世界はもう「減速」している!?

2022年10月3日(月)

 フィナよ~。

 

 ひょっとして、あなたも新型コロナウイルスにかかった?

 第7波はすさまじかったものね。まさに「感染爆発」。今でこそようやく落ち着きつつあるわ。

 ところで、感染症が収まる時の「見極め方」って知ってる?「今週」の新規陽性者数を「先週」の数字と比較するの。感染拡大当初こそは「2」を超えるけど、これが「2」を切るようになると感染拡大のスピードが落ちてきたっていう兆候なの。そして「1」に近づくと感染の終わりが見えてくるの。でも、まだ新規陽性者数が増えている段階だから、感染拡大のスピードが「減速」してるって実感はわかないわ。不思議よね。

 

 世界の動きについても似た錯覚があるわ。誰もが「加速」していると信じて疑わないでしょうね。何せテックがすごいもの。

 コンピュータの性能が1年半ごとに倍増する「ムーアの法則」は有名だけど、量子コンピュータが登場間近よ。ロボットやAIが生活のあちらこちらに顔を出す。3Dプリンターがあれば、ドラえもんの四次元ポケットのように欲しい物をその場で再現する。食料は広大な農地ではなく高層ビル内で生産される。アバターが私たちの意識をバーチャル世界に連れていってくれる。これからの100年間で2万年分の技術変化を経験することになる言う人もいるわね。

 さらに、「加速」は「加速」を呼ぶわ。時間の余裕が生まれ、技術開発に打ち込める。インターネットを使って豊富な資金や人材を調達できる。遺伝子技術でヒトの寿命が延びれば第一線で活躍し続けることだって可能よ・・・何だかお腹いっぱいになってきたわ。(ピーター・ディアマンディスら「2030年 すべてが『加速』する世界に備えよ」PUBLISHING)

 

 でも、これらを本当に「加速」と言うのかしら。小手先の変化だけで、真のイノベーションとは言えないんじゃないの。「今年はこれが流行る」っていう商品やサービスも、かつてほどワクワクしなくなってきたわ。

 むしろ、「加速」が「減速」しているという声があるわ。最大の根拠は人口よ。今世紀の中頃には、世界の人口が80~90億人で頭打ちになり、減少に転じるみたい。最大規模を誇る中国の人口増加は1968年以降減速していて、この先10年程度で絶対数も減少する。インドを含むインド亜大陸全体の人口の加速も1995年に終了していて、やはり「減速」が始まっている。こうした人口増加の「減速」が進んでいることが明らかになったのは、つい最近のことよ。「いつの間に?」っていう感じね。

 

 経済への影響も生じているわアメリカでは、学生債務や住宅ローンの増加は既に「減速」段階に入っているわ。経済が不活性化しつつあるのね。日々取り扱っている情報量も一見増えているように見えるけど、新しい情報なんてそんなに増えていない。ウィキペディアの規模拡大はむしろ「減速」している。

 テックで評価できるのは画像認識と音声認識。でも、いずれもパターン認識の域を出るものじゃない。宇宙旅行なんて夢のまた夢ね。科学論文もごまんと出ているけど、新しい発見は大量に生まれてやしない。おそらく、あなたの孫の世代の生活は、あなたの子供世代の生活とあんまり変わらない状況になっているでしょうね。(ダニー・ドーリング「減速する素晴らしき世界」東洋経済

荒木飛呂彦ジョジョの奇妙な冒険 ストーンオーシャン

 悲観することはなくてよ。要は「心の持ちよう」なの。未来世界はテックが何でも解決してくれるといった楽観的予測に立つのではなく、世界の動きが「減速」していくことを前提に、必要な備えをしておくことが大切なの。

 個人の経済格差は徐々に縮まっていくわ。例えば、税金のしくみも長期戦を覚悟して消費税をベースに切り替えていくの。社会は世界レベルでフラット化するわ。物事をじっくり考える時間もできるでしょうね。これからの教育はどの国でも通用するよう本質的な内容に設定すること、複数の外国語を学ぶこと、これらを駆使して個人が思考を深められるようにすることが大事よ。目先の変化に飛びつかない冷静な判断力も養ってほしいわ。

 

 大事なのは、世の中が「減速」していると感じられるセンスを磨くこと。危機感を持つ人材を一人でも多く育てるの。国家が転落し始めると一気に衰退するわ。ヨーロッパではイギリスやドイツ、アジアでは日本がやばい。イギリスは一度衰退を経験しているわ。その理由は「変化」を嫌ったから。幸い北海油田を掘り当てて持ち直したんだけれど。(ジム・ロジャーズ「世界大異変」東洋経済

 日本はどうかしら。テックが全てを解決してくれると高をくくって必要な準備をしていないと、みんなが痛い目に遭うでしょうね。メディアがもてはやす「すごい日本」論にあぐらをかくことなく、情勢を冷静に見極めて、次世代にその「慎重さ」を引き継いでいくことが大切よ。