ポスト・コロナの観光は「スマート・ツーリズム」で決まり!

2023年2月27日(月)

 トランだ。

 

 最近、街でずいぶん外国人を見かけるようになったな。新型コロナによる空白の3年を経て、観光客が戻りつつあると実感するぜ。時に、国では「観光立国推進基本計画」の策定を進めている。インバウンドは2025年に2019年の3,188万人超えを目指すなど、目標値が盛り込まれるようだ。

 

 日本が観光地に選ばれるのは嬉しい。円安も追い風になる。だが、外国人観光客によるマナー違反のトラウマもある。観光非関係者では「オーバーツーリズム期より少なく街が賑わう程度で良い」とする人が5割弱もいる。無視できない数だぜ。

 新型コロナでいやと言うほど味わったが、「人の移動=感染リスクの拡大」だ。新型コロナの類型変更まで秒読みではあるが、日本人の島国意識はそうそう変わるものではない。江戸時代末期のコレラ流行は外国人排斥運動の背中を押した。ほどほどにしてほしいというのが関係者の本音だろう。

 また、「人の移動=汚染の拡大」でもある。渡航自粛で美しさを取り戻した観光地を惜しむ人もいるはずだ。国連世界観光機関UNWTO)によると、1泊以上の国境をまたぐ旅行をする人は2030年に18億人に達すると予測されている。2018年の14億人をはるかに上回る数だ。何も手を打たないと、新型コロナ前よりもひどい状況になるぜ。

 

 

 ポスト・コロナの観光は持続可能にしなくちゃいけないぜ。先に挙げた「基本計画」の一丁目一番地にも挙げられている。気候温暖化やゴミ問題にも気を配り、感染症の拡大を抑えつつ、観光客と地域がお互いをリスペクトできる状況を作り出すことが求められる。こうした「スマート」なツーリズムを創造すべきだ

 気になるのは観光業界のSDGsへの意識が低いことだ。観光セクター(飲食・運輸・旅行・宿泊)でSDGsに取り組む企業は21.6%と業種別では最低水準だ。(野田健太郎ら「観光産業のグレート・リセット中央経済社

 ホテルでは使い捨て歯ブラシを備えておくことが当たり前になっている。2020年の観光庁『日本版持続可能な観光ガイドライン』では、使い捨ての場合は代替品の使用を促進するなど、プラスチックごみを削減する「スマート・プラスチック」の考え方が紹介されている。お土産などの個別包装も自粛すべきだ。感染対策とのジレンマはあるが、ここは割り切ろうぜ。

 

 重要なのは観光客の意識改善だ。旅行動機には「緊張解除」というものがある。観光客は「自由」な気持ちでいっぱいだ。責任感も薄い。羽目を外すおそれが高まる。

 思い切った取り組みが必要だ。昨年のサッカー・ワールドカップでは、日本のサポーターがゴミを持ち帰る様子が話題になった。シンガポールのように国際拠点でありながら、厳格なルールを課している例もある。当たり前のラインをずらそうぜ。

 観光客に「スマート証明書」なるものを必携とさせてはどうか。つまり「誓約書」だ。自然を壊さないなど地域のルールを守ることを誓わせる。そして、証明書を持たずに観光地には入れない、ルールを守らない者は他の観光地も出入り禁止とする、とすればいい。オプションとして、医療保険への加入を必須とする、過去1か月以内のワクチン接種を確認できるようにする、としてもいいだろう。もちろん証明書はデジタル仕様でスマホに登録させる。「観光DX」の一つに加えればいい。観光が一気に「スマート」になる。地域があってこその観光だ。地域へのリスペクトを積極的に求めようぜ。

 

 観光地の有料化はもっと進めていいだろう。観光業は「100日の黒字と265日の赤字」。通常の観光収入だけでは環境整備に割く余力はない。特にゴミの処分はコストがかかる。ゴミ捨て料金も織り込むべきだ。ここぞという観光地はどんどん有料化にしようぜ。それから、観光地近隣の駐車料金はぐんと高めに設定すべきだ。そのための税金をかけてもいい。公共交通機関の利用と徒歩を基本にするべきだ。エコだし、健康にもいいぜ。(箱谷真司「観光立国・日本」光文社新書

 障がい者やLGBTQsなど多様な観光客を視野に、ユニバーサルデザインを推進することも大事だ。ゆっくりと楽しみたい人もいるだろう。新型コロナ後は「密」を避ける旅行への志向が高まっている。旅行は免疫力を高め、がんや認知症リスクを低下させる。お金をかけて、健康を満喫できる環境を用意しようぜ。(関口陽一「心身と地域を元気にするウェルネスツーリズム」KINZAIバリュー叢書)

 

 世界経済フォーラムの「2021年旅行・観光開発指数ランキング」で、日本は世界1位になった。インフラや観光資源が高く評価されたんだ。これらを上手に活かすことが魅力ある地域の維持にもつながる。新型コロナのおかげで見えた、デジタル活用、サステナビリティ、健康増進を意識してスマートな観光スタイルを目指そうぜ!