「見えない戦争」が生活を壊す!サイバー戦を止める術とは?

2022年12月26日(月)

 トランだ。

 

 ロシアのウクライナ侵攻はいつになったら終わるのだろう。アメリカはパトリオットミサイル供与に踏み切った。こうした正規戦も怖いが、サイバー戦は「見えない戦争」だけに脅威だ。いつの間にか攻撃を食らっているってこともあり得るぜ。心理的にきつい話だ。

 ロシアは史上初めて、正規戦にサイバー攻撃を組み合わせた「ハイブリッド戦争」をウクライナに仕掛けた。ウクライナの政府機関や金融機関、援助団体のシステムが狙われ、食料や医薬品の供給網も攻撃された。使用されたのは、大量のデータを送りサーバーに負荷を与える「DDоS攻撃」や、システム上の情報を消去するウイルスだ。(NEWSWEEK 2022.9.27)

 

 一方のウクライナもロシアに負けないサイバー防衛能力を発揮した。それどころか、ロシアへの積極的な攻撃まで行っている。もちろん、そこにアメリカの支援もある。

 こいつは恐ろしいぜ。なぜかっていうと、サイバー戦では敵味方の区別がつきにくくなるからだ。日本は戦場から離れているから大丈夫ってことはない。事実、ウクライナ侵攻以降、日本国内のウェブサイトに対するDDoS攻撃は最大25倍も増加した。俺たちの生活が脅かされるってことだ。産業基盤、金融、交通ネットワーク、原子力発電所や電気、水道、医療機関に関連するデジタルインフラが狙われるぜ。

 しかも、サイバー戦は無限にエスカレートする。核攻撃は恐ろしいが、やられたらやり返すという「相互確証破壊」があるからみんな躊躇する。しかし、サイバー戦はこうはいかない。直接人体を攻撃しないならとことんやってみようぜってわけだ。一刻も早くサイバー戦を止める手立てを考えなくちゃならないぜ。

 

 

 サイバー戦の超大国アメリカだ。コンピュータやインターネットを生んだ国でもある。アメリカでは2018年、サイバー軍の地位が格上げされた。また、政府が持つハッキング能力は、熟練の情報セキュリティ専門家をびっくりさせるほどハイレベルだ。イランの核開発プログラムにだってダメージを与えたんだぜ。

 ロシアもハッキング能力のレベルアップに膨大な資源を投入している。ただ、未だにサイバー犯罪者やパートタイム的な招集に依存しているところが危ういぜ。『ファンシーベア』っていう名前だけは可愛らしいグループがあるが、トランプ氏が勝利した米大統領選挙に干渉するなど数々のハッキング事件を引き起こしている。また、ロシアは国家主権に基づくインターネット統制を重視しているアメリカのように自由にしようっていう立場はとらないぜ。

 この点は中国も同じだ。むしろ、より国家的な統制を求めていると言ってもいいだろう。当初、中国軍は、経済的利益に狙いを定めたサイバー諜報活動を行っていた。とりわけ、米国企業をハッキングした『オーロラ攻撃』が有名だ。その後、中国はeコマースの世界を牽引してきた。すると今度は、中国の国内経済がサイバー攻撃を受けやすくなることになった。だから、サイバースペースにおける国際的なルールづくりを提唱している。要注意なのは、国内統制を堂々と実行している点だ。チベット人ウイグル人など少数民族の実態を把握する作戦を展開している。新型コロナのパンデミックでは、「社会信用システム」を使っている。感染を防ぐため適切な行動をとらない市民は点数が下げられ、今後の生活に支障をきたすってわけだ。

 

 以上が大国の現状だが、最大の問題は、サイバー戦を止める手立てを見出すのは極めて難しいってことだ。この点は情報セキュリティの失敗の歴史が教えてくれる。

 理由は2つ。まず、システムはあまりにも複雑化していて、そこから「脆弱性」を無くすことが極めて難しくなっていることだ。これまでもシステムが強化され、その度にハッカーが攻撃するという「いたちごっこ」が繰り返されてきた。今後もこの状況は続くだろう。もう一つは「合理性」の問題だ。ユーザーからすると、常日頃からセキュリティなんて気にかけていられない。誰かが守ってくれてるんだろうと安穏としている。デジタル企業も開発するシステムのセキュリティは万全と信じていて新機能の追加に余念が無い。こうした「心理」にハッカーがつけ入る隙が生まれる。

 

 ヤバいぜ。プライバシーとセキュリティのバランスが壊れる。国家統制が現実味を帯びてくるぜ。一刻も早く国際的な解決を目指すべきだ。国際連合に、専門家と実務者からなる中立的な「対サイバー戦」組織を設置すべきだ。ハッキングなどのサイバー攻撃を監視し、攻撃側に停止を勧告すると同時に、攻撃を受ける側には防衛支援を行う。必要なら経済制裁という「抑止力」に結び付けよう。要は、世界の眼で「見る」ことが大事ってことだ。「見えない戦争」を白日の下にさらすことが、人類全体を守ることにつながるぜ。