「悪意」って、実は必要!?

2023年6月5日(月)

 ソシエッタです。

 

 公邸忘年会の写真が流出しています。岸田首相の身内への甘さや危機管理が問題となっています。流出そのものには悪意を感じますが、悪意があるからこそ、こうした行為が正されるという面があります。悪意は必要なのでしょうか。

 

 脳科学的には、悪意の発生はごく自然であることが分かっています。脳が消費する酸素量は全身の4分の1、エネルギー量は20%もあります。脳が楽をするには誰かに従うのが一番です。加えて、脳には良心の感覚を司る領域があり、社会のルールを守らない人に制裁を加えたいという欲求が生じます。ルールを逸脱する行為は、社会の協力構造を脅かすものです。ネットワークによって「炎上」が生まれます。

 厄介なことに、正義をふりかざすチャンスを見つけると、脳は麻薬中毒と同じ快感を覚えます。「正義中毒」と言われるゆえんです。(中野信子「脳の闇」新潮新書

 

 このように、悪意には人々に公平な行動を促す役割があります。悪意のある人は、他人の感情を理解する能力が低い反面、客観的に、抵抗なく、ルールを集団に強要することができます。一方、悪意は、周りから攻撃されるというコストを伴います。そこで人類が生み出したのがルールです。守らなければ罰を受けるようにしたのです。おかげで人々は悪意を覆い隠すことができるのです。

 

 危険なのは、悪意は暴走することです。フランスの思想家トクヴィルによると、あらゆる欲求で最も圧倒的なのは「今より落ちぶれたくない」というものです。そのせいで、自分が損をしてでも人の足を引っ張ろうとします。相対関係が大事なのです。競争社会では悪意が蔓延します。

 行き過ぎると相手を「非人間化」しますヘイトクライムの誕生です。人は自分と同じような人を好みます。異なる者を脅威とみなし、ネガティブに捉えます。失業、貧困、孤独といったフラストレーションが加わると、殺人すら犯してしまいます。

 現代は危険な状況にあります。不平等に対する不満がまん延しています。インターネットは悪意を増幅させます。(マシュー・ウィリアムズ「憎悪の科学」河出書房新社

 

 一刻の猶予もなりません。社会全体によるサポートが必要です。一つは経済格差の解消です。人生がままならないと感じた人は攻撃的になります。教育環境も重要です。脳は、幼少期の発達を通して、大人たちの偏見に基づく「脅威」のアンテナを増やしていきます。様々な背景を持つ人との触れ合いは、アンテナを減らすことにつながります。政治にも責任があります。日本ではLGBT法案に慎重です。こうした壁が、知らぬ間に悪意の暴走を許してしまっているのです。

 最後に私たち自身です。怒りをコントロールしなくてはなりません。悪意にとりつかれてダークサイドに堕ちないようにすることが大切です。

 

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