性よりもスレンダーな女性を美人ともてはやす文化が影響を与えています。典型はモデルです。彼女たちに摂食障害が多いことは知られていません。自ら食事制限を行い、体重減少や無月経をきたすのです。女性の社会的役割が変わる中で、母性を中心とした伝統的な女性観を嫌がり、自ら「からだ」をコントロールしようとするのです。(ロバート・L・パーマー「摂食障害者への援助」金剛出版)

 無理なダイエットでカルシウムを十分に摂っていないと、骨粗鬆症のリスクが増大します。閉経により女性ホルモンが欠乏し、骨が脆弱になります。だから、成人すると手遅れで、フレイル状態に陥るおそれが高まります。若い時からの健康な食習慣と運動習慣が重要なのです。

 

 女性の健康を守る社会にしなくてはなりません。今後の取組として、研究が挙げられます。女性の健康に関するデータの蓄積は、男性と比べて圧倒的に少ないです。ライフサイクル別に健康課題を整理し、日常生活や仕事への影響も評価する必要があります。

 もう一つは理解の促進です。三菱UFJリサーチ&コンサルティングが行った生理痛に関する実態調査によると、男性の76%は「分からない」「生理痛はない」と回答しています。特に男性は正しい知識を持つことが重要です。併せて、月経随伴症状や更年期障害のように目に見えにくく、想像力が働きにくい健康課題については、差別や偏見を招かないよう注意を払う必要があります。アンケート調査を通じて注意喚起する手法が有効です。

 少子化社会となり、「子どもを守る」という意識は高まりました。今度は、社会全体で「女性を守る」という意識を持つことが大切です。