受け止めよう!「新しい社会主義」の誕生

2022年10月17日(月)

 コノミです。

 

 プーチン大統領の発言の真意は何でしょうか?ウクライナに大規模攻撃は要らないとのことです。いよいよ終戦でしょうか。旧ソ連社会主義でした。社会主義から資本主義への移行を模索し続けるロシアの「迷走」が今回の惨劇を生みました。

 一方の資本主義も「迷走」中です。特に日本経済は「社会主義」の度合いを強めていきます。とすれば、自ら財産をつくり、守ることを本気で考えなくてはなりません

 

 「失われた30年」と言われています。バブル崩壊後に日本の経済成長率が1.0%を超えることはほとんどありませんでした。アベノミクスも例外ではありません。国が財政をどれだけつぎ込んでも、金融緩和をどれだけやっても通用しませんでした。日本の実力はそこまでだったということです

 そうこうしている間に、消費税10%への増税を約束どおり実施することとなりました。増税はタイミングが命です。景気が悪い時期だと消費者マインドを悪化させます。OECD各国を見ると、消費税導入のタイミングが高度経済成長期の場合、税収の確保が容易となり、福祉国家が誕生しています。(河野龍太郎「成長の臨界」慶應義塾大学出版会)

 

 残念ながら、日本はタイミングを逃しました。日本の高度経済成長は変動相場制への移行(ニクソン・ショック)やオイル・ショックで終わりました。それまでの間、増税できる強い経済状態には無かったのです。加えて、日本政府は「プランB」への切替えが苦手です。従来の「いけいけどんどん」の経済政策を、キャッチフレーズだけ変えながら何度も繰り返しました。その結果が、6月末現在で1,200兆円以上にまで積み上がった国の借金です。国民一人当たりにすると1000万円を超えています。(尾崎弘之「『プランB』の教科書」インターナショナル新書)

 

 貯蓄するしかありません。2019年、金融庁の審議会が「老後20~30年間で約1,300万円~2,000万円が不足する」と発表し、話題になりました。年金を含めて、国に依存するのは危険です。戦後のハイパーインフレの際、銀行預金の封鎖と新円への切換えが行われました。国民の蓄えが国に没収されたのです。

 円安が進みます。資産が溶けていきます。この先どんなに景気刺激策が採られても、国民の財布の紐は締まったままでしょう。企業も国内市場に期待せず、儲けの出る海外市場を求め続けます。少子高齢化はこうした企業行動の口実になります。

 

 そもそも、日本の高度経済成長は誤解されています。これは日本の実力というより、「幸運」によるところが大きかったのです。具体的には朝鮮戦争による特需と、戦勝国なのに内戦や共産党内のゴタゴタでもたついた中国のおかげなのです。

 その間、戦前の鐘紡のようなお家芸の繊維産業ではなく、鉄鋼や自動車などの重化学工業を輸出産業に切り替えることで奇跡のV字回復を図ることができました。実のところ、日本銀行は鉄鋼業への融資に反対していましたし、当時の通商産業省は重化学工業界の縮小を検討していました。たまたまハマったのです。そのことを忘れ、ひとえに日本人の努力や優秀さのおかげと勘違いしていると、相も変わらず「プランA」にしがみつくこととなります。(加谷珪一「縮小ニッポンの再興戦略」マガジンハウス新書)

 

 重要なのは、日本の立ち位置を客観的に捉えて「プランB」を実行すること、国民の側も賢く立ち回ることです。ここでいう「プランB」とは、輸出型産業のための円安政策を見直して、国民の購買力を高める方針に転換することです。これまでは、円安政策により、輸入品に頼る国民生活を圧迫してきました。これ以上円安を進めるとインフレのリスクも高まります。今後は逆を行うのです。円を強くし、国民の購買力を高めるとともに、輸入型産業を成長させ、国内でイノベーションを起こすのです。このスタイルは、これから少子高齢化を迎える諸外国のお手本にもなります。

 

 国内では労働者を手厚く保護することが重要です。岸田政権は、最低賃金を31円引き上げるとしました。「新しい資本主義」は国内の経済格差を小さくし、「安心と安定」という国民心理を醸成する取組なのです。これは形を変えた「社会主義」です。(中野剛志「変異する資本主義」ダイヤモンド社

 「安心と安定」のためには、社会保障を手厚くすることが必要です。そのための増税は避けて通れません。消費者マインドを悪化させないよう毎年0.5%ずつ上げていくなど、マイルドに進めるべきです。一方の国民は、ドルなどの円以外の資産を保有することでリスク分散しながら蓄えを増やしていくのです。その具体的な方法を国は指南すべきです。個人の自由を最大限に認めて経済成長を促しつつ、「安心と安定」を優先する「新しい社会主義」が、次世代のシステムとして機能することとなるでしょう。