不安を封じる「第2の公的保険」!

2022年12月5日(月)

 フィナよ~。

 

 新型コロナの第8波はどうなるのかしら。グリフォンとかケルベロスとかおどろおどろしい名前の変異株が登場したわ。みんな、ワクチン接種してね!

 ところで、コロナ保険の契約者って結構いたのね~。正直、これほど多いとは思わなかったわ。おかげで療養証明書の発行だけでも、行政や医療機関にとっては大きな手間だったみたい。日本は生命保険の加入率が80%超にのぼる「保険大国」よ。安全志向が強いのかしら。

 一方の保険業界はピンチね。加入率や保険金額は90年代をピークに下落傾向にあるわ。保険業界にとってはこれからが正念場。それは、私たちの「安心」に直結することにもなるの。フランスの経済学者ジャック・アタリ氏は、「21世紀の社会は、保険と娯楽が栄える」と予言したわ。これからは不安定さが増すと同時に、個人の自由と責任も拡大するからだそうよ。保険業界にとってはビッグチャンスなの。

 

 保険の歴史は案外古いわ。中世ヨーロッパのギルドでは普段から掛け金を出し合って会員の病気や葬儀費用をまかなった。日本では鎌倉時代の「講」に生命保険の仕組みがあった。近代以降は、日清・日露戦争の戦死者、スペイン風邪関東大震災の犠牲者に保険金が支払われ、保険に対する国民の理解が高まった。損害保険については、船の貨物の火災保険から始まって、第一次世界大戦の頃に自動車保険が導入されたわ。当時は国内の自動車がたった1000台の時代よ。人々の「不安」をいち早く先取りしたのね。

(中村恵二ら「保険業界の動向のカラクリがよ~くわかる本」秀和システム

 

 

 ここで強調しておきたいのは、リスクを完全に回避することはできないってこと。どんなに頑張ってもリスクはついてまわるわ。大事なのは「レジリエンス」を持つこと。ショックを受けても回復することね。

 もっと言うと、リスクを怖がり過ぎて、かえって次のショックに耐えられなくなってしまうことは避けなくちゃだめよ。感染を恐れてマスクや消毒に頼り過ぎた結果、本来身体が持っている抵抗力まで失われるっていう状況に等しいわ。話は変わるけど、新型コロナ禍の2020年、多くの国で倒産はそれほど増えなかったみたい。倒産リスク回避のため、「ゼロゼロ金利」のようにお金を注ぎ込んでゾンビ企業が多くなりすぎると、いつまでも成長の足を引っ張ることになるでしょうね。

(アンガス・ディートン「レジリエントな社会」日本経済新聞出版)

 

 次に来るショックに備えて「レジリエンス」を高めるという点で、これからの保険サービスのあり方は重要よ。顧客よりも保険会社のほうが顧客に関する情報を持つことになるの。リスクを最小化しつつ、「立ち直り」を早くするサービスを提供していくの。

 注目株は「デジタルヘルス」ね。病気になったら保険金が支払われるけれど、病気になる前から介入していくの。スマートフォンウェアラブル端末を活用することによって、顧客の身体や活動に関する情報を入手して、個人にカスタマイズされた健康な生活習慣を導いてくれるの。「AI食」や「コンビニジム」などで個別最適な食事や運動のアドバイスをしてくれるんだったら、言うことを聞いてみたくなるわ~。(日経トレンディ 12/2022)

 

 テレマティクスもいいわね。自動車に設置された通信媒体が運転を支援してくれるの。「ここは事故が起こりやすい交差点だから気をつけよう」とAIがアドバイスしたり、顧客の運転のクセを見抜いて警告表示したりすると冷静に運転できるでしょうね。

 もちろん、リスクの低い行動をとればとるほど保険料が安くなるというインセンティブは必要よ。このようにITを使用した保険サービス「インシュアテック」は、2021年度で1880億円もの国内市場規模になるわ。世界でも11.9%の成長率と予測されているの。

 

 保険業界の持つポテンシャルは大きいわ。ポイントは個人に寄り添っていくこと。いっそのこと公的保険みたいにならないかしら。

 例えば、医療保険はカバーできる医療行為が特定されていて、その他の医療行為は自由診療になる。そこで、毎月私たちが払う保険料を公的保険分と民間保険分に分割して財源にする。そして、生活習慣病のような個人の生活習慣が要因とされている疾患に対する医療行為については公的保険を適用せず、民間保険から保険料を支払うこととしてはどうかしら。

 この場合、疾患にかかれば保険料は上がってしまうけど、AIが個人の行動変容を促すわけだから、うまくいけば保険料を抑えられるかも。公的保険は財源不足。かといって民間保険は広がりにくい。だからこそ「第2の公的保険」として活用させるの。

 これからの保険は、単に「安心」を売るのではなく、顧客が「責任」を果たすことを促す仕掛けも必要よ。そのことが個人の「レジリエンス」を高めていくことにもなるわ。