インボイス制度の先に透けて見える「徴税システム」

2023年2月6日(月)

 フィナよ~。

 

 今年の10月から「インボイス制度」が始まるわ、と言っても「それって、何?」って感じね。インボイスを分かりやすく言うなら、「私はこれだけの消費税を払いました」っていう「ちゃんとした」お知らせってとこかしら。

 

 ちょっと複雑だから解説するわ。例えば、消費税率を10%として、Aさんが、持っている布地をBさんに100円で売ったら10円分の消費税がかかる。その10円を「税務署に納めました」ってBさんに伝える。これがインボイスよ。

 次にBさんが、購入した布地から布マスクを作り、これをCさんに300円で売ったら30円の消費税がかかる。この時、Bさんが税務署に納める税額はどうなるかというと、Aさんが納めてくれた10円分を差し引きして、30円ー10円=20円になるの。BさんもCさんにインボイス(レシート)を出すわ。

 Cさんは購入したマスクを使う消費者よ。税務署に税を納めたわけじゃないけれど、300円のマスクに30円分を上乗せして購入し、この30円分を業者であるAさんとBさんがそれぞれ10円、20円と分担して納税することになるの。Cさんが直接納めるわけじゃないから「間接税」なのね。

 

 そして、インボイスは正確には「適格請求書」と言うの。なぜこんな小難しい言い方をするのかと言うと、イレギュラーなケースがあるから。具体的には免税事業者のことよ。免税事業者は文字どおり、消費税を納めなくてよいとされている事業者よ。

 先ほどの例で、仮にBさんが免税事業者だとすると、20円分を税務署に納める必要はなく、そのまま自分の収入にできちゃうの。おかしな話よね。消費者Cさんが30円の上乗せ分を払ったにも関わらず、税務署に実際に入るのはAさんが納めた10円だけよ。

 そこで、「インボイス制度」のお出ましなの。最初にインボイスのことを「ちゃんとした」お知らせって言ったでしょう?どういうことかというと、免税事業者はインボイスを発行することができないの。すると何が起きるかというと、Bさんが納税したっていうお知らせがないから、Cさんからすると「自分が損する」ってことになって、もうBさんからは「買わない」ってなるわけ。つまり、取引が減るの。

 こうなるとBさんも困るから、免税事業者であることを止め、課税事業者になるの。そうすれば、インボイスを発行できるようになるの。もちろん、課税事業者だから税金は納めなくちゃね。ちなみにインボイスは紙でもいいけど、しくみが複雑になるから、電子インボイスの活用が期待されているわ。

 

 インボイス制度のこと、少しは分かってくれた?ややこしいけど、毎日のように払っている消費税のことだから知っておいてね。ところで、免税事業者という不公平な仕組みが存在する理由は、消費税増税に伴う激変緩和措置なの。事業規模の小さなところに配慮したのね。でも、いつまでも消費者に肩代わりさせるわけにはいかないから、ようやく整理されることになるというわけ。(吉澤大「2時間で丸わかりインボイスと消費税の基本を学ぶ」かんき出版)(土屋裕昭「60分でわかる!インボイス&消費税入門」技術評論社

 

 「ややこしいし、そもそも税金なんて払いたくないし。いやー!」って言いたい気持ちは分かるわ。でも、税は文明とともに誕生したもの。それこそ、人類最古の書字は納税記録よ。ある意味、税が文明を発達させてきたの。

 そして、歴史的な重大事件には税の話が絡んでいることが多い。例えば、アメリカの禁酒法が成立したのは、所得税が設けられて税収が見込めるようになったから。でも、その後の世界恐慌で税収が落ちた途端に禁酒法は廃止され、ちゃっかりアルコールに税がかけられることになったわ。日本でも酒税を確保するため、「サケビバ!」という日本産酒の振興キャンペーンが展開されたわね。

 

 

 いつの世でも政府はあの手この手で税収を確保しようとする。高齢化で社会保障費が増え、国防も大事になってくる我が国にとっては致し方ないわ。一方で、税を合法的に逃れようとする動きもあるわ。具体的には、暗号通貨の分野で億万長者になった「新富裕層」たち。しかも、彼らは一つの国に定住する必要がない。彼らからの徴税はハードルが高いわ。

 これからは、取引税、電気通信税、インターネット税など様々な税の創設が想定される。そのために政府は、電子インボイスブロックチェーンなどを導入し、世の中の取引をデジタル化して管理しようとするでしょうね。インボイス制度はこうした将来の完全徴税システムに向けた最初のステップとなるものよ。

 億万長者が税金逃れできるような国に未来は無いわ。みんなで税の意義を理解し、徴税システム構築に協力するという前向きな姿勢が大事よ。もちろん、その際は、税の使途についてもデジタル化して「見える化」することが条件ね。