そごう・西武のストライキの是非を問う

2024年9月23日(月)

 レーブだ。

 

 未だに暑い日が続く。ヤマト運輸の倉庫で働く社員が熱中症対策を求めてストライキを起こしたのもうなずける。とはいえ、ストライキ自体が珍しい。半日以上のストライキの実施件数は、近年ではわずか30件台だ。昨年8月31日の西武池袋本店ストライキに影響を受けたのではないか。そごう・西武ストライキが何をもたらしたのか、考察したい。

 

 

 2022年11月、セブン&アイ・ホールディングスが子会社であるそごう・西武百貨店を米国の投資ファンドに売却すると発表した。売却後は家電量販店のヨドバシが入ることが予想された。となると従業員の雇用がどうなるのか、不安を抱えた労働組合は、委員長が先頭になってセブンの社長に対し説明を求めたが、何ら有用な情報を得ることはできなかった。このため、弁護士とも相談しながら、最終的にストに突入せざるを得なかったのだ。(寺岡泰博「決断」講談社

 

 結局、ストライキで売却を止めることはできなかったが、明らかとなったことがあった。それは、これまで通りの「労使協調」では雇用が守れないということだ。「労働運動最大の発明品」と言われる春闘も、2000年代前半の景気低迷期には、賃上げをあきらめて雇用を維持することを「成果」にしていた。誰もが「しかたない」という心情に絡めとられていったのだ。(東海林智「ルポ低賃金」地平社)

 

 しかし、時代は変わりつつある。少子化はおろか人口減少が止まらない。国立社会保障・人口問題研究所によると出生数は2029年まで74万人台半ばで横ばいとなるが、「これは楽観的」という指摘がある。人口減少対策総合研究所の試算は、2033年に約45万7000人になるとしており、大きく食い違う。総人口も2045年に1億人を下回る。(河合雅司「縮んで勝つ」小学館新書)

 加えて、気候変動対策が生み出す社会は雇用を欲するIMF国際通貨基金)はカーボンニュートラルの達成により、2050年にGDPが7.64%増えると試算している。IEA(国際エネルギー機関)は再生可能エネルギー設備の製造等で雇用が増えるとしている。こうした「新産業革命」にキャッチアップするためには、相応の人材を確保しなければならない。(夫馬賢治「データでわかる2030年雇用の未来」日経プレミアシリーズ)

 

 もはや、女性、高齢者や外国人などを安い労働力と捉える発想を改めなくてはならない。逆に、労働者側にとっては「働く者の尊厳」を主張する絶好のタイミングでもある。その手法としてストライキは有効だそごう・西武の例で言えば、今回の経営判断が正しかったのかどうか、来たる審判の対象となったからだ。

 「経営側の正義」が野放図になると日本は世界に後れをとるだろう。外資系が入ればそのリスクは増す。国として今回のケースについて分析を行い、労使交渉の新たな指針を示すべきだろう。