オランダは魅力とプライドがぎゅっと凝縮(オランダ事情)

2019年9月16日(月)

 Kyoです。

 

 今回はオランダ訪問の際の気づきをお伝えしたいと思います。

 

【運河はアムステルダムの命脈】

  アムステルダムは運河の町です。通り一つ、橋一つをとっても次々と景観が変わり、とても面白いです。橋の欄干部分には花が生けられていて綺麗です。運河の両壁沿いに船が何艘も停泊している姿はさながら絵画を見ているようで圧巻です。

 

 ただ・・・・、自転車がめちゃくちゃ多いです。専用レーンが整備されているのですが、ぼーっと歩いていると遠慮なくベルを鳴らされてしまいます。気を遣わずに街並みを楽しみながら歩けるといいですね。

 

 トランだ。

 そもそもオランダはネーデルランド(低い土地)と呼ばれ、海面よりも低いエリアが国土の約30%を占めている。 自然災害の多い日本から見ると、とても安心して住むところには思えないがメリットはそれなりにあるようだぜ。

 港湾都市として発達した。水運も使える。驚くことに、戦争時には農村をわざと洪水状態にして外敵の侵入を防いだらしいぜ(人為的氾濫戦術)。そして、景観の素晴らしさもあって、今や押しも押されぬ観光都市だ。

 あまりにも観光客が多いんで、オーバーツーリズムの抑制へと大きく舵を切ったことで有名だぜ。なんでも、ビールを飲みながら町を回れる「ビール・バイク」の禁止や運河クルーズの飲酒規制を行ったんだとさ。どんなものか体験してみたかったがな・・・。文化を求めてやってくる「上質」な観光客をお望みのようだぜ。(佐滝剛弘観光公害祥伝社新書)

 

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 低地で暮らしてきたこと自体、オランダ人にとって大きなアイデンティティかもしれませんね。

 運河沿いのパンケーキ屋でパンケーキ(オランダ語では「パネクック」と言います。)を食べました。注文したのはベーコンとアップルがトッピングされているものです。生地はもちもち感のあるやや厚めのクレープといったところでしょうか。サイズは大きいのですが薄いのでペロリといけます。日本で流行しているスイーツ系のパンケーキとは趣が異なるのですが、ちょっとした糖質制限ブームでもありますので、こういう食事系のメニューがもっとあってもいいかもしれません。

 

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【風車はオランダの象徴】

  世界遺産の風車群で有名なキンデルダイクに行きました。アムステルダムからは電車、水上バスなどを使ってトータルで2時間くらいかかりました。

 

 現地では折からの横殴りの雨で、差している傘が役に立たないくらいでしたが、霧の中で浮かび上がる風車群は神秘的にさえ感じました。 ただ、ここでも自転車の往来が結構あるので気を遣う必要があります。雨がっぱを着ずびしょびしょになりながら自転車をこいでいる人には逞しさを覚えましたが・・・。

 

 キンデルダイクには風車が19基あります。約280年前に設置されたもので、干拓地の排水に使われたようです。このうち2つは博物館として内部見学ができるようになっています。中に入ると、風車の羽根に連動して大きな滑車が高速で回転する様を見ることができます。大変な迫力です。

 

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 コノミです。

 かつて、風車は産業振興に欠かせない大きな存在でした。もともとは干拓地の排水と収穫された穀物の製粉に使われていました。16世紀末にアイトへ―ストさんという方が風車の回転運動をクランクによって往復運動に変えることに成功し、これを受けて製材用と搾油用の風車が発明されました。オランダにとっての「産業革命」だったのです。(桜田美津夫「物語オランダの歴史」中公新書

 動力は風なので、当然エコです。現代の風力発電に使用される風車とは姿形が異なっています。今の風車は真っ白で違和感を覚えますが、こちらは、自然にマッチしているように思えます。

 

 

【絵画は「オランダの誇り」の展示】

 アムステルダム市内のミュージアム広場に行くと、アムステルダム国立美術館ゴッホ美術館アムステルダム市立美術館と並んでいます。この辺りは、芝生の広場もあり沢山の人がくつろいでいました。ホットドッグを売る屋台も出ていました。設置主体の異なる美術館群が立ち並んでいるところといい、ちょうど東京にある上野の森のようですね。

 

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 特に、ゴッホ美術館はすごい人気でした。建物の外にまで人が並んでいました。さすが世界のゴッホです。チケットが取れるか確認してみましたが、時間予約制で、都合のよい時間帯は全て売り切れ状態でした。このため、アムステルダム国立美術館に入りました。こちらは並ぶほどではありませんでしたが、やはり大勢の人で賑わっていました。 

 

 エディカです。

 ちなみに、この美術館の基礎を築いたのはナポレオンの弟ルイ・ナポレオンよ。彼はオランダ国王になってアムステルダムを首都としたの。

 彼の時代のちょっと前・・・、17世紀がオランダの「黄金の世紀」なの。この時がオランダ絵画にとっても黄金時代だったわ。裕福な市民階級が個人の家を飾る目的で画家に描かせたからサイズは全体的に小さめね。そして、一般市民の日常生活を描いた「風俗画」が人気だったようよ。

 日本でもレンブラントフェルメールは人気ね・・・・上野で展覧会なんかあるとそれこそ朝から大行列よ!

 当時、オランダは既に「市民」社会に変貌していたの。大パトロンに雇われて生活するのではなく、市場で売れなきゃ稼げなかったようだから、彼らも副業してたの。レンブラントは美術商で、フェルメールは居酒屋経営者ですって。面白いわね。(木村泰司「世界のビジネスエリートが身につける教養 西洋美術史ダイヤモンド社

 

 

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  たくさんの絵が展示されていましたが、目を引いたのは海戦の絵でした。やがて世界最強となるイギリス海軍との英蘭戦争は三次にわたって繰り広げられました。第二次英蘭戦争で勝利したオランダが、アメリカに築いたニューアムステルダムをイギリスに譲り、その代わりに南米のスリナムインドネシアの支配権を手に入れました。当時はオランダが大きく得をしたのです。一方のニューアムステルダムはその後、ニューヨークと命名され、大発展を遂げることになります。

 

 そのほか、ゴッホの自画像、ナポレオンⅠ世の肖像画などを見ましたが、本美術館の看板と言えるレンブラント作『夜警』は、エックス線による解析中とのことで、巨大なガラスケースの中で装置に遮られていました。残念でした・・・。

 

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   ちなみに、チケットは館内で購入しましたが、窓口にはカード決済専用レーンが設けられており、日本よりキャッスレスが進んでいる様子が窺えました。 

 

 オランダ訪問は魅力とプライドがぎゅっと詰まっていて濃厚でした。もう少し長く滞在してみたかったです。往復はKLMオランダ航空を利用しましたが、同社は世界最古の民間航空会社です。スキポール空港EUにおけるハブ空港です。

 

 そして、オランダといえばチューリップが有名ですが、スキポール空港の近くには世界最大の花の取引所、アルスメール生花中央市場があります。世界の花の52%がここで取引されており、最も早くIT化を果たしました。また、以前、フーディンが紹介しましたが、農産物出荷額(2013年)はアメリカに次いで堂々の2位です。

21世紀政策研究所「2025年 日本の農業ビジネス」講談社現代新書

 

 オランダは世界最初のヘゲモニー国家です。当時は想像もつかないくらい圧倒的な経済大国だったのです(玉木俊明「<情報>帝国の興亡」講談社現代新書)。

 今のオランダは、人口規模は東京都と茨城県を足したくらい、土地面積は九州をやや上回るくらいと小さい国に思えます。しかし、過去に世界一を手にしたことのあるプライド、そして自信は強いものです。

 「失われた30年」とさえ言われ、行く末が案じられている日本ですが、凛として見えるオランダの風景を眺めながら、胸を張り直して、またひと花咲かせたいですね。

 

 以上、Kyoによるオランダ・レポートでした。次回からは仲間たちによるレポートを再開します。

 

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