日本アニメの没落?生き延びることができるか。

2023年4月24日(月)

 コノミです。

 

 今年もアニメ映画は話題いっぱいです。『SLAM DUNK』は日本だけでなく韓国や中国でも大ヒットです。『鬼滅の刃』や新海誠監督作品の人気も根強いです。ドラえもん名探偵コナンといった定番はもちろん、スーパーマリオもお目見えです。今でこそ百花繚乱ですが、そんな日本アニメの没落が始まっている気がします。

 

 

 よく見てみると、これらのタイトルは過去のヒット作や人気キャラクター頼みです。そして観客は一つのタイトルに群がったと思ったら、次のタイトルに群がるという「イナゴ移動」を繰り返しています。ヒットも宣伝戦略やSNSによる情報拡散のおかげです。決して、作品の力ではありません。いつか飽きが来るでしょう。

 

 日本のアニメは「ジャパニメーション」と言われる独特の発展を遂げました。画像の美しさや繊細さはもとより、登場人物の心情を見事なまでに表現し、観客をその世界に引きずり込んでいきます。巨匠と呼ばれる人たちの発想や努力のおかげです。

 手塚治虫は『鉄腕アトム』を1話30分と設定し、キャラクターの心理描写をふんだんに盛り込みました。『アルプスの少女ハイジ』は日常生活を丹念に描きました。『ガンダム』は世界観の意味をファンが考えるレベルに引き上げました。(津堅信之「日本アニメ史」中公新書

 そして、製作委員会方式」と呼ばれる仕組みにより、複数の企業から資金を集め、著作権・版権を分配し、玩具からキャラクターグッズ、声優の音楽ライブにいたる巨大な経済圏を作り上げてきました。アニメ市場は派生ビジネスと言えます。全収入は年間約2.5兆円です。

 

 一方で、グローバル化が進む中、業界の独特さは足かせとなりつつあります。一例が、フル3DCGの採用を拒絶したことです。手描きによる独創性は捨てがたいですが、そろそろ、制作の効率性やアニメーターの負担軽減を考える頃です。

 日本ではアニメーターの待遇が低いことが大きな課題です。単価は動画1枚あたり200~300円、平均年収は約440万円です。新人の入社後1年間の離職率は5~8割です。大手のアニメ制作会社では人材育成を海外に見出そうとしています。

 その海外の動向も気になります。最大の脅威は中国です。ゲームではありますが、『原神』のキャラクターは日本モノと勘違いしちゃいます。しかも、中国アニメ市場は急拡大しています。このまま中国の技術が向上すれば、日本アニメが締め出されていくでしょう。(谷口功「アニメ業界とカラクリがよ~くわかる本」秀和システム

 ネット配信事業の急成長にも注意が必要です。デジタル社会においては資本力がものを言います。アメリカではテレビ、映画、音楽、出版というエンタメに関わる事業は、ほぼ全て大手メディアが統合してマネジメントしています。中国でもその傾向が見られます。日本企業ではとうてい太刀打ちできないでしょう。

 

 日本国内で生き残りを図るという選択肢もありますが、ほんの一部の人気作品が寡占する市場環境です。少子高齢化が一段と進むと、見慣れた定番がいつまでも幅を効かせることとなるでしょう。もし、外国産アニメが国内で大流行する事態ともなれば、日本アニメはジリ貧を迎えることになります。すると、ファンにとって、ある種の危機が訪れます。

 ファンにとってキャラクターとは、自分をさらけ出す必要がなく、中立であって、みんなの目をひいてくれる「表現財」です。それを「推す」ことで自身の活躍の場を見出し、投資した時間とお金に見合う心理的な報酬を得ることができるのです。つまり、アイデンティティなのです。外国産キャラクターが国内で氾濫すれば、文化的にも経済的にもそこから抜け出すことは難しくなるでしょう。

(中山淳雄「推しエコノミー」日経BP)

 

 日本アニメに明確な戦略が必要です。アニメーターの待遇をよくし、技術を国内に留め置くとともに、新人を育成しなくてはなりません。さらに、業界全体で危機感を持ち、フル3DCGの活用やネット配信などのインフラを用意するのです。骨太のクリエイターが生まれ育つ環境を整え、アニメ経済圏の幹の部分を強固にしていくのです。

 生き方や人としてのあり様を自由に演出できるアニメは心のよりどころになります。日本人の心にいつまでも残り続ける作品を生み出す努力が切望されています。