2019年5月27日(月)
ソシエッタです。
「令和」改元に関する一連の報道はご覧になりましたか?私は、皇位継承に伴う儀式に不案内なこともあって、テレビにくぎ付け状態になりました。
ここ最近スマホに押され気味ですが、マスメディアの底力を改めて思い知らされました。やはり新聞・テレビはまだまだ強い、信頼度が高い、そんな気がしました。
マスメディアの弱体化が叫ばれています。
新聞全体(スポーツ紙を含む。)の発行部数はピークだった2000年の約5,400万部から20%減少しました。テレビのゴールデンタイムにおける総世帯視聴率は、2000年前後の約70%から2017年度の約60%と減少しています。(「メディアは誰のものか」集英社新書)
2000年頃といえば、都内の満員電車の中では、新聞を縦四つ折りにして読んでいるサラリーマンの姿がありましたね。今や絶滅危惧種です。スマホによる省サイズでニュースだって漫画だって手軽に見ることができます(実際はゲームやSNSに興じている人が多いようですが・・・・)。
今やインターネットを使うことが当たり前になっています。一斉に配信される新聞やテレビの情報に加えて、好みのメディア情報を選ぶようになりました。しかもネットメディアの多くは無料で利用できます。
そんな中でSNSの登場は衝撃的でした。これまで情報の受け手だった私たちが情報を発信する側にもなったのです。当ブログもそうですが、ツイッターやフェイスブック、YouTubeなど様々なスタイルで伝えたいことを発信することができます。自分たちをアピールできます。これらの情報に触れた人が反応することもできます。「いいね!」がその最たるものですね。そして、リアクションの様子を最初の発信者も反応した人たちもその他の人たちも知ることができます。
こうした個別の情報から連鎖して起こるやりとりは従来のマスメディアには無かった現象です。「承認欲求」なる言葉も浸透しました。
また、マスメディアは「建前」の世界で、ネットメディアは「本音」の世界と表現されることがあります。例えば、テレビは放送法により政治的に公平であることを義務づけられています。日本では、アメリカのCNN放送で見られるような論争的報道を見ることはほぼありません。情報提供に徹していると言えます。
このような時、「本音」をぶつけることができ、「本音」を知ることができるネットメディアが人々の関心を引くのは分かる気がします。
では、マスメディアは衰退していくのでしょうか?そんなことはありません。マスメディアに期待を寄せたい点があります。
マスメディアの役割の一つに「権力監視」があります。そして、マスメディアは立法、司法、行政の3権に次ぐ「第4の権力」と言われています。
これまでも政治が暴走しないようその役割を果たしてきました。最近の例でいうと、加計学園問題ではメディアの報道により公文書の不適切な管理が明るみになりました(瀬畑源「公文書問題」集英社新書)。このように権力監視装置としてのマスメディアの役割はとても大きいです。
一方、こうした大きな権力でない「権力」に対する監視は決して十分ではありません。もしくは、ニュース性に乏しく面白味のないもの、発行部数や視聴率に結びつかないものとして取り上げられることは少ないでしょう。具体的に何かと言いますと、「個人」がふりかざす「権力」です。
民主主義は発展すればするほど社会は複雑となり、あらゆる所に「生殺与奪」の力を握る「小帝王」を生むとされています。(山本七平「帝王学」日経ビジネス文庫)。
例を挙げると、児童虐待は児童の死という最悪の事態になって初めて世の中の知るところとなります。千葉県野田市のケースでは、虐待行為もさることながら、父親の学校に対する常軌を逸した威圧行為が明らかとなりました。
報道の過程で父親の行動をバッシングすることは可能です。学校や行政の対応を批判することも可能です。でも、これだけではネットメディアのやっていることとあまり変わりません。どうしてもメディアに触れる人の感情を優先するものとなります。
ここでマスメディアの存在意義を見せるチャンスが生まれます。
事故や事件が起きれば関係者の批判や提言を行っておしまい、とするのではなく、どうしたら再発を防ぐことができるのかといった問題の本質を突く視点で、まだ知られていない個人のふるまいを監視するのです。警察や警備会社といった監視機関と連携してもいいでしょう。そして、必要だと思えば記事や番組にするのです。
先ほどの児童虐待の例で言うと、児童相談所や学校、地域に取材を行い、危険の兆候が見られるケースを追跡して事実を確認するのです。取材は嫌がられるでしょうが、犯罪の抑止力になります。
そして、「監視」の努力・実績が腰の重い行政などを動かす力になります。社会の新たな規範づくりにもつながります。「第4の権力」とされるマスメディアにはひと肌脱いで頂きたいです。個の時代における「知る権利」の新しい使い方と言えるのではないでしょうか。
発行部数や視聴率を気にするのではなく、バランスをもって社会的使命を持っていることを国民が実感できるメディアとなるべきです。他のメディアとの大きな差別化になりますし、信頼度や存在価値を一層高めることになります。
そのためには、私たち利用者の側も多様なメディアのそれぞれの利点や試みを十分に理解しておくことが重要です。
【5大新聞発行部数 2018年12月度】(広告代理店の未来を考えるブログ)
読売新聞 8,660,824
朝日新聞 6,038,803
毎日新聞 2,860,202
日本経済新聞 2,498,347
産経新聞 1,520,115