「エドテック」がもたらす新たな学びのシステム

2020年10月12日(月)

 エディカです。

 

 新型コロナウイルス感染症はインターネットの活用を爆発的に増やしたわね。さすがに、みんなにもネット疲れもみられるんじゃない。でも、この流れは利用するべきよ。特に、教育分野についてはね・・・・。  

 

f:id:KyoMizushima:20200905232956j:plain

『12か月の未来図』

 「エドテック(EdTech)」って知ってるかしら。エデュケーションとテクノロジーを組み合わせた造語で、インターネットを中心とした情報テクノロジーを教育分野に活かす取組のことよ。いくつか利点があるわ。(山田浩司「EdTech」幻冬舎

 まずは「リモート学習」ね。離れていても質の高い教育が受けられるわ。遠くに住んでいた親戚に対しユーチューブ動画で授業を行った「カーン・アカデミー」が発祥らしいけれど、その後「MOOC」といって大学の講義を録画してインターネットで公開する形で広まっていったわ。日本には日本版の「JMOOC」があって、世界中に約1億人の受講者がいるらしいから、ニーズは高いはずよ。(週刊東洋経済2020.8.8‐15)

 これはとりもなおさず教育コストを安く抑えることができるってことになるわ。最低限の設備があれば、いくつも教室を作る必要はないし、教師だってたくさんは要らないわ。国内や世界で優秀な教師を選抜すればいいの。

 

 以上はインフラに関してだけれど、教育の「質」という面でも大きなメリットがあるわ。一つは、学習の履歴や効果が「見える化」されることね。どんなことを教わって、その結果どんなことまで理解したかをコンピュータが逐一記録し、分析してくれるの。だから、一人一人に合わせたオーダーメイド教育が可能になるの

 こうなると「完全習得学習」が現実味を帯びるわ。学生や生徒がそれぞれ自分のペースで確実に学習内容を修得しながら学習を進めていくの。セルフ学習だけだと心細いから、これに定期的なオンライン「授業」を織り交ぜてはどうかしら。そこで教師からのサポートを受けるとともに、学生や生徒同士で刺激し合うことになるわ。さらに、チャット機能を使えば質問しやすいから、大人数が集まる講義形式よりも効果的よ。(週刊ダイヤモンド2020/08/08・15)

 エドテックを利用することによって、従来の教育環境が取りこぼしてきた学生や生徒を救うことができるわ。逆に、どんどん先に進みたい優等生は早いスピードで学習を進めていくこともOKよ。

 

 座学だけじゃなくVRを使ったリアルな体験学習も可能よ。教科書の文字や写真だけではイメージしにくい内容、例えば、世界遺産建造物の外観や内装をあたかも社会見学のように見て回るとか、天候の変わり具合を自然公園の中でリアルタイムで見るとか、現地に行かなくても体験できることは大きいわ。身体の動かし方を学ぶのにもいいかも。中学校ではダンスが必須科目になっているけど、VRゴーグルをかぶって正しい動きを指導してもらえると助かるわね。医学教育では問診を疑似体験してコミュニケーション術を学ぶの。

 

 こうしてみると、いいことづくめのような気がするわ。でも、問題がないわけじゃあないの。一つは、飽きちゃうことね。他人の話を黙って聞く場合、集中力が続くのは最初の15分間・・・・だから、飽きさせない工夫が必要になってくるわ。双方向機能を利用しながら学習をゲーム化すれば、モチベーションが高まるかも。 

 教育現場のインフラにも問題があるわ。小学校で電子黒板が普及しない理由に教師のICTリテラシーが低いことが挙げられている。そもそも、Wi-Fi普及率が2016年度で日本は26%と、アメリカ88%、イギリス78%に比べて低いことが物語っているわ。教育関係者へのトレーニングも含めて、国がしっかり予算をつけて環境整備することが大事ね。

 

 学習の個別化が生む問題もあるわ。世の中にはいろんな人がいるけれど、こうした存在が見えにくくなる。もちろん、学習面だけじゃなく様々な活動において得手不得手があるはずだから、それらを全て知ることは所詮不可能よ。でも、自分のペースでやりたいようにやればいいっていうのは、強烈な個人主義を生みかねないわ。

 その上で、リアルな対人関係を作れるかどうかも心配ね。インターネットが普及して臨機応変な対応や瞬発力が求められる世の中になったけれど、果たして「言葉」が適切に使われているかしら。その場しのぎの対応に慣れると思わぬことで足元を救われるかも。

 

 課題はいくつもあるけれど、これらもテクノロジーや創意工夫によって乗り越えていくのでしょうね。いずれにしてもエドテック導入のメリットは魅力的よ。

 これからは、どんな教育を受けてきたか、それこそ人生の記録(ライフログ)のように、学びの記録(エドログ)が残されるでしょうね。そして、これをもとに、例えば「対人関係の作り方」など、必要な部分を補完していくような研修システムなんかが作られるのでしょうね。これからはまさに「生涯学習」・・・・たーいへん!