2019年6月3日(月)
フィナよ。
アメリカのトランプ大統領の訪日は大騒ぎだったわね。貿易交渉も大事だけど、お互い、国内金利の設定には頭を悩ませているわね。
4月25日、日本銀行が金融緩和を当分の間続けることを表明したわ。鳴り物入りでスタートした「異次元」金融緩和は期待されたような効果を上げていない。一方で出口戦略を探ろうとするとハイパーインフレを引き起こしかねない。にっちもさっちもいかなくなっている様子が伺えるわ。
エコノミストのリチャード・クー氏によると日本は90年代のバブル崩壊以降、「バランスシート不況」に陥っているみたい。つまり、民間部門が、「もう悲惨な目に会いたくない」と借金返済と貯蓄に励んでいるの。だからいくらお金を積んでも借りようとしない。こうなるとお金は金融機関やタンスの中に放置されてデフレにつながるのね。アメリカやヨーロッパの先進国も状況は同じみたい。(リチャード・クー「『追われる国』の経済学」東洋経済新報社)
「じゃあ、どうしたらいいの」ってことだけど、クー氏の提案では、「バランスシート不況」状態にある場合は、金融政策ではなく財政政策が効果的だとしているわ。
理由は次のとおりね。
①金融緩和で流入した資金の運用先は、誰も借りてくれないため自国の国債に向かう(=政府が最後の借り手として円建てで借りてくれる。)。
↓
②このため国債価格は急騰する。一方で利回りは異常な水準にまで低下する。
↓
③政府は国債の暴落を気にせず景気対策を打つことができる。利回りは低水準なので資金調達しやすい。
↓
④景気対策は民間の貯金を借りて行うから民間の努力(借金返済、貯蓄)を邪魔しない。それでいて、民間にとっての投資機会を作り出すことになる。
要するに、民間部門は自ら借金しないから政府が肩代わりに借金して事業を起こしなさいってことよね。①、②、④は分かるわ。でも③は大丈夫かしら?国債は本当に暴落せずにすむの?
日本の国債は合計で1,075兆円よ(財務省債務管理レポート2017)。持ち主別でみると海外はたったの1割。それに対して、日本銀行、銀行などの金融機関が合計で8割を保有しているから一見安定しているわね。
問題は今の状態をいつまで続けられるかよ。
トランだ。
怖いのは資産バブルだな。超低金利で資金があり余っている状態はバブルを引き起こす。 以前ここで指摘したことだが、全国的に地価が上がっている。人口は減っていくのにこれは妙だぜ。
フィナよ。
かといってバブルを防ぐために金利を引き締めるのも簡単じゃあないわ。その分だけ借金の返済額が膨らむわ。返済のためには、さらに国債(借換債)を発行するのでしょうけど。いつまでもみんな国債を買ってくれるのかしら?
「円」の信用が落ちるリスクもあるわ。円安は輸出産業やインバウンド産業にはうれしいけど、極端な円安になると輸入品に頼っている日本は物価が上昇してインフレになるかも。(明石順平「データが語る日本財政の未来」インターナショナル新書)
逆に、今の金融緩和政策をやめようとすれば金利が上がるわ。金利を無理やり抑え込んでいるにすぎないし、諸外国の金利も上昇していることだし。
金利が上昇すると国債は下落するわ。そうなると損失も出るでしょうし、国債離れも進むわ。(野口悠紀雄「異次元緩和の終焉」日本経済新聞出版社)
どっちの道を進んでも修羅場ね。究極の選択だけど、選ぶとしたら将来に禍根を残すのではなく、今苦しみを受け止めて乗り越えるほうが傷が浅いように思うわ。取組としては以下の3つね。
・金融緩和政策をトーンダウンさせていくこと。
・財政規律を求めること。
・民間部門の投資機会を生み出せるよう政府が研究開発に投資していくこと。
政府は耳障りのいいことを言い続けるのではなく、当面の苦しみを受け止めるよう国民に呼びかける勇気を持つことが大事ね。そうしないと、かつてどっかの国で起きたようにもっとひどい修羅場を見ることになるわ。国民の感覚が麻痺しちゃってお互いの分断を生むの。そう、歴史は繰り返すの。
【国債及び国庫短期証券の保有者別内訳】(財務省債務管理レポート2017)
日本銀行 4,206,664億円(39.1%)
銀行等 2,287,086 (21.3%)
生損保等 2,070,474 (19.3%)
海外 1,128,724 (10.5%)
公的年金 492,160 (4.6%)
年金基金 316,980 (2.9%)
家計 127,283 (1.2%)
その他 102,013 (0.9%)