20代を迎え撃つ60代。「仕事争奪戦」の勝者はどっち!?

2023年1月2日(月)

 レーブだ。

 

 2023年になった。今年もよろしく。

 来年度から社会人になる20代の若者は心に期するものがあるだろう。初詣はどんな願いを込めただろうか。一方で定年を迎える60代の諸先輩は不安が先立つか。人生は長くなった。「定年」の概念もぼやけ出した。これからの「働き方」は否応なく変わる。そして、仕事の争奪戦が激しさを増す

 

 

 日本は人口が減るから職探しに困らないだろうと安穏としていたら甘い考えと言っておこう。人口減少は消費市場も「縮む」ことを意味する。モノを作りさえすれば売れるという世界ではなくなる。高齢化社会だとなおさらだ。高齢者は大抵のモノは持っているからだ。では作って輸出すればいいのではないか、という反論もあろう。果たして新興国を相手にどこまで張り合えるだろうか。結局は、より「高い付加価値」が必要となる

 サービス業も飽和状態となる。繰り返すが、人生は長くなった。年金だけでは不安だ。定年を超えても働かなければならない。人手が欲しいのは介護労働など、機械やAIでは対応しきれない分野だ。しかし、こうした分野ほど人気が無い。人気がある分野や楽に稼げる仕事に募集が殺到する。そこではひたすら「高い個の能力」が求められる。その時、60代は20代と同じ土俵に立てるのだろうか?

 

 「割り切る」という考え方はある。高齢になると家計の支出額は大きく減少する。最も心配される医療費も65歳から74歳で月1.7万円程度だ。収入はというと、定年後は300万円以下が大半となる。心もとない気もするが、年金に加え、月10万円ほどの労働収入があれば家計は成り立つ。時給1000円で月100時間働く計算だ。60代の家計が有する資産は1500万円ある。小遣い程度に稼ぐことができればいいのだ

 ご丁寧なことに国は高齢者雇用安定法により、65歳から70歳までの就業機会を確保するよう企業に求めている。介護のほか、接客、販売、保安、清掃など現場仕事は十分ある。しかも、誰かのためになる仕事、住み慣れた地域でもできる仕事だ。変なプライドさえ無ければ「生きがい」にもなる。

(坂本貴志「ほんとうの定年後」講談社現代新書

 

 心配なのはむしろ20代かもしれない。今の20代後半は「働きがい」を感じていない。未来が見えづらいからだ。加えてジョブ型雇用が進む。シニア社員は居座り続けられるが、20代はスキルを身に付けなければ太刀打ちできない。

 モノは考えようだ。いっそのこと職場を複数同時に持つ「マルチキャリア」、あるいは、次から次へと職場を乗り換えることを前提としたスキルの修得を目指してはどうか。変化の激しい世界では「一本足打法」のキャリアで生き残るのは厳しい。複数の職場経験を強みにするのだ。自分の多様性にも気付くことができる。しなやかな心を持つことができ、メンタルヘルスにもいい。ただし、自律的な学びの時間は欲しい。

 米国ではフリーランス業務を行った労働者は労働人口の3分の1以上にも達する。Z世代(18~22歳)だと半分だ。働き方の「当たり前」が変わりつつあるのだ。(越川慎司「29歳の教科書」プレジデント社)

 

 20代も60代も「働きがい」を感じられることが大切だ。そのためには、一人ひとりが能力を自ら高めることが必要であり、それを可能とする環境を整備しなくてはならない。この課題に取り組む「魅力あふれる職場」を持つ企業が未来の勝者となる

 「職場空間」を考えよう。イタリアの物理学者マルケッティによると、人類が交通機関の利用に費やしてもいいと感じる時間は1日60分までだ。これを踏まえ、いくつかの形態のオフィスを用意しよう。通常のオフィスのほか、シェアードオフィスサテライトオフィス、在宅などだ。この中から個人が自由に選べるようにするといい。

 通常のオフィスのメリットも無視できない。偶然の出会いがもたらす未知の情報や他のコミュニティとの接触がある。在宅勤務だと地域コミュニティとの関係性を持つことができる。人生をより豊かにしてくれるはずだ。

 「健康」も考えよう。人にしかできない仕事は脳を使う。脳をフル回転させるためには十分な休息が必要だ。睡眠時間の確保を徹底すべきだ。年間52週働くのではなく、自分の生活のリズムに合うプロジェクトを選んで参加できるようにしてもいい。余暇はストレスを解消し、脳をリフレッシュしてくれる。

(リンダ・グラットン「リデザイン・ワーク 新しい働き方」東洋経済

 

 新しい「働き方」の輪郭は少しずつその姿を現し始めている。だが、いかんせんモデルケースはまだ少ない。政府、企業、組合が一丸となって多くのケースを作ることが必要だ。そして、個人の側もそれに応えられるよう努力を続けることが大事だ。気は抜けないが、「働きがい」そして「生きがい」を間違いなく感じることができるだろう。