2019年2月11日(月)
私はレーブ。
日本は今後5年間で最大約34.5万人の外国人労働者を受け入れることとした。少子高齢化が進む中、各分野の人手不足は深刻だ。
この4月から、「特定技能制度」がスタートする。対象となった14業種は産業振興や経済成長に必要な分野ばかりだ。唯一の例外は「介護業」。これは、国民の日常生活に欠かせず、かなりの部分を公的支出により支えられており、財政的課題が大きい分野と言える。
【主な対象業種別受け入れ見込み数】
介護業 6 万人
外食業 5.3 万人
建設業 4 万人
ビルクリーニング業 3.7 万人
農業 3.65万人
飲食料品製造業 3.4 万人
外国人労働者受入れの土台は「外国人技能実習制度」だ。母国に技術を移転して経済発展に役立ててもらうというもので、最長5年間の滞在が可能となる。「特定技能1号」の資格を得れば上乗せして5年間の滞在が可能。さらに、試験に合格して「特定技能2号」ともなれば永住可能、すなわち、事実上の「移民」が可能だ。(Newsweek 2018.12.4)
しかし、外国人労働者の現状について、いくつか問題が指摘されている。外国人を受け入れることに対する国民の拒否感も侮れない。受入れを円滑に進める上でも、以下の大事な3つの視点を持ってもらいたい。
①格差を生む社会にしないこと
技能実習の現場では不当労働や人権侵害があると聞く。「現代の奴隷制度」とも言われている。「ブラック」な職場の温床としてはいけない。第三者による監視が強化されるようだが、フォローアップが必要だ。安易な解雇も問題だ。三重県の工場で日系外国人労働者の大量雇止めが発生したことは記憶に新しい。
賃金格差もある。技能実習による収入は月14万円程度だ。特定技能だとこれをやや上回ると見込まれるが、生活費は手元にいくら残るのだろう?渡航に際してあっせん業者に借金をしている場合もあろう。母国に住む家族への仕送りも期待されているだろう。劣悪な生活環境を余儀なくされるおそれがある。社会の分断を招き、治安にも影響しかねない。
根っこの考え方が「労働力の調整弁」だと様々な火種を生みかねない。労働力不足に陥るのは日本だけではない。おそらくこれから世界規模で労働者の綱引き合戦が始まる。「日本のためにも来て頂く」、という謙虚さが今一度必要だ。
②日本人労働者の賃金も上がらないこと
最大で約34.5万人増でトータル約160万。全労働者6,720万人のわずか2.4%とは言え、平均賃金の上昇を抑える方向に働く可能性は否定できない。AIやロボットによる代替も進む。外国人労働者だけでなく日本人労働者の賃金も上がらなくなる。デフレの延長戦だ。
さらに、仮に今回の受入れがうまくいったと評価されれば、受入れ枠の拡充が図られるだろう。賃金上昇の足踏み状態に拍車をかけることになる。すると、日本人にとっての不人気分野も増える。そうなれば、受入れ枠をさらに拡充せざるを得なくなるという外国人依存のスパイラルに陥る。
韓国では2004年に導入した「雇用許可制度」の中で、韓国人が募集できない場合に限り外国人労働者を雇うことができるとした。韓国人と外国人の競合を避けたわけだ。これにより平均賃金への影響は最小限に止まると期待されるが、果たしてどうか?
賃金上昇頼みによる経済成長は困難と考えるべきだ。
③多様性を受け入れること
日本はこれまでほぼ単一と言ってよいほどの文化の中で暮らしてきた。今後、母国の生活習慣や宗教観を持ち込む外国人が増える。同じ共同体の中で、お互いをリスペクトしながら生活できるだろうか。
例えば、日本人は清潔、静かといったシチュエーションを好む。お店の前や列車のドア付近で並んで待つなど暗黙のルールも多い。ゴミ出し、騒音、公共の場でのふるまいは大丈夫だろうかと不安を感じる人もいるだろう。
言葉の問題、コミュニケーショントラブルも発生するだろう。外国人に日本語教育を求めるだけでなく、受け入れる側も外国のことを積極的に理解しようとすべきだ。外国語や外国文化を学ぶ機会を多くつくることが必要だ。そういう意味では、東京オリンピックや大阪万博は格好の機会と言える。
以上の視点を持って、これからの日本を外国人とともに支えていくという姿勢が重要だ。副次的効果として、外国と触れ合うことによって、今まで見えていなかった日本の問題点、制度面での課題に気づくことになるかもしれない。この国を一緒に良くしていくという意識をもって彼らを受け入れていくこととしたい。
【参考データ(2017年)】(芹澤健介「コンビニ外国人」新潮新書)
在留外国人数; 約247万人
外国人労働者数; 約128万人
外国人技能実習生;約 25万人
アルバイトをしている外国人留学生;約26万人(注;留学生全体は約27万人)